原神 トロフィー『少女がふたり、神はなし』獲得RTA   作:水の国の底から

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捏造捏造捏造、ぜぇんぶ捏造!


裁判

迫る予言。

 

のらりくらりと追求を躱し続けるフリーナ。

 

頻発する原始胎海の氾濫と、それに伴う人的被害の拡大。

 

 

事態を重く見た最高審判官のヌヴィレットは、彼が仕える主神を、裁判の場で『正義』の名のもとに審判にかけることを決断した。

 

 

そして今、水神フォカロルス──フリーナ・ドゥ・フォンテーヌは、初めて被告人の席に座っている。

 

「まったく……この国の正義は神すらも裁くと言ったのは僕だが、それにしても唐突だなぁ。もう少し事前通告とか出来なかったのかい?」

 

予定調和として発生した暴動と、旅人の誘導。

更にはリネのマジックもといファデュイ全面協力の大掛かりな仕掛けで、フリーナを裁判の場に引きずり出すことに成功した。

 

後は、裁くだけだ。

 

 

旅人は原告として、フリーナが被告として。

 

かつてとは逆の立場にあってなお、フリーナは自信満々に胸を張る。

 

「それで? キミたちは僕をどんな罪で裁くと言うのかな?」

 

聴衆の前でいて、尚もフリーナは揺るがない。

 

しかし旅人は知っている。

彼女が犠牲になったポワソン町の人を想い、一人涙を流していたことを。

 

だからこそ、言える。

 

 

──フリーナ。あなたの罪は、神を騙ったことだよ。

 

 

フリーナの頬がごく僅かに引き攣る瞬間を、旅人だけが見ていた。

 

諭示裁定カーディナルは動かない。

 

 

 

 

フォンテーヌの裁判には、黙秘権が認められている。

しかし、フリーナはその口を閉じることは決してなかった。

 

民が見ているから。

水神の名を背負っているから。

『正義』の名のもとにいるから。

 

フリーナが、水神フォカロルス(フリーナ)であるから。

 

 

 

旅人の論調はこうだ。

 

フリーナが真に神であるならば、本人からその神の力を見せて欲しい。

もし仮に神の力を見せられないのであれば、それは逆説としてフリーナが神で無いことの証左に他ならないのだと。

 

 

フリーナは反論した。

 

(フリーナ)の神の力は、全て諭示裁定カーディナルと律償混合エネルギーのシステムの維持に回していると。むしろ、僕は民草のために全ての力を費やしてしまえる無私の神なのだと断言した。

 

 

諭示裁定カーディナルは動かない。

 

 

パイモンが返す。

 

いくら全ての力を注ぎ込んでいても、水元素のひとつを操るぐらいは出来るだろうと。

それすら出来ないのならば、それは神の力どころか神の目すら持っていないのではないか、と。

 

神の力を手放した風神バルバトスは、しかし現代でも強力な風の力を操る。

岩神モラクスも、雷神バアルゼブルも、草神ブエルも、皆同じだ。

 

水神フォカロルスだけが例外だとは思えない。

 

旅人がそう告げると、群衆からどよめきが起こる。

各国を巡った旅人の知見は、誰よりも広い。

 

 

しかし、フリーナは負けじと返す。

 

神のあり方はそれぞれで大きく異なる。

他の神がどうであろうと、それが僕に当てはまるとは思わないことだ。

 

神は凡人の尺度では測れないもの。

その意思を人が定めようなどと、不敬極まりない、と。

 

 

諭示裁定カーディナルは、動かない。

 

 

 

「くそっ、フリーナのやつ、あの手この手で詭弁を言ってくるなぁ。どうしようか……」

 

うっかり雷神の料理を食べちゃった時ぐらい苦い顔でそう言うパイモンをよそに、旅人は違和感を覚えていた。

 

──……。

 

何かがおかしい。

論争はこちらが有利のはずなのに、なぜか場の空気はちっとも傾いていないように思える。

 

「おい、旅人! どうしたんだ?」

 

パイモンの声も聞こえないぐらいに深く集中して、周囲を観察する。

 

真剣な表情でこちらを見つめるフリーナ、厳粛な雰囲気を崩さないヌヴィレット、こちらを見守るリネとリネット、旅人と目が合ったことを悟り手を振るシャルロット、心配そうな視線を向けてくるナヴィア。

 

そして、特に驚いた様子もなく、いつも通りに話を聞いている民衆。

 

いつも通り。

 

いつも通り?

