エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい 作:こびとのまち
文化祭当日まで残り一週間を切り、校内は早くも文化祭ムードに包まれ始めている。
そんな浮かれた空気の中でボクはといえば、顔面を真っ赤に染め上げていた。なんだか最近、赤面しっぱなしな気がしないでもない。
「ねぇねぇ、これ本当に文化祭で着るやつ……?」
「えぇ、もちろん。それがどうかしましたか?」
「どうかしましたか、じゃないから! あのさ、どうしてメイド服の胸元が開いているのかなぁ!? このスカートだって、どう見ても短すぎるし……」
「でも、とってもお似合いですよ?」
「うぅうう……褒め言葉のつもりなんだろうけど、これっぽっちも嬉しくないなぁ。そもそも似合っているかどうかの話は今していないからね!?」
「うふふふふふ」
ボクの非難を笑って受け流す、衣装係の山本さん。なんだこの妙な強キャラ感は……。
「ちなみに私の名前は山
あ、ごめん。ってか、今ボクの思考を読んだ!?
「うふふふふふ」
「怖い怖い怖いっ!」
……まあいいや、話を戻そう。
いや、メイド喫茶で使用する衣装が遂に届いたから試着することになったんだけどさ。心を無にして着てみたら、明らかに露出度が高すぎるんだよね。
「こんなの着て校内をうろうろしたら、あっという間に風紀が乱れちゃいそうだよ……」
「そうでしょうか? とっても可愛くて素敵だと思うんですけど。それに、少しくらい風紀が乱れても構わないじゃないですか。なんたって文化祭ですし」
「ダメに決まってるでしょ! 文化祭はそういうイベントじゃないからね!? ……というか、たしか風紀委員だったよね、山田さん」
「うふふふふふ」
う〜ん、この学校の風紀はもうダメかもしれない。って、成人向け百合ゲーの舞台なんだから今更か。
まったく手応えのないツッコミばかり繰り返して両肩で息をし始めた頃、奥にある着替え用のカーテンが開く。真っ先に着替えさせられたボクに続いて試着することになったのは、モデル体型の蒼だったはず。
被害者第二号となる蒼には悪いけど、一緒に衣装係を非難する仲間が増えたのはありがた……
「いや、なんで蒼の着ているメイド服は露出度が低いのさ!?」
クラスカルなメイド服を纏い即席の試着室から現れた蒼を目にし、ボクは思わず声を張り上げてツッコんでしまった。
「なんでって、これが正統なメイド服ですから。侑咲さん、文化祭はあくまでも学校行事なんですよ? 露出は当然控えめにしないと」
「山田さんは一旦黙ろっか!?」
「うふふふふふ」
この衣装係、クセ強くない? これからはダブスタ山田と呼んでやろうかな。いやまあ、それはそれで普通に喜びそうな気もするが。くっ、無敵かよ。
「メイド服なんて初めて着るから恥ずかしいぜ……」
「ボクの着ているメイド服と見比べてから、もう一度同じ台詞を言えるか試してみようか!?」
「ウサギは似合っているからいいじゃないか」
「ちっとも良くな〜い!」
ぐええ、叫びすぎて喉が潰れそう。
「それじゃ、次は逢華さんに着替えていただいて……っと、どうやら今は無理そうですね」
鼻血を垂れ流しながら床へ倒れている姉の有様に、ダブスタ山田もようやく気がついたらしい。他の生徒に声を掛けるべく、そそくさとボクたちの側から離れていった。姉の着替えはとりあえず後回しということだろう。メイド服に血がついたら大変だもんなぁ。
ボクは大胆に開いた胸元を押さえながらしゃがみ、血の海に浮かぶ姉へと声をかける。
「ごめんね、ピュアなお姉ちゃんには少し刺激が強すぎたよね。安心して、当日までには蒼と同じ
「「えっ……!?」」
エログロ上等な百合ゲーの中心人物とはいえど、姉自身は純真無垢な年相応の女の子である。露出度が高すぎるこの姿を見て、免疫の無さからうっかり鼻血を噴き出したって不思議じゃない。
そんな考えに至ったからこその発言だったが、姉と蒼の反応はなんだかとっても微妙だった。
「そうよね、今の侑咲をお客さんやあの先輩に見せるわけにはいかないものね……!」
「だ、だよな! あたしも同意見だぜ! 少しもったいない気がしないでもないけど」
もったいないって、何が? 何故か顔を曇らせた二人を訝しげに眺めていると、蒼が再び口を開く。
「そうだ、脱いで封印してしまう前に何枚か写真を撮らせてくれないか? せっかく着たんだしさ」
「えっ、普通に嫌なんだけど……」
「そこをなんとか! 頼むよウサギ……!」
「い〜や〜だ〜! なんでそんなに必死なの!?」
珍しくしつこい蒼に、ボクはちょっぴり困惑を覚える。何にせよ頷くわけにはいかない。こんな姿を撮られたら、恥ずかしすぎて死んでしまうからね。
「わたしからもお願い! だってほら、侑咲が生まれて初めて着たメイド服でしょ? お姉ちゃんとしては、可愛い妹の成長記録をちゃんと残しておきたいわ」
まさかのお姉ちゃんもそっち側!?
