KAMEN-RIDER_WARS-OF-RELICS 作:大神
では、
キャラバンに僕とアテナが加わってはや一週間、野宿にもだいぶ慣れ、荷造りや馬の世話など仕事もかなり出来るようになった。もっともあくまで移動中は馬車の中にいるが。
「カンラ!そっち行ったぞ!」
真っ昼間の河川のド真ん中でキャラバンのボス、カシノキさんの声が響く。それを聞くや否や僕はベルトに変化したアテナを起動し、変身した。脳がクリアになる。そのままワンツーの要領で水に手を勢いよく突っ込むと柔らかい感触が掌に伝わる。僕がそれを引き上げると手には茶褐色で大きなネズミが握られていた。ヌートリアだ。僕はそれを天高く掲げるとキャラバン一同は歓声を上げる。
僕らは小規模キャラバンとは思えないほど贅沢な昼食にありつけた。
「まさか機神の力を狩りに使うとは、」
「いいじゃん、おかげでご馳走にありつけるし。」
狩りのためにライダーに変身することはアテナ的には乗り気ではないらしく顔に不満が表れている。僕は彼女を宥めながらヌートリアの塩胡椒焼きを差し出した。
「大体君もだよ!本来それはケイオスに対抗するためにっ!むぐぅ⁉」
うるさいので肉をアテナの口に放り込む。すると彼女の表情は和らいだ。
「ま、まあ私たちもキャラバンにはお世話になってるから、協力することも大切だと思うけど」
美味しいものが心を動かすというのは人も機神も関係ないらしい。そんな様子を見てカシノキさんは話しかけてきた。
「そういえばよ、お前さんらはなんでうちに入ったんだ?」
「私はとりあえずケイオスを全滅させたいからだね。それが私の存在理由だし」
「僕はケイオス狩りもそうだけど世界を巡りたい。ちょっと興味があるからさ。」
「まあ仕事してくれるんなら俺は大歓迎だぜ!」
残りの昼食を平らげ自由時間に入ると各々趣味や勉強に精を出していた。
カシノキさんは報告書を作成している。なんでも新しく加わった僕とアテナに関する資料を作っているらしい。
カシノキさんの妻、ザクロさんは遺跡や遺物に関する本を読み漁っていた。前に僕にトウキョウに関する知識を教えてくれた事もありそちらの分野に詳しいらしい。
ルピナさんは荷馬車で道具の整備をしている。旅は何が起きるかわからない。いざという時に医療器具や薬草をそろえておきたいんだそうな。
そして僕は、マルさんと一緒に食後のスパーリングを行っていた。ちなみにアテナはそれを遠目から見ている。
「動きがだいぶ良くなったな!だが!俺の方が速いぞ!」
生身の戦闘なら前までなら手も足も出なかった。しかし今なら。
打ち合いの中、空手の踏み込みとボクシングのディフェンスを合わせ攻撃を搔い潜り懐に飛び込んだ。
「ここなら!」
首相撲に持ち込み思いきり膝を叩き込む。しかし直後に投げられ今度は僕が倒れてしまった。マルさんは僕に向けて勢いよくパウンドを何発も叩き込んできた。
「勝負あり、だな。」
「またかよ...」
「そう言うな、お前も頑張ったぞ。」
そういうや僕とマルさんは握手し抱き合う。
「あいつにも勝たなきゃならんよな。」
「ノートリアス...」
苦い記憶が蘇る。マルさんは一撃で倒され、僕は良い様に弄ばれた。
「対策はあるのか?」
「あるよ、一つだけ、アテナ来て。」
「どうしたの?」
いつまた奴に会うかわからない以上修行は必須、であれば生身だけでなくライダーとしても進化する必要がある。
アテナをベルトに変化させ僕はフクロウを呼び鎧をまとう。
「必殺技の時みたいな要領で全身を強化するんだ。」
そう言い、ベルトのスイッチに指を落とした瞬間、それは起こった。全身が金色に輝き、シルエットが変化していった。両腕に楯が、背中にはバーニアが、両足にはスラスターが、より神々しく変わっていく。
『これは、この姿なら!』
未だ姿ははっきり見えないがアテナは興奮気味で、僕の期待も高まっている。
