F級テイマーは数の暴力で世界を裏から支配する   作:ゆーき@書籍発売中

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第二十五話 従魔の証

 冒険者ギルドから出た俺は、直ぐ近くにある魔石ギルドへと向かう。

 魔石ギルドは魔石の取引を専門とする商業組合で、公正な取引を心掛けていることで有名だ。

 あそこなら、ぼったくられる心配もない。

 日本では全然考えていなかったのだが、この世界ではぼったくりって結構あることだからね。しかも、余程悪質でもない限り、罪には問われないせいで、それが消えることは無い。

 言わば騙される方が悪いってやつだ。

 実際、ちゃんと市場価格を知っている人なら、騙されることは無く、逆にそのことを指摘すれば、口止め料を兼ねて市場価格よりも絶妙に安く売ってくれたりもするんだよね。

 まあ、逆上してくる奴もいるから、一長一短……いや、一長二短だけど。

 そんなことを考えながら、歩くこと僅か30秒。

 着いた先は、冒険者ギルドと似たような造りの木造2階建ての大きな建物だ。

 俺は早速扉を開けると、中に入る。

 

「ん……そこまで混んではいないか」

 

 魔石ギルドの中は、冒険者ギルドと比べると、若干落ち着いた雰囲気が漂っていた。

 何故、ここで”若干”とつけるのかと言うと、狩ってきた魔石を売りに来ている冒険者は騒がしく、逆に魔石の取引をしている商人等は落ち着いているからだ。そんな両極端な2者が同じ場所に居れば、トラブルになりそうな気がしなくもないが、そこはもう互いに関わらないという暗黙の了解みたいなもので釣り合っている。

 実際、”冒険者”と”冒険者以外”に受付が分けられているのだ。

 俺は当然、冒険者の受付へと向かう。

 

「魔石を売りに来ました」

 

 すると、男性職員が口を開く。

 

「分かりました。では、魔石を受付に出してください」

 

「分かった」

 

 俺は頷くと、リュックサックの中から魔石が入った革袋を取り出す。

 そして、それを受付の上にドサッと置いた。

 

「では、査定しますので、少々お待ちください」

 

 彼はそう言うと、革袋から1つ1つ魔石を取り出していく。

 そして、何の魔石なのかや、品質を見極めていく。

 同じ魔物の魔石でも、傷ついていたら、当然価値は下がるからだ。

 まあ、そこら辺は注意を払ったので、大丈夫だとは思うが……

 もっとも。ゴブリンやオークの魔石では、そこまで関係ないんだけどね。

 すると、もう査定が終わったのか、男性職員は硬貨を手に取った。

 

「オークの魔石8個で1600セル。ゴブリンの魔石6個で300セル。合計1900セルをお渡しします」

 

 そう言って、彼は小銀貨1枚、銅貨9枚を俺に手渡す。

 まあ、金額としては妥当なものだ。

 

「ありがとうございます」

 

 礼を言って、俺は金を受け取ると、魔石を入れていた革袋と共にリュックサックの中に入れる。

 そして、踵を返して歩き出した。

 いやーこれで今日の仕事は完了だな。

 冒険者活動初日で稼げた金額は5700セル。

 初日でこれだけ稼げたのなら、まあ上出来だろう。

 今日で色々と学べたし、明日以降はもっと稼げると思われる。

 

「さてと。次は雑貨店に行くか」

 

 ネムが俺の従魔であると一目でわかる印をネムに付けなければ、堂々とネムを連れて歩くことは出来ない。

 スライムだからとやかく言われることは無くても、もしそれが原因でネムが討伐された時に、泣き寝入りをするしかなくなってしまうのだ。

 従魔の印をつけていなかったお前が悪い!ってね。

 

「雑貨店は色々あるし、まあ近場から寄ってくか」

 

 そう言うと、俺は魔石ギルドから出た。

 そして、直ぐ近くにあった”ドール雑貨店”という雑貨店に足を運ぶ。

 

「ふーむ。色々あるな」

 

