エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい 作:こびとのまち
高校入学当初の
何せ彼女は、皆から愛され持て囃されている人気者である。友だちひとり作れずにいた陰キャなうちとは別世界の住人だと思っていた。実際、つい最近までまともに会話したこともなかったし。
それでも、アイドル顔負けの美少女が近くにいれば自然と目で追ってしまうものらしく──春が終わりに近づく頃にはすっかり
容姿の可愛らしさはもちろん、汚れを知らない純粋無垢な人柄、コロコロ変わる表情や太陽みたいに眩しい笑顔、素直で人懐っこい性格、愛くるしい小動物のような仕草……侑咲ちゃんの魅力を挙げ出したら本当にキリがないわけで。
そんな子を毎日のように目で追っていたら、誰だってあっという間に好きになっちゃうに決まっているでしょ。寧ろ好きにならない方がおかしい。
そして、春に芽吹いたその感情は時の流れとともにぐんぐんと成長していく。それこそ、遠くからただ眺めているだけでは到底満足できなくなるくらいに。
だからうちは、なんとかして彼女との接点を作りたいと思った。だけど、そんな簡単に他人との距離を詰められるなら、半年以上も
さてさて、こちら側から距離を詰めるのが難しい場合には一体どうすれば良いのか。どのような手段が残されているのか。その答えは至って簡単である。
そう、自力で距離を詰められないなら、相手から距離を詰めてもらえば良い。もしくは、初めから距離なんて無かったことにしてしまう、とかね。
そんなわけで、なけなしの勇気を振り絞り文化祭のどさくさに紛れて侑咲ちゃんへの仕込みを試みた。結果は大成功。想像していたよりも遥かにあっさりと
ひとつ。うちと侑咲ちゃんは以前から親しい間柄、つまり友人だったという暗示。
ふたつ。うちのことを無条件に信用し、余計な疑いは極力抱かないという暗示。
このふたつの暗示によって、うちと侑咲ちゃんの距離は一気に縮まったように思う。
けれど、こんなもので築いた関係は所詮ただのまやかしだ。卑怯な力技を用いて、一時的にハードルを下げただけにすぎない。そもそも素人のかけた暗示なんて、いつ綻びが生まれてもおかしくないだろうし。
故に、暗示できっかけを作った後は真っ当に距離を詰めていくつもりでいた。まやかしではない本物の関係を築くために。
「う、侑咲ちゃん! えっと、あの……うちも、その勉強会、参加していい?」
文化祭の翌日、教室で侑咲ちゃんたち三人の会話を偶然耳にして、咄嗟にそう声を掛けた理由はまさしく
侑咲ちゃんの家にお邪魔して同じ空間で過ごしていれば、物理的に接近できる機会だってあるはず。なんだったら、互いの得意科目を教え合っているうちに心の距離まで縮められちゃったりして……。夢と希望が瞬く間に膨らんでいく。
一応、勉強会には侑咲ちゃんの他に逢華ちゃんと慧沙さんも参加するみたいだけど、このふたりは毎日のように痴話喧嘩している仲良しコンビだ。彼女たちがいつも通りイチャイチャしている間に、うちと侑咲ちゃんもじっくり親睦を深めれば良い──。
今になって思うと、あのときのうちは暗示の成功に浮かれて楽観的になりすぎていたのかもしれない。結局、うちの目論見は大きく外れることになる。
勉強会が始まるや否や、侑咲ちゃんの両隣に陣取る逢華ちゃんと慧沙さん。もしこの状況で侑咲ちゃんがダブルピースを見せつけてきたら、うちの脳は完膚なきまでに破壊されていたことだろう。
そんなこんなで割り込む隙すら見当たらずおろおろと困惑している間に、洋酒入りのチョコレートを食べて酔っ払った侑咲ちゃんは寝落ちしてしまった。
そしてその後は、眠り姫と化した彼女と言葉ひとつ交わせずに解散。もはやがっかりを通り越して心底自身に失望した。うちは暗示に頼らなければ何もできないへなちょこ淫魔だったのだ。
……うん、だったらもういっそのこと開き直って暗示を重ねていくしかないよね。このまま何の成果も得られずに帰ったら、うちの弱々なメンタルは二度と立ち直れなくなっちゃうかもだし。
帰り道、不意に何もかも吹っ切れたうちは、鞄のポケットに入っていた定期券と財布をドブに投げ捨て、侑咲ちゃんの家へと引き返した。
「あ、あのね、定期券と財布、教室に忘れてきちゃったみたいで……今晩、泊まらせてほしいのっ」
実のところ少々強引で無理がある言い分であることは自覚していたし、姉の逢華ちゃんがうちをイマイチ信用していないことも勉強会の最中に交わした会話でなんとなく理解していた。
それでも、暗示が効いている今の侑咲ちゃんにお願いすれば上手くいくに違いないという確信があった。結果、その通りの展開になったしね。
本当はそのまま侑咲ちゃんと一緒に入浴する流れにまで持っていけたらベストだったんだけど、
とはいえ、本命だった
「あのねあのね、侑咲ちゃんは今晩、自然と目が覚めて起きちゃうの。でね、起きたら必ずうちに会いにくるの。……わ、わかった?」
そして迎えた丑三つ時。暗示の通りにやってきた侑咲ちゃんを、うちは恐る恐る抱き締めた。
こんなやり方でしか貴女に触れることができない卑怯な淫魔でごめんなさい。でもでも、きっちり責任を持って一晩で堕としてみせるから。それこそ、いつか暗示の効果が切れてしまったとしても、うちから離れるなんてこと考えられなくなるくらいにね。
そう思っていたのに……さあこれからというところで、侑咲ちゃんの背後に
「ねぇ、鳥子さん。こんな夜中にわたしの可愛い妹と二人で何をしているのかしら?」
背筋が凍りつくような逢華ちゃんの声。その声で名前を呼ばれたその瞬間、ドッと冷や汗が溢れ出し、マズいマズいと焦りが募る。
偶然見つかってしまっただけなのか、はたまた初めから警戒されていたのか。真相は分からないけど、さすがに暗示をかけたことがバレているとは思えない。故になんとかしてこの場を乗り切ろうと、若干挙動不審になりながらも必死で誤魔化した。
「鳥子さん、貴女とはまた今度じっくりとお話しをしたいわ。できれば二人きりのときに、ね」
これは彼女が去り際に放った捨て台詞。そのあまりのおっかなさにブルブルと震えながらも、うちはようやくはっきりと理解する。『侑咲ちゃんとの距離を詰める上で最大の障壁となるのは、姉である逢華ちゃんの存在に違いない』と。
だからうちは、敢えて逢華ちゃんの誘いに乗り、翌日二人きりで逢うことを決心したのである。
待っていてね、侑咲ちゃん。今からお邪魔虫なお姉さんを