シュラハトくん見逃して 作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)
最も無害であると限らない」
「フェルン、魔法史の本を読み終わったんだね。じゃあ、この薬草学と魔族史の本も読んでおこうね」
「追加の宿題だぁ...」
達成感に浸っていたフェルンへ冷酷なエルフが絶望を告げる。
渡された追加の書物を一瞥し、フェルンは崩れ落ちた。
魔法は
しかし、机に齧り付くことを彼女は好まない。
フェルンは書物を読むことよりも、身体を動かすことで覚えるタイプの魔法使いだった。
「特に魔族史の『大魔族全集』の章は読んでおいた方が良い。今も生きている奴はいるからね」
「…分かりましたぁ」
フェルンは渋々魔族史の書物を開き、目ぼしい魔族の名前を眺めていく。
そこで、見慣れない称号に気付く。
「フリーレン様、この『七崩賢』というのは何でしょうか?」
「ああ、これは魔王直下の特殊な大魔族が持っていた称号だよ。
「そう言えば、ハイター様から聞きました。魔王討伐後にヒンメル様達が倒した黄金郷のマハトが最後だったとか」
「そうだね。あいつはかなり厄介だったよ…」
フリーレンは右腕に手を添え、顔をしかめる。
「七崩賢はどれも強力な魔族だったんですね…」
「フェルン、実はそうでもないんだよ」
フリーレンが書物を数ページめくり、ある魔族の章を見せる。
「『神話のゲシヒテ』、またの名を『七崩賢最弱のゲシヒテ』。こいつだけは何故かとても
「それは以前教えてくださった『無名の大魔族』と同じ理屈でしょうか?遭遇した者が誰も生き残っていないから…ぅん?」
「それだと二つ名も、七崩賢としても、知れ渡らないね。じゃあ何でだと思う?」
悩むフェルン。
彼女の手が空を切る。
脳が糖分を欲しているが、既に机上の器は空である。
フェルンの手が動きを止める。
「特殊な魔法で人類に害がない?でも七崩賢。そして、『最弱』、生き残りがいる。神話という二つ名...。すみませんフリーレン様、情報不足で答えが分かりませんでした」
フリーレンはフェルンの回答に頷く。
正直、この魔族の行動はかなりイレギュラーである。
これまでフェルンが出会った魔族の行動を参考にしていては、答えは出ないだろう。
「それもそうだね…。少しヒントを出そう。ゲシヒテは七崩賢の中でも、最も目撃例が多い魔族だったんだ。つまり、ほとんど遭遇した者を生かして帰している」
フリーレンからもたらされる追加情報を聞き、フェルンは余計に意味が分からなくなった。
「おかしいです…。魔族が人をわざと見逃すなんてことあるんでしょうか?」
「仲間を誘き寄せる餌として敢えて見逃したり、利用する為に生かすことはあるね。それでもゲシヒテが目撃された場所では、
フェルンはフリーレンの説明に違和感を感じた。
魔族と人の間で戦闘が起こり、死人が出ないことなどあり得ない。
ましてや相手は大魔族であり、何百年も存在している。
その間に一度も死人を出していないのは不自然過ぎる。
そこに何かしらの意図があるのは明白であった。
「それは…目撃されることがメリットになっている可能性があります…。『見た者を操る魔法』や『伝え聞いた者を操る魔法』というのはどうでしょうか?」
「ふむふむ、良い考察だね。同じことを考えた帝国の研究者が、目撃者や生存者を観察し続けた研究があってね。でもその対象者はいずれも不審な行動をせず、天寿をまっとうしたらしい。それを100年くらい続けて同じ結果だったみたい。つまり、潜在的なものでもない可能性が高いという結論が出ている」
「むむむ」と唸るフェルン。
フリーレンはそんな彼女を見て、静かに微笑む。
「だから今でも魔族史でゲシヒテの魔法に関する議論が絶えない。私も魔族史学者の連中から、質問攻めにされたことがあってね...」
思い出しただけで表情がヘニョヘニョになるフリーレン。
フェルンは大変だったんだなぁと、質問攻めで揉みくちゃにされているフリーレンを思い浮かべた。
