エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい 作:こびとのまち
「ふふっ。待たせたわね、鳥子さん」
「ううん、うちも、今来たところ、だから。そんなことより、呼び出しに応じてくれて、嬉しいな。ちなみに、侑咲ちゃんたちは……?」
「侑咲と蒼なら、先に帰ってもらったわよ。二人きりという条件を先に出したのはわたしだもの。心配しなくたって大丈夫よ」
侑咲ちゃんと一線を越えることに失敗した翌日の放課後。うちは逢華ちゃんを空き教室に呼び出し、文字通り二人きりになっていた。
本音を吐いちゃうと、もう既に気絶そうなほど緊張しているんだよね。だけど、そのことを彼女に悟られるわけにはいかない。この後の
「それにしても、まさか貴女の方から声を掛けてくるだなんてね。正直、数日は逃げ回るんじゃないかと思っていたから驚いちゃった」
「ひぇっ…………」
逃げ回るなんて言葉がさらっと出てくる時点で、彼女がうちに良いイメージを抱いていないことは明らかである。その眼光の鋭さは、大切な妹に近づく不埒者を射すくめんとするハンターのようだった。
「あぁ、もしかして昨晩のことで、何か上手い言い訳でも思い浮かんだのかしら?」
「……べ、べつに、逢華ちゃんに、言い訳しなきゃいけないようなこと、してないからっ!」
「あら、そう? じゃあ、もしかして──」
あわわ、なんだか早々にマズい流れだ。このまま逢華ちゃんのペースに乗せられると、あっという間に追い詰められてしまいそうな予感がする。身動きが取れなくなる前に
「逢華ちゃん、逢華ちゃん。これから本当のこと話すから、全部疑わずに、信じて欲しいの」
「悪いけど、信じるかどうかは実際に貴女の話を聞いてから判断するわ」
「でもでも、うち、嘘なんて、つかないよ? ほら見て、その証拠に……うちの瞳、とっても透き通っていて、水晶玉みたいに綺麗、でしょ?」
そう囁くと同時に長い前髪を素早く掻き上げ、至近距離で逢華ちゃんの顔を覗き込む。その瞬間、油断していた彼女と確実に
「は? 急に何を……言って…………」
「ほら、もっとよく見て。じ〜っと、じ〜っと」
「あ……う………………」
一瞬怪訝な表情を浮かべた逢華ちゃんだったが、すぐに目元がとろんと蕩けていく。そして、その数秒後には口がだらしなく半開きになり、普段の勝気な彼女とはかけ離れた無防備な姿に変わり果てていた。
なんだかあの日の侑咲ちゃんにそっくり。さすがは双子姉妹だね。大変都合が良いことに、被暗示性の高さまで瓜二つだ。
「お、逢華ちゃん……? お〜い」
「…………………」
念のため何度か名前を呼びかけてみるも、彼女は依然として虚空をぼんやり見つめているだけ。うちが耳元で囁いているのに、ぴくりとも反応を示さない。
「逢華ちゃん、あのねあのね、うちの声、聞こえているなら、はいって返事して」
「…………は、い」
う〜、やった! どうやら上手に堕とせたみたい! うちは心の中でガッツポーズを決める。
「逢華ちゃんはね、今、催眠状態なの。だけど、とっても気持ちいいから、問題ないよね?」
「……はい、問題ない、です」
ふへ、ふへへ。にやつきが抑えられない。
だってほら、姉と妹の二人とも思い通りに操れるようになったんだよ? こんな漫画みたいな展開、にやつかずにはいられないでしょ。
……って、ダメダメ。今はそんな下卑たこと考えている場合じゃなかった。逢華ちゃんを呼び出した本来の目的を忘れてはいけない。
改めて明言しておくが、うちが手に入れたいのは侑咲ちゃんの全て。その為に、最大の障壁となりそうな逢華ちゃんに暗示を仕込もうと決心したのである。
うちは彼女の目を見つめながら更に囁く。
「逢華ちゃんは、うちのこと、疑っちゃダメ。これからは、うちが侑咲ちゃんに、何をしようと、一切気にならなくなる、よ。分かった?」
「はい、わかりました……」
よしよし、良い感じ。絶好の機会だし、この調子で徹底的に暗示を仕込んじゃおう。
「そうだ! これからは、うちのこと、サポートしてほしいな。例えばほら、他のお邪魔虫が現れたら、逢華ちゃんが、追っ払ってくれる、とか」
「おじゃまむし?」
「そうそう、お邪魔虫。うちと侑咲ちゃんの仲、邪魔してくる子、追っ払ってほしいの」
「へぇ、お邪魔虫……。もしかしてわたしのことも、陰ではそんな風に呼んでいたのかしら?」
「ふへへ、そうなん、だよ……ね? ……ぅん?」
…………あれ? 今なんて??!?
「なるほどね、貴女の考えはよ〜く分かったわ」
「あの、えっと……逢華、ちゃん?」
何かが……そう、何かがおかしい。
「それと、貴女の
「お、逢華ちゃん! もう一度、うちの瞳を──」
「無駄よ、無駄。そんなことより……貴女、こうやって侑咲にも手を出したのね?」
「ひぃいいっ!? な、なんで、どうして……」
どうして突然催眠が効かなくなってしまったのか。明らかに正気を取り戻している彼女を前にして、うちの頭は激しくパニックを起こしていた。
「ふふふ、ものすごく不思議そうな顔。とりあえず教えてあげられるのは、わたしは最初から貴女の術になんてかかっていなかったってことね」
は? え? でもでも、さっきまで──
「まだ分からないの? あんなの演技に決まっているじゃない。大体、常識的に考えて、素人の催眠ごっこがそう簡単に成功するはずないでしょ。それこそ、侑咲くらい素直で御し易い子が相手でもない限りはね」
つまりうちは、正気な彼女の目の前で、自ら手の内を晒していたってこと……!? あぁ、それはマズい。とってもマズい。マズいマズいマズい。
「昨日、一昨日と、侑咲や貴女の言動に違和感を覚える場面は何度もあったけど……特におかしいと思ったのは
あのとき? ……えっ、どのとき?
