シュラハトくん見逃して   作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)

30 / 42
【後編】小さな『戦士』

 

「あんた『()()()()()』だろ!」

 

 

???

『魔法使いの少女』はとても混乱している。

 

「いえ、私は」

「師匠から聞いてたんだ。師匠の仲間に『フリーレン』って名前の『()()()()使()()』がいるって! 1000年を生きる魔法使いで歳を取らないなら、見た目が子供でも納得だな。まあ、俺より小さな女の子だとは思わなかったけど、無愛想な感じも聞いてたまんまだぁ」

 

「……あなた失礼な人ですね」

 

『凄い魔法使い』と言われて少し嬉しくなった彼女だったが、続く少年の無神経な言葉に我に帰る。

 

「離してください」

 

興奮気味な少年の手を振り解く少女。

少女もフリーレンという魔法使いは知っている。

 

彼女もまだ子供だ。

両親と離れて心細く感じる夜は多い。

そんな夜は、ハイターが勇者一行の冒険話(勇気が出る魔法)を聞かせてくる。

すると『魔法』のように勇気が出てきた。

 

そこに出てくる凄い魔法使いと誤解されること自体は嬉しい。

ただ、『小さい』だの『無愛想』だのはもうただの悪口だと思う。

 

少女からシュタルクへの第一印象は『なんだか失礼なヤツ』となった。

 

「なあなあ、もっと魔法見せてくれよ」

「鬱陶しいです。とにかくハイター様の元へ案内するので付いてきてくださいね」

 

「さっきのチョウチョみたいなヤツはなんて魔法なんだ?」

「……あれは『基本攻撃魔法』です。たくさん出せるように練習していたんです」

 

シュタルクは家へ戻る最中、たくさん少女に語りかけた。

 

『彼女の魔法が綺麗だったこと』『他の魔法があるなら見たいこと』『少女の魔法がジャンボベリースペシャルの次に好きになったこと』『師匠の抜け落ちた髭で釣りをしたら大漁だったこと』『兄貴と一緒にハンバーグを作ったこと』『師匠が素手でリンゴを握りつぶしてジュースを作ってくれたこと』『最近素振りでできたマメが痛いこと』『昨日ハンバーグ型の雲を見つけたこと』『師匠に背負われて川の上を走ったこと』

 

話しの中にしばしば混ざる師匠の自慢。

 

『あなたばかり自慢話してズルいです』

 

両親の元にいた頃も、 ハイターに引き取られた後も、少女の周りの世界は狭かった。

だから、少女にとってシュタルクの話はとても面白いものだった。

 

『私だってハイター様との思い出がたくさんある。あなたとアイゼン様以上に』

 

楽しそうにアイゼンの自慢話をするシュタルク。

少女はそれに負けじとハイターの自慢話で反撃した。

 

『昔、ハイターが南側諸国の争いを止めたこと』『ハイターに助けてもらったこと』『ハイターがたくさんの怪我人を癒したこと』『ハイターはたくさんの人から敬われていること』『ハイターはなんでも残さず食べること』『ハイターと一緒に初めてお料理をしたこと』『王都に連れて行ってもらい大きなハンバーグを食べたこと』『ハイターに一人前と認めてもらうために魔法の修行を頑張っていること』

 

少女は生まれて初めてたくさんお話をした。

それを少年はニコニコしながら聞いてくれた。

冷静になった少女は、ムキになって色々話してしまったことが恥ずかしくなった。

 

シュタルクという少年は不思議な人だった。

彼といるとなんとなく色々話してしまう。

しばらく滞在するのなら、ハイター様と育てている『蒼月草の花畑』を案内してもいいかもしれない。

 

帰ったらハイター様に今日あったことをたくさん話そう。

そう考えながら歩いていた少女は、『それ』に気付けなかった。

 

「伏せて!」

 

急にシュタルクが少女を突き飛ばす。

先程まで少女がいた場所を()()()()()()が通り過ぎる。

 

「イテテッ」

「な、なにを……」

 

少女は何かによって怪我をしたシュタルクに駆け寄る。

幸い傷は浅いようだ。

 

