KAMEN-RIDER_WARS-OF-RELICS 作:大神
―――
「君が答えてくれたの?」
僕は一瞬訳が分からなくなった。無理もない話だ。謎の声に導かれた結果村はずれの廃墟にたどり着いて、中には絶世の美少女がいたなどとても現実味がないのである。
「どうしたの、お化けでも見たような反応だね、手っ取り早く話したいんだけど」
「それともこう言った方がいい?」
少女は僕へと歩みより、耳打ちした。
「君の見る夢は私が見せた」
その言葉を聞いた途端、全身に鳥肌が立った。これまで怖い思いをしたことがないと言ったら噓になる。いたずらの度が過ぎて村長に怒られたときとか。
けど今のこれとは色々違う。これは、得体が知れない物への恐怖だ。人知が及ばない物への恐怖だ。僕はすぐに飛び退き臨戦態勢を取る。
「え、あ、ごめん、怖がらせるつもりはなかったんだ...」
少女はびっくりしたようだった。同時に罪悪感と焦りが見える。
「どうしよう、せっかく心が通じた人と出会ったのに、嫌われたらどうしよう...」
なんというか思ったより怖い人じゃないらしい。
「あの僕は大丈夫だから、一回話そう、聞きたいこととかいっぱいあるし」
「...うん、ごめん怖がらせて」
期せずして、僕たちは辻褄合わせをすることになった。
「自己紹介からだよね。私はアテナ、君たちが機神って呼んでいる内の一柱なんだけど、神話大戦に参加できなかった周回遅れなんだ。」
「えっと、僕はカンラ、さっき例の夢を見せたって言ってたけど本当なの?」
「うん、あれは私が目覚めてもすぐに戦いの列に参加できるように仲間が置いて行ってくれたんだ。」
「質問なんだけど、それがなんで僕にも見せたの?」
「一緒に戦ってくれる仲間が欲しかったんだよ、私は君が生まれたときから組みたいと思ってた。」
謎は解けたものの新しい謎も生まれた。何故僕なんだ、いやそれよりも、
「それは僕が仮面ライダーになるってこと?」
彼女は頷いた。自分もなれるかな、夢に出たような勇猛な英雄に。
「外が騒がしい、何か起こったな」
駆け出したアテナの後を追う。外に出ると村は炎に包まれていた。
―――マル視点
交渉は成立し、無事村で休めるようになった。
「お疲れ、マル、今日はしっかり休めるね」
「ああ、お疲れルピナ、怪我は大丈夫そうか?」
「平気だよ、すんでのところでマルが助けてくれたから」
俺と対象のボスの息子であるルピナは談笑しながら盃を交わす。日中蜘蛛の化け物に襲われたときに彼は手を怪我した。にもかかわらず、逃げる時は痛みを無視して積極的に荷馬車をまとめ上げることに尽力した。まだ若いが将来が楽しみな男だ。
「出発は明日だ。しっかり休もうぜ。」
この時の彼らは後の惨劇を知る由もなかった。
―――????視点
最近は上手くいかないことが多い。この地方にキャラバンを含む人間が来なくなった。オレは今まで人間を襲っては痛めつけ絶命するまでその声を楽しんでいた。しかし最近はめっきり獲物が来なくなり、日中もせっかく現れた獲物を捕らえ損ねた。しかし、前々から襲撃しようと考えていた場所があり、今はそこを襲撃しようと思っている。
暗闇の中、オレはひたすら部下の知らせを待った。すると―
「アラクネ様!件の村を襲撃する準備が整いました!」
吉報が届いた。どうやら部下の骸骨機兵はうまくやってくれたようだ。俺たちのアジトから近いある場所に人里があることは知っていたが、塀に囲まれているなど、そこそこ守りが堅かったため準備をしていた。先ほどはとあるキャラバンを襲撃したものの逃げられてしまった。ここらで鬱憤を晴らすのも悪くないだろう。
「では始めようか、人間どもの断末魔の悲鳴を聞きに行くぞ!」
