F級テイマーは数の暴力で世界を裏から支配する   作:ゆーき@書籍発売中

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第九話 スライムは可愛い?

「……ははっ ”テイム”でこんなことが出来るだなんてな。S級でもこれは出来ないだろ。もしや、これが転生特典とか……?」

 

 いや、流石にそりゃないか。

 だったら何でわざわざF級にしたんだって話になるし。

 ていうか、そもそも転生特典を渡す神と呼ばれる存在がいるのかすらも分からない。

 確かに祝福(ギフト)っていうのはあるけど、それを神が与えているという証拠はどこにもないわけだし。

 

「まあ、可能性が広がったのは嬉しい誤算だ。他にも色々あるかもだし、ネムだけはこっちに移動させとくか。来てくれ、ネム」

 

 視覚共有を切ると、俺はネムがここに来ることをイメージする。

 すると、ぱっと目の前に薄青色の生き物――スライムことネムが現れた。

 

「おっと」

 

 俺はもう少し腕を大きく広げると、ネムを両手で抱きかかえる。

 大きさとしては、体長15センチ程。5歳児の俺ではちょっと大きめに感じてしまう。

 

「きゅ! きゅ! きゅ!」

 

 ネムはまるで主人に懐く子犬のように、べったりと俺にくっつく。

 う、すまん。流石に臭い。あと、下水道の汚れが多少……

 だが、問題ない。むしろこれは想定していたことだ。

 

「魔力よ。光り輝き浄化せよ」

 

 すると、ひかっと俺の服とネムが光に包まれたかと思えば、汚れがきれいさっぱりなくなった。

 

「これでよし」

 

「きゅきゅ?」

 

 ニヤリと笑う俺に、ネムは不思議そうに首(?)を傾げた。

 今使った魔法が、つい先ほどエリーさんに教えてもらった光属性魔法、浄化(クリーン)だ。

 今みたいに、大抵の汚れは消すことが出来る。キッツい汚れは何度もかけなきゃダメだろうけど、割ときれいな侯爵家の下水道に住んでいたネムなら、これくらいで十分綺麗に出来る。

 更に、浄化(クリーン)で臭いの発生源がきれいになったお陰で、臭いも大分消えた。

 まだ少し空気中に残っているが、まあ暫く経てば消えるだろ。

 

「よしよし。こうしてみると、結構可愛いな」

 

「きゅきゅきゅ!」

 

 ネムの体はひんやりとした柔らかいゼリーのような感じで、結構気持ちいい。

 そして、こうやって子犬のように懐いてくれる。

 ははは……どんどん愛着が湧いてくるな。

 一部の貴族でスライムを飼うのが流行っていると耳にしたときはめっちゃ不思議に思ったが、今ならよく分かる。

 

「さてと……あ、あっちのスライムはなにやってんだろ?」

 

 何も命令していないときはどうしているのかと不思議に思った俺は、下水道に残ったスライムと視覚を共有する。

 すると、そこでは先ほどと同じようにぴちゃぴちゃと音がした。どうやら、普通に過ごしているようだ。

 ……あ、いいこと思いついた。

 

「あのさ。スライムと出会ったら、俺にそのことを伝えるっていうのは……できる?」

 

「きゅ!」

 

 俺の質問に、下水道にいるスライムは元気よく返事をした。

 へ~出来るんだ。んじゃ、頼んでみるか。

 

「頼んだよ」

 

 そう言って、俺は視覚を自身に戻すと、再びネムに視線を合わせる。

 

「きゅ!きゅ!きゅ!」

 

 すると、そこにはぽかぽかと腕(?)で俺を叩くネムの姿があった。

 あれ? 何か怒ってるような感じがするんだが……

 

「あれ? 怒ってる?」

 

「きゅ!」

 

 当然とでも言うかのように、ネムは頭(?)を動かして頷いた。

 あ、やっぱり怒ってたか。

 にしても何故……

 

「……あ、もしかして、他のスライムと話してたから?」

 

