シュラハトくん見逃して   作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)

4 / 42
人と魔族

「シュラハト様。貴方の想いと私の子供達。

どちらも未来へ繋げますよ」

【とある名無し】

 


 

 

「おお、この本屋。魔導書もたくさん置いてあるみたいだ。買いだね」

 

フリーレンはキメ顔でそう言った。

そして、フェルンに怒られた。

 

 

†

 

 

フリーレン達は、街の本屋に来ていた。

 

「フリーレン様。あまり路銀がないので魔導書は銀貨5枚までですよ」

「そんなぁ…」

 

しょんぼりフリーレンをよそに、シュタルクも辺りを見渡し、何か面白そうな物がないか探す。

 

「結構デカい本屋だよな。魔導書も絵本もこんなにあるぜ。あ、これ懐かしい」

 

シュタルクはふと目に入った絵本を手に取った。

 

『人と魔族』

 

昔、シュタルクが戦士の村で読んだことがある絵本だった。

 

「これ、私も読んだことがあります。これもニヒツ様の著書ですね」

 

フェルンがフリーレンをあやしながら、近寄ってくる。

 

「有名な絵本なの?」

「ええ、人と魔族の関係について、みんな子供の頃にこの絵本で学ぶんです」

 

「私も実家にあります」とフェルンが答える。フリーレンも同じ絵本を手に取り、著者欄にある懐かしい名前を見つめる。

 

「どんなお話なの?」

「簡単に言うと、擬態魔法の得意な魔族が人に擬態して魔族に戻れなくなる話だぜ」

「なるほどね」

 

よくある異種族間のおとぎ話だ。こう言う物語で勘違いした人は、魔族の格好の獲物だ。

物語としては面白いかもしれないが、あまり良いものではない。

 

「ん? でもこれ書いたのニヒツだよね」

「そのようですね」

 

あれだけ魔族を嫌っていたやつが、魔族を誤解するような内容を物語にするだろうか?

それになんだか聞き覚えのあるような内容だ。

 

「とは言っても、このお話はバッドエンドなんですよ」

「だよな。俺も当時はこの結末には納得いかなかったもんだぜ。まあ、実際に魔族と戦って納得したけどな」

 

そこでフリーレンは思い出した。

ヒンメル達と冒険していた時に、滞在したある村について。

 

 

†

 

 

勇者ヒンメルの死から60年前。

 

「むか〜し、むかし、あるところに魔族の青年がいました。彼は人を効率よく食べるために、『人になる魔法』を極めました」

「しかしある時、自分が人から魔族に戻れなくなったことに気づきました」

「魔法を極め過ぎたのです」

「彼は他の魔族に頼ることも出来ず、森を彷徨い、空腹で気を失いました」

「気がつくと彼は人里に保護されており、しばらく村に置いてもらえることになりました」

「彼は人になる魔法をより極めれば魔族に戻れるようになると考え、人々の暮らしを研究することにしました」

「彼は村人達のお願いを率先して解決し、畑仕事や狩りを一緒にしたり、時には魔族を退治したりもしました」

「たくさん人と会話をし、一緒に生活をし、彼は村に溶け込みました」

「そして、だんだん彼の周りには人が沢山集まり、子供や孫も沢山生まれました」

「その後も、月日は流れ、彼はついに魔法を完成させました」

「彼は魔族に戻り、村人たちをみんな食べてしまいました」

 

「おしまい」

 

「え〜、村の人と仲良くならないの?」

 

ぶぅぶぅと、子供達から不満の声が上がる。

 

現在、ヒンメルパーティーはある村に滞在しており、ヒンメルが村人達の悩み事を聞いて回っている最中だった。

 

そこに、たまたま村の老人が子供たちにおとぎ話を聞かせている場面に遭遇したのである。

 

「フリーレン。この物語の完成度はかなり良いよ。今作ってる子供用絵本の題材にできそうだ。ちょっと詳しい話聞いてくるからヒンメルのお使い、代わりにお願いね」

 

