ホシノ「コマンドォ?」メイトリクス「元軍人だ」 作:ロッコス
やっぱ(コマンド―ネタ)好きなんですねぇ。
今後は週1投稿で頑張ろうと思ってるので、お付き合いいただけると嬉しいです!
また『ブルアカ世界でメイトリクスが大暴れする』話になるので、
シナリオは基本ブルアカ本編をなぞろうかと思います。
セットでブルアカ本編も観ていただけるとさらに楽しめると思うので、
ぜひプレイよろしくお願いします。
合衆国から北東へ数千キロ。
大海原を超えた世界の果てに、学園都市キヴォトスは存在する。
そう朗々と語る白髪少女を目にした時、メイトリクスは本心では『彼女は幻覚でも見ているのではないか』と疑っていた。
それもそのはずで、世界地図をくまなく見ても、キヴォトスなんて都市は見当たらないし、そもそも従軍時代にもそのような場所は聞いたことがなかったのだ。
挙句の果てには、彼女を問いただそうとする前に、当の本人はいつの間にやら彼らの前から姿を消してしまっており、残されたのは奇妙な白板だけだった。
不審が死に直結することを、実体験として知っているメイトリクスとしては、この案件は胡散臭さの塊であったし、かかわるつもりもさらさらなかった。
しかし、メイトリクスは現地へ向かい、彼女の言葉はすべて真実だと悟ったのだった。
キヴォトス上空一万メートル。
そこで滞空するヘリコプターから、彼は確かに、半透明に発光する薄青色の結界とも呼ぶべき障壁を確認したのである。
「準備はいいか?」
と問いかけるのはカービー将軍。
メイトリクスが提案した『司令部での待機』を押しのけ、ここまで現場にやってきた彼の言葉にメイトリクスは思考を中断し、答える。
「大丈夫です、将軍。いつでもいけます。」
それにしても、厄介な事に巻き込まれたものだ。
などと溜息一つつきながら、メイトリクスは少女から教えられたパスワードを『シッテムの箱』と呼ばれる薄い白板に慣れない手つきで入力する。
『・・・・・・我々は望む、七つの嘆きを。
・・・・・・我々は覚えている、ジェリコの古則を。』
「こうして君の雄姿をもう一度見られることとなるとはな。」
と、隣にいるカービーはどこか嬉しそうな声でメイトリクスへ話しかける。
「私も長いこと隊にいるがね、やはり君以上に頼りになるやつは少ない。そこでどうかね、やはりこれを終えた後にコマンド―部隊の編成を...」
「今日が最後です。」
としょんぼりするカービー将軍をよそに、断言するメイトリクスの右手には、この任務を受け入れることとなった娘からの直筆の手紙が握られていた。
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大好きなパパへ
あの時の髭のおじさんが、またみんなを怖がらせてるってね。
白髪のお姉さんからお話を聞いたわ。
.......本当はもう、パパに危ないところにはいってほしくないんだけど、
あんなに肩を震わせ泣き出しそうな顔の女の子、パパは放っておけないわよね。
でも安心して、私も同じ気持ちなの。
私には強いパパとシンディさんがいたから、大丈夫だったけど、
あの子たちは昔の私以上に怖い思いをしてるに違いないわ。
助けてあげて!パパ!
わるい奴らを木っ端みじんにしちゃってっ!
