ホシノ「コマンドォ?」メイトリクス「元軍人だ」 作:ロッコス
指紋認証辺りは所与の知識として書いてます!
(あそこらへん、ブルアカでもなんかぎこちなくて好きじゃないので思いっきり省きました)
学園都市キヴォトス シャーレ部室内。
「サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了...。先生、制御権を無事回収できました!」
「...そうか。」
白板に映し出された少女に『先生』と呼ばれた大男。
ジョン・メイトリクスは、その右手に持った白板から飛び出してきた少女の報告に、淡々と言葉を返す。
時刻は十九時を少し回ったところ。
粘りつくような暑さは外でもなりをひそめ始めており、日は沈みかけ、月が夜空に見える。そんな黄昏時の世界であった。
この逢魔時とも呼ばれる昼と夜の境目は、姿を隠しやすくゲリラ活動が活発になってくる時間帯でもあるのだが、シャーレ棟の予備電源は生きていたようで、室内やわずかに残った屋外灯のおかげもあり、彼らの居るシャーレ部室付近は安全が保たれていた。
もっとも、彼女たち四人は依然として外で警戒にあたっているし、そもそも彼女たち四人が集めてくれた重火器は水にやられてしまっており、依然として武器不足なのは否めない。しかし、メイトリクスの意識はそこにはなかった。
「でも...大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても...。」
「問題ない。」
政治やらなんやらはわかる人間に任せるのが一番だ。
などとメイトリクスは考えながら、『わかりました!』とせかせか画面で動き回る、薄青髪に白い大きなリボンという何とも可愛らしい風貌のアロナと名乗る少女をそのアーモンド形の瞳でなおもじっと見つめていた。
コマンド―本編は1985年上映。今から見れば過去である。
そんな1985年は電子記録媒体としてはフロッピーディスクが主流であり、MS-DOS上で起動するオペレーションシステムMicrosoft Windows 1.0がリリースされたばかりの文字通りPC黎明期であった。
指紋認証こそ1982年頃より技術確立されたものであり、彼も動揺することもなかったのだが、この薄っぺらい白板に『人の顔を映し出し、さらにその人物とラグなく双方向に会話できる機能』が搭載されていたのだとは、正直驚きを隠せていなかった。
ましてや、今白板に映し出されているアロナは自我を持つ電子生命体である。
彼の時代では、電子生命体はサイエンスフィクション世界の与太話であり、元コマンド―所属で最新技術に触れる機会のあったメイトリクスですら、この少女は誰かに操作されたマスコット人形なのだろうと自分を納得させるので精一杯だったのだ。
「...はい、わかりました。」
などと、彼がそのメカニズムを解明しようとジッと画面を見つめていると、隣から別の少女の声が聞こえてくる。
様子を伺うと、どうやら白衣風の衣装に身を包んだ黒髪少女が電話に応えているようだった。
「サンクトゥムタワーの制御権確保を確認しました。」
電話を切ってそうメイトリクスに報告する少女の名前は七神リン。
通信越しでは戦場で暴れ狂うメイトリクスを制御できないと、わざわざシャーレまで足を運んだ連邦生徒会主席行政官である。
彼女はメイトリクスに向き直ると、そのままゆっくりと一礼し、口を開いて、言葉を続けた。
「お疲れさまでした、先生。キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。周囲の治安維持は――」
「君たちに任せる。」
と丁寧な言い回しをする彼女の質問に、メイトリクスは迷うことなく即答した。
彼が思い浮かべていたのは、先程の『では、またの機会に♡』とスキップしながら周囲へ銃を乱射し、あらかたの残存兵力をなぎ倒し立ち去っていくワカモの姿。
連邦生徒会の力量はわからないが、今も外で警戒してくれている少女四人とあのワカモの働きもある。
もう敵方にろくな戦力は残っていないに違いない。
「承知しました、お任せください。」
と言って、リンは一つ咳をする。
そして唾をのみこみ、その人間離れした横にとんがった耳をぴくぴくさせ、
「先生。では、シャーレの施設案内でも...」
とメイトリクスに目配せし、彼を露骨に先導しようとし始めたのだった。
その行動は、なにやらぎこちなく、どこか焦った様子のものだった。いつも冷静沈着で、不測の事態にも適切に判断、対処し、生徒会に抜群の信頼を寄せられている彼女らしくない振る舞いである。
彼女と会ったばかりで素性をよく知らない、メイトリクスは特に不審にも思わなかったが、仮に連邦生徒会の面々が他にもいたら、額に手を当て熱でもあるのかと心配するぐらいの挙動不審さだったのだ。
しかしそれも仕方がない。
彼女から見ればメイトリクスは、依然、得体のしれない筋肉もりもりマッチョマンの変態なのだ。
突如空から現れたと思ったら、単騎で戦車は鹵獲し、不良生徒の群れはなぎ倒す。
おまけに、単独戦闘能力のみに秀でているのかと思いきや、生徒を率いては抜群の指導力。
挙句に、あのワカモを手玉に取っていた。
あなたは本当に人間なの?一体コマンド―って何なのよ?