しかし、
「おい!なんか変だぞ!」
気が付くと警告音が鳴り響いている。
「ど、どどど、どうしようこれぇ⁉」
『私に聞かれても...』
そして、爆発した。
「カンラ!アテナ!」
全身が痛い。熱い。そう思いながら倒れ、心配して駆け寄ってくるルピナさんの存在を感じながら意識を手放した。
―――
目が覚めるとあたりはすっかり暗くなっていた。どうやら長い間眠っていたらしい。ここは荷馬車内だろうか。
ふと窓際に居たアテナがこちらに気づいたようだった。
「アテナ、ごめん、大丈夫?」
「私は無事だよ。機神は君らが思ってるよりずっとタフだから」
そんな当たり障りのない会話を終えると僕は風に当たりに行った。
「あら?」
外に出ると焚火のそばでザクロさんが読書をしていた。
「怪我は大丈夫?」
「平気だよ、おかげさまで」
「本当に?」
彼女は僕を隣に座らせ、顔を覗きこんできた。
「何か焦ってない?」
「そんなこと...」
「吐き出した方が楽だよ?」
どうやら彼女に隠し事は通じないらしい。僕はおとなしく全部話すことにした。
「強敵がいるんです。」
「前に戦って、自分なりに一生懸命やったんだけど勝てなくて」
「いつまた出会うかわからないのに自分は何やってるんだろうって」
「強くなろうとしても生身じゃマルさんに勝てないし」
「変身してもやりたいことがなかなか出来ないし」
「僕はどうすればいいんだろって勝ち方がわからないんですよ」
俯くと気づけば涙が流れてきた。そんな僕の吐露を聞いた彼女はぽつぽつと語りだす。
「私達もね、最初からいろんなことができたわけじゃないのよ。」
「いろんな失敗を重ねてここにいるの。」
「例えばカシノキは駆け出し時代自分の失敗が原因で借金まみれになったわ。」
「ルピナも病弱なせいで長旅で苦労したし、」
「マルだって、元々は戦士の街からあぶれた落ちこぼれだったのよ。」
「私も、元々は一人で冒険をしていたのだけど何度もケイオスに襲われてね。」
彼女は自身の過去に思いをはせ、続ける。
「逃げたり隠れたり策を講じていたけど、最終的に仲間と協力しようって思うようになったの」
「こう考えれるようになるまで本当に長かったわ。」
自分たちも長い間失敗を繰り返したから大丈夫だと、焦らなくていいのだとつまりザクロさんはこう言いたいのだろうか。
「でも、でもあいつは明日来るかもしれないじゃないか⁉」
「僕はあいつに負けたんだ。」
「皆を守れる自信がないんだよ。」
全部言ってしまった、情けない本音も不安も全部。
「今はみんな仲間よ。また襲撃されたら?全力で生き残るために動くしかないわね。」
「いつあるかもしれない不安に押しつぶされても仕方ないのよ。」
「その時が来たら思いっきりできることをやればいいの。」
「それに、」
そう言うと彼女は僕の両手を握り、語りかける。
「あなただって変わらないわけじゃない。」
「あなたは負けた、けどそのままで終わらせようとしなかった。」
「強くなろうと自分なりに道を模索している、それでいいと思うの。」
その言葉を聞くと僕はどこか安堵していた。
「ザクロさん、僕は...」
言い終える前に背筋に言い知れぬ寒気が走った。ふと無意識にとある方向を向くとそれがいた。
「兄貴、最近流浪の人間どもも減ってきたっすね。」
「案ずるな弟よ、あれを見ろ。キャラバンだ。我らの新しい獲物だ。」
双子のケイオスのようだ。猟犬を彷彿させるそいつらはどうやらこちらに気が付いたらしい。
「ザクロさん、下がってて。アテナ!」
「了解、復帰戦と行こうか」
何やらアテナはそわそわしている。久々の敵を目の前に気持ちが高ぶっているようで、飛んで来るや否やベルトに変化し、僕の腰に巻き付いた。
『雑念は消えた?』
「正直分からない。けどできることをやるよ。で、とりあえず今は」