「覚えているかしら。勉強会の最中にわたしが『侑咲といつの間に親しくなったのか』と質問したら、貴女は
「う、うん。たぶん、そう答えた、と思う」
「それで、貴女を泊めることになった後、お風呂場で侑咲にも同じ質問をしてみたの。そうしたら、あの子も貴女とは長い付き合いだって答えたのよね。ついでに、とても親しい間柄とも言っていたわ」
んんん? それのどこがおかしいの?
たしかに偽造された過去だけど、うちと侑咲ちゃんの回答には何の矛盾もないはずだ。
「べつに、おかしなところはない……と思う。うん、やっぱりおかしくない。逢華ちゃんの、知らないところで、以前から仲良くしていた、ってだけのこと」
「そう? でもね、文化祭初日にも偶然、似たような質問を侑咲にぶつけていたの」
…………ふえっ!?
「そのとき、侑咲はこう言っていたわ。貴女とは
あばばばば。要するに、最初から偽りの関係だと確信を持って見抜かれていたってことぉ!?
「そもそもの話、妹の交友関係で私が知らないことなんてあるはずがないんだけどね。ふふっ」
な、何それ、姉妹ってそんな感じなの……?
「兎にも角にも、妹の身に何かが起きていることは明白だったから、念のため侑咲の隣で寝たふりをして一晩中警戒していたってわけ。まあ、まさか突然ふらっと起き上がって、夢遊病者みたいに貴女のもとへ向かい始めるとは思ってもみなかったけど。あれはさすがに度肝を抜かれたわ」
その結果、まんまと犯行現場を押さえられてしまったわけだ。ぐぬぬぬ、逢華ちゃん恐るべし。
「ところで……こんなことわざをご存知かしら」
「ふぇ!? な、なに? ことわざ……?」
「そう、
……う、うん? 唐突な話題の転換にうちは思わず首を傾げる。えっと、たしか相手を説得しようとして逆に説得されてしまうこと、だっけ?
「わたしね、催眠術なんてくだらない手段に頼って欲しいものを手に入れたところで、あとから虚しくなるだけだと思うの。だって、所詮は紛い物でしょ? そんな手段じゃ、本当に欲しいものは手に入らないわ」
「む、むむむむむ……」
なんだなんだ、今度はお説教かな!? そそそそんなこと、うちは重々承知の上なんだけど!!
「少なくともわたしは貴女みたいに小細工に頼るなんて御免だわ。うん、絶対イヤ」
「そ、そっか。ふ〜ん……」
いや、知らないよっ! 逢華ちゃんの主義主張をどれだけ聞かされたところで、うちはうちのやり方を変えるつもりは一切ないからね!?
「ただ、そうね……せっかく貴女がわたしの目の前で催眠術のかけ方を実演してくれたのだから、一度くらいは試してみても良いかもしれないわね」
おっと、なんだかまた雲行きが怪しくなってきた気がする。ねぇ、逢華ちゃん。どうしてそんな妖しい表情でうちのことを見つめているの……?
「鳥子さん。貴女、他人に催眠術をかけた経験なら何度かあるみたいだけど、逆に自分が催眠術をかけられた経験はないんじゃないかしら?」
「えっ……もちろん、そんな経験ない、けど。たぶんうちは、暗示をかける専門、だから」
「そう? だけど、貴女って十中八九思い込みが激しいタイプでしょうし……わたしの印象では、侑咲の次点くらいには簡単にかかりそうだなぁって」
「……へ? え、えぇ、ふえぇえ!?」
ここにきて、うちはようやく彼女が言わんとしていることについて理解した。いや、理解してしまった。ミイラ取りがミイラにってそういう──
「ひぃい! うっ……あ、あれ!?!?」
うちは慌てて彼女から距離を取ろうとするも、気づかぬ間に両肩がものすごい力で掴まれていてピクリとも身動きが取れない。な、泣きそう。
「まず初めに、侑咲にかけられている暗示は全て解いてもらわなきゃいけないわね。これは絶対」
「ね、ね、今からでも、和解しない? うちのこと、操らなくても、暗示、ちゃんと解くからっ」
うちは必死に交渉を試みるが、彼女の耳には届いていない様子。というか、聞く耳すら持ってもらえていない感じがする。
「当然、二度と侑咲に手を出せないよう、いろいろと仕込んでおく必要もあるでしょう? あとは……そうそう、既に手を出してしまった分について、相応の罰を与えておいた方が良いわよね」
「………………ひぃ!?」
次々と飛び出す恐ろしい発言にうちは一瞬言葉を失う。怖い怖い怖い、逢華ちゃん怖い!!
「あ、あのねっ、暗示をかけるの、そんな簡単じゃないよ? だから、やめておこう? ……ね?」
「ふふふ、わざわざ心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ。べつに催眠術が失敗したところで、他にいくらでもやりようはあるんだから」
余裕の笑みでそう返してきた彼女を見て、うちにはもう何ひとつ対抗する
こうしてうちの企みはあっけなく砕け散り、このあと味わう地獄によって特大級のトラウマだけが心身に深く深〜く彫り刻まれることとなるのだった。
結論、