愛せるようになりたくて   作:あなたの推しは誰?

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20話 再会

 順風満帆とは言えないが早くも1年ほど経過した。時が経つのは早いね。

 

 アイとは時折電話で会話したり、ほんの僅かな時間だけ密会したりしている。本当は密会とかするつもりは無かったのだが、ルビーやアクアに結構気にされているらしい。

 

 パパとはお金だけの関係じゃないよね? とか、本当は仲が悪いんじゃないよね? など。ルビーとアクア的には僕とアイの仲について気になることが多々あるのだろう。……転生者であることも関係してるのだろうけど。

 

 ただまあ……ルビーとアクアは転生者であることを隠す気があるのか謎に思えてくるんだよね。普通の1歳児はそんなことを気にしないだろうし。

 

 アイはアイで……流石私の子だね。天才だよ! 将来はテレビで双子の天才児って紹介されるかも!! って言ってるくらいだから。ある意味、大丈夫と言えば大丈夫なのだろう。

 

 僕も僕でゆる~く流してるし。

 

 バラすもバラさないも好きにすればいいと思ってるからね。そのあたりは本人たちの意思に任せよう。

 

 そんなことを考えていると小さな子どもの泣き声のようなものが聞こえてきたのだ。

 

 ママぁあああ!! という声が。

 

 子役の子が母親がどっかに行っているのに寂しくなって泣いてるのだろうなと思い、何となく状況がどうなっているのか気になったので、その声が聞こえてきた部屋の扉を開けると……。

 

「早く帰ってバブりたい!! ママの胸でオギャりたいよぉー!! 私をオギャバブランドに返してー!!」

 

 などと騒ぐ我が子……ルビーの姿があった。

 

「………………………」

 

 そして、あ……という顔をしたもう一人の我が子であるアクアと目が合う。

 

「………………………」

 

 そして、気まずそうにサッと目を背けるアクア。

 

「ぁ…………っ!!?」

 

 そして、僕に気がついて固まるルビー。

 

 アイから送られてくる写真などでちゃんと大きくなってるのは知っていたが、ちゃんとこの目で見ると感慨深く感じてしまう。

 

 ただ……初めて聞いたのが泣き声とオギャバブランドという謎の言葉であるのは想定外過ぎた。

 

 なんて言葉をかけようか迷っていると、ある種の救世主がばん! と物を叩きつけるような音ともに現れた。

 

「ここはプロの現場なんだけど! 遊びに来てるなら帰りなさい!」

 

 そう言うのは天才子役と言われている少女……有馬かなであった。

 

 僕は少し移動して成行きを見守ることにした。ルビーやアクアとほぼ年齢が変わらなさそうなプロを語る少女とか年齢的には不釣り合いな言葉だよなぁと思いながら。

 

 僕はペットボトルに入ったお茶を飲みながら、ルビーやアクアになんて声をかけるべきか考える。

 

「えと……」

 

「私は有馬かな。今日の共演者よ」

 

 誰なのか分からずに困ったような様子のアクアに確りと自己紹介を済ませる有馬少女。

 

「……あ、この子あれじゃない? えっとなんだっけ……」

 

 ルビーが有馬少女の事で何かを思い出そうとしている。そして、その答えは予想の斜め上を行っていた。

 

「重曹を舐める天才子役……?」

 

 …………それは身体を張ってる子役だなぁ。物によっては舐めたらいけないのもあるのに。

 

「10秒で泣ける天才子役!!」

 

 訂正する有馬少女はどうしてそうなったと言うような顔をしている。

 

 表情豊かだね。流石、天才子役。

 

「知ってるわよ。あなたコネの子でしょ!」

 

 コネの意味を分かって使っているのだろうか? 分かって使ってるなら正しく天才だよね。

 

「本読みの段階じゃ、あなたもアイドルの子も出番無かったのに……監督のごり押しってママも言ってた! そういうのいけない事なんだから!」

 

「いやそういうわけじゃ……」

 

 有馬少女に弁明しようとするアクア。

 

 だが、その前に有馬少女が言った。

 

「こないだ監督が撮ったドラマ見たけど全然出番なかったじゃん。どうせカットしなきゃいけないほどへったくそな演技したんでしょ。媚びうるのだけは上手みたいだけど!」

 

 等と年齢にそぐわぬことを言って有馬少女は去っていった。

 

「お兄ちゃん」

 

「分かってる相手はガキだ……殺しはしない……」

 

 そして、有馬少女に対してルビーとアクアはキレていた。

 

 アイはちゃんとルビーとアクアに好かれているようだ。分かってたことだけど、良かった良かった。

 

 そんなことを思っていたらルビーが僕の方へと駆け寄ってくる。

 

「おいこらパパァ!! ママのことを馬鹿にされたのに黙ってるとかどういうことだぁー!!」

 

