エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい   作:こびとのまち

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何がどうしてそうなった?

 現実味のない真っ白な空間にひとり佇んでいるわたしの妹。彼女は虚空をじっと見つめ、悲しみに満ちた声色でこう呟いた。

 

「ねえ、お姉ちゃん。どうしてボクのこと助けてくれなかったの……?」

 

 ……えっ? 侑咲、貴女突然何を言って──

 

「信じていたのに……。お姉ちゃんが助けてくれなかったから、ボク、あの子のものになっちゃった。全部ぜ〜んぶ、お姉ちゃんの所為だよ」

 

 背中に冷たい汗が流れる。何か取り返しのつかないことが起きてしまった、そんなものすごく嫌な感覚。わたしは慌てて侑咲に話しかけようとするが、何故かまったく声が出せない。

 

 ワケがわからず混乱している間に、侑咲はわたしの側から離れていく。

 

「それじゃ、ばいばい、お姉ちゃん」

 

 イヤだ、イヤだ、お願いだからいかないで。わたしは必死に腕を伸ばす。けれどその先に、侑咲の姿はもうなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤだ、いかないで!」

 

 自分の口が発した悲痛な叫び声で、わたしは飛び跳ねるように目を覚ます。咄嗟に周囲を見渡すと、図書委員の生徒が不審そうにこちらを見つめていた。

 

「あのぅ、図書室ではお静かに……」

「えっと、ふふふ……ごめんなさい……」

 

 ばっちり目が合った図書委員の生徒から至極当然な注意を受け、気まずい空気を味わいながらも、次第に記憶が明瞭になっていく。

 

 妹がまさかの赤点を取ってしまい、泣く泣く補習を受けていること。その妹と一緒に帰りたくて、補習が終わるまで図書室で時間を潰そうとしていたこと。そして、その最中に抗い難い眠気が襲ってきたこと。

 

 発情期の影響かいつも以上に色っぽい今のあの子をひとりで帰らせるのは危険だもの。姉として「待つ」のは当然の判断よね。うっかり眠ってしまったけど、時計を見る限り時間はまだ大丈夫そう。

 

「そういえば、さっきの夢……」

 

 内容はおぼろげにしか覚えていないものの、何かとんでもなく恐ろしい夢だったこと、夢の中で侑咲と出会ったことだけははっきりと覚えていた。加えて、汗でびっしょりな肌着の感触。どうにもソワソワして落ち着かない。

 

 ……これはもしかして虫の知らせというやつなのではないだろうか。ふとそんな考えが過る。

 

「一応、侑咲の様子を見に行こうかしら……」

 

 わたしは不安に突き動かされ、侑咲が補習を受けている教室へと足を運ぶことにした。

 

 

 

 

 教室の前に着いたわたしは、窓越しにこっそり中を覗き見る。補習の邪魔はしたくないから、侑咲の無事さえ確認できればすぐにでも図書室へ引き返すつもりだった。

 

 けれど、わたしの視界に映ったのは、黒板の字を消している月野先生の背中だけ。

 

「あ、あら? 教室はここで合っているわよね?」

 

 肝心の侑咲の姿がどこにも見当たらず首を傾げていると、月野先生がわたしの気配に気づいたのか手を止めて振り返る。

 

「おっ、小日向妹、戻ってきたのか」

「……月野先生?」

「ふむ。顔色はだいぶ良くなったように見えるが……無理はしない方がいいと思うぞ。今日はもう帰って、家でしっかりと身体を休めなさい」

 

 わざわざ教室から出てきた先生は、どうやらわたしを侑咲と勘違いしている様子。

 

「あ、いえ、わたし、姉の逢華です」

「うん? ……ああっ、小日向姉妹の姉の方だったか! すまんすまん、ついうっかり」

「ふふ、構いませんよ、双子あるあるで慣れてますから。そんなことより……侑咲の身に何か?

「おわっ、急に雰囲気が変わったな!?」

 

 先ほどの発言を聞いて尚更不安が増したわたしは、静かに月野先生の胸元へ詰め寄る。何故か一瞬怯えた表情を浮かべた彼女だったが、すぐに気を取り直して事情を話してくれた。

 

「なるほど、そういうことでしたか」

 

 月野先生の話によると、どうやら補習の最中に侑咲が体調を崩してしまったらしい。で、やむなく補習は切り上げることになったと。ふむふむ。

 

 それを聞いて、わたしは内心ホッとする。淫魔が発情期に体調を崩すことはべつに珍しくないからね。最悪のケースとして大路先輩や千野さんのような不届者が現れるケースも想定していただけに、胸を撫で下ろすには十分だった。

 

 とはいえ、完全に安心することはできない。なんであれ体調を崩していることには変わりないわけだし。とりあえず、今は早く侑咲の顔が見たい。

 

 そんなことを考えていると、月野先生がポツリと気になる独り言を呟いた。

 

「そういえば、結局犬飼も戻ってこなかったな」

 

 犬飼「も」? 何故かしら? 喉に小骨が刺さったような違和感が……。

 

「……あの、犬飼って? 侑咲の話と何か関係が?」

「ああ、二組の犬飼 鞠のことだよ。あいつも一緒に補習を受けていたんだが、小日向妹を保健室に連れて行ったきり戻ってこなくてな。まったく……」

「…………へぇ」

 

 前言撤回。胸を撫で下ろすにはまだ幾分か気が早かったようだ。

 

 話を聞き終えて月野先生と別れたわたしは、最愛の妹が待っている保健室へ小走りで向かう。最後に耳にした話の所為で、一抹の不安を抱えながら。

 

「侑咲のこと、蒼にも伝えておくべきかしら」

 

 わたしは一瞬迷ったものの、鞄からスマホを取り出してチャットアプリを起動した。

 

「杞憂だとは思うけど……」

 

 この短期間に似たような厄介ごとが何度も舞い込むわけがない。そう頭では理解しつつ、念には念をということで一応蒼にメッセージを送信しておく。まあ、今頃は部活の真っ最中だろうから、連絡を入れたところで通知にすら気づかない可能性が高いのだけど。

 

 ……、…………。

 

「あ〜もう! なんなの、この胸騒ぎ!」

 

 大丈夫、きっと大丈夫と繰り返し己に言い聞かせるが、寧ろそれが逆効果なのかじわじわと不安が増していく。結局、目的地に辿り着く頃には、息が上がるほどに全力で廊下を走っているわたしがいた。

 

「って、こんな顔で会ったら侑咲が驚いちゃうじゃない。落ち着かなきゃ」

 

 保健室の前で一度大きく深呼吸し、気持ちを落ち着かせてドアを開く。

 

「侑咲、体調を崩したって本当? お姉ちゃん心配になって迎えにきちゃ……た……」

 

 保健室に足を踏み入れると、そこには侑咲と見知らぬ金髪ギャルの姿があった。彼女が月野先生の話に出てきた生徒だろう。

 

 犬飼さんと思しき生徒は、わたしの大切な妹に欲望まみれのどろりとした視線を注ぎ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()首輪のリードを侑咲の小さな手に握らせていた。

 

「……ん? んんんん!???」

 

 





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