F級テイマーは数の暴力で世界を裏から支配する   作:ゆーき@書籍発売中

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第三十五話 本気の戦い

 受付から出てみると、そこは随分と騒々しかった。

 まあ、そうだよな。ここにいるのって大体がDランク以下の冒険者だし。

 場慣れしていて、冷静にいられるような高ランク冒険者は皆、実入りのいいダンジョンに行ってるからな。

 流石に15分で、ダンジョン内にいる冒険者を呼び寄すことは不可能なので、ここにいる冒険者で何とかするしかない。

 でも、見たところ高ランク冒険者もちらほら居るので、何とかなる……とは思う。

 

「うーん……俺も手を貸したいけど、俺って連係取るの苦手だからなぁ……」

 

 俺は頭を掻きながらそう言う。

 普段の俺の戦い方でさえ、連係なんて知ったこっちゃとでも言うような戦い方なのだ。当然、手段を選ばない、正真正銘本気の戦い方も、連係には不向き……いや、超不向きだ。

 むしろ、味方を巻き込みかねない。

 と、言う訳でここは森の中にいる内に、俺が数を減らしてしまうとしよう。

 ただ、1つ問題があって……

 

「これ、実戦で使ったことないんだよなぁ……」

 

 そう。大規模過ぎるが故に、使ったことが無いのだ。そして、不確定要素もそこそこある。

 

「でも、やってみないことには、どうにもならないしな」

 

 不謹慎な言い方にはなってしまうだろうが、これはいい実験だ。

 どれほど損失を抑えて、敵を倒せるのか。

 この結果次第で、今後の動きとかが変わってくる可能性が出てくるかもだし。

 

「行くか」

 

 そう呟くと、俺は冒険者ギルドの外へ出た。

 そして、スライムの視覚で人がいないことを確認してから路地裏に入る。

 宿に帰る時間は無いし、空間転移(ワープ)で無駄に魔力を使いたくはないからな。

 そうして俺は不本意ながらも、この場で森にいるスライムと視覚を共有した。

 

「……よし。ここら辺にはまだ来てはいないな。では――魔力よ。この空間に干渉せよ」

 

 俺は視覚を移した計182匹のスライム全てから空間把握(スペーショナル)を発動させる。

 中々魔力を使うし、これほどの多重起動は頭がより痛くなるのだが……初歩中の初歩の魔法ということもあってか、何とか行使することが出来た。

 

「うん……いい感じだな」

 

 俺は満足げに頷く。

 そう。こうすることで、俺は森の一部――400メートル×1000メートルの範囲全ての情報を()()()()()()()知ることが出来るのだ。

 だが、それらの情報全てを理解するのには、思考速度が足りなさすぎる。

 そこで、俺は次の魔法を唱えた。

 

「魔力よ。我が思考を加速させよ」

 

 俺は闇属性魔法、思考加速(ソウトアップ)を発動して、自身の思考を本来の10倍程にまで上げる。

 闇属性と光属性の魔法はあまり得意ではないのだが、便利そうなものはかなり修練して、十全に扱えるようにしている。

 てか、こういう魔法使えるんだったら、今までも使ってたら良かったんじゃないかって思うかもだが……これ、そこそこ魔力を使うんだよ。

 元々思考加速(ソウトアップ)って、適性率40パーセントの俺が使えるようなものじゃない。

 じゃあ何故使えるのかって言うと、そりゃ修練しまくったっていうのもあるが、一番の理由は本来起動に使うよりも多い量の魔力を使っているからだ。魔力を沢山使えば、まあ多少無理やり感は出てしまうが、使えるようになったりする。

 だが、お察しの通り俺の魔力容量はそこまで多くない。

 だから、あまり使いたくは無かったんだ。

 にしても、思考加速(ソウトアップ)を使うことをケチったお陰で、俺本来の思考速度がだいぶ上がったのはいい収穫だったな。そうすることで、思考加速(ソウトアップ)の効果をより高められたりもしたしね。

 

「さて……この範囲内に奴らが入ったら……あれをやるか」

 

 ポツリとそう呟くと、俺は魔物がその領域に入ってくるのを待つ。

 ……と思った瞬間、その領域にキルの葉を喰らった魔物が入って来たのを感じた。

 いやーナイスタイミング。

 それじゃ、やるか。

 

空間把握(スペーショナル)を発動しているスライムと、その他一部のスライム以外――そう。大体そんぐらい、森に来てくれ」

 

 俺は()()()()()()に召喚を使い、他のスライムを()に召喚した。その数――およそ30万。

 30万のスライムが、たった400×1000の空間にいる光景は中々壮観だなぁ……

 て、こうしている場合じゃない!

 空間把握(スペーショナル)によって、早速殺されそうになっているスライムを把握した俺は、加速された思考の中で、そのスライムたちを後方のスライムの所へ召喚する。

 

「さあ――やれ! 奴らを溶かせ!」

 

 そして、俺はスライムたちを一斉に奴らへ襲い掛からせた。

 当然奴らもスライムへ襲い掛かるが――

 

「グアアァ!!」

 

 凶暴化したオークがめちゃくちゃに棍棒を振るう。

 当然その軌道上にはスライムが居たが、棍棒が当たりそうになった瞬間、ふっと消える。

 

「グアアアア!!」

 

 またあるオークは、スライムを踏み潰そうとする。だが、踏み潰そうとした瞬間、これもまた、ふっと消える。

 そして、その隙にオークの上に飛び乗ったスライムたちが、オークの体を溶かしにかかる。

 そのほとんどがただのスライムであるため、中々溶けない。

 だが、水滴石を穿つと言うように、小さな力でも、積み重なれば強大な力になるのだ。

 故に――

 

「グガアアアァ!!!」

 

 溶解液を大量に浴び、魔物どもは苦悶の声を上げ、苦しむ。

 そこへ容赦なく――特に脳天を集中的に溶かし続けた。

 そして、僅か30秒程で、1体のオークが脳を溶かされ、地に伏せた。

 他の場所でも、それと同様のことが起きている。

 一方俺はというと、10倍に加速された思考を存分に使って、スライムたちを守っていた。

 

「逃げろ! 逃げろ! 逃げろ! 退け! 退け! 退け!」

 

 傍から見れば、撤退を促す将軍のようだが、実際は奴らの攻撃があたりそうになったスライムを、後方に待機させているスライムの下へ召喚しているだけなのだ。

 流石にこれは思考加速(ソウトアップ)を使っていてもギリギリだ。いつ犠牲が出てもおかしくない。というか、気づいていないだけで、既に犠牲が出ているのかもしれない。

 だがそれでも、俺はただひたすらにスライムたちを守り続ける。

 多少の犠牲なら直ぐに補完はきくが、使い捨てるような真似はしたくないんだ。

 だって――

 

「仲間だからな……ッ!」

 

 そう言って、俺はその後も引き続き、戦うスライムたちを守り続けるのであった。

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