エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい   作:こびとのまち

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二人きりになるタイミング

 ボクが寝落ちしている間に帰宅したはずの少女は、我が家のリビングに再び腰を下ろしていた。

 

 インターホンのモニターに彼女が映っていたときは忘れ物でも取りに戻ってきたのかと思ったが、話を聞く限りどうやらそういうことではないらしい。

 

「ええっと……要するに『定期券と財布を教室に忘れてきてしまったから、一晩うちに泊まらせてほしい』と。そういう理解で合っているかしら?」

 

 姉の問いに、少女──トリちゃんがコクリと頷く。なるほど、事情はとりあえず把握した。

 

 ボクたち姉妹や蒼の家は、高校まで自転車で通うことが可能なエリア内にある。だからこそ我が家で勉強会を開いたわけなんだけど、トリちゃんは電車通学の民。定期か財布がなければ家には当然帰れない。

 

「う〜ん、今から学校へ向かったところで、校舎に入れるかどうかは微妙な時間ね……」

「そもそも学校まで一度戻ってから電車で帰ろうと思ったら、だいぶ遅い時間になっちゃうような。それはボクもちょっぴり心配かなぁ」

 

 ボクと姉は顔を見合わせて唸る。

 

「いや、でもさすがにいきなりお泊まりなんて……。だったら、鳥子さんのご両親に電話して車で迎えに来てもらうとか──」

「ごめん、なさい。それは、無理なの。今日、うちも留守、だから……」

 

 ありゃま、なんという偶然。運が悪いね。

 

「というか、帰りの電車賃くらいならボクが貸してあげるよ? たかだか数百円の話だし」

「あ、えっと、でも……お友達とのお金の貸し借り、絶対ダメだって、パパとママが……」

「えっ、電車賃を借りるのはダメなのに、夜中に押しかけて泊めてもらうのはオーケーなわけ!?」

 

 トリちゃんの回答に対し、姉が呆れ顔でツッコむ。少し嫌味っぽい言い方のような気がしないでもないが、正直なところボクもまったく同じことを思った。

 

「うん、そうなの。だから、泊まらせて!」

 

 ………………。

 

「この子、まったく皮肉が通じていないわね……」

「あ、あはは。まあまあ、お姉ちゃん」

 

 姉の態度から察するに、どうやらトリちゃんを泊めることには乗り気でない様子。けれど、だからといって困っている友人を外にほっぽり出すわけにはいかないだろう。故にボクは、トリちゃんへ救いの手を差し伸べた。

 

「こほんっ。何もおもてなしはできないけど、それでも良かったら泊まっていってよ。お姉ちゃんも、布団を貸すくらいべつにいいでしょ? ね?」

 

 その一言で、トリちゃんが嬉しそうに顔を上げる。一方の姉は暫く渋い表情を浮かべていたが、ボクがしつこく見つめていると大きく息を吐きながら頷いた。

 

「あ〜もう、仕方がないわね……! わかったわよ、一晩だけなら受け入れてあげてもいいわ」

「……お姉ちゃんっ!」

 

 うんうん、そうだよね。聖母のように優しい姉が、クラスメイトのお願いを拒むはずがないもんね。ボクはちゃんと分かっていたよ!

 

「ただし、寝室は絶ッッ対別にするから! 鳥子さん、貴女は客間を使いなさい」

 

 え〜、なんでなんで? 同性……なのは百合ゲーの世界だから安心材料にならないとしても、相手はあのトリちゃんだよ? せっかくなら、一緒の部屋に集まって夜通しお喋りとかしたくない?

 

「うっ、そんな顔をしてもダメなものはダメよ」

「……はぁい、お姉ちゃんが頑なになっている理由は分からないけど、今回は諦めまぁす」

 

 何はともあれ、こうしてトリちゃんを我が家に泊めることとなった。ちなみに、翌日それを知った蒼が大いに拗ねたのはまた別の話である。

 

 

 

 

「……で、どうしてボクはお姉ちゃんと二人でお風呂に入っているのかな!?」

「ふふっ、わたしと侑咲は仲良し姉妹なんだから、二人で洗いっこしたっていいじゃない」

「でもでも、ボクたちもう高校生だよ!?」

 

 姉に髪を洗ってもらいながら、ボクはこの急展開に疑問を唱える。実際、高校生になってからは二人でお風呂に入ることなんてなかったので、明らかな異常事態である。似たようなツッコミなら、以前どこかでしたような気もするけど。

 

「年齢なんて関係ないわ。たまたま今日がそういう気分だったってだけ」

 

 友人を泊めている日に()()()()そういう気分になったって? それはそれで意味わかんないよ!

 

「それとも何? まさか侑咲はお姉ちゃんの裸で興奮しちゃうイケナイ子なのかしら? ふふっ」

「そ、そんなわけないよっ!」

 

 ボクと姉は瓜二つな双子姉妹。それは当然身体にも当て嵌まることで、言ってみれば鏡に映った自分の裸体を見ているようなもの。侑咲として生まれ育ってきたボクが、そんなものに今さら興奮するはずがない。

 

 とは言え、彼女は百合ゲーの主人公であり、数多のヒロインを魅了したサキュバスである。自身の魔性っぷりを多少は自覚してもらいたいところだ。

 

「はぁ……。それで、()()()理由は?」

 

 ボクの髪を洗い終えて鼻歌混じりにボディーソープへ手を伸ばしていた姉が、ピクリと身体を震わせる。そして、上目遣いでこちらを見つめながら、気恥ずかしそうにこう呟いた。