一緒に行動していたニヒツは、あっという間に読み聞かせ広場へ突撃していった。

そして、残されるフリーレン。

 

2人が何故ここにいるかと言うと、

ヒンメル達が村人に頼まれて宿の修理をやっており、足りない工具と消耗品の買い出しを頼まれていたのである。

それをニヒツが放り出したので、フリーレン1人で買いに行く必要が出てきた。

 

「ニヒツ、カウント2だよ」

 

無慈悲。

ヒンメルですら恐れ慄く、絶望へのカウントが、今進んでしまったのである。

 

 

†

 

 

「勇者様! みんなを助けて!!」

 

村を出発して、数時間。

朝に起きれなかったフリーレンのせいで、ヒンメル達の出発は昼になっていた。

 

現在、既に日が暮れて勇者パーティーは夕飯の準備をしていた。

そこに、駆け込んできた少年。

村にいた少年である。

彼の尋常ではない様子に、全員が村で何かが起こったことを悟る。

 

「僕とニヒツ、ハイターが先行する。後から村で合流しよう」

 

全員がヒンメルの指示に頷き、行動を開始する。

ヒンメルが少年を担ぎ、彼に負担をかけないように走り出す。

 

『地面を滑る魔法』

 

ニヒツは自分に魔法を使い、ハイターを雑に担ぎながら並走する。

 

「傷は浅いです。走り続けたことによる疲労の方が負担になっていますね」

 

ハイターは背負われながら、少年の疲れを癒して事情を聞く。

どうやらヒンメル達が出発した後、直ぐに魔族から襲撃があったらしい。

問題はただの魔族ではなく、将軍と呼ばれる個体が含まれていたことだ。

それでもなんとか少年は逃げ出すことができたらしい。

ただ、彼の祖父が彼を庇って大怪我を負った。事態は一刻を争うようだ。

 

「大丈夫。僕達がなんとかするよ」

「私に治せない傷はありませんからね」

「なんせ、私達は勇者様パーティーだしな。にいちゃん達にお任せあれ」

 

ヒンメルは少年の頭に手を置き、安心させるように、村へ急ぐ。

 

 

†

 

 

「ああ、そんなバカな。私は、俺は…おかがきぎくぐけげこごさざしじすずせぜそぞただちぢの」

 

燃える村の中央、頭を抱える魔族を発見。

推定、襲撃者の将軍。

 

ヒンメルとは生き残りの捜索と少年の安全確保の為、村の入り口で別れた。

 

ニヒツは威力偵察のため、そのまま突撃する。

一撃入れて様子を見る。ヒンメルに次いで素早く、アイゼンに次いで硬い彼の役割だ。

 

魔法で勢いをつけてたまま、背負ったハイターをパージし、勢いのまま手元に呼び出したハルバードで一撃を見舞う。

 

「んー、セイッ!!」

 

後ろからぞんざいに扱ったハイターの苦情が聞こえるが、勇者パーティー最強のヒーラーはほぼ不死身なので大丈夫だろう。

ニヒツは魔族の討伐を優先することにした。しかし、攻撃は拍子抜けするほどあっさり通る。

勢いのまま振り抜いたハルバードが、なんの抵抗もなく魔族の片腕を切り飛ばした。

 

魔族は叫び声も上げず、ブツブツ何かを呟くのみ。

 

「げこごさざしじすずせぜそぞたおかがきぎくぐけだちぢの」

 

「生存者は?」

「全員避難済みだよ。それに他の襲撃者は既に対処済み。後はこの魔族だけらしい」

 

ヒンメルも合流し、村人達はまだ生き残っていることを告げる。

 

「え、他の魔族自力で倒したの? ここの村人すげぇな」

 