 思い当たる節がそれしかなく、俺はそう問いかける。すると、ネムは「きゅ!」と強く頷いた。

 やっぱり嫉妬かーい。

 てか、スライムも嫉妬するんだな……

 

「あーやっぱりそうか……まあ、大丈夫だよ。ネムが最初にテイムした魔物だからね。今後嫌でも特別扱いするさ。だから、他の従魔と会話したり、多少仲良くするぐらいは許してくれよ」

 

 そう言いながら、俺はネムの体を優しく撫でる。

 すると、それだけで上機嫌になったのか、ネムは「きゅきゅ!」と鳴き声を上げて、頷いてくれた。

 

「うん。ありがとう。あ、そういやネムの隠し場所はどうするか……」

 

 ここに呼んだはいいものの、隠し場所が無い。誰かに見つかるのは避けたいからなぁ……

 何かめんどくさいことになりそうだし。

 俺はネムを抱きかかえたまま、ゴロリと後ろに寝転がり、天井を見る。

 

「ん~……あ、あそこだ!」

 

 俺は天井裏に続く小さな隙間を指差すと、声を上げた。

 使用人だって、流石に天井裏までは掃除しないだろ。年に1回ぐらいはありそうだが、その時は上手いこと隠れてもらうことにしよう。

 そう思った俺は、早速ネムに声をかける。

 

「ネム。俺がこの部屋から出ている間は、あの隙間から天井裏に入って、そこに隠れてくれないかな?」

 

「きゅっきゅっ!」

 

 俺の言葉に、ネムは首(?)を横に振った。出来ない……じゃなくて、嫌だってことか。

 理由は恐らく、俺と離れたくないからだろう。さっきの嫉妬ぶりを見れば、容易く予想できる。

 確かに、俺も出来れば一緒にいたいけど、生憎俺の体は小さい。故に、ネムを隠し持つことが出来ないのだ。

 あともう数年経ち、体が大きくなれば、服の裏とかに隠せろうだろうけど……

 

「うん。その気持ちは分かるよ。ただね。もし、君の存在がバレてしまったら、二度と俺と会えなくなってしまうかもしれないんだよ。それは嫌だろう?」

 

「きゅ!? きゅきゅきゅ!」

 

 俺は優しく諭すように、ネムに声をかける。

 すると、ネムは俺の言葉にビクッと体を震わせるや否や、ぶんぶんと頭(?)を上下に振った。

 どうやら説得には成功したみたいだ。

 

「うん。ありがとう。まあ、基本はこの部屋にいるから、安心して」

 

 そう言って、俺は優しくネムを撫でる。

 すると突然、頭の中に響き渡るような鳴き声が聞こえて来た。

 

『きゅきゅ!』

 

「ん!? ……ああ。あっちのスライムか」

 

 俺は一瞬驚いたが、直ぐに繋がりから下水道の方にいるスライムの鳴き声であると理解すると、そのスライムの視覚に意識を移す。

 直後、視界は暗転した。だが、目の前に何かがいるというのだけは分かる。

 

「なるほど。スライムを見つけたのか。では、”テイム”」

 

 俺は目の前にいる何かがスライムであると判断すると、即座に”テイム”を使う。

 すると、目の前にいる何か――スライムと繋がる感覚がした。

 

「よし。成功だな。じゃ、君はこのまま下水道を出て、川を下り、その先にある森を目指してくれ。着いたら報告を。誰にも見つからないように気を付けてくれ」

 

「きゅきゅ!」

 

 俺の命令に、そのスライムは元気よく鳴き声を上げると、ぴちゃぴちゃと水音を立てながら、ここから去って行った。

 もしかしたら、あのスライムは死んでしまうかもしれないが……それは仕方ないと割り切ろう。

 無論、死なせないように手は尽くすつもりだが、それでも万が一ということはあるのだ。

 何せ、スライムは最弱クラスの魔物の中でも特に弱いとされている魔物なのだから――

 

「ふぅ」

 

 俺は息をつくと、視覚を元に戻す。

 そして、相変わらずじゃれてくるネムを優しく抱きしめた。

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