僕は目の前まで来た敵を一瞥する。
「こいつを倒す。」
「なんだ、ガキっすよ俺だけでも大丈夫そうっすね。」
「変身!」
鋼のフクロウが旋回し、僕の体を優しく包み込むと現れたのは純白の戦士、仮面ライダーアイギスだ。
「機神使いか」
「前言撤回、俺だけじゃ厳しいかもっす」
弱音を聞き逃さず、僕はおそらく弟と思われる方に向けて踏み込み拳を放った。しかし、その一撃は兄と思われる方に止められた。僕はそちらに的を絞り、ヒット&アウェイで攻撃し続ける。一方相手も僕の攻撃を捌きながら反撃の機会をうかがっている。
さらに弟の方も加わり次第に押されていった。
「存外、やるではないか。最近見なかったが人間の勇者にもまだ骨のある者がいたとは」
「お前らも強いよ。それはそれとして見逃してほしいんだけど...」
「出来ない相談だな。人間であれば、皆殺しだ。それが我らの常識よ」
軽口をたたいていると弟側の攻撃をもろに受けてしまい、後ずさった。攻撃はさらに激しさを増し、ますますこちらは不利になる。
「このままじゃ...」
『カンラ、一つ賭けてくれない?』
アテナは何か策があるようだ。
「どうするのさ」
『昼間のあれをここで試すんだ。』
「正気?」
『大丈夫、君の体と私の勘を信じて』
「わかった。」
僕は飛び退いてベルトのスイッチに手をかけた。
「何をする気か知らねえがさせるかよ!」
そういうや弟の方が攻撃を仕掛けてきた。僕は上体をそらし回避すると同時にスイッチを起動させた。イメージするのはもっと強くなった自分。すると昼間同様、シルエットが変化していった。
「弟よ気を付けろ!こいつさっきと違ッ!」
「兄貴ぃ!」
彼はその言葉を言いきることができなかった。僕は完全に油断していた兄の方に思いきり踏み込み渾身の左フックを顔面に浴びせたのだ。顔面は割れ兄の方はその場に倒れ沈黙した。
それを可能にしたのが増設された背中のバーニアだ。これは想像以上に高出力で、空間を跳躍したようだった。
しかし安心はできない。例の警告音が響いたのだ。
『もう一度スイッチを押して!解除するのをイメージしながら』
「りょ、了解...」
言われたとおりにすると強化が解除され、警告音も鳴りやんだ。
『あの姿のルーツがイメージなら同じ方法で戻せるんじゃないかと思って』
「よく思いついたね、それ」
そんな会話をしながら弟の方を向き直ると激高した様子だった。
「お前、よくも兄貴をぉ!」
最も、感情をコントロールでいなくなった敵など恐るるに足らず。アテナの指示に合わせてバックステップからのカウンターを叩き込んだ。
「畜生!生意気なんだよ人間のくせにぃ!」
僕はそんなに組まれごとを聞きながらベルトのスイッチに指を落とした。マルさんとの修行で会得した渾身の後ろ蹴りを叩き込む、が
「兄貴、なんで!」
いつの間にか起き上がっていた兄の方が僕の攻撃を弟から庇った。蹴りは腹部に刺さっているが、相手はそれを掴んでおなかなか抜けない。
すると兄の方がおもむろに口を開いた。
「弟よ、我らの王に報告するのだ。我らでは、この男に、勝てぬ」
「そんな、兄貴はどうするんすか!」
「我には我の使命がある。ここで命散らす定めでも!」
「我を無駄死にさせるなよ!弟よ!」
その言葉を聞くと弟の方は一目散に走り去った。
「やばい!追わないと!」
「させるわけがなかろう!」
しかしがっちり掴まれており追跡は困難だった。
「我は貴様を殺せない、しかしなあ!こんな我でもできることはある!」
「ティンダロス一族に栄光あれ!」
そういうや彼は自爆した。昼間のような内側からのものでなく外側からの爆発ならライダーの装甲は貫けない。しかし、
「逃がしたなあ」
『これはまずいね』
僕らはまだ知る由もなかった、この後に控える波乱を。
いつもより長尺になってしまった。どうでもいいけどうちの子ヘラってばっかりだな。