ニヒツはヒンメルから驚くべき情報を聞き、再び魔族を見る。

確かに所々ダメージを負っているように見える。

しかも明らかに様子がおかしい。ご自慢の大盾も構えず、隙だらけの状態だ。

 

二ヒツがどうするか考えようとした時、すでにヒンメルの剣が魔族を両断していた。

 

「あれ? 小手調べのつもりだったんだけど?」

「なんだったんだこいつは…」

 

 

†

 

 

「こいつは、王権のフェルスだね。将軍の1人だ。硬さ自慢の大魔族のはずなんだけど…」

 

フリーレンも合流し、まだチリになっていない死体を分析する過程で敵の正体が分かった。

ただし、違和感も残った。

 

「僕がイケメンだから一撃で倒せたってことはないかな」

「それなら腕を切り飛ばした俺もイケメンということになるな」

 

カッカッカッと笑って決めポーズをするヒンメルとニヒツ。

2人を冷めた目で見つつ、フリーレンも違和感を感じていた。

 

フェルスは明らかに弱体化していた。

確かにニヒツ達が接敵する前から傷付いてはいたが、大したものではないと2人から聞いた。

 

ただ、考えてばかりもいられない。

匂いに釣られてやってきた魔物達へアイゼンが対応しており、ハイターも村人達の治療で手が足りてない。

今はやれることをやるだけだ。

 

 

†

 

 

あの後、犠牲者は出たものの、将軍の襲撃を受けたにしては被害は限りなく少なかった。

ただ、少年の祖父である『おとぎ話を教えてくれた老人』の遺体だけは見つからなかった。

 

 

†

 

 

「そう言うことか…」

 

フリーレンは少年に祖父が傷を負った場所へ連れて行ってもらった。

そこで魔力の痕跡を調べる。

結果は黒。

それでもこれは語られるべきじゃない。

フリーレンは語らない。

 

風が吹き、黒い風が舞った。

 

 

†

 

 

「フリーレン様、本を持ったまま固まってますけど、何かあったんですかね?」

「さぁ?お年頃なんじゃない?」

『シュタルク、それは使い方を間違えているかと。それに、後が厄介なのでやめて下さい。 コソコソ』

 

隣でフェルンとシュタルクがわちゃわちゃしているのを横目に、フリーレンはまた一つヒンメル達との冒険を思い返していた。

 

「シュタルク、カウント2だよ」

 

絶望へのカウントは再び動き出す。

 

 

√m 勇者ヒンメルの死から38年後。

 

 


 

■ 実績解除

* 【NEW】魔族の被害を減らす手段を模索する

 


 

■ 人物設定

将軍 王権のフェルス(岩盤)

* 魔法:全身を鉄壁にする魔法

* 戦闘スタイル:大盾を2枚持ち、身体を岩盤のように硬くして、殴りつけてくる将軍




■ 次回
酒



■ 裏話
村の物語を語った老人は元魔族。
物語の通り人になってしまったが、人であり続ける選択をした(精神も人になったため)。
これはもはや呪いであり、
完成した「人になる呪い」は、人の精神では魔族を理解できないため、解呪できない。
もし、「魔族になる呪い」があればあるいは戻れるだろうが、魔族が魔族になるための呪いを作ることはないだろう。


『人になる呪い』は自由度が高く、肉体はそのまま、精神のみを人にすることも可能だった。

■

「お変わりないようですね」

「お前は随分変わったな」

「ええ、人生をかけてますから」

「お前の『人になる魔法』は鍵だ。1000年後の分岐点、そこへ辿り着くためになくてはならないものだ」

「存じておりますとも」

「お前の献身は忘れん。『無名』 よ…」


「いいえ、今はただの老いぼれですから」

街中で潜伏した魔族を見つけた際、フリーレンは戦闘を開始するか?

  • 1. ゾルトラークぶっぱ(リュグナー時)
  • 2. 一般人を巻き込む戦闘はしない
  • 3. 仲間がおらず、確殺なら即キル
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。