最高審判官、ヌヴィレットは日々激務に追われている。
審判、フォンテーヌ全体の水害対策、書類審査、過去の審判記録の整理、フリーナのやらかしの後始末など多岐にわたりあまり休みが取れていないように思われるがヌヴィレット自身は「しっかりとした休みは取っている。」と言う
何でも、ある執事に手伝ってもらっているらしい・・・
最高審判官執務室
"コンコン"
執務室の扉が叩かれる、「失礼します。」と言いセバスチャンが両手でレストランカートを押し入ってくる。
「セバスチャン、いつも済まないな。」
「いえいえ、日々頑張ってらっしゃる大審判官殿を労うにはこのくらいはしないといけませんから。」
レストランカートから銀色の食器を手に取り蓋を開け、中から透明な液体の入ったワイングラスを机に置く。
「ふむ、今日の水は何処から取り寄せた物かな?」
その言葉にセバスチャンは水を取り寄せた日を思い出したようで顔を顰めた。
「、、、本日は稲妻の洞窟内から取れた希少な水となっております。これを仕入れるのには苦労しました、なにせどなたに聞いても水を取り扱ってる人はいませんでしたから、最終的に私自身が休暇をはたいて取ってまいりました。稲妻の洞窟はとても大変でしたよ?中には何故かヒルチャールの群れや遺跡守衛がいまして倒すのに苦労はしませんでしたがとても疲れました。」
「それはすまなかった、ではこの稲妻の水は何時もよりも味わって飲まなければな。」
しかし、セバスチャンはその言葉だけではいつもの表情には戻らず、ヌヴィレットは顎に指を添え数秒考えた後
「、、、それと君が気になっていたナイフとフォークあれをセバスチャン殿の頑張りのプレゼントとしよう。」
その言葉にセバスチャンの顔には笑顔が戻り、「やはりヌヴィレット様はお話がわかるお方ですね、ありがとうございます。」
セバスチャンはお礼を言うといつも通りヌヴィレットの机にある審判の記録を取り仕事を手伝う。
「こうして私が貴方の仕事を手伝い出してもう数百年経ちますね、最初は暇潰しのためとしてやり始めたことですが今となればもう私の仕事のようなものです。」
「ふむ、確かに君が私のこの業務を手伝い出してから324年の年数が経つ、それほどの時間が経てば君にとっては日課にもなるだろう。」
「よく年数を覚えていますねヌヴィレット様、私はさすがに忘れてしまいましたよ。」
「この記憶力は私の最大の取り柄と言ってもいい、ここに来てからの500年間のことはよく覚えている。しかし君も記憶力はいいはずでは?私と同じ長い時間を生きるもの同士なのだから。」
その言葉にセバスチャンは苦笑いをしながら「私はあまり昔のことは覚えていませんので」と言いヌヴィレットとセバスチャンは黙々と業務を進めていった。
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数時間が過ぎ・・・
「ヌヴィレット様こちらは終わりましたよ」
「ありがとうセバスチャン、私の方ももうすぐ終わる。君はこの後いつも通りフリーナ殿の元へと戻るのか?」
セバスチャンは腕を組み少しの間考える。
「・・・いえ、ヌヴィレット様せっかく今日の業務が早く終わったのです。私が気になっているナイフとフォークをプレゼントしてくださると言いましたよね?買いに行きましょう。」
「ふむ、よかろう、私はフリーナ殿の元へと午後は少し開けると伝えてくる。」
「ありがとうございます。」
そう言いセバスチャンは執務室を後にした。
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「君が休暇!?どうしたんだい?熱でもあるのかい」
「いや?セバスチャンが私と午後買い物に行く約束をしてな、それで午後休暇を貰いに来ただけだ。公務に関しては既に終わらせているから安心するといい。」
ヌヴィレットがそう発言すると
フリーナは突然大笑いしだした。
「ふふ、ハハハ!君もやっと休暇の意味を理解したのかな?いいよ行っておいで、君がいなくともここフォンテーヌは安泰だということを証明してみせるよ。」
「そうか、感謝するフリーナ殿」
時は過ぎ約30分後、セバスチャンは噴水前でヌヴィレットを待っていた。
「すまない、少し待たせてしまったか?」
「いえいえ、私も先程着いたのであまり待ってはおりませんよ。では目的地へと向かいましょうか」
2人は目的地へと歩き出した。その光景をフォンテーヌ市民は目で追ってしまう。方やこの国の最高審判官、方や神様直属の執事、目立たない方が不自然と言える。
"あれって"
"ヌヴィレット様とセバスチャン様だ!"
