愛せるようになりたくて 作:あなたの推しは誰?
お互いに時間も無いので本日は検査し妊娠が発覚したと検査に使ったキットを説明書込で確認。後日、時間を作って話し合おうと決めて解散する。
そして、僕の内心は結構……ヤバかったりする。どうしよう以前にアイは大丈夫なのか? 今後はどうするのか? 無事生まれたとしてどうやって育てるのか? 色々と先の見えない現状……少なくとも確かなのは。
出来た子に色々と苦労をかけてしまうということ。これに尽きるだろう。
これは僕とアイの責任である。特にアイは親からまともに育てられたとは言えない……僕は前世のがあるからいいが、アイは虐待地味ているし、施設生活もある。
故にまともに子育てを出来るとは思えない。少なくとも助けが必要だ。
だけど、その助けとなれるような人がいない。社長たちは助けてくれるのか? 多分、駄目だろうと思う。
僕が助けるべきなのだろうが、生活面と金銭面を両立することが年齢的に無理だ。
やるとした金銭面になると思う。少なくとも僕の子であると知られたらそれだけで、子どもを育てるのに必要な金銭を稼ぐことが難しくなる。
故に知られてはいけない。子にも僕が親であると知られるべきではないだろう。
「……はぁ」
色々と覚悟を決めるしかない。他の誰かを愛せるようになりたいとか考えている場合ではない。それは……二の次、三の次だ。
先ずは生まれてくるであろう子が自分の進みたい道に進めるように親としての責任を果たす。それが、それこそが僕が真っ先に取り組むべきことだろう。
そのためには……四の五の言う暇すら惜しい。やれることはやれるだけやるべきだ。
●●
アイの体調だけでなく僕の予定が合わない事もあり中々、まとまった時間を作ることが出来ずに更に1ヶ月が経過してしまった。
電話やちょっとした時間を使って会いはしたのだが、それでは先のことを決めるのには時間が足らず、あまり進展していない。
それでも、ようやく……まとまった時間を作ることが出来たので今日中に決めるべきことを決める。
「……じゃあ、先ずアイの妊娠は社長は知らないんだよね?」
「うん。とりあえず、最近体調が悪いってことで通してるよ」
「そう、今は……それで隠せるけど、お腹が大きくなったら隠せないから、どうするつもり?」
「その時はその時かな。もし、追い出されたら養ってね♪」
とりあえず、ふざけるような余裕があるから精神的には良さげだね。
「……それは良いとして」
「あ、良いんだ」
「……まあ、生まれてくる子には何の罪も無いし。僕たちのせいで苦労をかけるからね」
「おぉ……カナタが年上っぽい」
前世含めれば年上だよ。……ヘタれたりしてるけど。
「一応、同じ年齢なんだけどね……それはともかく、僕は子育てを手伝うことが出来ないからね」
「え? 一緒に住まないの? 一緒に住めば子育てしてる間に愛を知れるかもしれないのに?」
「……成人して仕事と生活を両立出来るようなってたらそれでも良かったんだけどね。現状じゃ無理だよ」
「もし、追い出されたら養ってくれるつもりはあるのに一緒に暮らす気はないの?」
「そうだよ。僕の存在は隠しておかないと普通に生活する分のお金を稼げないし、何より子どもの将来のことを考えるならお金は必要なんだよ」
僕としてはお金が無くて子どもが好きな進路に勧めませんでしたっての避けたい。
「へー……結構考えてくれてるんだね」
「……考えされられたとも言えるんだけどね」
「あはは……ごめんね。でも、堕ろせとは言わないんだね」
「アイの命に関わるなら堕ろせとは言うけど……そうじゃないのであれば、アイの意思を尊重するよ。僕だって生まれた命を捨てるような選択をしたいわけじゃないし」
あの日にヤることを選択した僕の責任を生まれた命に取らせるのは間違いだろうと思うし、何よりも僕はそんな選択を選びたくないってのもある。
少なくとも前世の家族にそんなことを選択したって胸を張って言えないからしたくない。それぐらいなら、しっかりと責任を取って育て上げたって言いたい。
「そう……ありがと。社長はきっと父親が誰なのか聞いてくると思うけど言わないようにするね」
「うん。ごめんね……僕の方こそ大変なことを手伝ってあげられなくて」
「いいよ。元から子どものことを受け入れてもらえなかったら1人で育てようと思ってたし」
……控えめに言って破滅の未来しか見えないのだが。うん、頑張らなければならない。
