シュラハトくん見逃して   作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)

29 / 42
【前編】幼馴染

「ああァ!弟子ってフェルンのことだったのかよ」

「……私だとなにか問題でも?」

「なに?ふたりは知り合いなの?」

【彼らの再会】

 


 

 

親愛なる友人 アイゼンへ

 

お元気ですか?

私の方は最近禁酒を始めてすこぶる調子がいいです。

あなたの方は、王都のハンバーグ屋が盛況なようですね。

先日送ってくださった『ハンバーグ大盛り永年無料券』はこの歳で使える気はしませんでしたが、ちょうど育ち盛りな同居人が増えたのでありがたく使わせていただいています。

 

そして、そのことで少しあなたに相談したいことがあります。

 

以前、『南側諸国』の戦争に介入した際、とある家族と仲良くなりました。

最近再び『南側』の雲行きが怪しくなってきたので、そこの一人娘さんを預かることになったのです。

しかし、孤児院に遊びに行ってもなかなか馴染めず、とても心配です。

たしかあなたは子育ての経験がありましたね。

なにか助言をいただけないでしょうか。

 

ハイター

 

 

ハイターへ

 

お前が酒をやめるとはな……。

ヒンメルが聞いても絶対信じなかっただろう。

 

うちでも最近ちびっ子を預かるようになった。

こいつも閉鎖的な村で育って同年代の子供に会ったことがない。

良ければ会わせてみないか?

 

ニヒツが書いていた自称未来の『物語』とやらでは、俺たちの弟子が仲良くなるらしいからな。

 

今度王都に寄る用事があるから、そのついでにそちらへ顔を出す。

 

アイゼン

 

 

無愛想な友人 アイゼンへ

 

ニヒツですか……。

懐かしい名前ですね。

 

ぜひうちに遊びにきてください。

あいにく私はもう旅ができる身体ではないですが、訪問ならいつでも大歓迎ですよ。

 

ハイター

 

P.S. 酸っぱいブドウをたくさん

用意して待っています。

 

 

†

 

 

「なあ、師匠。まだ着かないの?」

「もうすぐだ。少しは落ち着け、シュタルク」

 

暖かな好天の中、ゆっくりと進む馬車の荷台にふたつの人影があった。

 

「シュタルク、これから会うのは俺の昔馴染みだ。お前と同じくらいの子もいるみたいだ。仲良くするんだぞ」

「ほんと!! どんな子だよ師匠!」

 

今まで『友達』というものに縁がなかったシュタルクは食い気味に尋ねる。

アイゼンの表情が僅かに緩み、少年の頭に手を置いて彼を落ち着かせた。

 

「俺も会ったことがないからわからん。だが、あまり人付き合いが得意じゃないらしい」

「そうなのかぁ。何話せばいいかな?この間食べたジャンボベリースペシャルの話がいいかなぁ」

 

初めての友達作りをどうするかうんうん悩む幼いシュタルク。

正直自分もそこは詳しくない。

 

少し悩むアイゼン。

そして、コミュニケーションが上手い友人が昔話していた話題を思い出す。

 

「『女っていうのは筋肉が好きだ。男のたくましい筋肉を前にして触りたくならない奴はいない』……らしいぞ。まあ、ニヒツの受け売りだがな。俺には人間の女子が好きな物なんかわからん」

 

シュタルクは右手を掲げて、筋肉を寄せる。

 

「師匠、どう?」

 

アイゼンはシュタルクが見せつける筋肉を指でつつく。

 

ぷに

 

子供特有の柔らかな肉の弾力が指先に伝わる。

筋肉と呼ぶには、それはあまりにも可愛らしいものだった。

 

『なんと応えたものか……』

 

アイゼンはシュタルクが頑張り屋であることを知っている。

ここで下手なことを言って修行を頑張り過ぎることは避けたい。

この年齢で今のシュタルクほど動けるなら十分なのだから。

 

「まあ、シュタルクらしい良い筋肉だ」

「そっか! じゃあその子とも仲良くなれるよな。早く着かないかなぁ」

 

荷台の上で色んなポーズをアイゼンに見せつけるシュタルク。

ちょっと褒め過ぎたかなと、『ヒンメルみたい』にならないか少し心配になり出したアイゼンだった。

 

ただすぐに飽きたらしく、彼の悩みは杞憂に終わった。

そして、少年は昔の冒険仲間について聞きたがりだした。

正直いつも懇願されているため、近い将来レパートリーが尽きそうである。

 

「冒険話か……この間はハイターとヒンメルの話をしたからな。『フリーレン』の話をしてやろう」

「フリーレンって、師匠の仲間の魔法使いだよな。魔法ってどんなことができるんだ?」

 