 

「……侑咲と二人きりの時間を作りたかったのよ。理由なんて、たったそれだけ」

 

 ちょっ、それは殺し文句が過ぎるでしょ!? さすが百合ゲーの主人公。恐るべし……。

 

 そんな可愛い理由を聞かされてしまっては、もう文句なんて言えるはずがない。もとを辿れば、姉が渋っているにも関わらずトリちゃんを受け入れたボクの所為という気がしないでもないしね。

 

 ボクは大人しく姉に身を任せ、泡立ったボディタオルで磨かれ続ける。が、暫くしてボクの口から小さな悲鳴が飛び出した。

 

「んひゃあ!? お、お姉ちゃん……そこはそんなに念入りに洗わなくていいからっ」

 

 変な誤解を受けないように一応補足しておくと、()()というのはボクの尻尾のことである。

 

「侑咲ったら、クラスメイトが家にいるのにセンシティブな声を出しちゃダメじゃない」

「うぅうう、今のはお姉ちゃんが悪いのに……。っていうか、そもそもボクはセンシティブな声なんて出していないけどね!?」

 

 くすくすと笑いながら妹を揶揄う小悪魔な姉。ボクは所謂「ジト目」で抗議の視線を送る。

 

「うふふ、ごめんなさい。侑咲の反応がとっても可愛いから、つい出来心で」

 

 姉はそう言って軽く謝ると、シャワーでボクの身体についた泡を洗い流した。

 

「ま、いいけどさ……。さてと、それじゃあ今度はボクがお姉ちゃんを洗う番だね」

「ええ、そうね。でもその前に、今日の分のキスをお願いしちゃおうかしら」

 

 どひゃ〜、友人を泊めている日でも「一日一回キスをする約束」はしっかり有効なのか……。たしかに、やるんだったら二人きりになっている今のタイミングなんだろうけど。

 

 仕方がない。もはや日課のようなものだし、今回もさらっと済ませてしまおう。

 

「……いつも通り、頬っぺに軽くなら。あっ、唇を重ねるやつはダメだからね!?」

「分かっているわ、不意打ちはもうしないから」

 

 こういう類の行為は大抵、焦らせば焦らすほどやりづらくなるというもの。そんなわけで、ボクは勢いに任せて姉の頬へと唇を寄せる。

 

「じゃあ……い、いくよ?」

「ふふっ、侑咲は毎回初々しい反応を見せてくれるから、お姉ちゃんとっても嬉しいわ」

「ひょえっ!?!?」

 

 も〜、どうしてそういうこと言っちゃうかなぁ!? ますます意識しちゃうじゃんか……!

 

 これ以上余計な台詞を吐かれては堪らないと、ボクは慌ててキスをする。お風呂の湯気で湿っている姉の頬は、いつもより少しだけ柔らかい気がした。

 

「…………これで、満足?」

「ええ、ありがとう。うふふふ、遂にお風呂場で侑咲とキスしちゃった」

 

 語尾に音符マークでも付いていそうな雰囲気で姉が幸せそうに呟く。その呟きが頭の中にリフレインした直後、ボクは()()()()に気づいてしまった。

 

 ──ここはお風呂場なのだから、もちろん二人ともすっぽんぽん。つまりボクと姉は()()()()()()()()()ことになる。いくら血の繋がった姉妹とはいえ、これは絵面的にほぼほぼアウトじゃない!?

 

 瞬間、爆発的に羞恥心が膨らむ。ボクは耐え切れず顔から火を出した。

 

「ん? 大好きなお姉ちゃんとのキスで照れちゃった? あ〜もう、ホント可愛いんだからっ!」

「あううううううぅう」

 

 無邪気な口調で追い討ちをかけられたボクは、両手で顔を覆い隠す。姉よ、あまり虐めないでください。じゃないと、そのうち泣いちゃうよ?

 

「そうそう、話は変わるんだけど、侑咲に確認しておきたいことがあって──」

 

 唐突な話題転換。我が姉ながら、なかなかに自由な人……いや、自由な淫魔である。ボクは真っ赤な顔のまま、彼女の問いに答えるべく口を開いた。

 

 

 

 

「侑咲ちゃんのパジャマ、ウサギ柄、なんだね! すっごく、似合っていると思う!」

「あはは、ありがと」

 

 お風呂から上がったボクの側にトリちゃんが駆け寄ってくる。可愛いな、犬みたい。ちなみに、姉のパジャマはオオカミ柄……かと思いきや、ボクとお揃いのウサギ柄なんだよね、これが。

 

 その姉はトイレに寄っているので、ボクがトリちゃんを風呂場へ案内することにした。

 

「手を洗うときに来たから分かっているだろうけど、ここがお風呂場ね。タオルは洗濯機の上に置いてあるやつを使って。それと、着替えはお姉ちゃんが用意してくれるみたいだから」

 

 ボクがひと通り説明すると、トリちゃんが控えめに頷く。どうやら問題なさそうだ。

 

「それじゃ、ごゆっくり〜」

「ま、待って侑咲ちゃん……!」

 

 案内を終えたボクがひとりでリビングへ戻ろうとしたそのとき、パジャマの裾が引っ張られる。

 

「ごめんごめん、何か説明し足りなかった?」

「ううん、違うの、そうじゃなくて……う、うちの目を、見てほしいなって」

「えっ、なに? 目??」

 

 言われた通り素直に彼女の顔を覗き込んだボクは、そのまま思考を手放した。

 





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