エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい   作:こびとのまち

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小悪魔はいつだって無自覚

 まさかこうして何度も訪れることになるだなんて、数日前まで想像もしていなかった演劇部の部室。ボクはそこで芝居の練習に勤しんでいる。

 

「か、かがみよかがみ、このよでいちばんうつくしいのはだーれ?」

 

 昨日の放課後からいよいよ練習が始まったものの、文化祭二日目にのみ出演するボクへと与えられた時間は割と少ない。演劇部にとってはやはり初日の演目がメインという扱いらしく、練習時間の配分も当然そっちに寄っているからだ。う〜む、足りない分は家で自主練しなきゃだなぁ。

 

「侑咲さん、それ白雪姫のセリフやないで?」

「というか、緊張でガッチガチ……」

「でも可愛いから問題ない、寧ろ百点満点」

「女王様のセリフでも可愛いとか反則だよぉ」

「可愛いは正義! 美少女は世界を救う!」

「「「「わかる〜〜〜〜」」」」

 

 演劇部員たち曰く、二日目の演目は盛り上がり重視であり、演技の上手さにはそれほど重きを置いていないとのこと。要するに、ゲストのボクは気楽に参加して楽しめば良いんだってさ。そう言われたって緊張はするけどね。演劇なんて一度もやったことないし。

 

「ところで、あそこにいる女の子って……」

「双子の姉の逢華さんだね。侑咲さんにそっくり」

「昨日もいたし、ウサギたんの保護者ってこと?」

「可愛いけど、ちょっとだけおっかない感じぃ」

「たまにあの子と目が合うと、いろんな意味でドキッとしちゃう……!」

「「「「わかる〜〜〜〜」」」」

 

 ……あそこの五人組は、さっきから声を潜めて何の話をしているのだろうか? って、ダメダメ。ちゃんと練習に集中しなくっちゃ。

 

 ちなみに今日も壁際には、腕組みしたボクの姉が渋い顔で立っている。彼女は先日の宣言通り、本気で毎回付き添うつもりのようだ。今さらそれを拒絶はしないし説得するのも諦めているけど、せめて座って見ていればいいのになぁとは思う。足とか疲れない?

 

 

 

 

「へぇ、占いメイド喫茶か。それはなかなかに面白そうな企画だね。キミたち美少女双子姉妹がメイド服なんて着たら、天使か女神のように可愛くて素敵なんだろうなぁ。是非ともこの目で見てみたいよ」

 

 練習の休憩時間に声をかけてきた大路先輩。そんな彼女に雑談がてらクラスの出し物が決まったことを話したところ、想像以上の食いつきがあった。

 さては先輩、姉のメイド服姿に興味津々なんだね? ふふん、ボクもだんだんヒロインの思考が読めるようになってきたでしょ。

 

「あの〜、先輩。それで当日なんですが……」

「ん? どうしたんだい? もしかして、占いメイド喫茶とやらにワタシを招待したいとか──」

「あぁ、いや、そうじゃなくて……ボクはただ、いつもと違う服を着ているからといって、邪な目で見ちゃだめですよって言いたかっただけで」

「んぐふぅっ!? ケホッ、ケホッ」

 

 招待の有無に関係なく、先輩は顔を出しに来るだろう。事前に各クラスの出し物について載った資料も配られるそうだし。それはボクには止められない。

 だだ、女誑しである先輩が姉やクラスメイトたちに手を出す事態だけは回避したい。最悪の場合、血みどろなバッドエンドを迎えることになりかねないので、事前に釘を刺しておく。

 

「や、やだなぁ。ワタシがそんな目で後輩を見るはずないじゃないか。あは、あはは」

 

 ……いや、さすがに動揺しすぎでしょ!? めちゃくちゃ分かりやすく声が上擦っているし、目も忙しなく泳いでいる。この反応から察するに、先輩はやはり姉のメイド服姿を拝みに来るつもりだったようだ。

 

 まったく、百合ゲーのヒロインってやつは油断も隙もありゃしない。

 

「先輩……どうしても我慢できなくなったら、じっとボクのことだけ見てくださいね?」

 

 見た目だけならボクは姉と瓜二つだから、一時凌ぎの代用品くらいにはなれるだろう。その代わり、どうか姉には手を出さないでほしい。そんな想いで牽制を入れてみたところ──

 

「「ブフゥ〜〜〜〜ッ!?」」

 

 大路先輩とボクの姉が揃って目を剥きながら、勢いよく吹き出してしまった。ど、どうして!?

 

「ウウウウウウウウウウウウサギちゃん、それは一体どういう意味かな?」

 

 なんか今、やたらと「ウ」が多くなかった? あと、質問の意図もよく分からないや。

 

「どういう意味って、言葉通りの意味ですけど……」

 

 他にどういう意味があるというのか。ボクは半ば呆れ気味に返事する。その途端、先輩の目がキラキラと輝き出した。

 

「なるほどなるほど、理解した。つまり、ワタシへの愛の告白ということだね?」

 

 いや、まったく理解してないじゃん! 全然違うんだけど! 愛の告白ってナニ!?

 

「せ〜ん〜ぱ〜い〜? 貴女、わざと勘違いした振りをしているでしょ!? それと侑咲も、お願いだから誤解を招くような言い方はしないで!」

 

 そう言いながらボクに水筒を差し出す姉。それを右手で受け取りながら、ボクは渋々頷き返す。

 

「大体、どうして侑咲が白雪姫役で先輩が王子役なのよ!? わたし、ちっとも納得してないんだけどっ」

「ウサギちゃんは校内で一二を争う美少女、ワタシは演劇部の部長。それらを踏まえて考えれば、割と妥当な配役じゃないかな。一体何が不満なんだい?」

「うっ、だってほら、白雪姫と王子は最後に……」

 

 あ〜、もしかして王子様のキスで白雪姫が目覚めるシーンのことを気にしているのかな?

 

「あはは、キミたち双子姉妹は考えることまでそっくりなんだね。先日、ウサギちゃんにも同じようなことを訊かれたよ。もちろん口付けは()()で済ませるさ」

「……嘘じゃないでしょうね?」

 

 この先輩には不意打ちで一度唇を奪われているからね。さすがのボクも事前に確認済みである。

 それにしても、あの姉がキスシーンのことを気にするなんて。正直に言って意外だった。だって妹のボク相手にスキンシップ感覚でキスしてきたくらいだし。

 

「ほんとほんと。まかり事故が起きてしまう可能性はないとも言いね」

「えっ、今なんて──」

「さぁて、そろそろ練習を再開しようか!」

 

 部長である大路先輩の一声で、部室の空気があっという間に練習モードへと切り替わる。つられてボクも腰を上げると、先輩が爽やかな笑顔をこちらに向けてきた。ま、眩しい……!

 

「そうそう、今日は練習後に採寸の予定があるから帰らないでね。今年のゲストがキミだと聞いて、衣装係の子たちも相当張り切っているみたいだよ」

 

 ……うん? さいすんの、じかん?

 

「メイド服姿のキミも見てみたいとは思うけれど……王子様役のワタシとしては、やっぱり白雪姫ちゃんがドレスアップした姿を見るのが一番楽しみだね」

「どれす、あっぷ……」

 

 ア、ハイ。ソウデスネ。舞台に立つんだもん、そりゃあ衣装を着ることになるよね。うぅ〜、なんでそんな当たり前のことが頭から抜け落ちていたんだろう。

 

 それにしても、ボクってば遂にメイド服とドレスまで着ちゃうのかぁ。ほんの僅かに残された前世の()の精神は、文化祭の日をもって完全に消滅することになりそうだ。ぐすん。

 





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