シュラハトくん見逃して   作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)

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マァマ

「お元気ですか? 毎日ちゃんと食べてますか?

身体冷えてないですか? しっかり寝てますか?

忘れ物はない? 頑張り過ぎないでね。

たまには顔を見せに来てね。

愛してるわ。あなたを一生」

【愛する人より】

 


 

 

ヒンメル達は森の中を進む。

 

「驚くほど魔物がいませんね。それに動物も毒があるものや気性の荒い種は見当たりません。この地方に生えないはずの草花までありますね。どうなっているんでしょうか、この土地は…」

 

ハイターが図鑑を手にうなる。

フリーレンも珍しい薬草を見つけてご満悦だ。

 

「おいおい、ここは人様の庭みたいなんもんなんだぜ。勝手に荒らすのはやめとけよぉ。ヒンメルも野草の蜜吸ってないでしっかり探してくれ。師匠も」

 

花の蜜をチュパチュパと吸っている2人。

もちろん気配探知は怠っていない。

 

「いやぁ、故郷の花があって懐かしくてね。良くハイターと魔物退治の帰りに吸ってたよ」

「結構いけるぞ」

 

森の探索は順調に進んだ。

道がループしたり、いつの間にかみんなバラバラになるといったハプンニングもなく至って平和だ。

むしろ、この地方では珍しい動植物がたくさんいたこともあり、動物園気分を味わうヒンメル一行。

 

しかし、流石に日も暮れてきたため、野宿の準備をし始めることにした。

 

「なんで川に海水魚がいるんだ?ここの生態系おかしいだろ。オールブルーじゃあるまいし」

 

ニヒツは川で夕飯の魚を調達することにしたのだが、釣れたのは海でよく見られる海水魚達。

どれもたいへん美味であり、幸運ではあるのだが、違和感が拭えない。

 

ただ、目的は達成したので獲物を纏めてみんなの元へ戻ろうとした時、後ろに気配を感じた。

 

カチャリ

 

相手に気付いたことをバレないように、ニヒツは耳を澄ませる。

 

カチャリ

 

鎧の揺れる音が近い。

こんなに近づかれるまで気付かなかった?

殺気はないが、相当な隠密の使い手だ。

その割に今は音を隠していない。

ニヒツはそっと短刀を手に出現させる。

 

カチャリ

 

正体不明の人物が間合に入った瞬間、ニヒツは振り返った。

そして…

 

彼は()()と目が合った。

 

 

 

 

野営の準備が着々整う中、川へ釣りに行ったニヒツがなかなか帰ってこない。

獲物が大量で運ぶのに手間取っているかもしれない。

川はすぐそこだ。

ひと足先に手が空いたフリーレンは珍しくニヒツの手伝いをすることにした。

 

ずっと森の中で歩き疲れたため、早く塩多めの焼き魚が食べたい気分なのだ。

フリーレンは川辺に到着し、ニヒツの後ろ姿へ声をかける。

 

「ニヒツ、手伝いにきたよ」

 

川の方へ向かって立っているフルプレートメイルの背中。

こんな分かりやすいシルエットは彼しかいない。

そもそも鎧の造形が分かりやすく特徴的だ。

今まで何人もの戦士や騎士を見てきたが、バケツみたいな形の兜は彼だけの特徴だった。

見間違えるはずがない。

 

それがフリーレンの目の前に 2()() いる。

 

1人は手を広げているニヒツ。

もう1人は魚を大量に抱えて棒立ちになっているニヒツ。

 

ニヒツがニヒツへ近付いて行く。

何か話しているようだが、そんなことは重要ではない。

()()()()()だ。

 


破滅の雷を放つ魔法(ジュドラジルム)


 

フリーレンは咄嗟に雷の魔法を放つ。

()()で。

 

「あっ」

「ちょっまフリ、くぁwせdrftgyふじこlp」

「ヴァアアア」

 

魔法の雷は偽物のニヒツを消し炭に変え、もちろん近くにいた本物も無事では済まない。

偽物のニヒツは消え去り、その場には少しビリビリしているニヒツと焼き魚の香ばしい香りが残った。

 

「…幻影鬼(アインザーム)はこの手に限る」

 

「お、お前、フリーレン。俺じゃなかったらやばかったぞ。助かったけども」

「…ごめん。今度は『地獄の業火を出す魔法(ヴォルザンベル)』にする」

 

「いや、それも過剰火力。今度『試作攻撃魔法(ゾルトラーク)』教えるからそっち使ってくれ」

「分かった。早速教えて」

 