"お美しい方が2人、!絵になるわ"
"これはとくダネの予感!"
ヌヴィレットはその光景を目にすると
「やはり私と共に歩くとなると目立ってしまうな、セバスチャン。もしこのように注目されるのがあまり好ましくないのなら私は後から追いつくようにするが?」
その発言にセバスチャンは苦笑いをし
「いえ、このままで大丈夫です。」
「私はこうしてヌヴィレット様と一緒に出掛けることが楽しいんです。それに目だったからといってなにかされる訳でもありません、ならこの楽しい時間を続けたいですね」
ヌヴィレットはセバスチャンのその言葉に驚き
「私と共に出掛けることが楽しいと?」
「ええ、そうですよ。」
ヌヴィレットは少し考える素振りをみせ、
「なら、私もこの休暇を楽しんでると言えるのかもな。」
そう話している内に目的の店へと着いた。店内にはショーケースが所狭しと並べられており、中には数々の銀食器や珍しいナイフなどが入っている。セバスチャンはまるで玩具屋に入った少年のように目を輝かせお目当ての物を探しに向かう。
「これこれ、これですよ。ヌヴィレット様」
「ふむ、これが君の言っていた特別な銀食器か。」
「ええ、そうなんでよ。このナイフは職人が一つ一つ手間ひまをかけて作っており、量産品に比べ圧倒的に切れ味がよく、持ち手も人の手にフィットするようになっています。そしてこちらのフォークに関してはどんな硬い果物の皮や筋張っている肉でも簡単に刺すことが出来るんですよ。」
「なるほど、君が欲しがる理由がわかった。しかし君はこれまで数多くの類似した物を集めていると聞く。それほどまでになぜ集めるのだ?」
「肉を切ったり刺したりする以外にも使い道はありますので。」
「・・・あまり本来の使い道から外れた使い方はしないように。」
「ご忠告ありがとうございます。ヌヴィレット様。」
そのような話をしながら店員の元へと持っていきヌヴィレットが支払いをし店を出た。その後2人は少し水辺を歩くことになりフォンテーヌ邸を出た。
「ヌヴィレット様今日はありがとうございます、今日はとても楽しめました。」
「感謝をする必要はない、元を辿れは私のために希少な水を取ってきてくれた君への恩返しだ。それに私も楽しめたと言えよう。」
「ならよかったです。けど、ふふ貴方から楽しめたなんて言葉が聞ける日が来るとは。貴方は日々人の心を理解していってるようですね。」
「・・・そうなのかもしれないな、私はあまり感情を表に出すのが得意では無い。しかし、この500年間人の世で暮らすにつれて少しづつだが私も変わってきているのかもしれない。」
「ふふ、そうですねヌヴィレット様。さてそろそろフリーナ様がぐずりだす時間です。帰るといたしましょうか。」
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「どうだったんだい?セバスチャンと買い物に行ってみて。」
「私に聞くよりセバスチャンに聞くのが1番だと思われるのだがな、とても楽しめた、それだけは言えよう。」
「ヌヴィレットから楽しめたなんて言葉が聞けるなんて!?明日から雨が降らなくなりそうだよ。」
ヌヴィ様の話し方とかセバスチャンの話し方があやふやになりそう、、、