むくりと起き上がって鼻にティッシュを詰め込みながら、器用に話し続ける姉。いやでも、ボクの成長記録っていうか、只の黒歴史と化す予感しかしないよ? 本当にそれでもいいの?
「うぅ〜、ほんとは嫌だけど、お姉ちゃんがそこまで言うならちょっとだけ……」
「ウサギって、オオカミに対してはありえないほど激甘だよな。あたしがあんなに必死で頼んでもダメだったのに。たぶんあたし以上に下心塗れだぞ、おまえの姉ちゃん。……だがしかし、ナイスだオオカミ!」
「なに言ってんのよ、わたしに下心なんてあるわけないでしょ? ふふふふ」
「お、おう……」
まったくだ、ボクの姉ほど下心と無縁な淫魔はいないというのに。大体、下心を向けられるのはボクじゃなくて主人公である姉の方だからね。
「それじゃ、とりあえず右手を口元に添えて、左手は腰に当ててみようか」
そう言ってボクにレンズを向ける蒼。
「うへぇ〜、さっそく撮っちゃうんだ……。しかも、指示が妙に具体的だね!?」
ってか、そのカメラは一体どこから取り出したの? サクッとスマホで撮るだけかと思ったら、いきなり本格的なカメラが出てきたんだけど。
仕方がないので言われた通りのポーズを取る。うぅうう、やっぱり恥ずかしい……。
「よし、次は軽くスカートを持ち上げてみてくれ」
「うん、分かっ……いやいやいや、それは駄目でしょ馬鹿なの変態なの!?!?」
「あ、そのあたりの感覚は意外としっかりしているのな。良かった良かった、安心したぜ」
「ちっとも良くないからね!?」
そんな感じの会話を交えながら、ボクの黒歴史となる見込みの写真が着々と増えていく。
ちなみに、姉は無言で自分のスマホを構え、ひたすら連写を繰り返していた。にゃはは、愛娘の運動会で張り切るお父さんかな……?
「そういえば、少し前に演劇部でも衣装の試着をしたんだろ? そのときはどんな感じだったんだ?」
「あぁ、あの日ね……」
ボクは自然と遠い目になる。
「衣装について
「ほうほう、それは当日が楽しみだな」
ただ、ドレスを着た直後に大勢の部員たちが詰め寄ってきて、あちこち弄ばれたのには参ったけどね。正直、側にいた姉が助けてくれなかったら、早々に心が折れていた気がする。彼女たちはボクのことを本気で人形か何かだと勘違いしているのではないだろうか。
「おおぅ、それはご愁傷様……」
「それと比べて、うちのクラスは平和だよね。いやまあ、ボクが衣装を着たくらいで騒ぐ方がおかしいんだけど。えへへ、ちょっと自意識過剰だったかな」
「いや、さっきからずっと注目されているけどな」
「へっ!?」
慌てて周りを見渡してみるが、誰とも視線は合わなかった。何故か下手っぴな口笛を吹いている子が数人いたものの、べつに関係ないだろうし。
「またまた〜、嘘ばっかり。揶揄わないでよ、蒼」
「…………ハァ」
──そうこうしているうちに、文化祭の日がやってきた。