「いや、せめて飯食ってからにしようぜ…」

 

フリーレンの知らない魔法。

彼女の魔法蒐集欲に火をつけてしまったニヒツは、なんとかその場を宥めてヒンメル達と合流した。

 

「なんでもう焼き魚になってるの?」

「まあ、色々あってな…」

 

ニヒツがヒンメル達に事情を説明する(カクカクシカジカ)

魔物に襲われたこと、フリーレンが川辺で雷魔法を放って焼き魚にしたこと。

 

それを聞いたハイターはドン引きした。

主に巻き添えくらってもピンピンしているニヒツに。

 

幻影鬼(アインザーム)が出たのか。都市ではそんな噂は聞かなかった。他の魔物が出ないことと関係があるのかもしれないな」

 

「それもこの森に住んでいるらしいエルフに聞けば分かるんじゃないか? それかその正体がさっきの幻影鬼(アインザーム)だったとか」

 

魔物が出たことで、警戒を強めるヒンメル一行。

取り敢えず、夜は交代で番をすることになった。

 

 

 

 

「フリーレン、交代だ」

「分かった」

 

見張をしているフリーレンに交代を告げるニヒツ。

フリーレンは寝起きに弱い。

朝番はできないので、自然と見張りは最初になる。

 

「ねぇ、なんで幻影鬼(アインザーム)はニヒツにニヒツ自身の幻影を見せたの?」

 

ニヒツの動きが止まる。

 

何か不味いことを聞いただろうか?

フリーレンは少し考えたが答えは出ない。

自分でも他人の機微に疎いことは少し自覚している。

それでも気になったのだから仕方ない。

フリーレンも幻影鬼(アインザーム)は何度か討伐したことがある。

その度に、命乞いする師匠(せんせい)を討っているので嫌でも記憶に残ってしまう。

 

幻影鬼(アインザーム)はその人にとって大切()()()人の幻影を見せる。

()()()()が映ることなどありえない。

余程のナルシストが一度死んで蘇ったという話でもない限り。

 

「…さあどうかね。俺が聞いた話では、幻影鬼(アインザーム)が見せる幻影は死んでない者が出ることもあるらしいぜ。そうじゃないと大切な人が死んでない人は幻影鬼(アインザーム)に対して無敵になっちまうしな」

 

「えっ、それは初めて聞いたよ。現行の魔法生態学を更新しないといけないね。…でも獲物自身の幻影を見せることはありえないよね。それじゃあ獲物の警戒を解けない」

 

「……それは、あれだ。俺は自分が大大大好きだからな。特にこの鎧は特注で寝る時も飯食う時もずっと一緒だからな」

 

ニヒツが「いやぁん」と自分自身を抱きしめるポーズをとる。

フリーレンはヒンメルで慣れているため、そんなものかと軽く納得する。

人間の考えることはたまに分からない。

 

「人間っていうのはみんな自分が大好きなんだね」

 

「んん、まぁそんな感じだな。ハイターもそう言ってたぞ」

 

フリーレンはまた一つ人間を知った。

 

バチバチと薪が鳴る。

静かな夜の森。

篝火と鎧だけがそこにある。

フリーレンはもう既に(とこ)に就いている。

 

「未練だよなぁ」

 

命ある者達がみな寝静まった夜。

騎士は篝火に手を翳して過ごした。

 

 

 

 

「結界だね」

 

フリーレンが呟く。

 

翌日、森の探索を再開してしばらくすると、何もないところでフリーレンが立ち止まった。

ヒンメル達が辺りを見渡すが、特に変わった物は見当たらない。

 

「私には見えませんが?」

「俺にも見えないな」

 

魔法を使えるハイターやニヒツも結界を見つけられないようだ。

フリーレン曰く、エルフに反応する珍しい結界らしい。

 

「これは本当にエルフがいるかもね」

 

少なくともいるはずのない者を探して彷徨うことにはならなさそうだ。

 

フリーレンは『結界』へ向けて一歩踏み出した。

 

 

 

 

そこは小さな家があった。

同じく小さな池と畑のようなものも見える。

庭に布団と衣類が干してある。

 

「ただいま」

 

フリーレンは()()()()()()()()を覚える。

戸口から漏れ出る線香の香りと微量に混ざった魔力の刺激。

外の世界にはない独特な香りを感じ、帰ってきたと身体が()()する。

 

フリーレンはいつものように玄関の鈴を鳴らした。

 

リンリンリン

 

「はいはい、今行きますよぉ。どなたかしら珍しいこともあるものね」

 

