キタサトの幼馴染同級生概念~外堀責めを添えて~ 作:狸より狐派 ハル
そこに近道はない』
~米国のバスケットボール選手、マイケル・ジョーダン~
一生懸命、目標に向かって走る美少女っていいですよね。
「うぐ・・・う・・・」
「うう・・・ううう・・・」
小学4年生、キタサンブラックとサトノダイヤモンドはまた泣いていた。
いや、またというには前回からかなり経っていた。
そして今回は恐怖や不安によるものではない。
悔し涙だった。
――――――――――――
きっかけは小学3年生終わり、『彼』と一緒にかけっこをしていたときだ。
この中で一番速いのは表記しづらいが、その『彼』であった。
そして先頭を走る『彼』を必死に追いかけているのが二人である。
ゴールを横切り、三人が止まった。
「ぜぇ、ぜぇ・・・や、やっぱり速いね・・・」
「うん、ちっとも追いつけなかった」
「けど、おかげですっごく速くなってる実感がするよ!」
「うん!この前のかけっこでも私たちでワンツーフィニッシュだったもんね!」
少し前、別の小学校との交流がありウマ娘の合同競争があった。
その別の学校には、校内で一番速くて誰にも負けたことのないウマ娘やそれに続くくらいに速い子たちがいたのだが、その子らをこの二人は大きなリードをつけて勝ったのである。
二人の走りに圧巻されたそのウマ娘は、大会に出てもいい成績を残すんじゃないかと、褒めてくれた。
大会というワードに興味をもった二人は、その子の話を聞いたことをきっかけに、小学生部門のレースに出場することを決意した。
――――――――――――
しかし結果は二人とも惨敗だった。それもそのはず、周りのウマ娘たちは何かしらクラブで鍛えていたのに対し、キタサンブラックとサトノダイヤモンドは大会のことを聞くまでは、あくまでも遊びの
聞いた後は、サトノダイヤモンドが父親に相談した結果、サトノ家専属のトレーナーを用意してもらえるほどだったが、いかんせん決意から大会出場までの期間が短すぎた。
まさか自分がここまで負けるとは思わず泣いてしまった。『彼』もまさかここまでとは思っておらず、二人にどう声を掛ければいいのかがわからなかった。
「そうだね・・・悔しかったね、二人とも」
サトノダイヤモンドの父が二人を慰める。
「ご、ごめんなさい・・・!私・・・勝つって約束したのに・・・!」
「ううう、わああ・・・」
キタサンブラックもそうだが、特にきつかったのはサトノダイヤモンドの方だろう。
彼女の家系は超が付くほどのお金持ちだと説明はせずとも、第1話から読んでいた読者は知っているだろうが、他に説明していないものがあった。
それはサトノ家が、トゥインクルシリーズと呼ばれるウマ娘レースの国際大会に力を入れているからである。
しかしこのサトノ家、あるジンクスに囚われていた。
それは『サトノ家はG1レースに勝てない』、というものである。
G1とは、かなり端的に説明すると高校野球にて甲子園で優勝するほどの名誉、下手すればずっと価値のあるほどにインパクトあるレースである。
当然誰もがそこまでにたどり着くのは、類い稀なる実力者しかたどり着けない領域なのだが、再度記入するがサトノ家は本格的な組織でもあるため家系が出来てからの悩みだった。
サトノダイヤモンドもこのジンクスを打ち破るために将来トレセン学園に入学して、G1勝利という栄光を家族にささげたい、という夢があった。
だが今回の敗北が初手からの大きなつまづきになってしまったのだった。
――――――――――――
「私には・・・無理なのかな・・・」
その大会から数日後、帰り道の公園にてサトノダイヤモンドは落ち込みながら、そのようなことを言った。
「今まで三人でいっぱい走ってたのに・・・全然勝てなかった・・・こんなんじゃ、トレセン学園に入学するのも夢のまた夢になっちゃう・・・」
「・・・私も、レースにでて、みんなを笑顔にできるウマ娘になりたかった・・・けどできなかった」
キタサンブラックも意気消沈になり、重い空気は漂ってしまう。
『彼』も何とかしたかったが、気安く慰めては却って傷つけるかもしれない、この悔しさは挑戦したものしかわからないのだから。
どうしたの?