「フリーレン、何かヤバいやつが俺たちを狙っているみたいだ。急いで逃げよう」

「いや、私の名前はフ『早く!』…はい」

 

シュタルクに手を引かれ、少女は走る。

背後からは、何かかが草木を薙ぎ払いながら迫ってくる。

 

「アレは魔物ですね。本で読んだことがあります。でもこの森に魔物なんて今まで出たことないのになんで?」

「なんでもなにも、今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫なんてことはないだろ。俺の村だって初めて襲ってきた魔族に壊されたんだ。取り敢えず逃げよう。師匠のところまで逃げきれば、あんな奴倒してくれるはずだ」

 

シュタルクは死に物狂いで走る。

魔物の怖さも魔族の怖さも知っている。

しかし、握っていた手が振り解かれる。

 

()()()()()。あなたは逃げてください。魔物は私が倒します」

「はぁ? 無茶だって……あ、でもフリーレンならなんとでもできるのか。同い年くらいに見えたから勘違いしてたぜ」

 

明らかに安堵するシュタルク。

しかし、少女はそれを否定する。

 

「残念ながら、私はフリーレン様ではありませんよ。ただの見習い魔法使いです。あなたと歳もそう違わないでしょう」

「えっ、そうなの!? じゃ、じゃあやっぱり逃げようぜ。俺たちみたいな子供じゃ敵うわけないって」

 

再び少女の手を握り、逃げ出そうとする少年。

しかし、『魔法使い』の決意は固く、シュタルクは説得しきれないと悟る。

 

「なんで倒すことにこだわるんだよ。あの程度の速さなら、俺たちでも逃げ切れるだろ」

「え? いえ、私には到底逃げられるとは思いませんが……。どちらにせよ。私は1日でも早く、一人前にならないといけないんです。両親のためにも、ハイター様のためにも。だから、ここで魔物を倒します」

 

「……そっか……」

 

彼女の決意を受け、少年はしぶしぶ手を離す。

『魔法使い』はそれに安堵し、魔物と向き合う。

 

そして、急な浮遊感を感じる。

 

「えっ!?」

 

「俺が足の代わりになるから、あんたが魔法で攻撃してくれ。これでも師匠との修行で、攻撃を避けるのは得意なんだ!」

 

少年は少女を抱き上げ、魔物とは真反対へ走り出す。

突然の抱擁に少女は少し戸惑うが、状況を理解してシュタルクへ反発する。

 

「ちょっと待ってください。これでは逃げているのと同じです」

「近付かれたら魔法使いはひとたまりもないだろ! 俺が()()()()()()()走るから、好きなだけアイツに魔法をぶつけてくれ」

 

シュタルクはその宣言通り、少女を抱えながら魔法が魔物に届くギリギリの距離を走り続けた。

 

もちろん、ここは森の中。

木々や岩が障害物となり、ただ走るだけでも困難を極める。

さらにすぐそこまで迫る魔物の存在。

 

そんな状況でも、シュタルクは少女を抱えて迷いなく森を駆け抜けていく。

 

 

『こんな状況でも弱音ひとつ彼の口から出てこない……『戦士』って凄い』

『怖い怖い怖い怖い怖いぃ!!』

 

 

すれ違うふたりの『(勘違い)』。

しかし、ふたりの『(想い)』は一つだった。

 

 

『彼の信頼に応えないといけないですね』

『彼女なら必ず魔物を倒せる』

 

 

少女は少年の期待に応えるため、魔法の準備をする。

 

少女の魔力が高まる。

魔力が彼女のイメージに従って形を成して行く。

整えられたレールを通る様に、魔力が杖を流れて行く。

 

 


『基本攻撃魔法』展開


 

 

この世界では正史とは違い一般攻撃魔法(ゾルトラーク)が普及していない。

しかし、その穴埋めをするように全く異なる魔法が発展した。

結果、人類は同じような歴史を辿った。

 

少女の周りに『魔法の蝶たち』が現れる。

その数は5つ。

 

「行って!」

 