家の奥からバタバタと物音が聞こえる。

家の中から出てきたのは、『エプロン姿の妙齢の女性』だった。

手には料理用のミトンを付けたままだ。

だが、もっとも特徴的なのはその大きく『尖った耳』だろう。

 

「あら、まあまあまあ。歩いて山を越えてきたの?疲れたでしょう。あがってあがってぇ、あなたのお話を聞かせて頂戴な。飲み物は何がいい?甘いミルクかしら、汗をかいたなら冷たいレモン水かしらね?さっき焼き上がった焼き菓子もあるわよ。グラスはどこに閉まったかしら?このままだとリビングが狭いわね。椅子とテーブルを用意しましょう」

 

長耳の女性が手を振ると家の内装が変わる。

今まで一人暮らしに適した広さだった家が二階建てに()()()()()、リビングには大きなテーブルと2人分の椅子が()()()()()

 

氷室(冷凍庫)からはいくつか()()()()()()、今し方()()()()()()()()()にレモン水と一緒に注がれる。

 

フリーレンは『長耳の女性』に手を引かれ、レモンを片手に持って椅子へ座った。

彼女の表情には、驚愕よりも懐かしさが見てとれる。

 

「マァマと呼んでちょうだい。あなたが帰ってきたのがちょうどお昼時で良かったわ」

 

「マァマ、()()()()()凄い魔法だね。私も使えるようになるかな」

 

「なるわよ。あなたも後5000年くらい魔法と向き合えば、私よりも凄い魔法を自在に使えるようになるわ。あなたは私が知っている中でも一番頑張り屋さんな魔法使いだもの」

 

マァマは愛おしそうにフリーレンへ語りかける。

その言葉にお世辞や嘘は含まれていない。

本当にフリーレンなら将来できると信じている様子だ。

その様子にフリーレンは少しうれしくなる。

 

キュゥウ

 

フリーレンのお腹が鳴る。

もう直ぐお昼の時間だ。

朝食を食べてからずいぶんと時間が経っている。

ヒンメル達と調査のために森を歩き続けたので、お腹がぺこぺこだ。

 

フリーレンの目の前に焼きたての焼き菓子が()()()()()

 

「ふふ、可愛いお腹の音ね。少し待っていてね。お昼を作りましょう。あなたも大好きなオムライスよ。それまでその焼き菓子で我慢してね。でも食べ過ぎたらダメよ。お昼ご飯がその可愛いお腹に入らなくなるからね」

 

そう言うと、マァマは台所へ引っ込んでしまった。

 

フリーレンはマァマが焼いてくれた焼き菓子を口に入れる。

暖かく優しい甘味が口の中に広がる。

子供の頃から()()()()()()マァマの味だ。

長い間外の世界で旅をしていたので、とても新鮮に感じる。

また旅立つ時に幾つか包んで持って行こう。

みんなにも食べさせてあげたい。

 

「ん? 何で旅に出てたんだっけ?」

 

「んん…そうだ」フリーレンは思い出す。

自分は魔法が大好きで、早くマァマを超える大魔法使いになるために『()()()()()()』に出たんだった。

 

旅はたくさんの苦楽があった。

エルフと違って、人間やドワーフの寿命は短い。

フリーレンの旅について来られる人はいない。

だから、焼き菓子は1()()で食べる。自然とそうなるはずだ。

 

「………ん?」

 

何か違和感を感じる。

しかし、フリーレンは空腹には勝てなかった。

 

「お待たせぇ。マァマ特製愛情たっぷりオムライスよ」

 

フリーレンの目の前に大きなオムライスがやってくる。

ケチャップで何か文字が書かれているが、フリーレンは容赦なくスプーンで両断する。

卵の甘みとケチャップの酸味がお互いを引き立て、バターの香りが食欲を煽る。

フリーレンはあっという間に平らげてしまった。

 

「良い食べっぷりね。実はあなたの苦手なタマネギも入ってたのよ」

 

「えっ…気付かなかった」

 

フリーレンはその日、初めてタマネギに打ち勝った。

それは普段からあらゆる手を使い、苦手を克服させようとしていたニヒツにすら成し得ぬ偉業であった。

1000年積み重なった苦手意識はそれだけの重みがあったのだ。

 

「お料理頑張った甲斐があったわ。それじゃあ聞かせて、今回はどんな旅だったの?」

 

