シュラハトくん見逃して 作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)
告白
これから始まるお話は
既に終わった過去のお話
勇者が魔王を撃ち倒し
王都へ凱旋するまでの物語
勇者とエルフの運命は変わらなかった
50年の『空白』は避けられない
しかし、この物語は…
『葬送のフリーレン』ではない
繋いだ命はこの時のために
騎士の剣が『友』の血に染まる
これは0章であり、最終章
フリーレンフリーレンフリーレンフリーレンフリーレン
前世の記憶を持つ騎士シュルト。
騎士ニヒツと共に無名の大魔族クヴァールを討ち取ったが、その隙を突かれて断頭台のアウラに殺される。
そして、不死の軍勢としてかつて守ってきた者達に剣を振るう。
その心は遠に砕け散り、朽ちた鎧の中身には絶望と怨嗟が満ちていた。
しかし、希望はあったのだ。
人類最強と呼ばれた南の勇者に解放され、勇者ヒンメルに心を救われ、彼らと共に魔王討伐の旅を進める。
おふざけで作った勇者像。フリーレンのそっくりさん。呪われた少女。人間が大好きなエルフ。そして物語に狂った七崩賢。
様々な困難を乗り越え、ついに魔王討伐を果たした。
そして、物語は魔王討伐後の帰り道でも紡がれる。
魔王は倒した。
フリーレンは長かったようで短かった1000年を振り返る。
そして、短かったのに長かった10年の冒険を振り返っていた。
これからどうするか。
今まで考えたことはなかったが、ヒンメル達に会えなくなるのは寂しい。
王都にしばらく滞在しようか?
いや、魔法の研究に適した環境じゃない。
ツンデーレンのいるオイサーストへ行って必要な研究機材を集めてから、王都へ戻るのも良いかも。
ツンデーレンとの約束はもう少し先だからね。
「フリーレン大変だ。ヒンメルが……ヒンメルが!!」
数日前
「おーい、『魔王を撃ち倒した勇者ヒンメルさまぁ』朝食できたから、ハイターとフリーレン起こして顔洗ってきてくれ」
ヒンメルは香ばしいベーコンとチーズの焼ける匂いに誘われ、目を覚ます。
薄目を開けると、昨夜とは逆さまに寝転がっているフリーレンを鎧エプロンのニヒツが揺さぶり起こしている。
『魔王の死から1ヶ月後』
魔王を倒した後も勇者一向に休まる日々はない。
いや、魔王を倒したからこそ休めない日々が続いた。
帰りに立ち寄る村や街では、どこも魔王討伐のお祭りが連日行われていた。
ヒンメル達は朝までその武勇伝をせがまれ、くたくただった。
村人達に悪意はない。だから、無理に断れない。
そのまま街に留まるといつまで経っても帰れない為、ハイターの『隠密魔法』によって夜逃げ同然に街を離れる。
このパターンが既に10回も続いているのだ。
「はぁ…」
まさか野宿の方が街の中よりゆっくり休める日が来るとは、旅に出る前のヒンメルは考えもしなかった。
新しい村に着いた。
村長の申し出で、今回も盛大に歓迎祭りを開いてくれるらしい。
朝には帰してくれるかな……。
ヒンメルとしては、自分の武勇伝をみんなに聞いてもらうのは嫌いではない。
ただし、早急に王都へ帰還し、魔王討伐の宣言をする方が人々に安心感を与えられるという仲間達の意見もよく理解できる。
行きの旅よりせっかちに進むのは少し残念だ。
だが、その分しっかり今を楽しめばいい。
みんなと過ごす時間は……残り少ないのだから。
そう考えながら、ヒンメルは今を噛み締めるように目を開く。
視線の先にはフリーレン。
彼女が魔導書を読んでいる様を側で眺めていると、壁越しに足音が聞こえてきた。
「ニヒツでしょうね。私が見てきますよ」
ハイターが玄関へニヒツを迎えに立ち上がった。
今日は珍しくまだ酒を飲んでないらしい。
ガサガサ
壁越しに外の音が聞こえる。
村長の好意で貸してもらえたこの空き家は少し壁が薄いらしい。
何気なく耳をすませば、外にいるハイターとニヒツの会話が聞こえた。
「ハイター、ここもダメそうだ。早く出発した方がいい」
「そうですか……。魔王を討伐してすぐにこれです。なにか計画的な…」
どうやら何かを企んでいるようだ。
最近、ハイターとニヒツが隠れて会話をすることが増えた。
仲間外れにされて少し寂しく感じたヒンメルだが、聞かなかったことにする。
必要があればハイター達から情報共有があるだろう。
それだけの信頼と関係性は築いて来たつもりだ。
それよりも今のヒンメルには解決しなければならない大きな問題があった。
フリーレンだ。
フリーレンのことはこの旅を通じで十分理解できた。
だから断言できる。
魔王討伐の報告を行えば、フリーレンは必ず再び旅に出てしまう。
もちろん、今生の別れにはならないだろう。
彼女はそこまで薄情ではない。
たまには会いにきてくれるだろう。
しかし、『エルフの感覚』での
その頃には、自身がヨボヨボになっていることは想像に容易い。
だから、
ヒンメルは王都に着くまでにフリーレンを繋ぎ止める何かを用意しなければならない。
先日フリーレンから預かった『暗黒竜の角』を
すでに退路は断たれていた。
待ってた?
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待ってた
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待ってない