エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい   作:こびとのまち

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ギャルで淫魔でヒロインで

 これは実際に一生徒として通っているうちに気づいたことなんだけど、この学校はエログロ展開だらけな百合ゲーの舞台とは思えないほどに真面目な生徒が多い。いや、普段が真面目だからこそ、弾けるときは徹底的に弾けてしまうのかもしれないが。

 

 そんなわけで、うっかり赤点を取るような生徒は基本、片手で数えられるほどしかいないらしい。今回、歴史のテストで補習を受けることになった生徒も、ボクと隣のクラスの子ひとりだけだった。

 

「さて、そろそろ小休憩を挟むとするか」

 

 放課後の空き教室で補習を受け始めてから小一時間ほど経った頃、社会科の教師である月野先生が時計を一瞥して立ち上がる。

 

「……すまないが、今から五分ほど席を外してもいいだろうか? 休憩がてら、チラッとバレー部に顔を出しておきたくてな」

 

 ああ、そういえば月野先生、バレー部の顧問をしているだっけ。放課後も補習やら部活やらで生徒の面倒を見なくちゃいけないのだから、教師って仕事は本当に多忙だよなぁ。今まさに面倒を見てもらっているボクが言えたことじゃないけど。

 

「やった、休憩だ! もちろんいいですよ、先生」

「りょ! せんせ、いてら~」

 

 真面目に補習を受け、そろそろ頭が疲れてきた頃合いである。当然、小休憩を拒む理由はない。ボクたちは快く返事した。

 

 

 

「ねぇねぇ、あんたって二組のウサギっちだよね」

 

 隣の席で補習を受けていた金髪ギャル──犬飼(いぬかい) (まり)がボクに話しかけてきたのは、月野先生が教室を離れ、彼女と二人きりになった直後のことだった。

 

「わわっ。あ、うん、そうだけど……()()()()()なんて呼ばれたのは初めてかも」

 

 さすがは金髪ギャル、距離の詰め方がいきなり容赦ない。偏見に満ちたそんな感想が、思わず口から飛び出しそうになる。

 

「あ〜、急に馴れ馴れしすぎだった? ごめんごめん。あーし、実はずっと前からウサギっちと話してみたいなぁって思っていたからさ」

「……えっ、ボクと?」

「そう、ウサギっちと」

 

 とりあえずウサギっち呼びは確定事項らしい。

 

 まあ、たしかに可愛い響きだとは思うし、普段ならべつに何と呼ばれても気にならないのだが……今この瞬間、ボクの心境はすこぶる複雑だった。

 

 ん? それは犬飼さんの見た目が派手な所為かって? いやいや、さすがに外見の印象だけでそんな心境には陥らないよ。そうじゃなくて──

 

 彼女、犬飼 鞠は『スズランにくちづけて』に登場するヒロインのひとりなんだよね。

 

 実のところ、一緒に補習を受ける子が犬飼さんだと判明したときから、ボクはそのことに気づいていた。だからこそ、余計なフラグを立てないために無風のまま補習を終えたいと思っていたのである。……ただ、そうは問屋が卸さないらしい。

 

 

 

 犬飼さんのルートは、エログロの『エロ』の要素が非常に強い。

 

 彼女はある意味もっとも淫魔らしいキャラクターで、所謂性欲モンスター。だからって属性がギャルなのは、ちょっぴり安直すぎる発想な気がしないでもないけど。ボクとしては、できればもう少しギャップを用意してほしいところだ。おっとっと、閑話休題。

 

 肉食な彼女のターゲットになった哀れな少女は皆、あっという間に骨抜きにされ、数日で言いなりも同然の()()()と化す。

 

 作中では、いつもの手癖で主人公にも触手を伸ばしてくるんだけど……女誑しな主人公に魅了され、逆に犬飼さん自身が深い沼へと嵌っていく。で、最終的には他のヒロイン同様に大暴走。ブレーキを失った彼女の徹底的な()によって、主人公は人の言葉すら忘れてしまうほどに壊されてしまうのである。ヒロインをそこまで狂わせるボクの姉、魔性すぎない?