目の前にあった大皿が消え、湯呑みに変わる。

宙に浮いた急須からは、ひとりでにお茶が注がれる。

マァマがキラキラした目でフリーレンに話をせがむ。

根負けしたフリーレンは旅の話をマァマに聞かせていった。

 

最初の100年分の話をした辺りで外が真っ暗になってしまったため、続きは明日にすることにした。

マァマは名残惜しい表情をしつつ、フリーレンを子供部屋へ案内する。

 

その部屋は小さい頃から何一つ変わっていなかった。

 

「時間はたくさんあるわ。ゆっくり旅の疲れを癒してね」

 

マァマの優しい声に安らぎを感じ、フリーレンは柔らかな寝床で眠りについた。

 

 

 

 

それから毎日旅の話をマァマに聞かせた。

何せ1000年分のお話である。

旅をしていない期間もかなりあったが、マァマはそんな何でもない日々の話も楽しそうに聞いてくれた。

 

そして、旅の話をしない日はマァマに料理を教えてもらったり、魔法の修行を付けてもらった。

内容はさっぱり分からなかったが、それは余計にフリーレンの興味を引いた。

 

「好きな子はできた? 私もあなたくらいの頃はたくさん求婚されたものよ。あなたはお父さんに似て鈍感だから相手の子は大変そうね」

 

「そんな相手はいないかな。求婚もされたことはないよ。仲の良い男の子はいるけどね」

 

ヒンメルハイターアイゼンニヒツ、大切な仲間達。

彼らとの旅は存外悪くなかった。

 

「あれ? なんて名前だったっけ?」

 

いつも遊んでいた男の子の名前を思い出せない。

たしか青い髪をしていて、剣を振るうのが得意で、カッコいいポーズを見せつけるのか大好きだった彼。

「魔王を倒す」と「イケメン」が口癖の彼。

私をあの森から連れ出してくれた彼。

 

「あなたはその男の子が好きなのね。それならしっかり捕まえておかないとダメよ。私達にはたくさん時間があるけど、こと恋愛に関しては早い者勝ち。相手が人間の子なら尚更よ。気付いたら時間感覚に優れた人間やドワーフに取られちゃうわ」

 

「えっ、いやそんなことはないよ。あの子もそんな気はないはず」

 

少し食い気味なマァマに気圧されるフリーレン。

『エルフは生殖本能が薄い』と言う話は風説でしかない。

実際はエルフの成長速度が緩やかなため、見た目に反してそう言うことに興味を持つ歳が遅いだけなのだろう。

女性は幾つになっても恋愛が好きなのだ。

娘の恋愛なら尚更である。

 

「ふふ、あなたももうそんなお年頃なのね。1000歳なんてまだまだお子様だと思っていたけど、女の子の成長は早いって言うものね。あなたのお兄ちゃんなんて5000歳超えても浮いた話ひとつなかったのにね。これも時代なのかしら。そうだ、あれを持って来なくちゃ」

 

マァマはひとりで勝手に盛り上がり、勝手に納得し、何かを取りに奥の部屋へ向かってしまった。

しばらくして、何やらたくさん抱えてやってくる。

 

「マァマ、この大量の本は何?」

 

「あなたに必要なのは、恋愛の知識」

 

そう言ったマァマはたくさんの書物や絵巻がどっさりフリーレンの前に置いた。

 

「そして、保健体育よ」

 

「ええぇ、私は魔法をもっと教えて欲しいのに…」

 

マァマによるフリーレンへの情操教育が始まった。

 

 

 

 

マァマと暮らし始めて、()()年月が経った。

そろそろ旅に出ようとするフリーレンをマァマは泣き落としで止めてくる。

その都度、フリーレンはもう少しだけならと付き合う。

そうしていつしかフリーレンは、旅の話をすることが無くなった。

 

「今日は天気もいいし、ピクニックに行きましょう。新鮮な卵とお野菜で作ったサンドイッチもあるわ。もちろん、あなたの大好きなメルクーアプリンも用意したわよ」

 

「いいよ。私は部屋でこの魔導書を読みたいし」

 

あと10年は部屋で魔法の研究がしたいフリーレン vs 彼女を外に出したいマァマ。

 

きっかけは些細な喧嘩だった。

強情なフリーレンの態度に折れたマァマ。

マァマとしては、娘が何十年も日の光を浴びていない状況にかなり危機感を覚えていた。

 

「マァマは私に過保護過ぎる。やっぱりそろそろ旅を再開しよう」

 

