シュラハトくん見逃して   作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)

12 / 42
【長編】最弱の七崩賢【ギミックあり】
【予告】タイトルロール


「私はもっと人間を知ろうと思う」

【とある演目の1コマ】

 


 

 

「フリーレン様、またサインを書いていたんですか?」

 

「ふふん、私も有名人だからね」

 

たまたま助けた商人が『勇者ヒンメルの冒険』原本の熱狂的なファンだったため、フリーレンがサインを求められたのである。

旅の先々で出会う騎士ニヒツが後世に残した偉大な影響。

フェルンはそんな人物と肩を並べた養父ハイターの偉大さを改めて感じて嬉しくなった。

そして、目の前で追加の魔導書をねだるエルフを見て、気分が平常時に戻る。

 

「でも、あんな高そうな服にサインを直接書いてくれって、よくわかんねぇよなぁ」

「さあ? 書くものがなかったんじゃないかな?」

 

商人と別れ、辿り着いた城塞都市ヴァイゼで宿を取ったフリーレン一向。

いつもの自由行動時間に入る直前、フリーレンが2人を引き止めた。

 

「そう言えば、さっき何かのチケットをもらったんだよね」

 

カバンから取り出した紙切れを見せるフリーレン。

フェルンとシュタルクが顔を寄せる。

 

「えっ!! これ…芸術の都『シャーデンフロイデ』で1番大きな劇場のVIPチケットじゃないですか!?」

 

かなり食い気味なフェルン。

勢いよく上げられた頭がシュタルクの顔に当たる。

 

「そうなの? じゃあこれを売って路銀にしよう。フェルン、この間もお金がないって言ってたもんね。これでしばらくお金のやりくりを考えなくて済むよ」

 

フリーレンは、いつもお金のやりくりを任せっきりにしているフェルンに申し訳なく感じていた。

この辺りで少しは楽をさせてあげたい。

シュタルクが鼻を押さえながら会話に合流する。

 

「え、そんな凄いのか? そう言えば中央諸国のカペッレ地方にも『音楽都市』ってのはあったけど…」

「シュタルク!! 凄いなんてもんじゃないですよ。この間の試験でお世話になった一級魔法使い()()()様曰く、『シャーデンフロイデ』は幻影魔法や精神魔法を用いた没入型ミュージカル、三次元アクロバティックダンスバトル、絵画の中を冒険できるツアーなどなど、都市が丸ごと芸術作品になっている世界で唯一の場所だそうです。魔法技術の発展した北側諸国だからできる体感型の芸術作品なんですよ!!」

 

昔、体験した厄介ごとを思い出すフリーレン。

収集家や芸術家というのは厄介な人物が多い。

特に、あの都市を訪れたことがある冒険者なら、誰でも感じることだろう。

 

「まあ、確かにすごく印象に残っているよ。良くも悪くもね…」

 

「おおぉ」と唸るシュタルク。いつになく熱く語るフェルンを見て、少し興味が湧いてきた。

あまりそういう分野は分からないが、なんだか楽しそうなフェルンを見ると、自分も楽しくなってくる。

 

「4枚あるから、1枚売って残り3枚で見に行けばいいんじゃね? なんかザインがいなくて残念だな…」

 

「まあ、これも巡り合わせだからね。じゃあ、1枚は誰かに売って残りで見に行こうか。幸いシャーデンフロイデは()()()()から近い。それにここならお金が余っている人はたくさんいるだろうからね…」

 

「ヴァイゼでは珍しくトラブルに巻き込まれなかったからな。次の都市でもゆっくりできればいいなぁ」

 

「…そうだね」と呟くフリーレン。

彼女達の次の行き先が決まった。

 

 

 

 

「それはそうと、演目は何ですか? ミュージカルなら『泣いたドワーフ』と『ドラゴンキング』、あと『シャーデンフロイデの怪人』もすごく良かったですよ。私はまだ()()()()()()()()()頃、ハイター様に誘われて両親と『音楽都市』へ見に行ったことがあります」

 