あとは早かった。部下の戦闘員達は村へ向かい、門を破壊し、蹂躙した。所詮貧弱な下等生物が我らの手から逃れられるはずがなかった。あたりがを血しぶきや肉片が飛んでいる。逃げまとう者も追い詰め嬲り殺す。愉快なことだ。
しかし、部下のうち何人かの断末魔が聞こえてきた。そこには斬り伏せられ機能停止する部下の残骸が転がっており、
「お前、あの時の蜘蛛野郎か…」
見覚えのある顔の男がいた。たしか日中に襲ったキャラバンの護衛士だったか。
「久しぶり、でもないな。こんなところで会えるとは」
「誰かと思えば尻尾を巻いて逃げたクズか、噛まれた小僧は元気か?」
「黙れよ怪物、今度こそぶっ殺してやる。」
そう言い、男は得物の剣を起動した。機械仕掛けの剣を一丁前に構えているが表情には恐怖が見える。オレは自身のかぎ爪で男の攻撃を捌く。所詮は人間だ。オレは遊び感覚だが相手はどうやら必死らしい。まあ、なんでもない相手だった。ここらで終わりにしてやろうと前蹴りを男の腹にたたき込むと吹っ飛ばされ瓦礫にぶつかり気を失った。
すると別の男が駆け寄り抱え上げていた。
「ほう、お前はあの時のキャラバンの小僧か、ちょうどいいお前に用があった。」
「...お前、なんでこんなひどいことができるんだよ!人の命を一体何だと!」
「思いあがるな、下等生物の命?そんなものに価値などない。虐待すれば面白い声で鳴くだろう」
「ふざけるなあ!」
いくら吠えたところでなにも起きやしない。下等生物はどこまで行っても下等生物だ。
―――カンラ視点
「ひどい」
村の惨劇を見て、最初にそんな言葉が出た。ここは地獄だろうか。建物は燃やされ人は沢山死んだ。あの夢の再現だろうか。今すぐ逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
そんなとき視界の端にあるものが入ってきた。ガイコツみたいな兵士が逃げ惑うパラスを追い詰めていた。その瞬間自分は駆け出していた。
「やめろ!パラスに手を出すな!」
気が付くと僕は、骸骨に横から体当たりしていた。だって見たくなかった。生まれて物心ついたころからの友達があんな化け物にひどい目に遭わされるなんて考えたくもない。
「けがはない!?」
「カンラ、村に怪物が、門が破られて、それで、キャラバンの人達がみんなを避難させたけど、逃げ遅れてっ」
「わかったとりあえず逃げッ!」
「カンラ!」
その瞬間僕は吹っ飛ばされた。目を開けると骸骨は僕の方へ向かってきた。
なかなか立ち上がれない。このままじゃ...
「無茶なことを、けどそういうの好きだよ。」
その瞬間、骸骨に電撃が走り焼失した。
「...アテナ、ありがとう」
「いいよ、君みたいな人を待ってたんだ...」
そういうとアテナは僕を支えて立つのを手伝ってくれた。
「僕、一瞬怖くて動けなかったけど、無我夢中で」
「わかってる、けどそういうのが大事なんだ。」
「ありがとう、改めてだけどなれるかな、仮面ライダーに」
「勿論、さあとりあえず奴らを片つけよう」
覚悟は決まった。あとはやりたいことをやろう。そう思い、歩を進めるとパラスが止めに入った。
「行かないで、死んじゃうかもしれないんだよ?さっきだって危なかったし」
彼女の意見は最もだ。ここは戦場、命の保証はない。でも、
「それでも逃げたくない、僕はこの村で育ったから、それに知ってる人も怪我したかも、もしかしたら死んでるかも、僕はそれが許せない。だから行くよ」
「だからって...」
「その代わり、絶対生きて帰ってくるから。僕を信じて」
彼女はしばらく考えた末に頷いた。するとアテナは咳払いし口を開いた。
「話はまとまったね。早速だけどパラスちゃんだっけ、君は廃墟に隠れていてくれ。」
パラスは頷き走り出した。
「行けるかな」
「大丈夫、私もいるから」
僕らは地獄へと駆け出した。途中で遭遇した骸骨はみんな電撃で灰になった。絶望の最前線は近い。