「でも、ゲシヒテはフリーレン様達が倒されたんですよね」
「そうだね。会って早々命乞いをしてきたから、そのまま何もさせずに殺したよ…」
フリーレンはカバンの中から焼き菓子の包みを取り出し、フェルンが無意識に抱えている空の器へ分けてやる。
「流石に罠なんじゃないですか?」
「そうだね。当時、ヒンメル達もそう考えてね。しばらく、厳戒態勢を取ったんだよ。それでも奴は現れなかった。その場所は魔王軍の要でもあったから、そこを放って単独で逃げたとは考えにくい。隙を見せたところで再度襲ってくると思ったんだけどね…」
補充された焼き菓子は、再びフェルンの口の中へ吸い込まれていく。
「めちゃくちゃ怪しいですね。絶対何かありますって!」
「だよね。でもそれ以降、目撃情報がないんだよ。特に奴の魔法はあまりよく分かっていなかったし、何もさせずに倒すのがベストだったのは確かだよ」
フリーレンは静かにフェルンのカップへお茶を注ぐ。
「それに、ゲシヒテは唯一人間側に被害を出していない魔族でも有名だった。魔族が出たという報告があって、騎士団が向かったら子供達と花畑で冠を作って遊んでいたという話もあるんだ」
「擬態ですね。魔族がよく使う手です。でもそれが分かっているのに、フリーレン様達が倒すまで生き残っていたんですね」
既に焼き菓子がいた痕跡は微塵もない。
「毎回、いつのまにか逃げられていたらしい。それも騎士団側も村も無傷で誰も被害を受けなかったとか」
フェルンがお茶に手をつける。
「ゲシヒテを倒そうと強行した騎士は、村の子供達に妨害されたらしい」
「強力な催眠か幻術辺りでしょうか? アインザームレベルの魔法なら似たようなことができそうですし…」
フェルンの手が再び空を掴む。
そこにはもうなにもない。
「同行した魔法使いと僧侶によると、幻術や催眠の類が使われた形跡はなかったみたいだね」
「1番あり得ない予想としては、本当にただ人間と仲良くなりたかった…ですかね」
「ありえないね。うん、でもその発想は大事だよ。ただあり得ないと切り捨てちゃうと発想力が狭まる。煮詰まった時は、1番あり得ないと思ったアイデアから考え直してみると良いって、ニヒツも言ってた」
「でも、もういないのであれば考えるだけ無駄ですね」
「…それはそうと私の焼き菓子どこかで見ませんでした?」空の器を心底不思議そうに見つめるフェルン。
フリーレンはため息をつき、自分の器にある最後の一枚を差し出した。
「もっと、抵抗してくれたほうが幾分かスッキリしたんだけどね…」
フリーレンはゲシヒテを倒した時のことを思い返す。
魔王討伐後の勢いで、残りの七崩賢全て倒そうと相談していた矢先、自分からやってきたかのように出会った『最弱の七崩賢』。
フリーレンが1000年の間で、築き上げて来た大魔法使いの勘。
それが依然として、その魔族に対する警戒を緩めていない。
奇しくも現在向かっているのは芸術都市シャーデンフロイデ。
以前、ゲシヒテを討伐した地域の近くである。
√m 勇者ヒンメルの死から40年後。
■ 実績解除
* 【NEW】最弱の七崩賢
■ 裏話
七崩賢達の討伐状況
* 断頭台のアウラ:南の勇者が討伐
* ??の??:南の勇者が討伐
* ??の??:南の勇者が討伐
* 不死なるベーゼ:ヒンメル達が討伐
* 奇跡のグラオザーム:ヒンメル達が討伐
* 黄金郷のマハト:ヒンメル達が討伐
* 神話のゲシヒテ:ヒンメル達が討伐?
もし、魔法で魔族にされた人間がいたとする。それが人間を食ってしまった場合、フリーレンはどうする?
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ゾルトラーク
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解呪の道を探す
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二度とそんなこと言わないで