Ps.あの頭に浮いている輪っかは何なのかしら。
あなたの娘ジェニーより
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他ならぬジェニーに頼まれては、仕方がない。
早く終わらせて帰るに限る。
「大佐。」と、少しテンションを落としたカービーがメイトリクスに話しかける。
「彼女の話によると、キヴォトスと現実世界は時間の流れが違うらしい。気をつけろよ。」
「...わかってますよ。」
向こうと現実世界では二対一の割合らしく、向こうでの二日が現実世界の一日になるとのことだった。
メイトリクスとしては半信半疑だったが、どちらにせよ、三か月後の娘の誕生日には間に合うだろう、と思っていた。
『接続パスワード承認。
現在の接続者情報はジョン・メイトリクス。侵入を許可します。』
などとやり取りしているうちに、メイトリクスが、パスワードの入力を終わらせると、板からまばゆい光が辺りを照らし始めた。
やがてそれらの光は一筋の光線となり、眼下に広がる結界へぶち当たると、人間大の亀裂を生じさせる。
閃光弾がさく裂したかのような明るさに、思わず目をつぶるメイトリクス。
辺りからはくぐもった声が響いてくる。
どうやら将軍も直に光を見てしまったらしい。
「行け!メイトリクス!」と将軍が見当違いの方向に叫ぶ。
「この上空からの降下ならば、どこに着地してもキヴォトス域内だ!脱出にはフルトンを使え、必ず迎えに行く!まず、シャーレの部室とやらを目指せ!」
メイトリクスはその声に頷くと、ぼやけた視界のまま、高高度からの滑降を開始した。
絶対に帰ってくる。
そう、娘に誓いながら、彼は猛スピードでキヴォトス結界内へ侵入したのだった。
◆◆◆
ところ変わって、キヴォトス。シャーレ部室付近の街中にて。
「まったく!なんで、巡航戦車がでばってるのよっ!それも三両もっ!」
「落ち着いてください...。」
「怒りたくもなるわよ!そもそも、正当な歎願をしにいった私たちが、なんでこんなに苦労することになっているのよ!」
『私、学内だとそれなりの存在なのよっ』とプリプリ怒るユウカに対し、安全域に退避してからやってくれないかなぁと思いつつ、同行している少女の一人、チナツは彼女の怒りに同情していた。
現在地は、シャーレ部室棟から1km下がった場所。
敵数は五十を超え、こちらの戦力はわずか四人。
つまるところ、撤退中である。
事の経緯は単純だ。
まず、彼女たち四人はそれぞれ異なる学校区域を管理する立場の人間であった。
そして、同時に、彼女らの管理地区では治安の大幅な悪化、それに伴う、勉学・生活水準の壊滅的なまでの崩壊が生じていた。
これらをなんとかするために、彼女たち四人はキヴォトスの行政を司る連邦生徒会へ対処を訴えに行ったのだ。
しかし、連邦生徒会の幹部、主席行政官七神リンからは、現在『連邦生徒会長の失踪により行政権を失っている』状況で、さらに『最近戦闘狂になってしまい、完全武装までした不良生徒からシャーレの部室を奪還』しなければ、対応は無理だと跳ね返された。
連邦生徒会の機能不全はキヴォトス全体の機能不全。
仕方なく、彼女たちは生徒会の小間使いとして、任務を渋々受けることなった。
依頼内容は『不良生徒の一掃とシャーレの部室確保。』
その命に従い、彼女らは武装生徒たちをなぎ倒し、なぎ倒し、なぎ倒し続け、結果、目的地である建物入口前までたどり着いたのだったが、突如、付近の林中から極厚装甲の戦車三両が現れて、奮闘むなしく、火力不足を原因に、撤退せざるを得なくなったというわけだ。
正直、林を背にして、ああもシャーレの建物前に陣取られてしまっては、
対戦車ミサイルか何かを持ってこないとどうしようもないだろう。
「ひとまず、引きましょう。」とハスミが頬についた煤をぬぐいながら口を開いた。
「行政制御権を取り戻すため、連邦生徒会長より特別に指名された『先生』が到着する前に、不良生徒からシャーレの部室を奪還しなければなりませんが、身の安全が最優先です。」
反対する者は誰もいなかった。
それもそのはず、戦車に有効な貫通弾を持つハスミですら、撤退に賛成の状況で、なおも突撃を敢行しようとする阿呆はこの中にはいないのだ。
「そうね、いったん対戦車ミサイルか地雷を準備して――」
