シュラハトくん見逃して   作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)

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『蒼月草』

「勇者ヒンメル像の周りには、

いつの時代もたくさんの人々がいた」

【とある歴史書】

 


 

 

「ああ、懐かしい魔力だ」

 

 

 

 

「お久しぶりですね、フリーレン様。ようこそ私達の町へ」

 

「驚いた。私のことを覚えているんだね。ここに立ち寄ったのは人間からしたら相当昔のはずなんだけど」

 

僧侶ハイターの死から数ヶ月後。

 

フリーレンとフェルンはある町を訪れていた。

 

「あぁ、貴方はあの時のおさげの女の子だね。ヒンメルによくついて回っていた」

 

「ふふ、お恥ずかしい限りです。今ではもうお婆ちゃんですよ」

 

町の入口でたまたま出会った老婦人が、50年近く前に助けた子供という偶然はあるだろうか?

 

フェルンは少し疑問に思いつつ、老婦人の案内に沿って町を歩く。

歩くたびに自分より小さな子供達が何故かたくさん付いてくる。

町の大人達も何故か好意的な視線が多く、自分達は無駄に注目を集めてしまっていた。

 

「フリーレン様、これはどういうことですか?何かしたんですか?正直に話してください」

 

「いや、覚えがないんだけどね。ここが村だった頃、暴れていた魔物の討伐と復旧を手伝ったくらいだよ。それから一度も来ていない」

 

フリーレンも少し歓迎され過ぎていると感じているようだった。

そもそも何十年も前のことである。忘れられていたとしても不思議ではない。

 

商店街では何故か店主から声をかけられ、果物やパンなど食べ物をたくさん渡される。

既に両手一杯で杖も握れない。

フェルンはこれが『ハニートラップ(おいしい罠)』というものかと警戒しつつ、香ばしい香りのパンに齧り付く。

 

「今日は何かのお祭り?」

 

「いえ...まあ、お祭りみたいになるかも知れませんね。うふふ」

 

口に手を当て、嬉しそうに微笑む老婦人。

一層深まる謎。

一通り町を案内された後、宿屋へ通される。

ここでも、無料で宿泊していいと店主から言われ、驚く2人。

 

この街に来てから財布に触れたことすらないのに、彼女達は街に入った時の倍近く荷物が増えていた。

 

「夜に広場へお越しください。歓迎の宴を用意しておりますので」

 

そう言って、老婦人は優しく微笑みながら、帰って行った。

 

「フェルン」

 

「はい、フリーレン様。一通りあの御婦人に案内してもらいましたが、広場はまだでした。怪しくないですか? 今からでも突撃しに行きますか?」

 

「いやいやいや、待つんだフェルン。彼らに悪意はないよ。広場にあるものも大体見当がついている。夜まで楽しみに待とうじゃないか」

 

そう言ってフリーレンはカバンの中身を出し、くつろぎ始めた。

フェルンは納得できないながらも経験豊富なフリーレンの言葉に従う。

念の為、杖の手入れを入念に行い、いつでもゾルトラークを撃てるように警戒しながら…。

 

 

 

 

『ようこそ、フリーレン様 御一行。大歓迎!!』

 

その夜、広場に着いたフリーレン達。まず、入り口に掲げられた横断幕に驚くことになった。

たくさんの屋台が広場に並び、まさに祭りといった賑やかな雰囲気が漂っていた。

 

「ふりーれんさま。こっちだよ」

 

昼間に付いてきた子供達の1人がフリーレンの手を引く。

 

あれ? 名乗ったかなと思いつつも、されるがまま引っ張られるフリーレンと小走りでそれを追いかけるフェルン。

 

そして、フェルンは目にした。

広場中央に佇む『花畑に囲まれ、淡く光り輝くヒンメルの銅像』を。

 

広場は夜なのに明るく、ほんのり暖かかった。

そして、なんだか気分が落ち着く『香り』とゆったりとした『音楽』が何処からともなく流れてくる。

 

「この銅像は?」

 

「私達の町を今も見守り続けてくださっているヒンメル様の銅像です」

 

「いや、銅像なのは分かるんですが、私の知っている銅像とかけ離れているというか...」

 

なんとも言えない表情のフェルン。

 

彼女は困惑していた。

幼い頃、ハイターは旅の思い出を寝物語として、フェルンに聞かせてくれた。

勇者ヒンメルがたくさんの銅像を残した話もその時に聞いた。

自分達の銅像に魔法をかけた話。色々面白い『ギミック』をみんなで考え、気付けば次の日を迎えていたこと。その際、大人になったら探してみて欲しいとお願いされたこともあった。

 

『ハイター様、ここまでとは聞いてませんよ...』フェルンの心の声に、ハイターはイタズラな笑みを返した気がした。

 

「でもこの銅像、村の端っこに建てた気がするんだけど」

 

「人がたくさん集まり始めて村を拡張する話が出た時、ここを中央広場にするように作り直したんですよ」

 

