エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい   作:こびとのまち

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わたしの想い、伝わった?

 犬飼さん改め駄犬を躾けたその日の夜、わたしはいつものように妹の部屋に入り浸っていた。

 

 そんなわたしの目の前で、不安そうに瞳を揺らしている侑咲。わたしは小さく溜息を吐く。

 

「も〜、侑咲ってば心配性ねぇ。わたし()何もされてないから安心してって言っているでしょ?」

「で、でもぉ……」

 

 侑咲が不安げな表情を浮かべているのは、駄犬とわたし、蒼の三人が保健室で何をしていたか知らないから。彼女自身、首輪を身につけた同級生からリードを差し出されるという恐怖体験をしたばかりなのだから、不安に思うのも当然といえば当然だろう。

 

 けれど、馬鹿正直に「わたしと蒼が一方的に駄犬を躾けていただけなのよ」などと教えるわけにはいかない。その結果、大半をぼかして伝えるしかなく、なかなか侑咲の不安を払拭し切れずにいるのである。

 

「そんなことより、体調はもう良くなったの?」

「う、うん。というか、べつに体調不良で保健室に運ばれたわけじゃないけどね?」

「……あぁ、そういえばそうだったわね」

 

 わたしは再度溜息を吐く。

 

 まさか補習の最中に侑咲を密室へ連れ出す女が現れるだなんて、さすがに想定していなかった。

 

「ほんと、油断も隙もないんだから……」

 

 あのとき、虫の知らせに従って妹の様子を見に行く判断をしたのは大正解だった。仮にわたしが様子を見に行っていなかったらどうなっていたかと考えると、正直震えが止まらなくなる。

 

 ……もしかすると、わたしは自分の妹の人誑しっぷりをなめていたのかもしれない。

 

 そんな風に思ったのは、何も今日の出来事だけが理由ではない。わたしを女子トイレに呼び出したあの子や演劇部の大路先輩、それからクラスメイトの千野さん──いずれも最終的には追い払えたものの、一歩間違えば取り返しのつかない事態に陥っていた可能性が高かった。しかも、そんな厄介なトラブルがこの短期間で立て続けに起きているというね……。

 

 文化祭のときなんて、わたしは演劇部員たちに邪魔されて助けに行くことすらできなかった。一応、蒼のおかげで最悪の展開は回避できたけれど……その蒼に侑咲の唇を奪われてしまったのだから、結局苦い記憶であることには変わりがないわけで。というか、ある意味で一番してやられた相手は幼馴染(あいつ)と言っても良いんじゃないかしら。

 

「お姉ちゃん、やっぱり保健室で何かヤなことあったんじゃないの……?」

 

 おっと。難しい顔をしていた所為で、またしても侑咲を不安にさせてしまったらしい。わたしは横に首を振り、心配性な妹の可愛い頭をそっと撫でる。

 

「大丈夫よ、本当に何もなかったから。信じて?」

「……うん」

 

 まあ、過ぎたことは悔いても仕方がない。うじうじ悔やんでいたところで、今みたいに侑咲を不安にさせてしまうだけだもの。

 

 とはいえ、いつまたわたしから最愛の妹を奪おうとする不届者が現れてもおかしくない、そんな危うい状況なのも確か。蒼だって、欲望を押し込めたままいつまでも幼馴染の立ち位置に甘んじ続けてくれるとは限らないし。

 

 ……ねぇ、ちょっと待って。

 

 改めて現状を客観視してみると「侑咲の方から手を出してきてほしい」なんて悠長なことを考えている場合じゃない……わね。少なくとも、以前のように待ちの姿勢でいられるような余裕はどこにも存在しない。そんなことに、わたしは今更ながら思い至った。

 

 そう、これまでのわたしの考えはあまりにも甘すぎたのだ。ああ、これはマズい。非常にマズい。取り返しがつかなくなる前に自ら行動を起こさなくては。

 

 一刻も早く、早急に、()()()()()()

 

 

 

 相も変わらず隙だらけ。当然といえば当然なのだけど、警戒心などかけらも抱いていない様子の侑咲。その正面へとゆっくり移動し、自然な流れで後方のベッドへと優しく押し倒す。

 

「どうしたの、お姉ちゃん?」

「…………」

 

