エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい 作:こびとのまち
なんというか、どえらいことになってしまったなぁというのが今の率直な感想だ。そう、どエロいことじゃなくて、どえらいこと。ちなみに、今のはちょっとしたサキュバスジョークね。
……こほん、さっそく閑話休題っと。
それでは改めて、
主人公である姉とヒロインである大路先輩が顔を合わせてしまった時点で、ぶっちゃけ冷や汗ダラダラだったんだけどさ……姉がボクの代わりに大路先輩の誘いを受けると言い出したときは、もう冗談抜きで心臓が止まるかと思ったよね、うん。
そもそもの話、原作では文化祭の二日目にゲストを迎えた劇をやるなんて描写はなかった気がするんだけどなぁ。一体どうしてこんな展開になってしまったのか。ボクは堪らずクソデカ溜め息を漏らす。
はぁ~~~~。
大路先輩の誘いをボクが受け入れたことで、とりあえず最悪の事態は回避した。そうしたら、何故か
もちろんボクは、もう子どもじゃないんだからそんな必要ないと声高に主張したよ? けれど姉の意思は固く、最終的にはこっちが折れざるを得なかった。
もしかすると、大路先輩はこうなることまで予見した上で、ボクを劇に誘ったのかもしれない。だとしたら、相当に油断ならない強敵と言える。
何度でも言うが、ボクは姉をヒロインたちの魔の手から守り抜くと心に決めている。その為にも、先輩の気が姉に向かないよう細心の注意を払うつもりだ。
そういえば、蒼も初めは姉と同じく劇の練習に付き添う気満々な様子だった。彼女は陸上部員だから、スケジュール的な都合で渋々諦めてくれたけど。放課後に暇しているのなんて、ボクや姉みたいな一部の生徒くらいだもんね。
ちなみに、蒼はがっくり項垂れながら「オオカミ、あとは頼んだぞ……」と呟いて、何かを姉に託していた。託された側の姉も真面目な顔で頷いていたけど、二人揃ってボクのことを幼女か何かと勘違いしているのではないだろうか?
まったく、いつまでも過保護なんだから。
♢
さてさて、大路先輩の話にもあった通り、来月には籠ノ宮高校の文化祭が開催される。
文化祭では、演劇部を始めとした文化部の発表があるのはもちろん、各クラスでもそれぞれ出し物を企画することになるらしい。
そんなわけで、我がクラスでも出し物の内容について話し合う場が設けられたのだが──
「ねぇ、分かってる? うちのクラスには
「いやいや、メイド喫茶なんてベタすぎるから。どうせ他のクラスと被って、客の奪い合いになるのがオチだって。ここは占いの館で勝負すべきでしょ」
この通り、がっつり意見が二分して絶賛対立中である。今のところ、メイド喫茶派の勢いが若干勝っている感はあるが。
ところで、文化祭の定番といえば、真っ先にメイド喫茶を思い浮かべる人もいるのではないだろうか。けれど冷静に考えてみると、実際にメイド喫茶をやったことのある学校なんていくつ存在するんだろうね?
少なくともボクは創作物でしか見たことがないもんだから、目の前の光景にちょっとした感動のようなものを覚えてしまった。あぁ、ここは本当に百合ゲーの世界なんだなぁって。
「う〜ん、メイド服を着た侑咲はたしかに見てみたいのよね。……絶対エッチだもん。でもでも、可愛い妹が他の誰かに愛想を振り撒いているところはあんまり見たくないし。うぐぐぐ、どうしたものかしら」
お姉ちゃん、なんか変なこと考えてない? 文化祭は健全な学校行事だからね? いや、ボクの勘違いならいいんだけどさ。
「そうだ、名案を思いついたわ! わたしが侑咲の客になって、ずっと独り占めし続ければ──」
「待て待て、何をバカなこと言ってんだ。一緒のクラスなんだから、オオカミもウサギと同じく接客する側だぞ? ちゃんと自分の仕事をしような?」
「ぶ〜〜〜〜! 蒼のいけず!」
あはは、拗ねているお姉ちゃん、可愛いなぁ。
そんなこんなで我が姉は、あれこれと呟きながら優柔不断に迷い続けている最中だ。
「ところで、蒼はどっち派なのよ?」
「ん? どっち派? ……あぁ、あたしは一切迷うことなくメイド喫茶派だな。もし仮に変な客が来ちまっても、全部オオカミに押しつければいい。そんでもってあたしは、ウサギの貴重なメイド服姿をこの目に焼きつけることだけに集中するぜ!」
「ちょっと、なんでわたしが面倒な客担当なのよ!? ……やっぱりわたしは占いの館派につこうかしら」
よく分かんないけど、とりあえず蒼もちゃんと仕事しようね……?
ちなみにボクも、メイド喫茶に決まれば良いなと思っている。いや、メイド服なんて恥ずかしいし、できれば着たくないんだけどさ。それ以上に
はぁ~~~~。
ひっそりと影を潜めながら占いの館派についている
長い前髪で目元をすっぽり隠しているあの子の名前は
作中でもこの世界でも、彼女の影は非常に薄い。
普段は大抵教室の隅っこで黙々と古めかしい本を読んでいて、他のクラスメイトとは滅多に言葉を交わさない。だからボクは、同じクラスに在籍しながらも半年間ほとんど接する機会がなかった。ヒロインである人物とわざわざ関わりたいとも思わなかったが。
そんな彼女は原作で、自分とは対照的な存在である主人公に強い憧れを抱く。それはある種の一目惚れでもあったのだが、奥手すぎる性格が災いして一向に距離を詰められず苦しむことになる。
そうした苦悩の末に辿り着いた……辿り着いてしまったのが、催眠や洗脳といった類いの到底まともではない手段だった。
そして、彼女はそれを占いと偽ることで、主人公に一発目の暗示をかけていた。そう、占いだ。
ボクが占いの館ではなくメイド喫茶を推している理由については、これで十分理解してもらえたのではないだろうか。要するにそういうことである。
「お〜い、ウサギ。また考え事か? 相変わらずフワフワしてんなぁ……って、んん? ちょっと待てよ。ということは、もしかしてさっきの話し合い中も──」
「えぇ、この子、まったく参加していなかったわよ。多数決を採るような場面もなかったから、司会の子は
……へ? 最後って?
いつもの悪癖で考え事に耽っていたら、蒼と姉に白い目で見られてしまった。ぐぬぬ。
ところで、最後までってことはつまり……ボクがぼんやりしているうちに出し物が決まったのだろうか? 多数決を採る場面がなかったというのは謎だが。
まあ、多数決を採るまでもなくメイド喫茶に落ち着いたと考えるのが妥当な線か。最初から勢いがあったもんね、メイド喫茶派は。そんなことを思いながら、ボクは黒板に目を向ける。
そこにはデカデカと、こんな文字が記されていた。
『占いメイド喫茶←決定!』
……ねぇ、何がどうしてそうなったの!?