フリーレンは久しぶりに押入れの扉を開け、埃の積もった旅行鞄を引っ張り出す。

幸い、収納機能に問題はない。

鮮度に問題がありそうな食料や魔法薬の材料を仕訳していく。

ハイターにもらった聖典。

アイゼンにもらったハンバーグのレシピ。

ニヒツにもらったフライパン。

いらないものを鞄の中から出していく。

 

鞄を空にして、後は細かいゴミを出そうとひっくり返した時、それは落ちてきた。

 

チャリン

 

何か小さな金属が地面に落ちて音を立てる。

 

『とある地方ではね。()()()と呼ばれる花の意匠を恋人に贈るそうよ。あなたもいつか素敵な人にもらうかもしれないわね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒンメルはいつも私を助けてくれるね」

 

フリーレンは床に散らばった『()()()』を鞄へ詰め直した。

 

「最後に挨拶していかないとね」

 

旅に必要な物を詰め終え、最後にマァマが夜食として作ってくれた『焼き菓子』も詰め込んだ。

 

 


 

■ おまけ1

 

マァマの焼き菓子

・ フィナンシェやカヌレ、クッキーの詰め合わせ

・ フリーレンはマァマと共同開発した『カヌレの中にメルクーアプリンを入れたオリジナル焼き菓子』が好きになった

 

マァマのオムライス

・ ニヒツの作るふわふわの卵が乗ったタイプではなく、普通の卵焼きを被せたタイプのオムライス

・ ソースにはケチャップだけでなく、オイスターソースとマヨネーズが少々含まれている

 

マァマの魔法

・ 現代の魔法とは根本的にルールが異なる

・ 現代の魔法では難しい『創造』『転送』『改変』に優れており、逆に現代魔法が得意な『純魔力攻撃(一般攻撃魔法)』『物体の操作(質量系魔法)』『干渉の遮断(防御魔法)』に不向きである。一言でいうと『生活を豊かにするための理』であり攻撃力は皆無。

 


 

■ おまけ2

 

彼は飢えていた。

普段の彼ならば、こんなことにはならない。

最近、強力な魔族が近所で幅を利かせており、今まで安定していた狩場が枯渇してしまったからだ。

 

今日は新しい狩場を求め、普段足を運ばない山の向こう側まで出向くことにした。

 

そして、山から出られなくなった。

近くに人里を見つけて近づこうとするも、森に戻される。

嫌な予感がしたため、元の場所へ帰ろうとしたが、これも再び森に戻される。

 

そこでようやく彼は、自分が何者かの罠にハマっと気付く。

思い返せば不自然なことは他にもあった。

1つ目、他の魔物が誰もいない。

これだけ豊かな森であり、近くに人里があるとなれば魔物が定住しないわけがない。

2つ目、森が思ったより広い。

外から見た時、それほど大きくなかったはずの森を何日も彷徨っている。

 

彼は空腹と恐怖に震えた。

 

そこへ何やら美味しそうな香りが彼の鼻に届く。

いつの間にか彼の目の前には、小屋があった。

小屋の中から『人間』が出てくる。

 

「まあまあ、こんなところまでやってくるなんて珍しいこと」

 

人間はミトンの手袋を頬に当て、困った表情をしている。

その背後では、鍋がコトコト音を立てている。

 

相手は非力な人間1人。魔力量も大したものではない。

なにより彼は既に空腹でお腹に穴が開きそうだった。

 


『幻影魔法』


 

彼の最も得意な魔法。

相手の()()()()()()()()()を見せることで隙を作る。

 

相手は最愛の人に再会でき、彼はお腹がいっぱいになる。

win-winの関係だ。

少しばかり強引だろうが、ここは納得してもらおう。

なにせ、今の自分は空腹でまともに考えることさえできないのだから。

 

「おやまあ、相変わらず素晴らしい幻影魔法ね。これだからあなた達だけは退治できないのよね」

 

肉の感触がしない。

ようやくありついた食事に歯を立てるが、それは空を切っていた。

 

幻影を見ているはずの瞳が自分を捉えている。

ありえないことだ。幻影魔法は今も変わらず発動している。

 

そうして、少し悲しい表情をした後、人間は小屋と共に跡形もなく消えてしまった。

ただ直前まで目の前にあった肉の香りだけが、彼の記憶を本物だと証明していた。

それも彼にとってはもはやなんの意味もありはしない。

 

幻影鬼(アインザーム)は空腹だ。

 

しかし、ここには食べ物()がない。

彼はありもしない食べ物()を探し、再び森を彷徨い始めた。




次回予告

あなたは愛する人と些細なすれ違いで喧嘩をしたことはありますか?

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