そう思う、彼女の狙いは、このままなし崩し的に彼に書類業務を任せ、施設内にとどめておく事にあったのである。
しかし、その行動は他ならぬメイトリクスの手によって制止されてしまった。
「それはまたの機会にするとして。頼みがあるのだが...」
「頼み、ですか?」
またどこかで暴れるということなのかしら?
いや、今回もシャーレ奪還に協力いただいたわけですし、暴れるという表現はよろしくないのですが、それでも、問題を起こされるわけには...。
などと困惑した表情を浮かべたリンは、彼の丁寧な説明を聞くと、ホッとした表情でそれを快諾した。
「それぐらいなら、ぜひ。協力させていただきます。」
そう、彼の頼みとは。
『買い物』用の足を用意してほしいという内容だったのだ。
◆◆
学園都市キヴォトスシャーレ棟より東へ百キロ ブラックマーケット某所
ブラックマーケット地域にあるショッピングマーケットの夜は早い。
具体的に、二十時まで経営しているのは珍しい方で、大体のお店は十九時にはCOLSEDの文字を店頭に出していると言えばその早さが伝わってくれるだろうか。
では、駐車場の方で露店でも出しているのかと思うかもしれないが、そんなこともない。
駐車場どころか、辺りを見渡してみても、人っこ一つの影も形も見つからない。
数キロ離れた街中では、深夜まで営業を続けている飲食店などに人があふれかえっているのにもかかわらずである。
異常?いや、これは当然のことである。
戦車やら戦術ミサイルといった大型の武装を必要とするPMCなどの組織はショッピングマーケットではなく、その本社、カイザーコーポレーションなどと直接やり取りすることが多い。
となると、ショッピングマーケットの大半の顧客は学園都市の生徒たちだ。
そして彼らには門限があったり、そもそも夜は戦闘を繰り広げたりしているので、自然と夕方前には店じまいするお店が多かったりするのである。
このお店も例にもれず。
カイザーコーポレーション傘下「ハッピートリガー」は、現在二十時前だと言うのにもかかわらず、もうシャッターと鉄柵を下ろし、完全に店じまいをしてしまっていた。
住宅もなく、辺り一帯、静寂の支配する闇の世界。
ショッピングマーケットは防犯カメラが怪しく輝く夜の要塞になっている。
今日も一晩静かな時が過ぎていくと思った矢先、突如としてこのお店目掛けて近づいてくる煌々とした光が現れた。
近づいてくるにつれ、その正体も明らかになってくる。
まずその光は二つに分かれていた。
おまけに、低く唸るような駆動音を伴っており、その背後のガラスには一人の大男の顔が映し出されている。
そして、その光の正体。
メイトリクスの運転する黄色の巨大なショベルカーは、店先の路肩に乗り上げると、勢いそのままに鉄柵もろとも、店の防弾ガラスをぶち破り、豪快な入店を果たしたのだった。
ということで『買い物』タイム始動です。
ここまで書いてきて、ついにちょっとずつドンパチが始まり感無量です
筆が乗ってきているので多分、木曜日にも投稿できるかなぁと
あと私事ですが、カクヨム(外部サイト)で小説を書き始めました。
こっちはあまりドンパチしてないんですが、もしよかったら覗いてみてください!
転生被害者のやりなおし ~転生者に、身体と人生奪われました~
https://kakuyomu.jp/works/16817330667343691841