エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい 作:こびとのまち
わたしは昨晩、最愛の妹に嘘をついた。
あのとき侑咲には、校舎裏に呼び出しを受けたと話したけれど……実際に指定された場所は、別棟の三階奥にある寂れた女子トイレなのである。
故に、わたしが今こうして
妹との約束をそんな簡単に破ってしまって大丈夫なのかって? はて、一体なんのことかしら。
だって、わたしは一度たりとも会いに行かないだなんて口にしていないもの。ただ、侑咲がなんでもしてくれると言うからおねだりしてみただけで……。
いえ、これも嘘。というか言い訳。
さすがにそんなのは詭弁だってことくらい理解している。理解はたしかにしているんだけれど、それでもこの呼び出しには応じるしかなかったの。だって、わたしをこの場所へ呼び出したその子は──
「ワタシ、分かっているんです。逢華さんってウサちゃんのこと、すっごく邪な目で見ていますよね?」
「……えっと、いきなり何の話かしら?」
「しらばっくれても無駄なんですから。この前だって、ウサちゃんが脱いだ体操服の匂いをこっそり嗅いでいたじゃないですか!」
「…………んんんっ、まったく身に覚えがないわね。貴女の勘違いじゃないの?」
「逢華さん、思いっきり目が泳いでいますよ?」
そう、今みたいな感じで脅してきたのだから。
♢
わたし、小日向 逢華は双子の妹である小日向 侑咲をこの地球上で誰よりも深く愛している。
そして、その愛の形は血の繋がった姉として抱く家族愛……だけが全てではない。なんたって、ひとりの乙女として抱く
一番最初にその辺りのことを自覚したのは、たしかわたしたち姉妹がピカピカのランドセルを背負って小学校に通い始めた頃だったかしら。侑咲が珍しく高熱を出して寝込んだことがあった。
その当時のわたしは、妹の世話という行為がちょっとしたマイブームになっていた。今思うと、ある種のままごとに近い感覚だったのかもしれないけれど。
そんな背景もあって、わたしまで倒れてしまうのではないかと心配する両親の制止を振り切り、あくせくと侑咲の看病に精を出した。
「うぅうう、お姉ちゃん……お姉ちゃんが……」
「侑咲、怖い夢でも見てうなされているの? 大丈夫、お姉ちゃんはずっと側にいるからね」
「んっ……ふぅ、はぁあ」
そうして、火照った全身に汗を滲ませ、熱い吐息と共に弱々しい声を漏らす妹を何時間も目の前で眺めているうちに……わたしは初めて全身の血が沸き立つような興奮を覚えた。自然と息が荒くなり、下腹部がじんわりと熱くなる。それは、わたしたち姉妹にサキュバスの血が流れていることを考慮しても、あまりにも早すぎる
だけど、悪いのはその歳で無自覚に色気を醸し出していた侑咲だからね。ノーガードで妹の色気を浴びていろいろと捻じ曲げられたわたしは、寧ろ被害者と言っても過言ではない。この責任はいつか必ず取ってもらわなきゃ。
……な〜んて、
齢六歳にして早くも初恋というものを知ったわたしではあるが、その想いを露骨に表へ出すようなことはしなかった。
正直に吐いてしまえば、内心では事あるごとに激しい欲情を覚えているし、侑咲をめちゃくちゃにしたいという願望だって変わらず抱え続けている。
けれどわたしは、叶うことなら侑咲の方から手を出してきてほしいのだ。
そして、そんな自分に戸惑っている彼女を包み込むようにして受け入れてあげながら逆襲することで……罪悪感と驚愕、さらに安堵や歓喜といったさまざまな感情が複雑に混ざり合った至高の表情を見せてくれたら嬉しい。大丈夫、安心して。侑咲なら絶対に似合うと思うから。お姉ちゃんが保証します!
その夢をいつか実現する為にも、わたしの想いが想定外の形で侑咲に知られてしまう事態だけは避けなければならない。侑咲が無条件に心を許せる双子の姉という立場だからこそ可能なアプローチの仕方ってやつもあるわけだし。
それと、もうひとつ。純情な妹に手を出そうと企む不届者や、わたしたちの姉妹の間に挟まろうとする邪魔者への牽制なんかも欠かせない。
侑咲は内面的にも外見的にも文句の付けどころがない美少女な上に、天然の人誑しな一面まで備えているからね。姉であるわたしが守ってあげないと、変な輩に目をつけられた挙句、うっかり堕とされてしまいかねない。そういった危ういところも含めて侑咲の魅力といえば魅力なんだけど。
♢
さてさて、ここで話は今現在へと立ち返る。
目の前でこちらを睨んでいるこの同級生は、わたしが長年ひた隠しにしてきた想いに勘付いている可能性が相当高い。しかも、なんとも身の程知らずなことに
それに、悪い虫がわざわざ向こうから接触してきてくれたのだから、利用しない手はないじゃない?
