魔王と魔王   作:一般龍人族

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清水救済ものってよくあるけどいざ自分がやるとこれでいいのかってなる
今回は仮面ライダーに関して軽くメタい話が入ってるので注意かも


清水幸利2019

 魔物との戦いの終わりが見え始めていた。

 

 ジオウがライドヘイセイバーを操作する。

 

『ヘイ! 響鬼!』『響鬼! デュアルタイムブレーイク!』

 

 刀身に宿った炎が更なる刀身を生成する。ジオウはヘイセイバーを両手で構え、横に振りながら身体を一回転。

 

 炎の一閃は周囲の魔物達の身体を裂いて、血肉を焼き尽くし、その命を刈り取ってゆく。

 

『ヘイ! キバ!』『キバ! デュアルタイムブレーイク!』

 

ヘイセイバーから金色の蝙蝠達が顕現する。飛びゆく蝙蝠達は魔物達にぶつかれば爆発し、相手の肉体を破裂させる。その様子はさながら飛ぶ爆弾である。

 

『ファイナルフォームターイム! ビ・ビ・ビ・ビルドー!』

 

 ジオウはビルドライドウォッチをディケイドライドウォッチのスロットにセット。

 

 胸アーマーの"コードインディケーター"にスパークリングという赤と青の文字が出現し、顔のプレートの"ディメンションフェイス"には仮面ライダービルドの顔が浮かんでいて、四肢の装甲もビルドのモノに変化。

 

 これはディケイドライドウォッチの能力"ファイナルフォームタイム"によるもの。

 

 ディケイドライドウォッチのスロットに他のライダーのウォッチをセットすることで、そのライダーの強化形態の力を行使することが出来るのである。

 

 今の形態の名称はビルドライドウォッチを使った"ディケイドアーマービルドフォーム"であり、仮面ライダービルドの強化形態"ラビットタンクスパークリングフォーム"の能力を使う。

 

 ジオウが一体の魔物を殴りつける。瞬間、泡が弾けると同時に、魔物の身体がぶち抜かれた。後ろから攻撃しようとする魔物がいたが素早く避け、その魔物の胴体に蹴りを入れ、風穴を開けた。

 

「……? 居ない?」

 

 ふと周囲を見た時、アナザージオウ達がいないことに気づく。まさか土壇場で逃げたのかと少し思うが、ここまで有利に進めているのに怖気付いたからとは思えない。では何故か? これだ、と言えるものは思い浮かばない。

 

「……考えてる場合でもないか!」

 

 迫る魔物達を見て、両腕についてる"スパークリングブレード"で切り裂く。

 

『ビ・ビ・ビ・ビールドー! ファイナルアタックタイムブレーイク!』

 

 ビルドライドウォッチのリューズを押し込み、上へと飛ぶ。そしてそのままジオウは急降下し、足にバブルを纏わせながら魔物達にキックを見舞う。

 

「っと……ん?」

 

 体勢を整えたジオウは、遠くの方で魔物に跨って逃亡を図ろうとしている人影に気付いた。

 

「……もしかして」

 

 ジオウは戦闘前の愛子との話の内容を思い出す。

 

 

「えっと……お二人とも、南雲くんと一緒に出向かれるんですよね? それで少し、話があるんですが……」

 

 愛子に呼び止められた時のこと。彼女は魔物を操る黒幕に関する推察を話した。

 

「魔物を操ってる人なんですけど……もしかしたら……私の受け持ってる生徒かもしれないんです」

 

「!」

 

 それを聞いてソウゴの顔には微々たるものだが、驚愕が浮かんでいる。彼は愛子に真偽を問う。

 

「……本当?」

 

「……かもしれない、なので、断定はできないんです。でも、ティオさんの話を聞いて……どうしても気になってしまって……」

 

眉と共に視線を下に下げ、不安げな表情の愛子。

 

「清水幸利くん、って名前なんですけど……えっと、容姿は……頬にそばかすがあって、髪型はパーマとか当ててない普通の状態で、染めたりもしていません…………えっと…………」

