キタサトの幼馴染同級生概念~外堀責めを添えて~ 作:狸より狐派 ハル
希望に胸を膨らませて困難なことにとりかかるのは容易いが、それをやり遂げるには勇気がいる。
絶望的な状況を勇気によって克服するとき、人間は最高の存在になるのである』
~放浪の哲学者、エリック・ホッファー~
『コミュニケーション・・・?』
『そう・・・エッチと言うのはね、コミュニケーションなの』
性教育講習会のあったあの日、講師はあることを話す。
『本来はあくまでも子孫を残すのが本質なんだけど、実際に子どもが出来てしまうと、とてつもないお金がかかるわ。けどそれでもしたい、深め合いたい・・・と言う感情は出てしまうことは、ある意味仕方の無いことでもあるの』
そう講師はすくめながら語る。
『エッチをすることで子どもが出来ること以外で得られるもの。それは視覚による《理解》と聴覚による《関係》、言葉からの《信頼》に《知識》の交換、そしてお互いの《共感》が得られるわ』
そう言いながら彼女は優しく、しかし真っ直ぐとした目で答える。
『エッチというのは、自分の反応・要求に対してどのように行動するのかを確認できるわ。相手が愛情を持って優しく接してくれているのが見てわかるようになるの』
『例えば、自分がキスを要求したとして、そのときに応えてくれたら、相手の愛を実感することができるわ。そうでなければ疑う結果に。ってな感じで、ふたりの心を計り知るためには必要なコミュニケーションなの。見た目から嘘が通じない分《理解》が深まる正直な行為と言えるわ』
『次に愛を伝えるためにはコミュニケーションの基本中の基本、声を出して感情を伝えること。エッチと言うのは触れ合えば触れ合うほど気持ちよくなるもの。だからつい変な声が出るものだけど、そういう声こそ遠慮せず発する方がいいわね。気持ちよくすることが出来る、逆に気持ちよくしてくれてる、という感情はそのくらいお互いの《関係》を知り合えることなのだからね』
『それに、エッチの最中の具体的な会話も必要ね。何をしてほしいか、何をしたいかを教え合うことで、相手の考え方や人柄を再確認することができるわ。もう一度言うけど声によるコミュニケーションはお互いの《信頼》を確かめ合うための基本方法よ』
『ここまで説明したコミュニケーション方法によってお互いの《知識》はより深まってくるわ。相手がされて好きなこと、嫌いなことを知ることで幸せや愛を《共感》し合うことができる。気持ちよくなるだけでなく、お互いをより良く理解するためのコミュニケーション手段、それがエッチと言うものなの』
『『・・・・・』』
『エッチと言うものは決して悪いことではないわ。もちろん初めて実体験するときは、みな怖いと思うものね。エッチがしたい、けどまだ子どもは欲しくない・・・そんな時に避妊具と言うものがあるの。これを使ったからと言って100%避妊が可能・・・にはならないけど、大幅に効果はでるわね。男性用にはコンドームが、女性用にはピルがあるわ』
そう言いながらこの講師は二つ取り出して『彼』らに見せた。
『エッチというコミュニケーションは、ヒトとウマ娘という生命体が確立されたそのずっと昔から存在するもの。ゆえにまだ子ども作らずにどうやってエッチをしようかと、人類はずっと考えてきたの。少しでも妊娠を避ける条件は、そもそもエッチをしない、と言う場合を除いて基本的に3つ。うち二つがこの男女それぞれの避妊具の使用、そして女の子の《安全日》のときにすること。少しでも妊娠を避けたいならこの3つを絶対に守ってね』
その後サトノダイヤモンドたちの安全日に対する質問をしたことにより、女性特有の排卵、生理についても説明があったのだが、それはまた別の話・・・
――――――――――――
「そう、言ってたよね・・・あの先生・・・」
ベッドの上、敷き布団と毛布の間にてサトノダイヤモンドは一緒に寝ている『彼』にそういう。
「実はね・・・私ね・・・今日、大丈夫な日なの」
彼女との距離はとても近く、間は一人分もない。
「ピルもね・・・この日のために毎日飲んできたの・・・」