少なくとも1人より、形はどうあれ2人で協力していけば何とかなる可能性は僅かでも高くなるだろう。
「……少なくともお金に困るようなことには絶対にさせないから!」
僕はアイの手を握り、目を合わせながらそう告げる。
貯金はまだあるし、亡き両親の遺産も僅かながらあるのですぐに枯渇することはない。
「……うん」
その返事を聞いてから手を離すと……ぁ、と小さな声が聞こえてきたような気がするも、特に気にするようなことではないだろう。
「後、直接会うのは控えようと思う。万が一のことを考えるとね」
「そう、だね……そうしないと駄目だよね」
「うん。だけどさ……病院に入院が決まったら社長がいない日を教えて。1度だけ会いに行くよ」
「……1度だけ?」
「うん。1度だけ……じゃないと社長を呼ばれちゃって待ち伏せとかされちゃうかもしれないしさ」
病気の関係者でなら社長の連絡先を知っている人は限られるし、仮に呼ばれても来るまでの間に僕が帰ることは可能であると思われる。
「……それは、あるかも」
そのことを想像したのかアイは小さく笑う。
「それと……子どもが生まれてからも会うのは極力避けようと思ってる」
「それも……社長の関係?」
「それだけじゃないよ。子どもに僕が父親であることを知られないようにするためだよ。何かの拍子に僕が子どもに父親呼ばわりされてそれを第三者に聞かれたらと考えるとね」
そうなってしまえば大変だ。単に子どもが間違えただけだと思われるならまだいいが、もしも変に脚色されてそれを拡散でもされたら目も当てられない自体になる。
「カナタは……子どもに自分が父親であることを知られなくていいの?」
「良いんだよ。僕はそれが最善だと思ってる。きっと知りたいと思われるだろうし、知りたいって言われると思うけどさ……それでも先のことを見据えるのならば僕のことは隠しておくべきなんだよ」
虐めの原因になるかもしれないけど、それでも……。
「……でも、子どもが望んだら会ってくれる?」
「……その時次第かな?」
「私とは?」
「それもその時次第だよ。社長はきっと僕のことを探してるだろうからね」
社長からしたら僕はアイドルのアイという商品を傷物にした怒りをぶつけるべき相手でしか無いだろうし。
それに僕も迂闊な発言をしないように気をつけないといけない。
変に疑われるようなことは避けないといけないし、何より稼ぐために有名にならなければならないことを考えるとスキャンダルになりそうなことには注意しなくてはならないだろう。
「……そっか……カナタはそれでいいの?」
「うん。いいんだよ」
「……子どもの写真とか送るよ……どんな風に育ってるのか分かるようにさ」
「ありがと」
それは、ありがたいことだ。少なくとも僕が頑張る理由の1つになる。
●●
それから月日が流れ、高校生活も始まり暫しするとアイの活動休止が発表された。
僕の方はまあ、概ね順調に仕事が取れてきているため、収入が増えてきている。いつまでこの調子で行けるか不明だが、貯められるうちに貯めるのがいいだろう。
幸いというか現在は家賃を払わないで済むので、その分貯められるのが大きい。
「……ところで哉汰さんは最近精力的に働いてますけど……勉強とか大丈夫なんですか?」
家に来ていたカミキ君にそう言われる。来ていた理由は単に高校の勉強の範囲を知りたいかららしい。
「まあ、何とかなってる」
「何とかなってるんですね。……意外と余裕があったりします?」
「ん〜、余裕というか時間は有限だから、何もない移動時間とか楽屋での待ち時間に勉強してる感じだね。台本とか読む時間も必要だから、ほんとに少しづつだけど。まあ、睡眠時間はなるべく減らさないようにしたいし」
寝不足でパフォーマンスを下げるのはなるべく避けておきたいからね。
「なるほど」
その時だヴーッ! とスマホが震えた。誰から来たのかを見ると相手は鏑木さんからであった。
「ちょっと電話に出てくる。教科書は自由に見ていて良いからね」
「ええ、分かりました」
僕はそう言うと部屋から出て行った。
電話の内容としては、向こうの都合によって予定に変更があったのでそのため、スケジュール変更があったとの連絡である。
僕の方は特に問題なかったので、変更したスケジュールで大丈夫だということを伝えておいた。
実際、多少時間が前後するぐらいならば問題なかったのだ。
それにしても態々、そのことで鏑木さんから直接連絡があるとは思わなかったけど……。何かあったのだろうか?
