エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい 作:こびとのまち
中間考査明けのその日、ボクと姉は双子らしく息ぴったりのタイミングで
そんな発情期特有の軽い倦怠感に苛まれつつも、いつも通り幼馴染を含めた三人で学校へ向かう。その道中、ボクはある異変を感じていた。
「ね、ねぇ……なんか今日、ものすごい数の視線を感じるんだけど。うぅ〜、落ち着かないよぉ」
姉と蒼というトップクラスの美少女二人と一緒に登校している以上、ある程度視線が集まるのは仕方のないこと、言わば日常茶飯事なんだけど……今日はいつも以上に
さてさて、頭脳明晰なこのボクがズバッと推理するに、これは恐らく発情期の影響。
以前どこかで説明したように、淫魔は所謂フェロモンを無自覚に体外へ放っている。そして、ボクの姉は原作でヒロインたちを悉く狂わせ、散々な目に遭っていた。それは、彼女がズバ抜けて強力なフェロモンを放つ突然変異的な存在だったが故。
この世界の姉だって、日に日に魅力が増していっている。淫魔としての性質が強く出やすい発情期に、その片鱗が垣間見え始めたって不思議ではない。
つまり何が言いたいかというと、発情期の姉が振り撒くフェロモンによって、いつも以上に視線が集まっているのではないか、という話。
「さすがお姉ちゃん、朝から注目の的だね」
ボクがポツリとそう呟くと、幼馴染が呆れ果てたような表情を浮かべる。
「いや、どう考えても注目を集めているのはオオカミじゃなくてウサ……やっぱりなんでもない」
「……うん? 途中よく聞こえなかったんだけど」
「気にするな、ウサギは知らなくていいことだ」
そう言われると逆に気にならないでもないが、食い下がってもどうせ話してはくれないだろう。ってなわけで、潔く諦めて別の質問を投げかける。
「まあいいや。ところで、蒼はどうしてさっきからそんなに距離を取りながら歩いているのさ?」
「そ、それは……仕方がないだろ! 今日のおまえに近づきすぎると、あたしの理性が吹き飛んじまうんじゃないかって不安なんだよっ」
蒼の返事はまたしても尻すぼみになり、肝心の理由がちっとも聞き取れなかった。けれど、ボクより僅かに蒼との距離が近かった姉の耳には届いたらしい。なにやら不機嫌そうな態度で蒼に詰め寄っている。
「一応改めて言っておくけど、うちの可愛い妹に手を出したら許さないわよ。絶対に」
「げっ、地獄耳かよ……。んなこと、わざわざ忠告されなくたって
「…………保証はしかねるわ」
「おいっ!? おまえ、やっぱり
……むむむ、一体何の話をしているのだろう? またまた二人だけで通じ合っている雰囲気だ。ほんのちょっぴり疎外感。もうすっかり慣れちゃったから、べつに全然いいんだけどさ。
イチャイチャとじゃれ合っている姉たちから目線を外し正面を向くと、偶然にも人混みの奥にヒロインのひとりであるクラスメイトの背中を見つけた。
「お〜い! トリちゃ〜……んっ!?」
意識する間もなく当然のように彼女の名前を叫ぼうとした自分自身に驚き、ボクは慌てて口元を抑える。どうしてボクは警戒対象であるはずのヒロインに自ら声をかけようとしたんだろう? 一応同じクラスの生徒とはいえ、特に親しいわけでもないのに……。
「……? ひぃっ、◎△$♪¥●&%#!?!?」
中途半端なボクの呼びかけに反応して振り返った千野さんと、ほんの一瞬目が合う。が、彼女はすぐさま顔面蒼白になって、言葉にならない悲鳴をあげながら逃げるみたいに走り去っていった。
去り際に何もないところで躓いて盛大に転んでいたので、もしかするとこの世界の千野さんはドジっ子属性持ちなのかもしれない。ボクと目が合っただけでパニックを起こしていた理由は不明だけど、面倒ごとの予感がするので何も見なかったことにしておく。事なかれ主義、バンザイ! なんちゃって。
その後も周囲から痛いほど視線を浴びながら、ボクたちは学校へと辿り着いたのであった。
♢
教室にチャイムの軽快な音が鳴り響き、四限目の授業が始まる。始業から時間が経つにつれ、机の引き出しの中に増えていく採点済みの答案用紙。一学期の頃よりも着実に下がっている点数たちに、ボクは内心ダラダラと冷や汗を流していた。
一応軽く言い訳をさせてもらうと……テスト勉強に集中するつもりだった期間中、何故か記憶が曖昧な日があったり、どうにも意識が飛びがちだったりと、驚くほどに調子が悪かったのだ。例えばそう、
たぶんだけど、文化祭で溜まった疲労の影響が出ちゃったんじゃないかな。クラスの出し物でメイド服を着て接客したり、演劇部の公演に参加してシンデレラを演じたりと、それなりに頑張っていたからね。
しかしながら、そんな言い訳をしても点数が上がるわけではない。そんでもって、四限目の科目は特に苦手としている『歴史』である。ボクは戦々恐々としながら、答案用紙が返却される瞬間を待ち続ける。
まあ、さすがに赤点を取ることはない……はず。あ、今のはべつに
ちなみにボクが歴史を苦手としているのは、この世界の歴史が前世で学んだ歴史と大きくかけ離れている所為。ここは
「──次、小日向妹」
おっと、遂にボクの順番が来てしまった。教壇に立つ月野先生に名前を呼ばれ、ボクは渋々答案用紙を受け取りに向かう。
「小日向妹……放課後、先生と一緒に頑張ろうな」
「…………へ?」
ほ、ほうかご、がんばる? ……頑張るって何を? えっ、いやいやいや、嘘だよね?
手渡されたペラッペラの答案用紙が、鉄板のように重く感じる。不安で顔を強張らせながら恐る恐る手元の答案用紙に目を向けると、そこには平均点を遥かに下回る悲惨な点数が記されていた。
「あか、てん…………」
ボクは堪らず膝から崩れ落ちる。この瞬間、前世を含めて人生初となる赤点と、放課後の補習への強制参加が非情にも確定した。
あのさ……フラグ回収、早すぎない!?