だったら、最初から侑咲には黙っておけば良かったんだろうけど……このことを伝えたら侑咲がヤキモチを焼いたりして、とか、これをきっかけに少しでも意識してくれるようになったらなぁ、なんて余計なことを考えてしまったのが失敗だった。
少しだけ言い訳をさせてもらうと、わたしだって、まさかあそこまで良い反応が返ってくるとは思ってもみなかったのよね。完全なる計算外。
まあ、敢えて詳細な内容をぼかしたりして、侑咲に誤解させるような説明の仕方をしたのも良くなかったんだろうけど。
とは言え、結果的には侑咲にキスしてもらえたわけだから、何ひとつ後悔はしていない。当然でしょ?
そんなわけで、ここは開き直って厄介な同級生の対処に集中しようと思う。とりあえず、わたしが一方的に追い詰められるような展開だけは回避したい。
「ねぇ、ちょっと待って。わたしたち姉妹と貴女は別のクラスよね? 仮に貴女の言っていることが事実だとして、どうやって
それというのは、わたしが侑咲の体操服に顔を埋めてクンクンしていたことである。
「……むっ。教室の前を通りがかったときに、偶然見てしまっただけですが」
これはジャブ。今の一手で、会話の主導権ってやつが少しだけこちらへ傾いたような気がする。よし、続けて探りを入れてみよう。
「もうひとつ訊かせて。貴女はどうしてその体操服が侑咲のものだって分かったのかしら?」
「どうしてって、そんなの体操服に書いてある名前が目に入ったからで……」
あら、あらあらあら。この子、チョロいかも。
「へぇ……。でも、それだけじゃ理由にはならないわよね。だってほら、うちの高校の体操服には苗字しか書かれていないでしょ?」
その一言で、彼女の顔色が変わり始める。
「わたしも侑咲も苗字は同じ小日向だもの。それじゃ判断はできないわ。そもそも普通に考えて、わたしが自分の体操服に染みついた汗の匂いを気にして確かめているだけとは思わなかったの?」
「ウ、ウサちゃんは脱いだ体操服をクルクル巻いてから袋に入れる癖があるんです! 逢華さんが嗅いでいた体操服も、いつもと同じように巻かれた状態でしたから……!」
あ〜あ、思いのほかボロを出すのが早かったわね。うっかりほくそ笑みそうになるのを堪えながら、わたしは更に追求を重ねる。
「えっとね、それこそクラスメイトでもない貴女が把握している意味がわからないんだけど。しかも今、
「あっ……いや、それはその」
あとひと押しかしら。それじゃ、遠慮なく。
「まさかとは思うけど……貴女こそ、何度もうちの教室へ忍び込んで、侑咲の体操服に染みついた匂いを嗅いでいたりしたんじゃ──」
「ああああああああああああああああごめんなさい違うんです違わないけどぉおお!」
はい、チェックメイト。これで、ことの発端であるわたしへの嫌疑は有耶無耶にしつつ、上手い具合に立場を逆転させることができた。
向こうは自爆でだいぶ弱っている様子だし、もう二度とわたしたち姉妹の間へ挟まろうだなんて考えられないように釘を刺してしまおう。
「わたしね、たとえ同級生であろうとも妹を
「……ひぃっ!?」
おっと、いけないいけない。大事なことを口にしたので、つい気持ちが入りすぎてしまった。そんな真っ青になるほど怯えさせるつもりじゃなかったのよ?
わたしは
「本当に残念で堪らないんだけど、今はまだ決定的な証拠を掴んでいないから特別に見逃してあげる。でもね……次は絶対にないから。わかった? ふふふ」
まるで壊れたロボットの如く、こくこくと首を縦に振る少女。その姿を見て、わたしは小さく微笑んだ。あぁ、物分かりのいい子で本当に良かったわ、と。
わたしだって、同級生を相手に荒事なんてなるべくは起こしたくないもの。学校という狭いコミュニティの中で動きすぎるといろいろ弊害も出てくるし。
そうだ、彼女がまた無駄な期待や望みを抱かずに済むよう、
「ふふっ、ついでにひとつイイコトを教えてあげる」
「い、いいこと、ですか?」
「そう、イイコト。あのね、実はわたし……侑咲とは
「…………えっ?」
瞬間、怯えていた同級生の表情が凍りつく。
「だからきっと、わたしがどんなことをしたって侑咲は笑顔で受け入れてくれるわ。そんなわけで、貴女が割り込む隙なんて初めからどこにもなかったのよ」
「う、嘘……でしょ……?」
そんな縋り付くような問いかけに対し、わたしはそっと首を振る。
「残念ながら、本当のことよ」
そう、断じて嘘は言っていない。正確には、今はまだ頬へのソフトキス止まりだし、彼女が想像しているような仲にも発展していないのだけど。それを律儀に教えてあげる義理はない。
「じゃあね、さようなら」
「ぁあ、あああああああああああああ」
心が折れてトイレの床へ膝をつく哀れな同級生を尻目にわたしは悠然とその場から立ち去った。
ふふふ。愛すべき妹がいる姉は強し、なのよ。