 そして、思いっきり爆弾発言をかましてくれた。

 

「おいいぃぃっ!? ちょ、ルビー! 何言ってんだお前は!?」

 

 アクアが慌ててルビーの肩を掴むと前後に揺する。

 

 幸いなことに他の人がいなかったためバレてないと思うが……中々にやばかったと思う。我が子は猪突猛進な部分もあるようだ。

 

「いや、でもお兄ちゃん! ママのことを馬鹿にされたのに……」

 

「そうだけど俺たちのことがバレたらもっと大変だろうが!」

 

「うぅ〜……」

 

 恨みがましそうに僕を見てくるルビー。

 

「ところでさ……2人は何でそんなに流暢に喋れるのかな?」

 

 どんな誤魔化し方をしてくるのか気になったので少しだけ意地悪なことを聞いてみた。

 

「えっと……それは……」

 

 ルビーが助けを求めるようにアクアの方を向く。アクアもアクアでどうしようかとルビーの方を見ていた。

 

 そして、意を決したようにアクアは僕の方を向くと口を開いた。

 

「ゆ、youtubeで」

 

 そっか……youtubeでかぁ。結構苦し紛れな言い訳だけど……しょうがないか。

 

 僕は考え込む素振りをしながらルビーとアクアを交互に見る。

 

「……アイが言ってた通りうちの子たちは天才なのかな? それとも早熟なだけ?」

 

 そう言ってからルビーとアクアから視線を外し、考え込むふりをしつつ様子を確認する。

 

 するとあからさまにホッとした様子のアクアとこれで誤魔化せるの? と疑問視してるルビーの姿があった。

 

 まあ、変に気にしてもルビーとアクアの精神的にもよろしくないだろうからね。

 

「……それよりもよく僕のことが分かったね。ママに教えてもらったの?」

 

「あ、うん。ママが写真とかテレビでパパのこと教えてくれたの」

 

「なるほどね」

 

 それしかないよね。

 

「……ところでなんでここにいるの?」

 

 アクアがそんなことを聞いてきた。

 

「それは勿論、仕事だよ。元々予定にはなかったんだけどね。僕は代役……つまりね、元々ここに来るはずの人がいたんだけど怪我をしてこれなくなっちゃったから、僕がその人の代わりに来たんだよ」

 

「そうなんだ。そのことアイは知ってるの?」

 

「あら? アクアはアイ呼びなんだ」

 

「え、いや……だって……バレたらいけないし」

 

「まあ、そうだね。残念がられたりしてない?」

 

 仮に表に出してなくても結構残念に思ってそうだからアクアが家族しかいない場所でならママもしくはお母さんと言うように促しておこうかなと思う。

 

「えっと……それは……」

 

「無理して言えとは言わないけどさ……2人、ないし3人だけの時ぐらいはお母さんもしくはママって呼んであげて。きっと喜ぶよ。君たちは望まれて産まれた子だからね」

 

「なら、パパも……そうなの?」

 

「…………僕は……どうなんだろうね。ある意味では嵌められたとも言えるし」

 

「ぇ……何それ?」

 

「どういうこと?」

 

 ルビーもアクアも自分たちの誕生のきっかけとなった話は気になるようだ。

 

 ただ、まあ……長くなるかもしれない話だし。アクアはこの後、撮影も控えてるから別に時間をべきだろう。

 

「長くなるかもしれないから……この話は後にしようか。ママに聞いてもいいかもね。答えてくれるかは……わからないけど」

 

 聞かれたら意外と嬉々として話すかもしれないけど……どうだろうか? 案外、内緒! って誤魔化す可能性もあり得るし。

 

「ああ、それと少し前のアイが僕が代役で出ることを知ってるかについてだね。言ってないから知らないよ。僕自身もアイが同じ作品に出ることを今日知ったし」

 

「そうなんだ。ちゃんとパパの口から伝えてね。じゃないとママ……怒る? と思うよ」

 

「疑問系なのね」

 

「うん。ママが怒ってる所見たことないから……でも、文句は言うと思うよ」

 

「そうだね。ちゃんと伝えるよ」

 

 伝えなかったら伝えなかったでその時の反応も見てみたい気もするけど、不機嫌? とまではいかなくてもモヤッとしたものを抱えさせるのも……ね。 ルビーとアクアは知ってたのに私にだけ教えてくれないなんて……って感じで。

 

 

●●

 

 

 後日。

 

 「ヤッホー!」

 

 明るく声をかけてるアイ。

 

「「…………」」

 

 そして、自分たちは決して悪くないとばかりに目を逸らすルビーとアクア。

 

「あー……なんだ? お前ら知り合いにしては……何か気安いな」

 

 何故かいる五反田監督。しかも訝しむような目で見てくる。 

 