 

 少し言い淀んだ後、視線を上げて向き直る。

 

「…………なので、その…………操ってる人の見た目が同じだったら…………連れてきてもらえることはできないでしょうか? ……無理な頼みなのは承知ですが、どうしても確認したいんです。……お願いします」

 

 その後は、ソウゴとティオが彼女の願いを承諾した。

 

 

 人影にジオウは迫る。それを途中で魔物達が阻もうとするが、全て切り裂かれていく。それから人影に追いつくのはすぐのことだ。

 

「———————ッ!」

 

その人物がジオウが間近まで接近してることを確認した数秒後、一瞬の痛みを感じたと同時に意識を失った。

 

 

 元の世界でのある日のこと。

 

 とある少年が部屋でテレビをぼーっと見ていた。特にやることもなかったので、暇つぶしに、と言った感じである。

 

 そんな時、あるCMが流れた。

 

『次回! 仮面ライダーガッチャード!』

 

 それは仮面ライダーのCMであった。OPソングがバックで流れる中、次の放送回の予告が映し出される。

 

『日曜! 午前9時!』

 

「……仮面ライダー、小さい時に見てたっけなぁ」

 

 ふと、思い出す。昔は仮面ライダーカッコいい! なんて思いながら無邪気にはしゃいでた気がする。変身ベルトも買ってもらって、ガチャガチャ弄って遊んでたっけ。

 

 自分が好きだったのは……確か、電王とダブルとフォーゼってやつだったような。その作品の主演達は今や超有名なベテラン俳優だ。

 

 内容はなんとなく覚えてる。電王は赤青黄紫……後、白と緑の怪人みたいな仲間がいて、ダブルは二人で一人、フォーゼは沢山の友達を作るやつだった。

 

 今の自分はオタクだが、仮面ライダーのような特撮系に関しては履修していない。専らアニメやラノベを履修している。ジャンルとしては、大体美少女が出るやつである。

 

 何処かしらで仮面ライダーを見るのは卒業してた。子供向けだから、見るのはダセェみたいな理由だったと思う。持っていたベルトとかも中古店に買い取ってもらった。

 

「…………俺も、仮面ライダーにでもなれりゃあ、チヤホヤされんのになぁ」

 

 仮面ライダーは今も子供達の人気者で、大きなお友達からも愛されている。だから、自分だってそれになれれば最高の日々が過ごせるはずだ。

 

 仮面ライダーになれる方法はあるにはある。スカウトされたりイケメンを決めるコンテストに出て優勝して芸能事務所に入って、オーディションを受けるとか云々。

 

 しかしこれまでの人生でスカウトされた経験は無いし、コンテストに出る勇気は到底ない。必然的にオーディションを受けることも出来ない。

 

 だから仮面ライダーになるなんて自分にとっては無理で、あり得ない話である。しかしあり得ないと分かっていながら、なれればと思ってしまう。

 

 どうして、そう思うのか?

 

 自分の人生は、今の今まで暗いものだったからだ。

 

 自分は大人しめな人間で、それが原因で中学にはイジメを受けていた。そのせいで登校拒否になって自室に引きこもり、二次元に没頭した。

 

 両親はずっと心配していたが、兄弟からしたら引きこもりでオタクの自分のことは邪険にしてきて、それもあり居心地の悪さみたいなのもあった。

 

 どうにか勉強し、高校に入学は出来たものの、高校デビューなど出来はしなかった。中学の時のように、大人しくして、席で本を読んでいるくらい。特別親しい友人もできた覚えがない。

 

 地味な人生だと思う。だからこそ、皆から愛されるような存在になりたい。チヤホヤされたいし、あわよくば彼女も……。流行りの異世界転生みたいに、自身も異世界でチートを手にしハーレムを築いてみたいとも思ってた。

 

「俺だって……力さえあれば……」

 

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ」

 

 しばらくして、本当に異世界に転移した。まさかこんなことが……と思いながら、興奮しっぱなしだった。

 