 

――――!!

 

「うわっ、急にどうしたんだよ!」

「わわっ、落ちたら危ないよ!」

 

手すりにしがみつく勢いで前に寄る。

 

パイモンの驚きもフリーナの静止も無視して、ステージ中央の様子を覗き見た。

 

 

──諭示裁定カーディナルが、動いていない。

 

「ええっ!? 嘘だろ!?」

 

驚きの声をあげたのは、意外にもパイモンではなくフリーナだった。

 

旅人と同じように手すりに飛びつき、危うく落ちそうになりながら諭示裁定カーディナルを凝視する。水神の力と叡智の結晶であるそのマシナリーは、しかしほとんど天秤を傾けず、傍目から見れば水平を保ったままだった。

 

「な、なんで!? まさか本当に壊れちゃった!?」

 

諭示裁定カーディナルはスタンドアロンで動いているため、フリーナであっても制御はできない。

タルタリヤに対して誤審が下ったのもその為だと主張したフリーナは、それにしても慌てすぎな様子で騒いでいる。

 

前のめりすぎて落ちそうになるフリーナを警備兵が必死に引っ張る姿を見つつ、ヌヴィレットが杖で地面を叩いた。

 

「静粛に。諭示裁定カーディナルは、正常に動作している」

 

言われて見れば、確かに僅かに傾いているようにも見える。しかしあまりにも振れ幅が小さい。

 

何故か。

理由を考える旅人は、ふと、諭示裁定カーディナルの機能を思い出した。

 

 

──諭示裁定カーディナルは、民衆の心の傾きを反映する。

 

 

ならば──民衆の心は、この争いに関して、どちらにも傾いていないというのか?

 

 

 

「はいはーい! ヌヴィレット最高審判官、発言と新たな証拠の提示許可を求めます!」

「認めよう」

 

旅人の混乱を打ち破ったのは、快活なシャルロットの声。

 

思わぬ闖入者の存在に目を丸くしている旅人に向けてウィンクをひとつ弾いたシャルロットは、そのままいくつかの紙面と写真を取り出した。

 

「これは今から370年ほど前に発行された雑誌の一面で、こっちは200年ほど前に新聞社に投稿された写真です!」

 

白黒もカラーもあるその写真は、しかしそこに映るのがどれもフリーナであると分かる。

 

ある写真ではフリーナは野鳥に襲われ、ある写真では階段で転び、ある写真ではどこかの森で眠っているフリーナの姿があった。

 

「ちょちょちょちょ、ちょっと待ってなにそれ!? いつの写真だい!?」

「どれもフォンテーヌの人たちがたまたま撮影した物です! たいていアングラ誌に投函されたりお蔵入りになっていたんですけど、頑張って探してきました!」

 

記者なので! などというシャルロットをよそに、旅人はその写真をよく観察する。

 

上手く撮れた写真もあれば、ピントがボケて何が何だか分からない写真もある。中には誰かの自撮りもあり、よく見るとその片隅にフリーナが映り込んでいた。偶然入ったのだろうか。

 

 

そしてそれらの写真に共通して、フリーナのすぐそばには()()()()()()()()()()()()がいる。

迫り来る野鳥を跳ね除け、クッションのようにフリーナを受け止め、ハンモックのようにフリーナを支えている。

 

 

召使から聞いた、フリーナに潜む何者かの存在が脳裏を過った。

 

 

 

「この証拠で、君は何を主張するつもりだ?」

「フォンテーヌに住む人々の多くは、フリーナ様と一緒にいらっしゃる方の存在を噂程度には知っているということです!」

 

