F級テイマーは数の暴力で世界を裏から支配する   作:ゆーき@書籍発売中

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第四十二話 襲撃

「はーあ……ん?」

 

『きゅー! きゅー!』

 

 ふと、大きな欠伸をした瞬間、脳内にスライムの鳴き声が響き渡った。

 この警告は……俺を監視している奴がいるのか?

 俺は即座に視覚を移す。

 場所はこの宿――の屋根の上。

 そこに、姿勢を低くし、息を潜めている1人の男がいた。

 確かにこれは怪しいな。視線や仕草からして、確実に俺を狙っている。

 これは俺で気づけなかった。流石はスライム。最弱の魔物であるが故に、危機察知能力はかなり高い。

 

(ちっ 何者だ……ああ、ガリアかよ)

 

 その男が腰に付けている短剣には、フィーレル侯爵家の紋章が刻まれていた。

 だが、フェイクの可能性もある為、断定はできない。

 

「はー眠いな~」

 

 気づいてないと思わせる為に、ごくごく普通の独り言を言いながら、思考を巡らせる。

 

(まあ、宿にいる俺を監視する時点で、何か手を出してきそうだよなぁ……)

 

 これから寝ようとする俺を、わざわざ監視する意味は無い。監視するだけなら、普通に昼間にすればいい。となると、誘拐か殺害だな。

 スライムも何かしらの害意を感じ取っているようで、少し騒がしい。

 

(ふむ……どうしようか……)

 

 対処法はいくらでもあるが、なるべく騒ぎにならないやつがいい。

 だったら、まあこれにするか。

 詠唱したら、聞き耳立てられてる場合、面倒なことになる為、ここは魔力を多めに消費したとしても、無詠唱で魔法を使うべきだろう。

 あーでも空間属性だと、発動する直前に空間が歪むから、それで気づかれて対処される可能性があるな。

 なら、こっちが正解か。

 

「はー空気でも吸うか」

 

 そう言って、俺は部屋の窓を開けると、外の空気を吸う。

 

「はぁ……いいね。じゃ、そろそろ寝るか。涼しい方が良いし、窓は開けたままにしとこ」

 

 そう言うと、俺は窓を開けたまま、ベッドに転がり、寝たふりをする。

 そして待つこと10分後、屋根の上にいた男が音を一切立てずに、窓から部屋に侵入してきた。

 よし。

 

「ようこそ。俺の死の領域(デス・ゾーン)へ」

 

 俺は目を開くと、入って来た男に向かってそう言う。

 直後、室内に大量のスライムが出現したかと思えば、その男を数で押しつぶしにかかる。

 

「ん!ん!んんんん~~ッ!!!!」

 

 四方八方から押しつぶされ、男は言葉にならない声を出しながら苦しむ。

 例えるなら、クッションで押しつぶされているような感じだ。藻掻いても藻掻いても、中々抜け出せない。

 しれっと喉や掌などを溶解液で溶かしているのもポイントだ。

 だが、スライムの力はあまり強くない。冷静になられ、対処されてしまう前に何とかするか。

 

「魔力よ。空間へ干渉せよ。空間と空間を繋げ。門を開け」

 

 直後、俺の目の前に、空間を円形に切り取ったようなものが出現した。その奥には、人間の――首がある。

 

「はあああっ!」

 

 そこに、俺は躊躇なく拳を振るった。それも4回。

 すると、さっきまで出ていた男の声が、急に聞こえなくなった。

 

「よし。戻れ!」

 

 俺はスライムたちを森へ戻す。

 すると、そこにはげっそりとした表情で倒れる1人の男がいた。

 

「よし。気絶してるな」

 

 俺は満足げな表情を浮かべながらそう言った。

 転移門(ワープ・ゲート)という、空間と空間を直接繋ぐ魔法で、目の前の空間と男の首裏を繋ぎ、そこを殴る。

 そうすることで、安全に気絶させることに成功したのだ。

 

「あとは、魔力よ。空間と空間を繋げ。我が身をかの空間へ送れ」

 

 俺はその男の腕を掴むと、空間転移(ワープ)で路地裏に転移した。

 そして、路地裏に転移した俺は、男の腕を離すと、次の詠唱を唱える。

 

「魔力よ。この者の精神へ干渉せよ。意識を奪え。支配しろ」

 

 すると、この男の頭に黒い靄のようなものが微かに現れ、直ぐに消えた。

 

「よし。起きろ」

 

 俺はその男の頭を思いっきり蹴る。

 すると、「がはっ!」と声を上げると同時に、ガバッとその男は起き上がった。

 

「な、ここは……?」

 

「大丈夫かい?」

 

 何が起きたのか分からず、唖然としている男に、俺は優しく声をかける。

 

「あ、ああ……な、何者!?」

 

 男は急に警戒心むき出しで吠えると、腰の短剣に手を伸ばす。

 

「ああ、驚かせてごめん。ここに倒れてたから、回復魔法で手当てをしてたんだよ」

 

 だが、俺は顔色1つ変えず、優しく諭すように声をかける。

 ここで焦ってはいけない。

 すると、その男から、次第に警戒心が抜け落ちていった。

 

「あ、ああ。そうだったのか。悪かったな。それと、ありがとな」

 

 バツが悪そうに言うと、男は腰の短剣から手を引いた。

 

「気にしなくていいよ。それで、どうしてここに倒れてたんだ?」

 

 俺は親しい友達に話しかけるような口調でそう言う。

 

「ああ。実は、ガリア侯爵から、麻薬畑が見つかった最大の要因とされているシンを捕らえろって言われたんだよ」

 

 男はやれやれと肩をすくめながらそう言った。

 

「そうなんだ~因みに、その麻薬畑の所有者って誰?」

 

「ん? そんなのガリア侯爵様に決まって――はっ!?」

 

 男はいきなり目を見開くと、口を両手で押さえるが――もう遅い。

 

「くっ 悪いが死――ぎゃあああ!!!」

 

 男は短剣を落とすと、頭を押さえて身悶える。

 だが、どんどんと溶けていき――直ぐに物言わぬ死体となった。

 

「ふぅ。ありがとな」

 

 そう言って、俺はその男の上に乗る1匹のスライムを、元の場所へ戻した。

 

「……あーひやひやした」

 

 緊張から一気に解放された俺は、深く息を吐く。

 いやーマジでヒヤヒヤしたよ。特に警戒心むき出しで、”何者!?”って言われた時は。

 

精神支配(ドミネイト)。ちゃんと発動して良かった」

 

 そう。俺がやったのは、精神支配(ドミネイト)を使っての尋問だ。

 だが、俺は闇属性魔法があまり得意ではなく、精神支配(ドミネイト)も精々意識を逸らす程度のことしかできない。

 だから、さっきみたいに回りくどいことをしないと、尋問が出来ないのだ。

 

「はぁ……にしても、ヤバいこと知っちゃったなぁ……」

 

 まさか麻薬畑の所有者が、ガリア本人だとは思いもしなかった。

 しかも、八つ当たりに俺を攫いに来てるし……

 どうせ、俺を攫って拷問紛いのことでもする気だったのだろう。

 ……うん。流石にこれは怒った。

 今後一切干渉しないのなら、見逃すつもりだったけど、手を出すのなら仕方ない。

 

「俺を敵に回したらどうなるのか。思い知るがいい」

 

 俺はビキビキと額に青筋を浮かべながらそう言うと、早速行動に移すことにした。

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