 押し倒されても尚、他愛もないじゃれつき程度しか思っていないのだろう。まったく疑うそぶりもなく不思議そうな表情でわたしの妹は首を傾げた。そんな姿に愛おしさを覚えると同時に、彼女の危うさと自分のこれまでの体たらくを再実感させられる。やっぱりこれっぽっちも()()されていないのだと。

 

 だからこそ、強力な一手を打つ必要がある。この場で一気にゴール目前まで飛べるような強力な一手。

 

「……ねえ、聞いて侑咲」

「ん〜? なぁに、改まって。お姉ちゃんの話ならいつでも聞くよ? あ、もしかしてやっぱり保健室で何かヤなことあった……?」

 

 ()を見つめる妹の瞳。その瞳のあまりの純粋さに、ほんの一瞬心が揺らぐ。

 

 が、わたしは立ち止まらない。発情期であるが故の普段とはどこか異質な情緒にも身を任せながら、わたしはその一言を口にした。

 

「大好きよ、侑咲。大好き。世界中で誰よりもあなたを愛しているわ」

 

 ああ、言っちゃった。まさか今夜、この想いを明かすことになるとは。

 

 そういえば、侑咲も発情期の真っ最中だったわね。もしかしたら、わたしは彼女が振り撒いたフェロモンに影響されてしまったのかも。だとしたら侑咲が悪いわね、うん。本心だから撤回なんて絶対しないけど。

 

 一瞬流れるなんとも言えない沈黙の間。秒針が刻む小さな音だけが部屋に響く。それでもわたしは妹から視線を外さない。二度三度瞬きをした眼前の少女。彼女はキョトンとした表情で応える。

 

「う、うん、ボクもお姉ちゃんのこと大好きだよ?」

 

 ええ、そうよね、ありがとう侑咲。あなたのその言葉、とっても嬉しいわ。でもね、そういうことじゃないの。愛おしくも鈍感な彼女にもしっかりと伝わるよう、更に身を寄せて畳み掛ける。

 

「わたしはね、あなたのことをひとりの女性として愛しているのよ。ず〜っと昔から」

「へぇ、そうなんだ。そっかそっか、ふ〜ん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って、えぇえええ!?!?」

 

 

 ふふ、ようやく正しく伝わったようね。途端に頬を赤く染め、侑咲は激しく目を泳がせる。先ほどまで脱力していた彼女の身体はすっかり硬くなっていた。

 

「おおおお姉ちゃん、お姉ちゃん、いくら発情期だからってそんな冗談は……」

「冗談なんかじゃないわ。もちろん一時の気の迷いでもない。言ったでしょ、ずっと昔から愛してるって。つまりこれは満を持しての告白よ」

 

 逃げ道など与えない。狼は兎を決して逃さない。

 

「そうね、嘘だと思うなら、お姉ちゃんにキスしてみなさい。一日一回わたしとキスをする約束、今日の分を今しましょ? そしたら、きっと理解してもらえると思うわ。うふふ」

「こ、この状況で!? え、ええ!? ちょっ──」

 

 すっかり混乱して狼狽えている侑咲の唇にわたしの唇を押し当てる。キスしてみなさいと自分で言っておきながら、溢れ出る想いが抑え切れなくて、つい。先ほど考えていた通り、発情期の影響は多分にあるのかもしれない。まあいいか、それならそれで。

 

 驚いた侑咲はこれでもかと目を見開いて、反射的にベッドのシーツをギュッと握る。けれど、彼女は姉を突き放そうとまではしない。あの日から何度もキスを繰り返してきた影響だろうか。だとしたら、過去のわたしのファインプレーだ。褒め称えたい。

 

 一瞬淫()らしく魔が刺して舌を入れたい気分になったけれど、さすがに自重する。それはまだ少しだけ早いから。その代わり、互いの肺から酸素が尽きる寸前まで唇を離さなかった。

 

 数秒とも数十分とも感じられるような時間を経てそっと唇を離す。わたしは何度か深呼吸して息を整えた後、自身の下唇に指先を押し当てながら囁いた。

 

「……どうかしら? わたしの想い、伝わった?」 

 

 愛しの妹は真っ赤な顔で目を潤ませて、無言のまま小さく首を縦に動かした。

 





果たしてこの行動が吉と出るか凶と出るか……。

大変長らくお待たせしました。
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