 しかしまあ、いざ蓋を開けてみれば。自分だけが特別な力を持ってるわけでもないし、"闇術師"という、どう考えても裏方や悪役がなるだろうものに適性があった。肝心の勇者は別の奴がなっていたし。

 

 とは言え、その時はまだ巻き返せると思ってた。ラノベでも役に立たないとか裏方みたいな役職が大逆転するものもあったし。

 

 しかし、交流は無かったのだがクラスメイトの1人が奈落へと落ちた。どう考えても助かってるはずがない、死んだとしか思えなかった。

 

 間近で見てしまった死と、それへの恐怖。

 

 その恐怖は、自身が再び引きこもるには充分だった。

 

 王宮に戻ってからは魔法の本を読み返していた。ラノベなどはここにないから当然だった。

 

 精神に干渉する闇魔法に関する記述を読んでいくうちに、あることを思いついた。

 

 ————これを極めれば、相手を洗脳することができるのではないか。

 

 まあ、それで。闇魔法の精度を上げる特訓はした。その過程で人を洗脳するには大幅な時間がかかり難しいというのが分かったが、魔物の場合であれば、洗脳することは容易だということも分かった。

 

 それから、愛子達が遠征へ行くことを知って着いて行った。

 

 遠征先の山で魔物達を洗脳した。そこで出会ったやつから、強い魔物も貰った。そしてそいつから持ちかけられた契約にも乗った。

 

 何もかも上手くいくと思った。これで俺は、勇者に、皆からチヤホヤされる人気の存在になれるんだ。

 

 その希望をぶっ壊したのは、仮面ライダーだった。

 

 

「……し………………ん…‥!」

 

「……………………」

 

「……し…………く……ん……!」

 

「………………ん…………」

 

「清水くん!」

 

「ッ!」

 

何者かに大きな声で呼ばれたことにより、清水幸利は目覚めた。身体を起き上がらせた彼は、周りを見る。居たのは教師である畑山愛子や園部達に護衛の騎士達。後は、清水にとって謎の知らない男が1人。

 

 彼らを見た清水は、座りながらも慌てて後ずさる。それを見た愛子は彼を落ち着かせようする。

 

「清水くん、落ち着いてください。誰も貴方に危害を与えるつもりはありません。……先生は、清水くんとお話がしたいのです。どうして、こんなことをしたのか。どんなことでも構いません。清水くんの気持ちを教えてくれませんか?」

 

「…………なぜ? そんなことも分からないのかよ。……俺は、勇者より……天之河よりも上手くやれるはずなんだ……! それに気付きもしないで……だから、俺の価値を示してやろうと思っただけなんだよ……!」

 

「あんた……!」

 

「園部さん、待ってください」

 

 愛子の問いに清水はそんな悪態をついた。その反応に園部達は何か言おうとするものの、それを愛子は制した。

 

「……不満が、あったんですね。でも、価値を示すなら、どうして町を襲おうと? 町を襲って多くの人が亡くなったら、価値は示せないはずです」

 

「……示せるんだよ、魔人族にならな……!」

 

「なっ……!?」

 

 清水のその一言を聞いた愛子は驚いた。魔人族。それは、この世界で人間族が戦っている種族のことだ。

 

「この前、魔物を捕まえに山の方に行ったんだ。その時に魔人族のやつと出会った。……そしてそいつと契約をした」

 

「契約?」

 

「畑山先生……あんたを、殺すことだ」

 

「…………ッ!?」

 

 その一言には愛子だけでなく、他の面子も戦慄の顔を浮かべる。

 

「アンタを殺したら、俺は魔人族の勇者として受け入れてもらうって話だ。あいつは俺の能力を認めてくれていた……! 強い魔物も貰って、大勢の軍団を作れた……! 絶対成功するはずたったのに……! なんで、俺が負けるんだよ……! 何なんだ、あの仮面ライダーみたいな野郎は!?」 

 