そういうとサトノダイヤモンドは頭上、ベッドの棚にあったカバンからある物を取り出した。
「これ・・・もしものために・・・用意したの・・・」
四角の小さなアルミ袋、きっとこの中にはコンドームが入っているであろうこれを『彼』に見せた。
「ねぇ・・・私ね・・・?」
そこで彼女の言葉が途切れる。顔から極度に羞恥による緊張をしているのがすごくわかる。
『彼』も言葉が出なかった。この今の状況を否定したかったのかだんまりを貫いてしまっていた。
いや、もしかしたら期待もしてしまったのかもしれない。
サトノダイヤモンドは、自身の両手で『彼』の両手を包むように掴み、さらに詰める。
そしてもう一度、彼女は勇気を込めて声を出す。
「私は・・・あなたとエッチがしたいの」
とても震えた声だった。この一言を言うための許容できる器は本来持っていないはず。
それでも言えたのは、緊張を越した愛情が、つまりサトノダイヤモンドは心の底から本当に『彼』のことが好きだからこそ出すことのできた言葉だった。
だがその肝心の「好き」と言う言葉をまだ彼女は言えなかった。客観的に見てそれが普通先では、と思うかもしれない。
これは、《人》という感情と知性を両方持つ総合的に動物として異常な存在特有のもの。子孫を残し育てると言う《理屈》ではなく、ただ相手に盲目的なまでに夢中になってしまっただけの《感情》。
頭が動物として総じていいからこそ起こる《バグ》。人は本能的に発情しないと言うが、いざ直面すれば羞恥のあまり感情が爆発的に高まり、結局それは机上の空論に過ぎないと思い知る。
そして《人》という生物はそんな羞恥という感情さえも、愛情が上回ればむしろ相手から発生させられたいという
結局のところ理屈じゃないのだ。どう言葉として表現すればいいのかがわからないこの感情は、口だけではもうどうしようもないものである。
だから人は古来から言葉では伝えることの出来ない感情をどうしても伝えるために、性行為というものがそう形作られたのだろう。
「・・・・・――くん」
サトノダイヤモンドは『彼』の名前を言う。声は急に止まりそうなくらいに震えたままだ。だが止まらない。止められない。
「エッチ・・・しよ・・・?」
彼女が『彼』の首に両腕を回す。お互いの鼻頭が当たりそうな距離。サトノダイヤモンドの理性はこの時点でほとんど切れかかっていた。
それでもまだ自分からその一線を越えれないのは、無意識に心のどこかで自分はなにをやっているのかと言う理性と『彼』は嫌がってはいないだろうかと言う恐怖があったからだ。
動けない。そんな状態が続いた。
1分がたった。まだ動いていない。
2分がたった。まだだった。
5分がたった。微塵も動いていない。
15分。やっと動きが見れた。先に動いたのは『彼』だった。が、顔をその場で動かしただけだった。進んではいない。
・・・かと思った。
ほんの僅か・・・目に見えない距離が縮んだような感じがあるのは気のせいだろうかとお互いは思った。
その10何秒か、また『彼』が自分の顔をその場で動かす。
今度は確実に、進んだ・・・気がした。
事実進んでいる。錯覚していたかと思ったが、『彼』の精一杯のごまかしが余計に進ませる。
数秒後、『彼』は自分の
頭を動かす。額と顎先が垂直になった気がする。そして気が付いたらさらにサトノダイヤモンドとの距離が縮まった。
気がするじゃない。するために近づいている。
顎が先に出る。ほんの僅かに。
それを見ていたサトノダイヤモンドは、目を閉じた。
彼女は『彼』を待ってくれていた。
彼女にとっては『彼』を待たせてしまったと思っている。
お互いこの辺りは知る由もない。
『彼』から見てサトノダイヤモンドはもう準備が出来てしまっていた。待っている。してくれると信じてくれている。
したい、本気でしたいと思っていなければできない顔。
そんな顔に『彼』はさらに近づく。
近づく。近づく。近づく。
自身の唇が彼女の唇に付くまであと紙一重。
だがそこで止まってしまう。
本当にあと少しだと言うのに。
『彼』は・・・それ以上動けなかった。
彼女は・・・それでも待った。待ち続けた。
してくれると信じて。