KAMEN-RIDER_WARS-OF-RELICS   作:大神 

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 やっぱ悪の親玉といえば裏切りだと思うんですよ


悪だくみと無垢な献身

 

 タイガーシティからそう遠くないところに禍々しい建物がある。ミゼーア達ティンダロスの居城だ。

 多くの人はこの建物を悪趣味だと笑うだろう。だって僕もそう思うし。

 

 「ただいまー」

 

 そんな趣味の悪い建造物も僕にとっては立派なねぐらなのである。不本意だけど。

 

 「チャンドラよ、よく戻った。それでどうだ?奴の腕は」

 

 大広間に着くと、荘厳な鎧を纏った人狼が出迎えてきた。僕の雇い主にしてティンダロス一族を統べる大王ミゼーアだ。

 

 「まあまあかな。まだ脇も詰めも甘いけど、間違いなくあれは英雄の器だよ。」

 「そうか、では死んでくれ」

 

 殺気を感じ取り咄嗟に後ろへ跳び退くと、僕が立っていた地面が大きく抉れていた。

 

 「...ひどいじゃないか。仮にも僕ら仕事仲間でしょ?」

 「その通り、しかしその仕事仲間に産業スパイ疑惑があればこうもなろう。」

 「そう思った根拠は?」

 「もともと仮面ライダーだった奴を信用できると思うか?」

 

 どうやらクライエントは僕の生い立ちが気に入らないようだ。たしかに昔は人類のために戦っていたことはあったけど、今は彼らの味方のつもりだ。今回の仕事も個人の感情はともかくしっかり最後まで付き合う予定だったんだぞ。それなのに...

 

 「どんな気持ちだ?この前まで下に見ていたであろう切り捨てられた側に回ってみて」

 「最悪だね。」

 

 こんな所で、こんなところで死ぬわけにはいかない。そんな僕の意志に答えるように僕の体を鎧が包む。

 

 「まさか戦う気か?余に勝てるとでも?」

 「そんな気はなかったんだけど、けどここで死ぬ気はない。逃がしてくれないでしょ」

 

 そう言うや手持ちの槍を渾身の力で投擲する。当然のように彼は自分に向けられた刃を頭上へと弾き上げた。

 

 「足止めにもならんぞ馬鹿め!」

 

 そう言うや彼は僕に向けて光弾を放ってくる。

 

 「一瞬止められれば十分なんだよ!」

 

 僕は跳躍し、空中の槍を手に取る。そのまま奴の肘関節目掛けて渾身の斬撃を振り下ろした。接触した瞬間、爆発による衝撃が走り僕は吹っ飛ばされた。

 しかし手ごたえは確かにあった。僕の武装は特別性だ。自由落下を乗せた一撃なら腕の一本くらい持って行けただろう。

 

 「なるほど、なるほど、そうか」

 「しかし惜しいな。機神と共にあればよかったものを」

 

 煙の中から期待や希望を打ち壊すような声が聞こえた。悪い予感がする。

 その読みは正しかったようで視界が晴れたやつを見ると全くの無傷だった。

 

 「チャンドラ、貴様は重大な見落としをしている。」

 「我が恐怖政治を敷いてきたのは数千年以上前からだ。」

 「そんな中、一度も反逆が起きぬわけがなかろう。」

 「ではなぜ、我が今もここを統べているか。」

 

 そう言うや渾身の蹴りが僕を襲った。僕は壁へと勢いよく叩き付けられた。

 

 「効かぬのだよ。英雄の、機神の力のこもっていない攻撃などなぁ!」

 

 運悪く、僕は機神と別れていた。会いたくても会えない、だから探している。だからまだ死ねない。

 僕は煙幕を使い居城から逃げ去った。ボロボロな体を引きずりながらの遁走は実に無様だと自分でも思う。どうやら追ってもすぐ放たれたようで背中に何発も砲撃を受けた。それでも走って走って走り続ける。

 いつの間にか体が限界に達したようで茂みに倒れ込んでしまう。

 

 「もう走れないや」

 