「見えた!」
そこには蜘蛛みたいな怪物がいた。どうやら護衛士さんは失神したようだ。怪人は駆け寄るキャラバンのボスの息子を嘲笑しているようだった。ふとこんな言葉が聞こえてきた。
「思いあがるな、下等生物の命?そんなものに価値などない。虐待すれば面白い声で鳴くだろう」
ふざけんな。遊び感覚で人の命をもてあそんで、絶対に許さない。そんなことを考えているとアテナは僕の背中をたたいた。
「怒りにのまれちゃだめだ。それじゃ機神の力は乗りこなせない。」
「...ごめん、どうすればいい?」
「気をしっかり持つんだ、きっと行ける」
その言葉と共に彼女は光に包まれバックルとなり僕の腹に着き帯が巻かれた。
けどそのとき蜘蛛の化け物はキャラバンの青年に襲い掛かろうとしている。
「落ち着け。忍者みたいに。力づくで行くな」
その言葉を聞くと僕はベルトの上にあるスイッチを押し、システムを起動させる。
『WAKE UP』
「よし、後はイメージしてこう叫べ」
後戻りはできない。
「「変身!」」
『You are a man of his word.』
バックルから機械の鎧のようなフクロウが飛び出した。フクロウは僕を守るように蜘蛛の怪物を吹っ飛ばす。そして、僕の体を抱きしめるように密着し次第にそれは鎧のように纏われた。
きっとその鎧は壮麗という言葉が似あったと思う。白をベースにした鎧には、小振りながら立派なトサカ、深紅の瞳とスカーフ、端々に見える金とエメラルドの装飾が施されていた。その姿はまさしく神話の英雄だった。
「成功したの?」
『そう、これが仮面ライダーアイギスだよ』
なんだか勇気がわいてきたような気がした。すると怪物は立ち上がりこちらを睨みつけてきた。
「どういうことだ。ここに機神がいるなんて情報はないはずだ。」
「まあ私は特に宣伝とかしてないしね」
こちらを見た怪物は怯えている。僕は敵を威圧するように歩を進める。
「く、来るな...」
「来るな?散々人々を苦しめといて、何いっちょ前に怯えてるんだ...!」
一歩、また一歩進む。怒気を込めて威圧するように。すると怪人は後ずさる。僕は思いきり踏み込み、怪人の目の前に飛び込んだ。そして、
「絶対に許さない。」
「やめろ...」
その瞬間、僕は拳を思いきり振りぬいた。
「がぁっ!?」
怪物の顔をを殴り飛ばす。瓦礫に激突したそいつの頭は破損し、中のプラグがむき出しになっていた。
「ふざけんな、今までずっとオレが偉かった。人間のくせに、下等生物のくせに、」
そういうと奴の周りに骸骨が集まってきた。主君を守ろうとしているらしい。
「お前ら、そいつを殺せ!」
「来い。」
僕は両手をサウスポーに構え迎え撃つ。敵の攻撃を躱しながらジャブで牽制し、ストレートやフックで顔を潰す。そうして確実に数を減らしていった。
「何でだよ!数百年だぞ!なんで今更になって現れるんだ!化石野郎がぁぁぁぁ!」
相手は自暴自棄になりこちらに走ってきた。
「カンラ、変身で使ったボタンをもう一度押してみて」
「わかった」
『overflowing』
アテナの言うとおりにしてみると何か奇妙なことが起こった。全身に力が湧き、やがてそれは右足に収束した言った。僕は奴の顔めがけてハイキックを放った。
「この!下等生ぶっ!」
それ以上先を言うことはなかった。気づくと怪物の顔面は先ほどの蹴りで粉砕されており、奴はそのまま倒れ、そして爆散した。僕は爆心地にいたはずだがなんともなかった。機神の鎧が守ってくれたのだろう。
僕は変身を解き、そのままへたり込んだ。初めての実戦で全身が悲鳴を上げているらしい。するとアテナもベルトから少女の姿に戻ったようだった。
「お疲れ、仮面ライダー」
これはまだ始まりに過ぎない。
読んでくれてありがとうございました。