 するとアイが何やら五反田監督にコソコソと耳打ちした。

 

 監督は僕とアイのことを交互に見てから1人納得したように頷く。

 

 それからポン! と軽くアイの肩を叩いた。

 

「そうか……まあ、頑張れよ? 結構面倒なタイプだぞ」

 

「うん、大丈夫! そこはちゃんと理解してるから」

 

 グッと親指を立てるアイに監督はやれやれとばかりに肩を竦める。

 

「まあ、なんだ……チビっ子もいるんだし程々にな」

 

「アハハ、大丈夫大丈夫。ルビーもアクアもいい子だからね。私に似て天才だからね!」

 

「あ? ……まあ、天才かは置いといて異質ではあるな」

 

 転生者だからね。異質なのはしょうがない。

 

 僕はルビーとアクアに近寄り、屈んでなるべく視線の高さを同じにする。

 

「せっかくだし、今日は僕がごちそうするから何でも好きな物頼んでいいからね。監督がいるから行けるお店の幅が広くなってるから期待出来るよ」

 

「本当に? お金は大丈夫なの?」

 

 お金の心配をされてしまった。

 

 いや、まあ……心配されても仕方がないよね。一緒にいるよりもお金を稼ぐことを選んだ奴だし。

 

「その辺りは心配ないよ。これぐらいで傾く程貧乏ではないからね」

 

「そうだぞ、チビッ子。こいつはそれなりに稼いでるからな」

 

「監督よりも?」

 

「…………どうだろうな」

 

 アクアの言葉に気まずそうに監督は目を逸らした。

 

 ……監督。そこは嘘でもいいから稼いでるって言おうよ。

 

「………」

 

「………」

 

 アクアだけでなくルビーまでもが監督に冷たい目を向けてる。

 

「ま、まあそのことについてはどうでもいいだろ! 行くぞチビッ子ども。俺が良い店に連れてってやる!」

 

 監督はそう言うとルビーとアクアを連れてどんどん進んで行ってしまう。

 

「あ、私たちも行こう」

 

「うん」

 

 ルビーとアクアを連れて行く監督の少し後ろをアイと僕は歩いていく。

 

「所で何で監督を連れてこれたの?」

 

「アクアが電話で誘ったみたい。凄いよね」

 

「そうだね」

 

 ……どうやって口説いたのだろうか? 監督も監督でアクアのような幼子に口説き落とされてるし、本当にどうやったのだろうか。謎だ。

 

「最初はね、私とルビーとアクアとカナタの4人だけでいいかなと思ってたんだけど、アクアがね誰か1人でも大人がいた方のがいいって言ってね。それでアクアが監督を呼んだんだよ」

 

 発案もアクアだったのか……。

 

「確かに4人だけでいるところを見られるよりはいいね。監督がお気に入りの子を誘って食事に行ったみたいに見られるし」

 

「でしよ? 社長とかミヤコさんの説得も容易だったし」

 

「そっか」

 

 まあ、問題ないならいいんだけど。

 

「所で監督に耳打ちしてたけど何を言ったの? 場合によっては話を合わせないといけないと思うんだけど」

 

「とりあえず、数年前からの知り合いであるのと落とそうとしてる相手ってだけだよ」

 

「……落とそうとしてるって……それは言って大丈夫だと思う?」

 

「うーん……大丈夫じゃない? B小町内でも彼氏持ちいるし。あのことがバレるわけじゃないしね」

 

 ……いや、うん……確かにそうだけどさ。隠し子バレよりは断然大丈夫だけどね。

 

「それにさ……」

 

 アイはそこで言葉を切ると……少しだけ言葉にするか悩んでいるような素振りを見せた。

 

 一体何を言うか言うまいか悩んでるのだろうか? 黙って続きを待っていると、しばらくしてからアイが続きを口にした。

 

「……地に足が着いてないっていうか、寄る辺の無い迷子? だから、いつでもふわっと何処かに飛んで消えそうな感じがするから、落とさないといけないって思ったんだ。ちゃんと地に足がついて、帰る場所を見つけられるように」

 

「…………そんな風に見えてたんだ」

 

「うん。今は少しはマシになったかな? ごっこ中は本当にそんな感じだったよ。目的はあるけど、それに集中出来ずにずっとふわっとしてたし。だからこそ私が色々と頑張ったんだけどね」

 

「…………」

 

 言われてみれば、まあ確かにそうだよね。今生は僕にとって精神的な意味で寄る辺は無いし、愛せるようになりたいって思いも前世の未練のようなものだ。アイの言う通りだろう。

 

 でも、少しはマシになったらしい。

 

「なら、頑張った甲斐はあった?」

 

「ん〜……今、ここにいる私が答えかな」

 

 そう言ってアイは微笑んだ。




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