まあ、僕が変に気にすることではないだろう。
電話が終わり、部屋へと戻る。
「お待たせ? でいいのかな」
「さあ? 数分ぐらいですので、そんなに待たされてないので大丈夫ですよ」
「そう? ならいいけど」
まあ、本人が言うならはそうなのだろう。
それから1時間程してからカミキ君は帰った。ボールペンなどの入った筆入れを忘れて……。
電話にて確認したら今日はもういいので、後日渡してくれればいいとのことであった。
それから、少しして……アイから電話がかかってくる。
その内容は……今、何処の病院に入院しているのかというものであった。
「大分……遠い場所だね」
宮崎県の高千穂かぁ……遠いな。
「うん。まあ、1度は会いに行くって言ったからね……必ず会いに行くよ」
『ほんとに? 無理しなくていいよ?』
「無茶じゃないから1度ぐらいなら何とかするよ」
『……分かった。待ってるからね』
「行くときは連絡するよ」
『うん。場所についてはもう1回言おうか?』
「あー……、そうだね。一応、お願い。僕が聞き間違えててもいけないからね」
『えっとね……場所は──』
再びアイのいる場所を確認してから電話を終える。
……いざ会いに行く日になって体調を崩すのは良くないので、僕もちゃんと体調を整えておかないとね。
●●
後日、ララライでの活動時にカミキ君に忘れ物である筆入れを返した。
「これ、次は気をつけてね」
「ええ、態々ありがとうございます。ところでなんですけど……ここ最近というか、精力的活動してる理由ってなんですか?」
受け取った筆入れを鞄に戻しながら、カミキ君がそんなことを聞いてきた。
同じ年齢のアイドルと子どもを作ってしまったので、その責任を果たすためです。……なんて言えない。とてもじゃないが言えない。
「……将来のためかな」
「将来ですか?」
嘘は言ってない。子どもの将来の為だし。……うん。
「そうだよ。今、活動しておけば今じゃないと体験出来ない事もあるし、まだ子どもだからね……多少のことは質問したりしても邪見にされにくいだろうし」
余っ程迷惑なことをしたり、変なことを聞かない限り、まだ高校生になりたての子どもを目に見えて邪見にする人はほぼいないと思う。
「まあ……確かにそうは思いますけど」
「でしょ? それにさ、大人になってからよりも今の年齢の方が色々と覚えやすいだろうしね。大人になると学生時代よりもものを覚えるのが大変だって話も聞くし」
とりあえず、それっぽい理由を述べていく。
「哉汰さんも……先のことはそれなりに考えてたんですね」
「まあね。何があるか分からないからね」
ほんとにね……。
ああ、後で髪染めのも買わないと……髪の色から身バレする可能性も0じゃないし……。
地毛に染めるのも複雑な気持ちだ。まあ、やるんだけどさ……。
予めアイには言っておかないとね。会いに行くときは金髪にして行くって。
「……確かにそうですけど……ほんとにそれだけですか?」
怪しむような視線を向けてくる。何気に感が鋭いのか?
「そんなもんだよ。後、出来ることが増えるのが楽しいからってのもあるけど。カミキ君はそうは思わない?」
「……出来ることが増えるのが楽しいってのは分かりますけど……」
何処となく納得のいってなさそうなカミキ君は首を傾げている。
「……強いて言えばそれぐらいなんだよ」
話せるのはね……。先も思ったけど、この歳で子どもを作りましたとか言えるはずないし。
現状、他者にバレたらいけない秘密のトップ入りである。