などと会話していると、四人の元へ通信が入ってきた。
嫌な予感を覚えつつ、四人で通信主を確認すると、思わず全員溜息を吐いた。
予想通り、発信元は今回の依頼主、主席行政官七神リンだったのだ。
「無視します?」
というチナツの提案をユウカが首を振って否定する。
「いや、出ないわけにはいかないでしょ。出たくないけど...はい、もしも――」
「皆さん、今どこにいます?」とホログラム上のリンは挨拶もなしに切り出した。
「いや、皆さんの任務遂行を疑っているとかではなくてですね、純粋にいま、どこにいらっしゃいます?何か見えます?」
と、聞こえてきたのはいつも冷静な彼女らしくない、どこか切羽詰まった声だった。
四人それぞれ顔を見合わせ、首をかしげる。
ひょっとして、『先生』がキヴォトスへ到着してしまったのだろうか。
「あー、えーっと。」
「シャーレ部室から1km程度の距離にある建物に陣取っています。」
言い淀んだ様子のチナツに代わり、ユウカがきっぱりと返答した。
「厳密にいえば撤退中です。敵先方部隊の一掃には成功したのですが、部室入口前へ到着したと同時に、横流しされただろうクルセイダー1型が三両が現れ、奮闘したものの手元の火力では――」
「戦車が三両もいるですって!」と絶叫にも似たリンの叫び声が辺りにこだました。
あまりの大声に四人の肩とハスミの羽がビクンッと揺れる。
「...主席行政官」とハスミが続ける。「我々はまだ危険域にいますので通信は小声で―」
「そんなこと言っている場合じゃないの。」と再び劈くような大声。
「あぁぁ、連邦生徒会長はなぜあのような人物を指名したのか...。」
「行政官...。」
「すみませんね。」
『フゥ―』とひとしきり深呼吸をして気を落ち着かせた後、彼女は言葉をこう続けた。
「状況を説明しなければ、その緊急性は伝わりませんよね。失礼しました。」
無言で頷く四人。
一体何があったのか。
「ではまず、前提の確認ですが、皆さんは今回の『先生』がキヴォトス外の人ってご存じですよね?」
「え、ええ」とスズミは気圧されたように言葉を返す。
「キヴォトス外から来た人は弾丸一発で致命傷になります。なので、先んじて我々で不良生徒の掃討をし、安全確保する――」
「その『先生』が、『先生』が...何故か高高度降下してきて、戦闘エリアのど真ん中、そのシャーレのビル50m圏内に着地したのよ!っ」
「「「「はぁ?(はいっ?)」」」」
とその直後、バゴォンと砲塔から弾丸が打ち出される音が五人の耳に聞こえてくる。
続けて、残存生徒のものだろうか、乾いた銃声と叫ぶような怒号も微かに聞こえてきた。
おまけに何か引火したのか、遠くで爆炎の火柱すら見えている。あれは部室の方向だ。
「急いでっ!保護を!」
「「「「はいっ!」」」」
持ち前の脚力を生かして、四人は疾走を開始した。
先頭を走るのは身軽なユウカで、最後尾をチナツが確保する。
一歩また一歩と、ノックアウトされ道路に転がる不良生徒も踏み越え突き進み、
目的地に近づくたび、強くなる硝煙の香りに思わず、拍動が跳ね上がる。
もし『先生』が死んでしまったら。
もし『サンクトゥムタワー』にアクセスできなくなったら。
この大混乱は永遠のものとなってしまうかもしれない。
ただ、そもそも、あの戦車三両をいったいどうすればいいんだろうか?
しかし、その憂慮は結果的に杞憂に終わったのだった。
目の前に見えるのは一人の大男。
そして、その背後では、砲弾でできた穴だらけの地面に、彼女たちの手を焼いた巡航戦車が鉄くずになり果て転がっており、さらに武装解除され、白目を剥いて気絶している不良生徒で山が築かれている。
「え、一体...?」
『どういうこと?』と問う前に、眼前の大男がこちらへ振り返る。
短く揃えられたブラウンの髪に、こちらを射殺さんばかりの鋭い眼光。
タンクトップ型防弾ベストを着ており、ショットガンから手投げ爆弾まで完全武装。
おまけに、筋肉もりもり、マッチョマンだ。
「あ、あなたは...?」
リンの声が沈黙を破る。
あまりに急いで、ここまで来たので通信を消し忘れていたのだろう。
ホログラムとして表示されたリンに、一瞬眉をひそめた後、その男はこう答えた。
「ジョン。ジョン・メイトリクス。元コマンド―だ。」