 

 そんな姉とは対照的に、妹のボクは至って平凡な小娘だ。さすがに犬飼さんから狙われることはないだろう。ただ、ボクが不用意に繋がりを作り、姉とも交流が生まれてしまうと厄介なことになりかねない。

 

 そんなわけで、この場は当たり障りのない会話で乗り切りたいと思う。

 

「あのさ、犬飼さんって──」

「ウサギっち、硬いな〜。そうだ、あーしのことはマリーって呼んでよ。ね? よいしょっと」

 

 名前が鞠だからマリーか。言われてみれば、作中でもそう呼ばれていたもんね。まあ、ペットと化した子たちからは「ご主人様」とか「マリー様」なんて呼ばれていたから、そっちの印象の方が強いんだけど。うっかり呼び間違えないように気をつけよう。

 

 ……それはそれとして、今なんで椅子と机をこっちに寄せてきたの?

 

「ほらほら、マリーって呼んでみて。早く、早く」

「えっと、マ、マリー、ちゃん……」

「はぁい、マリーちゃんだよ〜! あはは」

 

 ケラケラと笑いながら、更に距離を詰めてくる犬飼さん。いつの間にか彼女の手はボクの背中に触れていた。そして、次第にその手が下へ下へと降っていく。

 

「ちょっ、犬飼さん!?!?」

「も〜、だからマリーって呼んでってばぁ」

「いや、そんなことより……んひゃあ!?」

 

 彼女の指先がボクの尻尾に触れた途端、小さな悲鳴が漏れ出てしまう。ただでさえ尻尾が弱いのに、今は発情期の真っ只中だからね。とてもじゃないが、堪えられるわけがなかった。

 

「んふ、んふふっ、『んひゃあ』だって」

 

 あれ? もしかして今わざと触った? 彼女も淫魔なのだから、尻尾が敏感なことくらい当然分かっているはずで……。いや、まさかそんなわけない、よね?

 

「やっばい、この子可愛いすぎるんですけどぉ」

「い、犬飼さん……じゃなくてマリーちゃん、お願いだからちょっと離れて──」

「決〜めた! ウサギっちはあーしが()()()ね」

「……へ!?」

 

 ねぇ、犬飼さんがなんか不穏なこと言い出したんですけど!? まさかこの人、見境ない感じ?

 

「マリーちゃん、冗談はほどほどに……っ!?」

 

 改めて抗議の声を上げようとするが、それを妨げるように犬飼さんの指がボクの尻尾へ絡みついた。途端に全身から力が抜け、自然と息が荒くなる。

 

 ──あ、これダメなやつかもしれない。

 

 本格的に危機感を覚え始めたそのとき、視界の端でドアが開いた。

 

「すまんすまん、二人とも待たせたな。さてと、それじゃあ補習を再開しようか」

 

 おかえりなさい! 月野先生の帰還にボクは心の底から安堵する。その隣では、犬飼さんが先生にバレないようこっそりと舌打ちをしていた。

 

「……ん? 大丈夫か、小日向妹。なんだか顔が赤いぞ。それに、息も絶え絶えなような」

 

 心配そうな表情を浮かべ、ゆっくりとこちらへ接近してくる月野先生。それなのに、犬飼さんはボクの尻尾から手を離そうとしない。

 

 あぁ、なるほど。彼女の手は背後にあるから、月野先生の目に映っていないのか。

 

 だからってバレない保証などひとつもないのに、今だに尻尾は弄られ続けている。ボクはといえば、恥ずかしい声が漏れ出さないよう、口元を押さえて耐えることで精一杯だった。

 

「あー、ウサギっち体調が悪いみたい。ってなわけで、あーしが保健室に連れて行ってきま〜す」

「お、おい。犬飼、ちょっと待て!」

 

 困惑している月野先生を尻目に、犬飼さんがボクを軽々と抱き上げる。

 

「うわっ、ウサギっち軽すぎなんですけど!? ねぇねぇ、ちゃんと毎日ご飯食べてる?」

 

 余計なお世話だよ! ただ単にお子ちゃま体型なだけだっての!

 

 そんなツッコミを入れる余裕などあるはずもなく、尻尾から絶え間なく伝わってくる刺激やらこの状況に対する羞恥心やらがごちゃ混ぜになって限界を迎えたボクは、遂に意識を手放した。

 





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