 清水は見知らぬ男……常磐ソウゴを見る。あの仮面ライダーの正体は誰なのか。知ってる限り、愛子や園部達はそんな力を持ってない筈だし、黒髪の女性ことティオも近くで魔法を撃っていた。だから、その正体は消去法で分かる。

 

「お前……お前だろう! あの仮面ライダーは!」

 

「…………うん、そうだよ」

 

 指を差されたソウゴは頷いて肯定する。それを聞いて清水は忌々しげに顔を歪める。

 

「ちっ……! よくも邪魔を……!」

 

「清水君、落ち着いてください! ……君の気持ちは、よく分かりました。……清水君は人に認められたかったのですね。そう思う気持ちは誰だって持ってるから、間違いではありません」

 

 清水の話を聞いて、彼の抱いてる願いを知った愛子はそれを肯定する。

 

「……ですが、魔人族の人達の元へ行ってはダメです。清水君のその想いにつけ込んで、利用しようとしたのですから。……清水くん、今からでも罪を償って、やり直すことは出来ます。清水くんが頑張りたいと思うなら、先生はそれを支えます」

 

 言葉を続ける愛子に、清水はいつしか顔を下に向け、俯いていた。

 

「だからどうか……戻ってきて……ッ!?」

 

 彼に手を差し出したその瞬間、清水は突如愛子を羽交締めにする。更には針を取り出し、それを彼女の首に突きつける。

 

「ひっ……!?」

 

「動くな! 刺すぞ!」

 

 愛子が小さく悲鳴を上げた後、清水が皆に聞こえるようにそう告げた。

 

 それを聞いて、一同も思わず動きそうだった足を止める。

 

「これは魔物から取った毒針だ! これに刺されたら毒に侵されて死ぬ! 全員、武器を捨てろ!」

 

 その一言を聞いて一同の、主に園部達女子が顔を青ざめさせる。

 

「し、清水くん……! 落ち着いて……! どうか、話を……!」

 

「アンタは黙ってろ……! アンタは大人しく人質になってればいいんだ……!」

 

羽交締めにされて苦しそうに声を上げる愛子を清水はそのように一蹴する。その後、ソウゴの方に目線を向けた。

 

「おいお前! お前は仮面ライダーなんだろ? ならあるよな? 変身するためのベルトが! それを俺に寄越せ! お前の代わりに俺が仮面ライダーになってやるからよ!」

 

「……ドライバーを渡したら、その人は解放する?」

 

「するわけねぇだろ! コイツを殺すことが俺の目的なんだから!」

 

 だったら渡したところで意味がないだろと、ヤケクソ気味にこの場にいる何人かが思った。とはいえ、相手は人質持ち。下手なことをできない。

 

 そんな中、ソウゴは数秒間の間だけ瞑目する。それからすぐに目を開き、

 

「————君はさ」

 

 清水をじっと見つめて、ソウゴは口を開いた。

 

「そこまでして、欲しかったの?」

 

「あぁ……?」

 

 その問いに清水は声を漏らした。質問の意図が分からなかったし、何よりこの状況で何を聞いてるのかと思ったからだ。

 

「人を傷つけてまで魔人族の勇者ってやつになりたかった? 人に認められたかった?」

 

「だからそう話したろうが……! 聞いてなかったのかぁ!?」

 

「それは何で? ただ欲しかったから? 何か理由があったから? それとも……」

 

「〜ッ、くどくどうるせぇ! 何が言いたい!?」

 

 清水は痺れを切らしたように怒鳴り、乱暴にソウゴへ問いかけた。

 

「君は、別に勇者になれなくたって良いんでしょ」

 

「…………は?」

 

 その言葉は、今の清水の目的を全否定する言葉。それを言われた本人は、唖然とした顔。

 

「多分今はさ……色々あったからそうしなきゃってなってるだけなんだと思う」

 

「何を言って……」

 

「……君はさ、ソレを心の底から願ってるの?」

 

「そうに————」

 

 決まってると、言葉を続けようとしたが、言い切れなかった。ソウゴの言葉を受け、自分の心に引っ掛かるものでもあったのか。

 