「俺はみゅーじかる? というのは見たことないから、なんでも良いぜ。というか『泣いたドワーフ』がめちゃくちゃ気になるんだが…」

 

フェルンはシュタルクに、昔見たミュージカルの話を楽しそうに話す。

シュタルクもつられて楽しそうに相づちを返す。

 

そんな二人を眺め、フリーレンは手元のチケットに目を落とした。

彼女はこのミュージカルに関して気になることがあった。

商人はチケットを渡す際、この演目が公開されるきっかけになった出来事を教えてくれた。

 

数年前、突如見つかった勇者パーティーの『騎士ニヒツの手記』。

そこに書かれたメモ。ついぞ公開される事がなかった物語。

自分が死んだ後の時代を想像し、書き記した断片的な記録。

それを物語に書き直したのが、今回新しくお披露目される演目だ。

また、今回はいわゆる先行上映というものであり、劇場の出資者でもあった商人はチケットをたくさん持っていたようだ。

 

「フェルン、私はこの街にいる()()に顔を見せてくるよ。明日の準備をよろしくね」

 

「はい………え?」

 

フェルンはサラッと告げられた衝撃の事実にしばらく動けなかった。

しかし、フリーレンが人混みで見えなくなる前に急いで追いかけたのであった。

 

 

 

 

「あ、ありがとうございます!! これ見に行きたかったんですよ!」

 

チケットを受け取った青年が礼を言う。

彼の手には1枚のチケットが握られていた。

 

その演目は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『葬送』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

√m 勇者ヒンメルの死から40年後

 

 


 

■ 実績解除

* なし

 


 

■ 裏話

芸術の都『シャーデンフロイデ』

北側諸国最大の芸術都市。この世界における3大芸術都市の一つ。

フランメが魔法を一般化させる以前の魔法禁忌指定時代から芸術に魔法を取り入れており、芸術に関してはかなりの寛容さを持っている。

その為、芸術関連の神話級魔道具が頻繁に見つかっている。

芸術に対する熱意が強く、『あらゆる事象は芸術に通ずる』という信念のもと、魔法だけでなく、魔物や魔族ですら芸術に組み込んでしまうマッドな集団が後を経たない。

最近では聖典の内容を再現するミュージカルで、実際に睡魔の呪いをばら撒く花の魔物を登場させ、僧侶によって解呪させるという大惨事になりかねない演目もあったが、観客からは「非常にスリリングだった」「もっと僧侶が苦戦するほうがいい」など概ね好評であり、問題にならなかったことからも住民達の狂気が伺える。

 

■ 裏話2

中央諸国のカペッレ地方にある『音楽都市』

原作12巻の付録、もしくは公式サイトで読める短編小説『奏送』より

 

■ 裏話3

『勇者ヒンメルの冒険』原本

3話に出てきた【新訳 『勇者と愉快な仲間達 -ラブ&ピース-』】の原本。

「ヒンメルの手記」と「ハイターの日記」と「アイゼンのインタビュー」を元に、二ヒツが彼らの出会いから魔王討伐までをまとめた冒険譚。

残念ながらフリーレンには協力を得られなかった。

後年、『魔王討伐の帰り道』という続編が公開された。




■ 次回 【長編開始】明日投稿予定
劇場版葬送のフリーレン『最弱の七崩賢』






●「レンゲ様、ご依頼の通りフリーレン様に『例のチケット』をお渡ししました」

◆「ありがとうございます。こちらが依頼料です」

●「確かに、今後もどうぞご贔屓に」

◆「…」

◆「ここまで長かった」

◆「ゼーリエ様にいただいたこれさえあれば…」



◆「あいつは私の手で…必ず…」

もし、とっても美味しい喋るお菓子がいるとして、食べても罪に問われず周りはみんな食べている場合、あなたは食べますか?

  • 食べる
  • 頭だけ食べて自分の手下にする
  • 楽しくお話しした後に食べる
  • 数個食べた後、腐り果てるまで一緒に暮らす
  • 楽しい夢を見せて食べる
  • 自分もお菓子になる
  • 全部叩き潰して捨てる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。