シュタルクは先日まで『戦士の村』にいた子だ。

だから、魔法使いに出会ったことがなく、魔法を見たことすらない。

 

「フリーレンはな、俺が生涯出会った魔法使いの中でもっとも凄いヤツだった。アイツがいなければ俺たちは何度も全滅していただろうな」

「おおぉ」

 

「1000年を生きる魔法使いで、見た目はずっと変わっていない。大体お前より少し大きいくらいだ。最近魔法使いの主流になっている『飛行魔法』と『基(・)本(・)攻撃魔法』の開発と普及はヤツが行ったと聞いている」

「すごい!」

 

「デザインセンスもなかなかで、一時期王都でフリーレンの作った小物が流行ったこともあったな。まあ、ヒンメルが一部買い占めていたのも原因だろうが」

「えっ、勇者ヒンメルが!!」

 

「だが、無愛想でズボラで魔導書狂いで『ねぼすけ』だ」

「おお?」

 

そんな話をしながら、馬車は目的地に辿り着いた。

狭い馬車の上が窮屈だったのか、シュタルクは真っ先に降りて行ってしまった。

 

「でもとてもいいヤツだ」

 

そう呟くと、アイゼンも馬車を降りていった。

 

 

 

 

 

「ではアイゼン師匠。7日後にお迎えにあがります」

「ああ」

 

御者がアイゼンに声をかける。

そして、御者はひと足先に馬車から降りたシュタルクにも声をかけた。

 

「シュタルク。アイゼン師匠の言うことをちゃんと聞くんだぞ」

「わかった! 任せてよ兄(・)貴(・)」

 

 

†

 

 

「元気そうだな。生臭坊主」

「はっはっはっ、だいぶ痩せましたね。アイゼン」

 

軽口を言い合い、ヒシッと抱き合うハイターとアイゼン。

ふたりの表情は笑顔でいっぱいだった。

 

「思ったより到着が早かったですね。到着は明日になるかと思っていました」

「弟子のひとりが馬車を出してくれてな。歩きよりだいぶ早く着いた。子連れの旅は俺も経験がないからな」

 

ふたりの会話を他所に、小さなシュタルクは家の中を見渡していた。

 

魔王を倒した英雄の家にしては、かなり質素な作りだ。

もっとも、アイゼンも豪邸に住んではいないので、これくらいが普通なのかもしれない。

少年はハイターが『聖都のお偉いさんになった人』だと聞いていたため、城のような場所に住んでいると思い込んでいた。

 

「それで、その子が手紙に書いていたあなたの弟子ですか?」

「ああ、シュタルクという。シュタルク、挨拶しろ」

 

アイゼンに呼ばれたシュタルクは散策を中断して彼らのところへ駆け寄る。

 

「はい! 俺はシュタルク。いつか師匠のような『みんなを守れる戦士』に…なる。た、ために、頑張ってる!ます!!」

 

緊張で少し言葉が詰まるシュタルク少年。

彼の瞳は揺らがず、『最高の戦士』になる事を夢見ていた。

ハイターはそんな彼の中に『勇者になることを宣言した頃のヒンメル』を思い出した。

 

「はっはっは。あなたは大物になりそうですね。将来はアイゼンのような頼りになる戦士になってくれるでしょう」

「おい、あまり甘やかすな。こいつはすぐに調子に乗るからなぁ」

 

頭を撫でるハイターの手がくすぐったく、シュタルクも笑顔になる。

 

「そうだ。師匠、新しいお友達は?」

 

ハイターのなでなで攻撃から脱出したシュタルク。

彼はここに来た目的を思い出し、アイゼンに問いかける。

 

「そうだったな。ハイター、手紙で話していた子は?」

「ああ、そうでしたね。あの子はたぶんいつものところで修行をしているでしょうね」

 

それを聞いたシュタルクは、あっという間に家を飛び出し、外へ出かけて行った。

 

「師匠!俺、外でその子探してくる!!」

「あ、ちょっと。もういなくなってしまいました。あの子の場所なんて分からないでしょうに……」

 

子供にしては素早いシュタルクの動きに驚くハイター。

そして、その表情はすぐに彼を心配するものに変わる。

 

「まあ、アイツなら大丈夫だろう」

「と言うと?」

 

アイゼンが外へ歩き出し、ハイターもそれに続く。

彼の表情には弟子を心配する様子は微塵も見えなかった。

 

 

†

 

 

「ハイター、俺は随分歳をとった。昔のように斧を振るうことは難しい」

「たしかに、あなたの筋肉はだいぶス(・)マ(・)ー(・)ト(・)になりましたね」

 

アイゼンは筋肉の衰えた己の腕をつかむ。

ハイターには見抜かれていたらしい。

昔から仲間の変化にはいち早く気づく良い僧侶だった。

 