「…‥俺、は……!」

 

 その時。

 

 ソウゴの脳内にある光景が浮かび上がった。それは、愛子や清水が水のレーザーで撃ち抜かれるもので————。

 

「————————ッ!」

 

 常磐ソウゴは、走り出す。ドライバーとウォッチを装填し、そのままジオウに変身もした。

 

 その突然の行動に清水は勢いのままに、思わず愛子に針を突き刺そうとするが、2人は突き飛ばされた。

 

「ぐはっ……!」

 

 瞬間、ジオウの装甲に水のレーザーが直撃した。守りの体勢でもなかったため、受け身を取れず倒れてしまう。

 

 しかしすぐさま立ち上がり、レーザーを発された方向を見た。そこには大型の鳥と、それに乗り込んでいる男が見える。

 

「くっ!」

 

 同じく気づいていたティオが火球を放ち、撃ち落とそうとする。しかしそれは躱され、男達は一目散に逃げていった。

 

 狙撃してきた人物を逃してしまったが、ジオウは清水と愛子の2人の安否を確認する。

 

 清水は自分がいた場所に水のレーザーが飛んできたことに対して呆然とした表情であり、一方の愛子は苦しそうに顔を青ざめていた。針が刺さってしまったのだ。

 

「先生!」「愛子!」

 

 それを見た園部や騎士達が声を上げ、駆け寄ろうとする。

 

 だがそれより先にジオウが素早く駆け寄り、フォーゼライドウォッチを起動し、"メディカルモジュール"の能力で解毒剤がセットされている注射型の容器を取り出す。それを使い、愛子に解毒剤を注入した。

 

「大丈夫?」

 

「はあっ……はあっ……! っ、だい、じょうぶ、です……楽になってきました……」

 

 そう言う愛子の顔色は徐々に良くなっていた。それを見て、焦っていた他一同は安堵する。

 

「ティオ、先生を」

 

「ああ」

 

 ジオウは抱き上げていた愛子をティオに引き渡す。その後は変身を解き、未だ呆然としている清水に歩み寄った。

 

「……どういう、ことだ? さっきのレーザーは……」

 

「……多分、君の言ってた魔人族が、先生を君もろとも殺そうとしたんだと思う」

 

「そん……な……」

 

 愕然としたように言葉を漏らす清水。計画が失敗した途端に見捨てられ、挙げ句の果てには殺されかけたと言う事実を認識したのだ。

 

「俺は……ただの、捨て駒だったってのかよ……」

 

「……君はもう魔人族って奴らから見捨てられた。これから、どうするつもりなの?」

 

 俯いて呟いている清水にソウゴは声をかけた。

 

「俺は…………俺は…………」

 

 どうすればいいのだろうか。

 

 魔人族からは見捨てられた。それに、今から人間側に戻ったところで、自分は裏切り者として処理されるかもしれない。最早、認めてもらうどころじゃない。

 

 今この場から逃げようとしたところで捕まる。そもそも逃げた所で、何処に行けばいいのか。今の所持金で生活を賄い切れるはずがないし、いずれ指名手配されて見つけ出されるかもしれない。

 

 完全に、詰みだった。

 

「………………」

 

 清水は、顔を地面へと伏せてしまう。

 

「清水」

 

「…………もういい、もういいよ。煮るなり焼くなり好きにしろよ……それで……俺のことを踏みつけにしてりゃあいいだろ……!」

 

「………………」

 

声をかけてくるソウゴに、清水は自暴自棄になっていた。

 

 彼にとって何もかも上手くいかなかった人生、そして今この状況。自暴自棄になるには充分だった。

 

「……清水、くん」

 

 ティオの腕に抱えられながら、清水を見ている愛子。彼女は、意を決した表情をすると、立ちあがろうとした。

 

「お主……身体は」

 

「大丈夫です……それに今は」

 

 自身の生徒の元へ歩く。辿り着いて、それからしゃがみ込んだ。

 

「清水くん」

 

「………………」

 