そんなとき、誰かから声を掛けられた。
そこにいたのは、『彼』の母親だった。
「あっ・・・」
「どうしてここに・・・?」
『彼』の母親はなんでも用事があって、その帰り道だったらしい。それでこの付近を通ったら、たまたま三人を見かけたとのことだった。
二人はレースについて話した。
そのことを聞いた母親は、気持ちが痛い程よくわかると言った。なぜなら彼女はトレセン学園に在籍していた過去があり、レース出場経験のあるウマ娘であった。
しかしデビューしたては良かったのだが、重賞レース(G3~G1のレース)に出場した際、他とのレベルの差を思い知らされた。
その後負けじと何度も挑むも、それ以来思うように戦績が振るわず、大したこともできずに引退したことをほのめかした。
「そうだったんですか・・・」
だが彼女は悔いはないと言った。なぜなら簡単に諦めずに、がむしゃらに全力で打ち込めるものに出会えたからだと言う。
だから母親は、キタサンブラックとサトノダイヤモンドにこう伝える。
悔しかったのならもう一度挑めばいい、まだあなたたちは取り返しが全然効く。一度の失敗で諦めてしまうのは、余りにももったいない。
諦めなければ絶対に夢は叶う、とまでは言えない。けどあなたたちは、まだ始まったばかり。まずは難しいことを考えず、自分のために挑戦したほうがいいわ。
「自分の・・・ため・・・?」
そう、二人とも、決して悔いのない選択をすることよ。
「悔いの・・・ない・・・」
えぇ。さぁ、もう帰らないとご両親が心配するわよ。
「「あっ・・・はい!」」
二人の顔は明るさを若干ながらも取り戻していた。ランドセルを背負い直し、母親に対してお辞儀を行った。
「その・・・ありがとうございました!私、もう一度頑張ってみます!!」
「私も!もう一度挑戦してみます!ありがとうございました!」
そう言って二人は帰っていった。姿が見えなくなった時、母親は『彼』にこういった。
あなたもちゃんと応援してあげなさい。あの子たちだけじゃどうしようもないときに支えれるのは、あなたしかいないんだから。
『彼』はうなずいた。そして帰ろうとした矢先、母親にあるお願いをした。
サトノダイヤモンドの父親に電話を掛けたいのだと。
その理由は、もっと直接手助けをしたいとのことだった。なにか手伝えることはないかと、言いたかったのである。
母親はいきなりの提案に戸惑ったが、すぐに承諾した。だが今電話をかけることはさすがに無理なため、しばらくたってから掛けることにした。
――――――――――――
「アグレッサー、というのをやってくれないかい?」
後日、二人がトレーニングしていたレースコートに『彼』もいた。そこでサトノ父親にこう言われたのだ。
「あぐれっさー・・・?」
「うん、アグレッサーというのは日本語でいうと
「もしこんな相手がいたら・・・なんだか難しそう」
「たしかに再現には、それくらいに強い人じゃないと難しい。しかしこの中で、一番速いのは『彼』だ。キミならばうまくやれるかもしれない・・・とりあえず、まずはやってみようか」
こうして『彼』はそのアグレッサーをやってみることとなった。実のところ、このトレーニングは本場のトレセン等でも有効な手段でもある。
単独で走るよりも目標がはっきりとしており、その仮想敵のおかげであらゆるペースや作戦のコツなどを掴みやすくなる。
『彼』はトレーナーの指示により、このペースで走ってほしい、との指示があった。さすがに敵の走るフォームまでを真似るのは不可能だが、『彼』は感覚をすぐに掴み、二人を上手く引っ張ることに成功する。
「んぎぎぎ・・・!」
「ふうううっ!」
必死になって追う二人。届きそうで届かない、そんなギリギリの走りを強いられる。
そして実のところ、彼も中々に神経を使っていた。
今まではとにかく速く走ることぐらいしかしてこなかったが、今回は早すぎても遅すぎても良くはなく、いかにしてこのペースを保つかが重要である。
理解力と熟練度は別物であった。
それでも『彼』は二人のために走った。『彼』もこの子たちが負ける姿を見るのは嫌だったからである。
ウマ娘ではない、しかしウマ娘と同じ力を持った自分にできること、それがあるならばどうにかして支えることをしたい。
その思いがいつの間にか叶った瞬間であった。
――――――――――――
