KAMEN-RIDER_WARS-OF-RELICS 作:大神
では、
―――カンラ視点
『カンラ、逃げたほうがいい、あれはケイオスなんかじゃない。あれは!』
『機神だ!』
僕はアテナの言葉を聞いて呆気に取られていた。目の前に佇んでいるのは5メートル近い巨大な機械の獣、恐ろしいがどこか荘厳なそれはこちらに気づいたようだった。
僕らまでゆうに数十メートルはあるだろうに、ノトーリアスと呼ばれたそれは勢いよく跳躍し、僕らの方まで迫ってきた。
「なんて機動性だ!」
「危ねえ、あんなのに捕まったら俺たちは...」
僕はとっさにマルさんを抱え思いっきり後ろに跳んだ。すると先程まで僕らのいた場所はクレーターと化していた。
僕がマウント取って殴っていたヴァンパイアは宙に浮いたところをノトーリアスに銜えられていた。よく見ると力が加わっており、今にも千切れそうだ。
「なぜだノトーリアス、敵は私じゃないぞ、奴らだ、それなのになぜ...!」
ヴァンパイアは自分が攻撃されていることが信じられないようだった。するとノトーリアスが思念のようなものを飛ばし答えた。
『貴様が我らの主を殺したこと、忘れたとでも思ったか...!』
そう答えるやノトーリアスは銜えていたヴァンパイアを思いきり噛み千切った。先程の戦闘で肉体が限界だったとはいえ必殺技すら使わず奴を絶命させたというのか。
「マルさん...」
「ああ、わかってる。敵か味方かわかんねえけど、あいつは危険だ。」
ふとあいつの方を見るとこちらに向けて臨戦態勢に入っていた。
「向こうもやる気かよ。戦いたくねえ」
『カンラ避けて!』
一瞬だった。一瞬でそいつは僕らの懐に入り、大きな右拳を横から叩き付けた。僕はアテナの指示を聞き瞬時に躱した。
では指示が聞こえないものはどうなっただろう。
「マルさん?」
先程のオーバーハンドをもろに受けたマルさんは水切りのように何度も地表に叩き付けられぐったりとしていた。
ノトーリアスはというと構え解き僕に話しかけてきた。
『今の我らの一撃を躱すとは、君は主か?生きていたのか?』
「ごめん、僕は君の主の事は知らない」
『そうか...』
「君は僕の仲間を傷つけた、悪いけどこのまま帰さない。」
正直全然勝てる気がしない。けど、たとえ小手調べでもこんなことをされて黙っていたくない。今はアテナもいる。一発かましてやりたいと思った。視界の端にいるマルさんの体躯が僅かに動いた。良かった、まだ生きてる。
僕の言葉を聞いたノトーリアスは再度臨戦態勢に入った。僕もアウトボクシングに構え、開戦に備える。
『来るよ!』
「うん!」
それはまるで嵐のような連撃だった。圧倒的なスピード、一撃で僕らを終わらせられるパワー、まさしく一瞬の油断が命取りになる。
大振りの拳を躱し、瞬時にベルトのスイッチに指を落とす。僕がこいつに勝つには一発に賭けるしかない。左拳に力を込めて渾身のカウンターを奴の顔面に叩き込んだ。これで勝敗が決するはずだった。
『まだその程度、やはり君は我が主ではない。』
まったくの無傷だった。呆気に取られている隙に僕の体に衝撃が走るのを感じた。そうして空に打ち上げられ村の防壁に叩き付けられた。体のあちこちが軋む音がした。怖い、逃げたい、けど立ち上がらないと...
ふとノトーリアスの方を見ると口腔に力が収束しているようだった。
『あれを食らったらまずい!カンラ!逃げなきゃ!』
「けど、避けたら村が...」
光は臨界に達したようだ。
『唸れ!ブラフマーストラ!』
そして放たれた。もう逃げきれない。ならせめて、僕は指をスイッチに落とした。残るすべての気力を振り絞り、あらがってみせる。拳を振りかざし、放った渾身の左フックは敵の攻撃を相殺できたように思えた。現に村は防壁の一部が崩壊しただけで無事だった。
思ったよりも大丈夫だと、そう思った刹那、僕は絶望を知ることになる。左腕が蒸発していた。いや、それだけではない。全身の装甲が半壊し、一部は融解していた。感覚が追い付いてきた。熱い、痛い、怖い。
「そんな、完璧に合わせたのに...」
呆気に取られている場合ではない。ノトーリアスは再度あれを撃とうとしている。
「僕が、やらなきゃ村は、皆は」
死ぬのが怖い。痛いのが怖い。熱いのが怖い。それでももう誰にも死んでほしくない。
せめてもの抵抗として、身体で受け止めるしかない。
『唸れ!ブラフマーストラ!』
「やめろおおおおおっ!」
全部終わったと思った刹那、それは起こった。さっきみたいな怖い熱じゃない。どこか優しくて内から湧き上がってくるように感じた。
ふと目を開けると自分、そして村全体が暖かな光に包まれていた。それを見ると先ほどの恐怖は消え笑みすらこぼれてきた。
『聖域か、それもこれだけの光、なるほど』
『今わかった。主たちの死は、きっと無駄ではなかったのだな』
ノトーリアスがそれを見て何を思ったかはわからない。それでも敵意が消えたことは確かだった。
彼は納得したようにその場から跳躍し、去っていった。
「僕もまだまだだなあ。」
納得、満足、安心、恐怖、屈辱。さまざまな感情が全身を駆け巡り僕は意識を手放した。僕はあいつに通用しなかった。一杯食わせることもできなかった。悔しい、けど村を、皆を守れてよかった。
勝利の女神がいるので気が大きくなってます。