少女の指示に従い、蝶たちが魔物の方へ飛んでいく。

そして、彼女が現状唯一使える()()()()が炸裂する。

 


『衝撃を与える魔法』


 

魔力の蝶たちは魔物を囲んだ後、次々とその形を変えて行く。

そして、魔物を同時に吹き飛ばした。

 

『魔法の蝶』

 

その正体は『基本攻撃魔法』である。

 

正確には魔法ではない。

その本質は、圧縮した魔力を自在に操作して飛ばす『魔力コントロール技術(とある大魔族の技)』である。

そして、魔力の圧縮技術に優れていない場合、これは大した攻撃にならない。

 

ただの『魔力の塊』である故にその場で『どんな魔法にも変換できる』。

 

つまり、魔力の塊を操作して好きな『タイミング』で好きな『魔法に変換』できる。

 

純粋な魔力だからなんにでも成れる。

故に『()()攻撃魔法』。

 

今や全ての魔法使いが最初に覚える技術である。

特に宮廷魔法使いである『とある魔法使い』のコンボが有名だ。

 

破滅の雷を放つ魔法(ジュドラジルム)

高威力だが命中精度に欠けるこの魔法。

それを敵の背後へ配置した『基本攻撃魔法』から放つ必殺のコンボ。

 

かの七崩賢最強(黄金郷)を討滅したことでその有用性が証明されたと言える。

 

単純にゾルトラークの操作性や連射性を他の魔法でも使えるようになると聞けば、その利便性を理解できるだろうか。

 

またその影響は大きく、これを開発したフリーレンは『勇者パーティーの魔法使い』ではなく、『現代魔法史の母』と呼ばれるようになったほどだ。

 

「やったか?」

「わかりません。全身に衝撃を与えたのでかなりのダメージになったとは思いますが」

 

 

砂埃が晴れると……そこには何もなかった。

 

「魔法ってスゲェな。跡形もなくなっちまうなんてな」

「そうですね。魔物は倒すとチリになるそうですし、そんなこともあるんでしょうか…… それほどの火力はないはずなんですが

 

難敵を軽々倒したことで気が緩む。

走ることをやめたシュタルク。

 

えっ

 

眼前に迫った魔物の腕。

シュタルクは間一髪でそれを回避をしたが、抱えていた少女を手放してしまう。

少女は落下時に変な落ち方をしたようで動く気配がない。

 

魔物は先程の攻撃で少女を脅威と判断したようだ。

シュタルクには目もくれず彼女へ襲いかかる。

『動けない彼女』は身を守る術がない。

 

「やらせるかぁああ」

 

シュタルクは普段から肌身離さず持ち歩いている訓練用の木剣を抜き放つ。

 

そして、振り下ろされた魔物の爪を()()()

 

魔物は弾かれた自分の爪を不思議そうに見つめる。

 

「どうだ! 師匠に習っ」

 

魔物に言葉は通じない。

魔物は何度もシュタルクを切り付け始めた。

 

それを木剣で弾き続ける。

木剣は徐々に欠けていき、捌き切れない斬撃が少年の服を少しずつ刻んでいく。

 

『逃げれば助かる』

 

一瞬、シュタルクの脳裏にその選択が浮かび上がる。

 

あの時と同じだ。

村が魔族に襲撃され、兄貴に逃がしてもらった時。

その時、俺は守られる側にいた。

でも今、俺は兄貴と同じ守る側に立っている。

なら、逃げるわけにはいかないよな。

 

「『戦士』は最後まで仲間を守るんだ!」

 

少年シュタルク。

いや、『戦士』シュタルクは木剣を握る手に再び力を込めた。

 

魔物の攻撃を『弾き』『流し』『逸らし』『躱わし』全ての攻撃を無力化していく。

後ろで倒れている仲間へ一度も攻撃を通さないその姿は、まさしく一人前の『戦士』であった。

 

しかし、彼がいくら頑張ろうと現実は平等に結果をもたらす。

 

ついに木剣が()()()()()

そして、それを予想していた『戦士』の判断は早かった。

 

