KAMEN-RIDER_WARS-OF-RELICS 作:大神
では、
状況は芳しくない。こちらの奥の手まで出して奴を追い込んだつもりだった。しかし、奴は今から本番と言わんばかりの態度だ。
「どうした英雄見習い、俺が怖いのか?」
「ふざけるな!どうせそんなのこけおどしだろ!」
僕は語気を強めて答えた。正直言うと本当に怖い。けどそれを勘付かれるわけにはいかない。だから強がる。自信を大きく見せて奮い立たせるんだ。どうやら弱い犬ほどよく吠えるという言葉はなかなかの真理らしい。
「お前をここで倒せばミゼーアだって!」
僕は駆け出した。倒せなくてもこいつを引きつけられれば、そんな思いから僕は再び勇んで敵に攻撃を開始する。
「調子に乗るんじゃねえよ!雑魚が!」
「遅い!」
有効射程に入った瞬間、奴は僕に大ぶりのパンチを放ってきた。しかしそれは技術も減ったくれもない。どうやら打撃の技術に関しては僕の方が上らしい。すかさず体をひねって躱すと僕は奴の懐に飛び込み、渾身の膝を顎に叩き込んだ。
すると奴は崩れ落ちる。村でも何度かこのようなことはあった。格闘技の試合で相手を失神させたときだ。その証拠に、敵の急所を撃ち抜いたという確かな手ごたえが体に残っていた。僕は達成感が全身を走るような感覚を覚えた。
「やった。後は街に戻れば...」
『カンラ逃げて!そいつはまだ...!』
相棒の忠告を理解する前に僕の世界は反転した。それがすぐに覚醒した敵に投げ飛ばされたことによるものと気付くのは数秒後の話だった。
「戦場で気ぃ抜くんじゃねえよ。殺し合いと試合は違うって教わらなかったのか?」
「ただまあ、さっきの一撃はなかなかに効いたぜ。これから殺すのが惜しいくらいだよ」
そう言いながらも僕を見下ろす奴の目には明確な殺意が浮かんでいた。刹那、顔面に強烈な痛みが走った。僕は今変身している。大体の攻撃は精々衝撃が走った程度で済むはずだ。つまり、鎧の上から効かされたということだ。奴のフィジカルの強さがそれを可能にしている。僕は慌てて腕でガードするが奴は関係ないと言わんばかりに殴り続ける。
「さっきの礼だ。たっぷり味わえよ。」
そこからも雨のような打撃が僕を襲う。痛みで考えがまとまらず、手で防ぐことしかできない。それでも何か、何かできるはずだ。その一心でガードを下げる。
「諦めたか。だがお前は楽に殺さねえ!」
奴が拳を再度振り上げた瞬間、僕はベルトのスイッチに指を落とし、足に力を込める。
「苦しみながら地獄に落ちろ!仮面ライダー!」
「死ぬのはお前だ!」
奴の拳が僕に届く前に顔面を思いきり蹴り上げてやった。はるか後方へ吹っ飛んだことを考えるに暫く時間は稼げそうだ。
「あれ?」
刹那、僕はその場に倒れ込んだ。そのまま変身も解除されてしまう。
「やっぱり、さっきのでダメージが...」
『すぐに離れよう。まだ、安心できないよ...』
僕は手をつきながらもゆっくり立ち上がる。
「うん、帰ろう。皆のところ...」
その先は言えなかった。体を見ると、胸に拳がめり込んでいる。少し遅れて痛みもやってきた。きっと肋骨は折れただろう。内臓も多分、いくつか駄目になった。
「え...?」
『カンラ?』
僕も相棒も状況が読めなかった。そのまま宙を舞い、受け身も取れず、僕は地面に激突した。
「そ...な、なんで?あれ...」
せめて立ち上がろうとうつぶせになり手をつく。しかし、その手は思いきり踏みつぶされた。言葉にならない悲鳴を上げてしまう。
「ガキの遊びも、これまでだ。」
そこに立っていたのはMENDESだった。よく見ると顔の一部が欠損している。
「お...まえ、なんで...?さっき吹っ飛ばして...それで...」
「なめんなよ人間、強襲型はお前らが思ってるよりずっとタフなんだ。」
意識が混濁してきた。周りの景色もよく見えないし音も聞こえにくい。それでも、
「なんだよガキ?俺の脚に手をかけて、舐めてくれるのか?」
「お、まえを...み...なのとこ...に、いかせない!」
それでも、やることは一つだ。こいつに仲間を傷つけさせない。
「そうかい...大した決意だな。」
奴はもう片方の、僕の手を踏み潰した方の足で、僕の頭を思いきり蹴り上げた。
「お前、病気だよ。」
今際の際に耳へはいったのはそんな言葉だった。
―――
「さてと、奴らはまだ街に着いちゃいないだろ。さっさと皆殺しにして帰るとするかね。」
猟犬はそう言うや走り去った。
―――
そこに残ったのは倒れた少年だけだ。志半ばで朽ち果てたように見える。
しかし、
『死なせない...君だけは、絶対に...』
そんな声があたりに木霊した。
・仮面ライダー この世界においては、機神と手を結び戦う人間を指す。