そこからは沢山の猛トレーニングが三人を待ち受けていた。
速く走るための上手な走り方のフォーム作り、単純な体力作りに勉強、彼もアグレッサーとしての質を高めるために様々な指導を受けた。
もっとも余りの量に『彼』もそうだが、二人もいっぱいいっぱいだった。しかし次こそは勝ちたいという強い信念により踏ん張り続けた。
『彼』もこうしてはいられないと、何とかしてくらいつく。
・・・なんだか自分の方がトレーニング量が多いような気がするが・・・。
実際にトレーナーに聞いてみた。
君のお母さんが二人よりもきつくしごいてあげてくださいって、言われました(笑)。
アンタの仕業だったんかい(怒)。
『彼』は自分の母親に静かにキレた。
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「そうして私たちは次の大会で無事に勝つことが出来たんです!!」
「正確にはキタちゃんが一着で、私が二着でした。ですけどキタちゃんとの差はそんなに離れてなかったですし、なにより前の大会で私たちが負けた子に完全に勝てたことも嬉しかったんです!」
トレセンの食堂こと、カフェテリアにて五人は食事をしながらそんな昔話をしていた。(聖蹄祭限定の一般公開により『彼』も他の参加者のように食事が出来た)
「なるほどね~どうりで選抜レースの時に、誰よりも速かったわけだよ」
「ええ、今でも思い出せます。まだ荒削りなところもありましたが、明らかに他の人たちよりも走りが出来上がってました。よほど小学生の時点で磨いてきたのでしょう」
「えっへへ。そのときにお二人に直接褒められた時には、嬉しさで飛び上がっちゃいました」
「うん、けどあの時は『彼』については伝えませんでしたね」
「まぁちょっと信じられないからね。話題の二人が強くなった原因が、かつてウマ娘と同じ速さで走るヒトが一緒に走ってくれたおかげだなんて」
「けど三人だけだからこそ、より結束力が強くなったのでしょう。とても素敵なことですわ」
「いいな~ボクのトレーナーも同じ速さで一緒に走れたら絶対に楽しいのに~」
「ふふっ、私も自分のトレーナーさんと走ってみたいですわ」
そう言いながら、トウカイテイオーはジュースを飲んだ。すると、ふと彼女はなにかを思い出して口からジュースを離した。
「あっそうだ!ねぇキミ、ボクのアグレッサーになってみない?」
「「えっ?」」
「今後将来が確実に楽しみなキタちゃんとサトちゃんを育て上げた
「「だっダメです!!」」
二人はそれぞれ『彼』の腕に抱き着く。そしてまた嫌な予感を感じる『彼』と先輩二人。その予感は当たっていた。
「「『彼』は私のものです!!!」」
バッカッ!?こんなところでそんなこと言うな!?
『彼』が注意するものの時すでに遅し、周りには上記の台詞に反応した人々が、こちらに注目していた。
「うわ、なにあれ!?両手に花!?」「えええ!?なにあの男の子超モテモテじゃん!」「なん・・・だと・・・!?」「おのれぇ・・・羨ましけしからんッッ!!」
またこのパターンかよ畜生!!
そう『彼』は嘆いたのだった。
「あわわわわ、もう完全にそういう関係じゃん・・・!もうごまかされないよ・・・!」
あわあわと顔真っ赤にしながら慌てるトウカイテイオー。となりのメジロマックイーンも両手に顔を当てて驚いていたが、ふとある疑問が出てきた。
(そうえば、このお二人ってなぜこんなにも『彼』に、そこまで熱い情熱を向けてるのでしょうか・・・やはりトレーニングをずっと間近で見てくれたおかげ・・・?)
彼女の予想は少なくとも間違いではない。しかしそれが明確な正解でもなかった。
ただ一つだけ言えることがあるとすれば、結局のところこうなった原因は『彼』のせいだと言わざるを得ない事情があったのだった。
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〈 To BE CONTINUED…//// |
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この小説のキタサトは、原作やアニメよりも『彼』のおかげで通常よりも強化が入っています。
しかもそれが、ある物によるブーストも掛かってしまっていますが、その正体は次回辺りに(出来れば)。