少女の身体を抱えて再び()()し出したのだ。

 

ただ、体力を消耗したせいで、先ほどよりも速度が出ない。

魔物との距離を離せない。

 

「イタッ!」

 

何かに足が引っかかり転ぶ少年。

それでもその勢いで少女を茂みの奥へ隠す。

『彼女だけは守る』

せめてもの抵抗だった。

 

「師匠、俺……」

 

必殺の一撃がシュタルクを襲う。

彼は反射的に地面に落ちていた()を握って振るった。

 

ガキンッ

 

なにか固いものがぶつかり合う音が聞こえる。

 

『師匠が助けに来てくれた?』

 

シュタルクの脳内に過ぎる妄想は即座に否定される。

彼の目の前には相変わらず魔物がおり、

大きな背中(アイゼン)』は見当たらない。

 

しかし、自分の手元に違和感を感じる。

 

「なんだこれ?」

 

シュタルクの手には、自分の身長より大きな大斧が握られていた。

師匠が普段使っている斧よりも大きく重厚感のある大斧。

疑問や違和感は尽きないが、魔物は待ってくれない。

 

再び始まった魔物の連撃を大斧で弾く。

 

最初に感じた違和感は『重さ』だ。

大斧がその巨体に見合わず軽いのだ。

ゆえに子供のシュタルクでもなんとか振るうことができている。

 

次に感じた違和感は『硬さ』だ。

硬いような柔らかいような金属の感触を手に感じる。

『硬い』おかげで魔物の爪ばかりが傷付く。

『柔らかい』おかげでいくら打ち合っても手が痺れない。

 

とても使いやすく、手に馴染む。

 

最後に感じた違和感は『安心感』だ。

これを握っているとなぜか安心する。

何かに守られているような、導かれているような気分だった。

それを振るうたび、師匠に稽古をつけられているような気分になる。

間違った動きをすると、それを大斧が教えてくれる気がする。

シュタルクの動きはどんどん洗練されていった。

 

それでも魔物を倒しきれていない。

単純に火力が足りないのだ。

軽い大斧では魔物に致命傷を与えられない。

弾き返した力も『打撃』ではなく『斬撃』の場合、大したダメージにならないようだ。

 

これでは先にシュタルクの体力が尽きてしまう。

それでも彼は斧を振るう手を止めない。

 

「『戦士』は後ろに仲間がいる状況で逃げ出したりしない!」

 

疲労で重くなった腕がシュタルクに身体の限界を主張していた。

次打ち合えば、もう斧を振れない。

身体の限界を超えた。その時だった。

 

 

「シュタルク、後ろに飛んで!!」

 

 

咄嗟に聞こえた声に従い、シュタルクは後方へ飛ぶ。

すると地面が炸裂し、魔物の足場が崩れていく。

咄嗟に飛ぼうとした魔物は上空で待ち受けていた『魔法の蝶』を目にする。

 

 


『衝撃を与える魔法』


 

 

魔物の眼前で魔法が炸裂し、魔物は崩れた土砂と共に谷底へ落ちていった。

 

「シュタルク、無事ですか?」

「あ、ありがとぉ。もうダメかと思ったよぉ……」

 

少女にわんわんと泣きつく少年。

彼の変わりっぷりに驚きつつも、彼女は優しく抱擁を返す。

 

「カッコイイ戦士様の姿はどこへ行ってしまったんですかね…。私も魔力を使い切って疲れました。寄りかからないでください、シュタルク」

「はい……」

 

しょんぼりする少年。

そんな彼の姿に自然と笑みがこぼれる少女。

 

「ありがとうございました。あなたのおかげで私は生きています」

「いや、それは俺も同じだ。あんたがいなかったらアイツを倒しきれずにやられてた」

 

……。

 

互いに自分が悪かったと反省するふたり。

その気まずさがふたりの間に沈黙という『距離』を作った。

 

しかし、そこへ少女が一歩歩み出す。

 

「……私は『フェルン』です。いつかハイター様に一人前と認められるような魔法使いになります。フリーレン様のような『凄い魔法使い』にです。あなたは?」

 