「昔、ニヒツに稽古をつけていたことがある。アイツは見た目はゴツいのに筋力がまるでなかったからな。まあ、鎧の中がアレだから仕方ないんだが。そこでヤツのために筋力を使わない戦い方を作って教えてやった」

「えぇぇ……。あなたそんなことまでやってたんですか?もはや武神とか闘神とかそういう類ですよね」

 

しれっと新しい戦闘スタイルと理論を作り上げた親友にドン引きするハイター。

アイゼンはそれを軽く流す。

 

「まあ、簡単に言うと元からある力の流れに少し手を加えて指向性を持たせる技術だ。ニヒツは『パリィ』と呼んでいた。その技術を試しにシュタルクに教えてみたんだがな……」

 

アイゼンがマントを開いて足を見せる。

そこには真新しい『アザ』ができていた。

あの崖(・)か(・)ら(・)落(・)ち(・)て(・)も(・)無(・)傷(・)の(・)男(・)にだ。

 

「アイツは天才だ。あの歳で俺の一撃を受け流して俺に返してきた。訓練用の棒切れでこのアザだ。俺の危機感知が反応しない一撃なんて初めてだ。ハイター、俺の弟子は凄い戦士になるぞ」

 

過去に類を見ないほど笑顔なアイゼン。

その様子にハイターは驚きつつも彼の親バカっぶりに呆れた。

 

「だいぶ彼に入れ込んでいるようですね。ですが、才能で言うなら『うちのフェルン』も負けていませんよ。僧侶の才能はありませんでしたが、魔法使いの才能はかなりのものです。『基(・)本(・)攻撃魔法』の同時使用に関しては、すでに私もかないませんからね」

「……それは凄いな」

 

弟子の自慢合戦に盛り上がるふたり。

しかし、しばらくしてふたりとも我に帰った。

 

「シュタルクくんが凄い事はわかりました。しかし広くは無いですがここは森ですよ。迷ってしまったら大変です」

「ふん、シュタルクはな『目(・)』がとても良いんだ。ニヒツは辿り着けず、俺はこの歳でようやくできるようになった技術だ。『力の流れを目で捉える』技をあの歳で扱えている。だからフェルンという子が魔法を使ったなら、すぐにその子の元へ辿り着くだろうな」

 

 

†

 

 

「この辺りからなんか変な圧を感じる。これが魔法ってヤツなのかな?」

 

少年シュタルクは自分の『目』を頼りに、今まで視たことがない力の源流へ辿り着いた。

 

そこは崖になっており、これより先に道はない。

そして、少年シュタルクはそこにたたずむ人影を目にする。

 

 


 

その日、少年は運命に出会った

 


 

 

それは紛れもなく『魔法』だった。

今まで魔法を見たことがない少年が断言できる光景。

 

少女から立ち昇る力の奔流

 

淡く輝く魔法の蝶達

 

遥か遠くに浮かぶはずの星々が目の前に存在した

 

数えることがバカらしくなる数の幻想的な蝶たちが少女の周りを舞い踊る

 

「これが『魔法』……」

 

少年は『魔法』に見入る。

 

「……きれい……」

 

シュタルクはもっと近くで見ようと一歩踏み出す。

しかし、足元にあった枝につまずいて茂みから転げ落ちてしまった。

 

「! 誰ですか?」

 

『魔法使い』は音に驚いて振り向く。

シュタルクはあっという間に『蝶達』に囲まれてしまった。

 

「ちょっ、俺は敵じゃないよ。俺はシュタルク」

 

シュタルクは急いで両手を上げ、抵抗する気がないことを『魔法使い』に伝える。

 

「シュタルク様ですか……そう言えばハイター様からその様な名前の方がいらっしゃると伺っていましたね。ただ、訪問予定はもう少し先だと記憶していますが」

 

『魔法使い』は警戒を緩める。

シュタルクを囲んでいた蝶の数が減る。

彼はほっと一息つき、『魔法使い』の差し出した手をつかむ。

 

「ようこそ、シュタルク様。ハイター様の元までご案内致しま、っす!?」

突然、『魔法使い』の手をシュタルクが両手で掴む。

それに驚き硬直する『魔法使いの少女』。

そして、その後に放たれた彼の言葉でさらに混乱することになった。

 

 

「あんた『フ(・)リ(・)ー(・)レ(・)ン(・)』だろ!」

 

 

???

『魔法使いの少女』はとても混乱している。

 

 

To Be Continued...

 

 




■ 次回
【後編】小さな『戦士』




葬送の
フリーレン
〜〇〇の魔法〜



『みんなに推薦したくなる魔法』

<(・ω・)> 正直興味はないよ。だから見て確かめるんだ。






【エンド⑤:幼馴染】

あなたには幼馴染がいますか?

  • Yes
  • No
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。