「え"っ!?」

 

珍妙な声を出したフリーナを、この場にいる全ての人間が見やる。

 

一通り全員を見渡して、最後にヌヴィレットの冷たい視線を受けたフリーナは、へたくそで分かりやすい嘘をついた。

 

「ななな、なんのことか、僕ちょっと分からないなぁ」

 

シャルロットはフリーナを無視して続けた。

 

「フォンテーヌには、昔から『もう一人の水神』なんていう都市伝説があります」

 

腕組みをしながら頷いている者がいれば、ナヴィアのように怪訝な顔を隠さない者もいる。

 

しかし……その割合は、前者の方が遥かに多いようだ。

 

「『フリーナ様影武者説』とか『二重人格説』とか『エゲリア様黒幕説』とかいろいろあるんですけど、ともかく時折、フリーナ様の影には『誰か』がいて、その人がフォンテーヌの実権を握っているっていう、そういう都市伝説があるんですよ!」

 

ヌヴィレット様はご存知ないですか?

 

そう問われたヌヴィレットは、しばらく瞑目した後に、厳かに口を開く。

 

「……そのような噂が存在する事実は、知っていた。しかし、私がその存在を直接確認したことはない」

「そうだったの!? なんで教えてくれないのさ!」

「フリーナ殿に関する眉唾物の噂話を、なぜ本人に聞かねばならない」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

混乱した様子のパイモンが叫ぶ。

頭を整理する時間が欲しいのは、旅人も一緒だった。

 

「つまり、なんだ……フリーナには何か隠し事があるってことは、皆知ってたのか?」

 

「まぁ、何かあるんだろうなぁとは」

「だって神様なんだもの、複雑な事情もあるんじゃないかしら?」

「真相は気になるけど、それを本人に聞くのも無粋ってものだしな!」

「見たことはないが、フリーナ様を守るような存在だ、とは聞いた。それならば、まぁ別に構わないかな、と」

「前回のフリーナ様の演劇で吊り照明が故障して落下しかけていたけど、不思議な水元素の力が引きとどめていたって聞いたわ。最高審判官のおかげかと思ったけれど、もしかして……」

 

口々に答える人々に、旅人は思わず頭を抱えてしまった。

 

つまり、なんだ。

フォンテーヌの人々は、実はフリーナが神ではない可能性も知っていたと?

 

フリーナが神かもしれないし、或いはフリーナの影に潜んでいるとされている誰かが神なのかもしれない。

そのどちらの可能性も知っていたから、フリーナが神かどうかを定める裁判で、どちらにも傾かなかったと?

 

 

おいおい、何をやらかしてくれてるんだ、キミは……

 

 

「お前らの国を治める存在を軽く見すぎじゃないのか!?」

 

これでいて割と神に対する敬意や信仰心の重要さを理解しているらしいパイモンの言葉に、シャルロットが返した。

 

「フリーナ様が私たちのために尽力してくれていることは、誰もが知っているわ。彼女の調査と勧告のおかげで避難が間に合った人だって、この中にもいる。そして何よりフリーナ様は、民のために涙を流せる方よ。私たちがフリーナ様を神と呼んでスターとして慕う理由は、ただあの方が神だからというだけではないわ」

 

フォンテーヌ人は、娯楽を好む。

演劇を好み、歌劇を好み、読書を好み、喫茶を好み、甘味を好み、研究を好む。

 

神をスターかアイドルのように扱ってしまう国民性は、人々をここまでおおらかにしてしまうのか。

 

 

しかたないなぁ

 

 

ふと、対面のフリーナを見る。

 

「……ちがう、ちがうんだ」

 

なぜか、呆然としていた。

 

焦点の定まらない目を見開き、わなわなと口を震わせて、何かブツブツと呟いている。

 

 

その時、旅人は確かに聞いた。

 

誰でもない声。フリーナによく似た、それでいてまるで違う声。

かつて、ここでリネが聞いたという声。

 

 

ところで結局、本物の水神は誰なんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




適当適当適当、ぜぇんぶ適当!!
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