「常磐くんが言ってましたよね、心の底から願ってるのかって。君は、それを肯定しきれてなかった。…………君が、一番望んでいることはなんなんですか?」

 

 愛子は、清水の心に問う。今、自身の生徒は心のどん底にいる。なら、それを引き上げるのが、今の自分の役目。

 

「……………………勇者になれなくたって、良かった」

 

 清水は小さくそう漏らした。

 

「……………………俺は…………俺は…………一人ぼっちだって、ずっと思ってた」

 

 今もそうで、これまでもそう。

 

 ああ、なんとなく一番願ってることが分かった。

 

 それに、自分が電王とダブルとフォーゼを好きになった理由も、分かった気がした。

 

「…………………………側に、誰かがいてくれりゃ良かった。こんな、俺でも、優しくされたかった………………友達が、欲しかったんだ………………多分」

 

 憧れてたのだと思う。例え異形でも、笑い合える仲間がいる電王に。一蓮托生の相棒を持つダブルに。多くの友情を築き上げるフォーゼに。

 

 彼らみたいに、友達が、仲間が、欲しかった。

 

「————————」

 

 友達。

 

 その言葉を聞いて、ソウゴは瞑目する。ふと、彼は考えたのだ。

 

 きっと、この子も—————。

 

「…………清水くん」

 

 清水の言葉をただ聞き続けていた愛子は口を開いた。

 

「君が今、ほんの少しでも、変わりたいって意思があるなら、私はそれを手伝いたいです。罪を償って、貴方に友達が出来るようにしたいです。貴方を変える手伝いを、させてください」

 

「……………………」

 

 愛子の言葉を聞いた清水は、何秒か経って、その身を起こし始めた。

 

「………………俺、は。変われるのか?」

 

「変われます。人間は、なりたい方に進める筈です」

 

「……………………」

 

 憧れていた仮面ライダーが、駆け抜けた時代に刻んだ正義の意思を、彼が記憶に残しているならば。きっと彼は変われて、罪を償えるはずだ。

 

 清水は立ち上がった。それを見た愛子も立ち上がる。

 

「…………戻りましょう、清水くん」

 

「…………はい」

 

愛子は清水に向けて手を差し出した。彼は、それを取ろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 その時、銃声が聞こえて、清水の頭から血が噴き出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「——————清水、くん?」

 

 愛子は、地面に倒れ、頭から血を流し、目の光を失った清水のことを、何が起こったのかと分からない表情で見ていた。

 

「はい、お疲れサマンサ〜。無駄な説得、ご苦労さーん」

 

 その時、横から声がした。その声の主は、こちらへ歩いてくる。

 

「いや〜、見てて泣きそうになっちまったよ〜。見事なまでに、つまらないお涙頂戴展開になってたからさ。これがドラマだったら、星1の評価下してるとこだわ」

 

そう言いながら、彼は清水の死体を見下ろした。その後、口角を釣り上げる。

 

「…………ククッ、ふははははははっ! …………見たかぁ? 雑魚ライダーくん? …………俺の勝ちだ」

 

 

「ッ、危ないっ!」

 

「え?」

 

ソウゴは咄嗟に清水の身体を抱え、地面へ倒れ込む。その後、清水の頭があった場所を弾丸が高速で通った。

 

「おいおい、余計なことすんなよ雑魚ライダーくん。弾が外れちまったじゃねぇか」

 

 声がした方向へと、ソウゴは顔を向ける。

 

 そこにいたのは、銃を手に持っている南雲ハジメだった。周りにはユエやシアもいる。

 

「南雲、くん……?」

 

 愛子は震えた声でハジメを呼ぶ。愛子も弾丸が清水の頭があった場所を通ったのは見えていた。それはつまり、そう言うことだからだ。

 

ソウゴはハジメを睨みながらも、静かに問う。

 

「…‥なんのつもりだ?」

 

「何のつもりだって……それはこっちのセリフだ。なに良い感じで終わらせようとしてんだぁ? ライダーってのは悪党……怪人をぶっ倒すんだろぉ? ならそいつを殺すのが筋ってもんだろうが」