 ここには貴族ではなく、平民がつけるようなアクセサリーが置かれてたり、他にもコップや皿といった日常品等、色々なものが売っている。それで、ネムに付けるとしたら何がいいのかなぁ……

 

「帽子とかかぶらせたら可愛いだろうなぁ……でも、流石にちょっと大きすぎるか。もうちょっとコンパクトなのはないかなぁ……」

 

 冒険者として、これから動きまくる。その時に、邪魔になるようなものではダメだ。

 それでいて、従魔であると一目で分かる物。

 そして、ネムに似合う物。

 うーむ。難しい。

 

「うーん。指輪?……て、指ねぇじゃん。あー……お、これとかどうだろう?」

 

 ふと、俺の目に着いたのは、六芒星の黄色いバッジだった。

 グラシア王国含む周辺国において、六芒星は平和の象徴だ。

 遥か昔、魔物に淘汰されそうになった人々を救った6人の勇者が由来だと、歴史書に書いてあった。

 

「程よい大きさ。水色のネムに黄色は目立つ。うん。完璧だな」

 

 金具の部分をいい感じに中に取り込んでもらえば、取れる心配もない。

 こうしてネムに付ける従魔の証を決めた俺はそのバッジを手に取ると、店員に会計をお願いする。

 

「これを買いたい。いくらですか?」

 

「ああ、それは銅貨1枚だよ」

 

 気さくそうな男性店員が、俺を見てニカッと笑うとそう言った。

 

「分かった」

 

 俺は頷くと、リュックサックの中から銅貨を1枚取り出すと、店員に渡す。

 

「毎度あり」

 

 店員は再度ニカッと笑うと、去って行った。

 よし。早速つけてみよう。

 俺は店から出ると、道の隅へ行く。

 

「ネム。出て来てくれ」

 

「きゅきゅ!」

 

 ネムは毎度の如く、元気にリュックサックから出てきた。

 そして、俺にべったりとくっつく。

 

「ネムにプレゼントだ。これを体に身に着けてくれ。金具の部分を体内に取り込むような感じでやってみてくれ」

 

 そう言って、俺はついさっき買ったバッジをネムに差し出す。

 

「きゅ! きゅきゅきゅ!」

 

 ネムはバッジを手(?)に取ると、喜びを全身に表す。

 どうやら、気に入ってくれたみたいだ。

 すると、体にそのバッジをぐっと押し付けた。

 直後、ズブッとバッジがネムの体に沈んだ。

 

「きゅきゅ?」

 

 これでいい?とでも聞くような感じで、ネムは頭(?)についているバッジを見せつける。

 おお! 中々似合ってるじゃん。

 そして、いい感じにそのバッジも目立っている。それなら、誰がどう見ても俺の従魔であると分かるだろう。

 

「うん。似合ってるよ。これで、堂々と一緒に出歩けるな」

 

「きゅきゅ!」

 

 俺は喜ぶネムを両手で抱きしめながら、頬を緩ませて笑みを浮かべる。

 コソコソ隠すのは、もう嫌だからね。

 これからは堂々としていよう。

 まあ、戦闘時とかは念のため、リュックサックの中に入ってもらうだろうけど。

 

「さてと。次は装備をもう少し整えないと」

 

 屋敷にいた時にも言えることだが、俺って装備品を全然持っていないんだよね。

 まあ、欲しいなんて迂闊には言えない状況だったからな。

 仕方ない。

 いや、でも宝物庫に侵入した時に、もうちょっと見とけばよかったな?

 あーでもリスクがデカいからなぁ~

 リスクを考えれば、ミスリルの剣が手に入っただけでも、万々歳か。

 

「あー忘れとこ忘れとこ。考えたらキリがない。そもそも、侯爵家の宝物庫にあるようなものをFランク冒険者が身に着けてたら怪しいことこの上ない」

 

 そう言って、俺は頭を振って邪念をかき消す。

 そして、ネムを肩に乗せると、武器防具店に向かって歩き始めた。

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