昼間の老婦人が説明し始める。

この銅像を建ててからは魔物も魔族も寄って来なくなった。次第に周辺の村から噂を聞きつけて人が集まった結果、大きな町になったこと。

この広場だけ、夜は暖かくて明るく、昼は涼しくなるため、人も沢山立ち寄ってヒンメル様の像を見る観光名所になったこと。

最近では、勇者ヒンメルの旅路を体験することが冒険者達の間でブームになっていること。

銅像には『人の心を落ち着かせる効果』と『勇気付ける効果』もあるようで、血の気の多い冒険者達も争いを起こさず、平和に暮らせているそうだ。

 

「なるほど、それでフリーレン様の名前とお顔を知っている方が多かったんですね。これだけ好意的なのも納得です」

 

安心したことでお腹が減ったフェルンは美味しい匂いに釣られて、屋台の看板を見る。

そこで衝撃的なものを見つけた。

 

『元祖ハイターサワー †濃いめ†』

 

...。

 

「フリーレン様!フリーレン様!!ハイター様が、お酒になってます!!」

 

「え、何。アイツ、酒が好き過ぎて天国へ行けずにお酒に生まれ変わったの?」

 

フリーレンは『ハイターならあり得るな』と思いつつ、屋台へ突撃して行ったフェルンに引っ張られて宙を舞った。

 

「うちの名物、『ヒンメルオムレツ』『ハイターサワー』『アイゼンハンバーグ』『ニヒツ串焼き』『フリーレンプリン』ですね。祭りでよく出すんですよ。今日はフリーレン様が来たと聞いて、みんなで屋台を引っ張ってきたんです」

 

屋台の親父が「全部どうぞ。あ、嬢ちゃんにお酒はまだ早いかな」と言いつつ、フェルンへ勇者パーティーセットを渡す。

フェルンはご機嫌だ。

 

隣にいた小さな女の子が物欲しそうな目でパーティーセットを見つめてくる。

フェルンはご機嫌なので、『フリーレンプリン』を分けてあげた。

 

「やったあ、おねぇちゃんありがとぉ。あたし、『フリーレンプリン』大好きなんだぁ。だからふりーれんさまが1番好き。大きくなったらふりーれんさまになるの」

 

「おねぇちゃんにも見せてあげるね」と女の子が出したものは、『見覚えのあるピコピコ光る小さな杖』。

 

「そ、それは大変ですね…」

 

フェルンは慣れない年下の子供相手にたじろぎつつ、『ニヒツ串焼き』を頬ばった。

 

目の前を『青いマントをつけた男の子』と『十字架が書かれた絵本を持った女の子』が走り去る。

『兜を被って付け髭を付けている赤ん坊』を抱える『エルフの付け耳をした女性』と『青いカツラを被った男性』が仲良く屋台を見て回っている。

 

みんな楽しそうに笑っている。

 

「亡くなった私の夫が商人でしてね。妻を助けてくれた勇者様に恩返しするんだといって、色々やったんですよ。ふふ、今では勇者ヒンメル様のイベントが各地で行われてますよ。ぜひ訪ねてみてください」

 

楽しそうに微笑む老婦人の表情に曇りはない。

彼女は夫と悔いを残すことなく過ごせたのだろう。

フリーレンは少し羨ましそうに彼女を見た。

 

「そう言えば、ヒンメル様の周りにある花。全部同じ種類ですね。何故なのでしょうか?」

 

「これは『蒼月草』だよ、フェルン。ヒンメルの故郷に咲く花だったんだ。やっぱりヒンメルと言えばこの花だよね」

 

「そうだったんですね。という事は幼馴染のハイター様にとっても、故郷の花なんですね」

 

フリーレンが思い浮かべるのは、花畑で嬉しそうにはしゃぎ回る僧侶と戦士。

そして、ヒンメルがくれた花の冠。

 

フェルンもまた、小さい頃ハイターに作ってもらった花冠を思い出していた。

あの時、アイゼン様と一緒に来ていた『男の子』は元気にしているだろうか。

 

しばし、青い花を眺めながら、昔の思い出を振り返る2人。

 

「ただ、この花はもうこの辺りしか生息していないようです。薬師の私としてもかなり残念です。ヒンメル像がある他の町でも植えようという取り組みがあったようですが、そこの土壌と相性が良くないようで...」

 

「じゃあ、私が咲かせよう。『花畑を出す魔法』は私の得意な魔法だからね」

 

フリーレンの花畑は、土壌ごと咲かせたい植物に最適なものへ変化させる改良が施されている。

出来るだけ長く咲いて欲しいという想いが、そこにはあった。

 

そして、

 

『ヒンメル像を探し、蒼月草の花畑を咲かせる』

 

フリーレン達の旅に、新たな目標が加わるのであった。

 

 

 

 

「ああ、そろそろですね。ヒンメル様の銅像をご覧ください」

 

歓迎会もしばらく経ち、そろそろお開きかなと考えていたフェルンだが、老婦人の声に釣られて銅像を見る。

 

 

 

 

 