 

 彼はそう語る。今の状況では、彼の言う"怪人"とは清水のことだろう。確かに彼は、ライダーの世界にいる怪人と差し支えない悪行を行おうとした。だが、

 

「…………清水は、罪を償って、変わるって決めたんだ。もう殺す意味はない」

 

 ソウゴの言う通り、今の清水は償いの意思を持ち、変わることを決めた。最早倒す意味はないのだ。

 

「知るかよンなこと。罪を償うとか、そんなのどうだって良い。敵として立ち塞がった以上、そいつのことは殺させてもらうぜぇ?」

 

 しかしその言い分をハジメは一蹴する。清水の意思などお構いなしに、敵として殺すと言う思考しか持ち合わせておらず、ソウゴの意見に耳を傾けるつもりもないのだ。

 

 その様子を見ていた他一同も戦慄の表情をハジメに向けている。

 

「……悪いけど、そうはさせない」

 

 当然ながら、常磐ソウゴはそれで大人しく引き下がったりはしない。

 

 そんな彼の様子を見たハジメは口角をあげ、にやにやと嘲笑の笑みを浮かべ始める。

 

「おいおい、邪魔するってのか雑魚ライダーくん? ってことは、お前は怪人の味方をしてるって訳だ。つまり……もはやお前も怪人同然、偽ライダーってことだよなぁ!」

 

 導き出されたのは、そんな極論。それは最早、ソウゴを悪として扱うための大義名分を無理矢理作り出すために、"ご都合解釈"をしているように見えるものだった。

 

「ユエ、シア、やんぞ。偽物の仮面ライダーは……本物がぶっ倒してやらねぇとなぁ?」

 

「ん、その通り」

 

「ですぅ! 本物の強さ、見せつけてあげましょう!」

 

 呼びかけられたユエとシアの2人は"偽物の仮面ライダー"を倒すために奮起する。最早、戦うしかないらしい。

 

 彼らの様子を見たソウゴは、ティオに言った。

 

「ティオ、清水達を連れてここから離れて。俺は3人を相手にするから」

 

「しかし、お主1人では……」

 

「大丈夫、伊達に戦ってないよ。だから、行って」

 

「…………分かった」

 

 ソウゴの意思を汲み取り、ティオは頷く。彼女は愛子や清水達の元へ。

 

「ここから退くぞ」

 

「ですが常磐くんが……!」

 

「彼なら大丈夫と言うておる。ここは信じて任せるとしよう」

 

「…………」

 

 愛子はソウゴの後ろ姿を不安げに見つめながら、ティオ達と共に退避した。

 

「………………」

 

「ほら、其方も」

 

「えっ、あっ、はい」

 

 同じように、ソウゴのことを見つめていた清水は、ティオに連れられていった。

 

「へぇ、1人かい? 雑魚の偽ライダーくんは随分と俺達を舐め腐ってるようだな」

 

「ふん……愚かな選択」

 

「偽物なんか私達でコテンパンにしてやるですぅ!」

 

 ハジメ達はアナザーウォッチを取り出し、リューズを押して声を上げる。

 

『Zi-O……』『BUILD……』『EX-AID……』

 

「「「変身!」」」

 

 それぞれは異形へと変わる。アナザージオウ、アナザービルド、アナザーエグゼイドだ。

 

 ソウゴはジクウドライバーを装着し、ジオウライドウォッチとディケイドライドウォッチを取り出して起動。

 

『ジ・オウ!』『ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

「変身!」

 

『ライダァー、タァーイム! 仮面・ライダァー! ジ・オーウッ! アーマーターァイム! カメンライド! ワーオ! ディケイ・ディケイ! ディーケーイードー!』

 

 ウォッチを装填してドライバーを操作して、変身。仮面ライダージオウ・ディケイドアーマーへ。

 

 両者は見合う。それからお互いは駆け出し、ぶつかり合った。




予告













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次回

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「笑いは攻撃の裏返し、と言われることもあるらしいな」
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