唐突な自己紹介に少し戸惑うが、フェルンの語った『夢』にシュタルクも答える。

 

「俺は『シュタルク』。いつか師匠みたいな『凄い戦士』になる。そん時は一緒に旅をしようぜ。フェルンの魔法があればどんな敵だって倒せるさ」

「フフッ、その時はまた私を守ってくださいね」

 

「もちろん、ずっとそばに居て守ってやるさ。ダメならフェルンを抱えて逃げる」

「それは頼もしいですね。またその時は、今日みたいに2人で逃げましょう」

 

魔物討伐の功績を讃え合うふたり。

しかし、フェルンは自分の犯した大きな過ちを責めずにいられなかった。

 

「私が戦おうなどと言い出さなければ、こんなことにはなりませんでした。私は……未熟でした」

「まあ、そういうこともあるさ。早く帰って師匠たちに魔物のこと話さないとな。はぁ、めちゃくちゃ怒られるだろうなぁ」

 

「怒られますかね……」

「俺も一緒に怒られてやるから気にすんな。戦うって決めたのはお互い様だろ。もう俺たちは『相棒』なんだから辛いことも半分こだ」

 

シュタルクは少女の肩に手を回して、引き寄せる。

2人の間にあった『距離』がなくなる。

肩組みなんてしたことがない少女は少し戸惑うが、その固まった表情を徐々に緩めていった。

 

 


 

これは少年と少女のプロローグ

長編物語の『始まり』であった

 


 

 

 

 

 

 

To Be Continued...

 

 


 

■ ニヒツの七剣

 

シュタルクたちがハイターの家帰りつき、事のあらましを説明してしっかりお叱りを受けた後のこと。

 

「で、その時に拾ったのがこの大斧なんだよ!」

「ん? この斧は……。ちょっと貸してみろ」

 

「え? いいけど」

「……やはりな」

 

シュタルクから大斧を受け取ったアイゼンはそのずっしりとした『重さ』に何かを確信する。

 

「こいつは『騎士ニヒツ』が使っていたハルバードだな。使い手のイメージした最高の武器に最適化される魔導具だ」

「で、でもどう見ても斧だぜ、師匠」

 

シュタルクが疑問を投げかけたその瞬間。

アイゼンが握った箇所から徐々に斧の形が変わっていく。

そして、彼の背丈を超えたハルバードに変形してしまった。

 

「おおぉ」

「まさかこれがお前の元に流れ着くとはな。因果なもんだ」

 

そのハルバードをアイゼンが再びシュタルクに渡す。

シュタルクは重そうな得物に少し身構えるが、それは驚く程ちょうどいい重さだった。

そして、みるみるうちに形が大斧へ戻る。

 

「こいつは使用者に合わせて最適な形になってくれる。つまり、お前がこれからしっかり筋力を付けていけば、俺の斧みたいに重い一撃を与える『最高の相棒』になってくれるだろうさ」

「そうか、『最高の相棒』かぁ」

 

その日からシュタルクはその大斧を肌身離さず持ち歩くようになった。

アイゼンに教えてもらい、手入れも欠かさない。

 

「いつか師匠を超える『戦士』になろうな。相棒」

 


 

■ ちからこぶ

 

「フェルン見てこれ」

「なんでしょうか?」

 

少年シュタルクはおもむろに右腕を掲げて『ちからこぶ』を作る。

少女フェルンはそれをただ不思議そうに眺める。

 

沈黙が2人の間を通り過ぎる。

 

「どう?」

「どうとは?」

 

フェルンの無反応っぷりに落ち込むシュタルク少年。

 

「師匠から『友達を作るには筋肉を見せればいい』って聞いてやってみたんだけど……」

「ん? 私たちは友達じゃないですよね」

 

えっ!?