そこにはハイター様がいた

 

 

 

 

 

 

『あなたがいい子でいたら、少しくらいなら、化けて出てあげてもいいかもしれません』

 

「ハイター様...」

 

 

 

 

「あぁ、こんな魔法もかけたっけね」

 

フリーレンは首元のペンダントに手を当てる。

その呟きに、どういうことかとフェルンが詰め寄ろうとすると、そこにはフリーレンがもう1人いた。

それだけではない、戦士アイゼン、騎士ニヒツ、銅像ではない勇者ヒンメルまで存在し、動いている。

 

混乱するフェルンにそっと手を置くフリーレン。

 

「これは幻想魔法だよ。そして、『魔力を定着させる魔法』と『魔力を誇張する魔法』。当時の私達が徹夜の勢いで作った勇者パーティーの『まぼろし』だ」

 

確かにこのハイターの姿はフェルンが知っているどの記憶よりも若い。

フェルンは名残り惜しみつつも、『町の人達に手を振り、冒険へと出かけるハイター達』を笑顔で見送った。

 

 

 

 

深夜0時になると、設置型魔導具であるヒンメルの銅像からヒンメル達の『まぼろし』が出現し、周囲の魔物や魔族を威嚇するために動き出す。

基本的にはただの『まぼろし』だが、幻想魔法の特徴として、ある程度の実体を持っている。

『魔力を定着させる魔法』で本人達の魔力が少量ながら付与されており、『魔力を誇張する魔法』でそれを大きく見せ、本物と見紛う『まぼろし』が生み出されている。

 

はっきり言って神話級の代物である。

 

フリーレンがフェルンに説明した内容は、とても普通の魔法使いが考えつけるものではなかった。

『魔法の物質への付与』『多重にかかった魔法』『半永久的な魔法効果の持続』『自動迎撃機能』『他人の魔力を定着』などなど、どれを取っても今まで見た魔法の教科書には載っていない技術だ。

少なくとも今のフェルンには理解ができなかった。

 

「まさか私も、『師匠に教えてもらった統一帝国時代のゴーレム技術』まで使うことになるとは思わなかったけどね。ただ、持続性を重視したから、あんまり強くないんだよね」

 

「え、あれ戦えるんですか」

 

「戦えるよ。じゃないと魔力の大きさで相手を判断できない獣は撃退できないからね」

 

フェルンは改めてフリーレンの規格外さに驚く。

1000年を生きる大魔法使いは、伊達ではないのだ。

 

「とは言え、ニヒツやハイターにも手伝ってもらったし、『故郷の守護勇者』の魔法がなかったら実現できなかっただろうね」

 

 

√m 勇者ヒンメルの死から36年後

 

 


 

■ 実績解除

* ヒンメル達の物語をおとぎ話にしない

* 魔族の被害を減らす手段を模索する

 


 

■ 裏話

町の名物は、勇者像に貢物をしたことが起源とされている。

勇者様の好物だったものをある少女がお供えしたところ、光に包まれ、銅像がより一層輝いたそうだ。

 

■ 裏話2

この町の銅像はプロトタイプである。

勇者パーティー全員がやれる事を全部試し、みんな楽しくなってはっちゃけてしまった結果のため、他の銅像はもう少し落ち着いた性能である。

その際、余った素材でペンダントが作られたとか。

 

銅像にかけられた頭のおかしい魔法リスト

* 動かすと壊れる代わりに、魔法を重ねがけできるようになる魔法

* 地面に固定された無機物を劣化から守る魔法

* 朝日を取り込み、夜に辺りを照らす魔法

* 夏に熱を取り込み、冬に放出する魔法

* 人の営みを見守る魔法

* 人の営みがある範囲を結界で覆う魔法

* 結魔界内にいる人間の魔力を偽装する魔法

* 明日の天気がなんとなく分かる魔法

* 酒を魔力に変換する魔法(ハイター作)

* お供物を魔力に変換する魔法

* 心なしか顔がイケメンに見える魔法

* 雨がかからない魔法

* なんかキラキラする魔法

* 甘い葡萄を酸っぱい葡萄に変える魔法(ニヒツ作)

* 勇気が出る魔法

* 忘れ物を思い出す魔法

* 安らぐ香りを出す魔法

* イタズラされたらクサい香りをつける魔法

* その場のノリでいい感じの音楽を奏でる魔法

* 幻想魔法

* ミミックを判別する魔法

* 他者の魔力を取り込む魔法

* 魔力を定着させる魔法

* 魔力を誇張する魔法

* 慰めてくれる魔法

* 想いの続く限り未来へ繋ぐ魔法




■ 次回
私達は6人で旅をしていたんだよ




葬送の
フリーレン
〜〇〇の魔法〜



『みんなにここがすきだと伝える魔法』

<(・ω・)> 「魔法は探し求めている時が一番楽しいんだよ」

死んだ人と同じ見た目、同じ記憶、同じ反応、同じ行動をとる人がいたとして、それに気付いたとき、あなたはどうしますか?

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