 連中が本物の犬のように鼻が利かないことを祈りながら僕は意識を手放した。

 

―――

 

 僕は今、ハルに連れられ街の外の平原をシーザーに跨り駆け抜けている。その感想は一言でいうと爽快だった。

 草木の香り、心地よい風、何よりシーザーの背中、全てが最高だ。僕はキャラバンでは荷馬車に載ってばかりなのでこの経験がとても貴重に思えるのだ。

 

 「カンラ、そろそろ馬を休ませようよ。僕もおなかすいちゃったし」

 「わかった。じゃああそこの茂みにでも」

 

 僕らは近くにあった自然の休憩所に腰を下ろし各々くつろいでいた。ハルは料理の準備をし、クロクモはハルの持参したクッションに体を預け寝そべっている。僕とシーザーは近くの茂みを探索していた。

 すると―

 

 『ねえカンラ、あそこに誰か倒れてない?』

 

 アテナの言葉を聞き近くを凝視すると、近くで傷だらけの少年が失神していた。僕は急いで駆け寄るとシーザーへと目線をやった。シーザーは何か言いたげな様子ながらも屈んでくれる。僕は頭を揺らさぬように少年をシーザーの背に乗せ、一緒にハルのもとへと戻る。どうやら料理は完成していたようで良い匂いが立ち込めていた。

 

 「ハル!薬とか包帯とかない!?」

 「あるけどどうしたのさその子、ボロボロじゃないか!」

 「あっちで倒れてたんだ!放っておけなくて、それで...!」

 

 ハルは納得したような顔で荷物から用具を取り出し応急処置に取り掛かる。持ってきた荷物によりかからせつつ止血などを終えた。

 

 「まったく、見ず知らずの子供を見てすぐ助けるなんて君は本当にお人よしだねえ。」

 「でも見捨てたくないよ。傷だらけだし放置したらどうなるか。」

 「まあそういうところが、君のライダーたる由縁なのかもね。」

 

 談笑をしつつ僕らは食事を摂る。鍋からすがたを覗いたのはうどんっぽいなにかだった。なんでもそれは"ほうとう"というらしい。土地の特性により米が作りにくいタイガーシティでは小麦が主食なんだそうな。そんな土地柄が生んだ数千年以上前から愛されてきた郷土料理がこのほうとうらしい。

 その匂いにつられてか、傷だらけの少年は目を覚ましたようだった。

 

 「ここ、どこだ、あれ?包帯?なんで」

 「目が覚めて良かった。大丈夫?」

 

 意識を取り戻した少年にとりあえず話しかけてみる。

 

 「君たちが助けてくれたの?なんで?」

 「カンラが運んできたから」

 「だってほっとけなかったし」

 

 僕らの言葉を聞き、少年は「ありえない!」と言った顔をする。

 

 「でも僕の傷見たでしょ!面倒ごとに巻き込まれるかもしれないよ!なのになんで...」

 「そういうのは起こってから考えるよ。それに、」

 

 僕は自分の腰に目をやった。そこには壮麗なデザインのベルトが巻かれている。

 

 「きっとこういうことのために僕はここにいると思うから。」

 

 そんな話をしていると、少年から空腹を告げる音がした。

 

 「その様子じゃ碌に栄養取ってないっしょ。まだ残ってるから、ほら」

 

 彼は驚きつつも、ハルから椀を受け取り、麵をすすった。

 

 「あったかい」

 

 そんな彼の声を聞きながら、僕らは笑顔でただ彼を見守っていた。

 




・チャンドラ/擬神装甲ベラドール
 経歴などほとんどが謎に包まれており、歴史研究者はおろかケイオスでさえ彼のことをよく知らない。昔は人類の味方として日夜戦っていた。現在は機神と分かれている。

・ミゼーア
 ケイオスの中で、数千年続いた神話大戦を生き抜いた古株。そのカリスマと恐怖政治によってティンダロス一族を統治している。一族の主な生業は旅人や行商人の襲撃であり、犠牲者は数万人規模に及ぶ。
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