 

少女の言葉にショックを受ける少年。

彼のガラスハートは砕け散り、その勢いのまま遠くへ走り去ってしまった。

 

「私たちは友達じゃなくて、『()()』じゃないですか……ってあれ? シュタルク? どこですか?」

 

いつの間にかいなくなったシュタルクに驚き、必死に探し回るフェルン。

また魔物に襲われたんじゃないかと心配になったフェルンは、急いでハイターの待つ家に帰った。

 

そして、泣きながらハンバーグを食べているシュタルクを見つけ、その場にへたり込んでしまった。

 

その後、今日がシュタルクの誕生日と知り、再び急いでプレゼントを用意するために走り回ったフェルンだった。

 

 

 

 

「ということがあったのです。アイゼン様」

「あー、なるほどな。……すまん。俺が女の子は筋肉が好きだと言ったのが悪かった。あいつはな、頼りになる男だとアピールしたかったんだろうさ」

 

アイゼンは隣で眠っている弟子へ視線を向ける。

調子に乗ってハンバーグを3つも食べた少年は少し寝苦しそうだ。

 

「……そんなことしなくても、あなたが頼りになることなんて良く知っていますよ」

 

思わず漏れた少女のつぶやき。

それはとても優しいものだった。

 

『これはもしかするかもしれませんね』

『だな』

 

このようすを目にしたアイゼンとハイターはアイコンタクトを交わす。

 

弟子たちの未来は明るそうだ。

ふたりはヒンメルに新しい土産話ができそうだと喜んだ。

 


 

■ 別れ

 

「また遊びに来る」

「……そうですか」

 

フェルンにとってシュタルクと過ごした1週間は初めて経験する事ばかりだった。

子供にとって『1週間』は人生の価値観を変えるのに十分な時間だ。

それだけの時間、共に過ごしたシュタルクが今日いなくなってしまう。

 

幼いフェルンの心に悲しい気持ちが込み上げてくる。

 

「シュタルクは寂しくないんですか」

「えっ?なんで?」

 

自分はこんなにも寂しいのに彼はヘラヘラ笑っている。

フェルンは少しイラッとした。

 

「だって、また会えるだろ。なら全然寂しくないじゃん。『一緒に旅する約束』忘れるなよ。俺が一人前になったら誘いに来る」

「……ズルいですね」

 

臆病なのに勇敢。

鈍感なのに鋭い。

粗暴なのに優しい。

 

フェルンに『新しい夢』ができた。

 

「ん、コレやるよ。フェルンは花が好きだろ」

 

少女に差し出される見たことのない花。

 

「俺だけ誕生日祝ってもらうのズルいからな。じゃあまたな」

 

そう言うと少年は馬車の方へ走っていった。

 

「おや、シュタルクくんはもう行ってしまいましたか」

「ハイター様……これ」

 

遅れて見送りにきたハイターへシュタルクからもらった花を見せる。

その花を見てなにか気付いたハイターは優しく微笑み、フェルンの頭を撫でた。

 

「ふふ、そんなに握りしめたら枯れてしまいますよ」

 

フェルンは慌てて力を緩める。

最後にシュタルクたちが去っていった方向を見つめる。

すでに馬車は豆粒ほどの大きさしか見えない。

 

「また会えるでしょうか」

「ええ、必ず。彼は約束を守れる『戦士』でしょうからね」

 

 




■ 次回予告
【蛇足編】アイゼンハンバーグ 開店






葬送の
フリーレン
〜〇〇の魔法〜




『みんなが感想をくれる魔法』

<(*´ω`*)> 人間の寿命は短過ぎる







■ ?

「この森は結界で魔物は入れないんじゃなかったのか?」

「そのはずだったんですが……。あれは『ダンジョンシーカー』です。ダンジョンに住み着く魔力を持たない魔物です」
「ダンジョンがこの辺りにあるという話は聞いたことがないが……まさか」

「誰かがこの森まで手引きしたのでしょうね」
「例の連中か?」
「でしょうね。フリーレンに手紙を出しましょう。あの鳥を使った連絡手段なら今でも彼女へ手紙を届けられるでしょう」

本作の戦闘描写をどうおもいますか?(5段階評価)

  • 5:素晴らしい
  • 4:読み応えがある
  • 3:十分(ふつう)
  • 2:描写をもう少し欲しい
  • 1:ダメダメ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。