エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい   作:こびとのまち

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幼馴染は双子姉妹を揶揄う

「オオカミさぁ、最近何か良いことでもあった?」

 

 そんな幼馴染の一言に、姉の眉が小さく動く。

 ことの発端は、ボクたち姉妹と蒼の三人で雑談に花を咲かせている中、姉がフフッと思い出し笑いをしたことだった。

 

「……えっ? べつに何もなかったと思うわよ?」

 

 そう言って姉はとぼけたが、実際のところ彼女はすこぶる上機嫌である。具体的には、ボクが()()()に応えた一昨日の晩からずっと。

 

 妹のキス如きで機嫌が良くなるだなんて、ボクの姉は意外とシスコンなのかもしれない。

 そういえば、昨日も寝る前におやすみのキスとやらを強請ってきたし。ホント甘えん坊だなぁ。

 

 一方で蒼は姉の返事をちっとも信じていない様子。疑いの感情が分かりやすく表情に出ている。

 いや〜、付き合いが長いだけあって鋭いね。その辺は、さすが幼馴染といったところか。

 

「ふ〜ん、本当かねぇ? それにしては、随分と機嫌が良さそうに見えるけど。なぁ、ウサギ」

「あ、あはは……どうだろうね?」

 

 当然、正面にいるボクにも話が振られるが、咄嗟に笑って言葉を濁す。

 

 だって、高校生にもなって姉妹で連日キスをしているとか……気心知れた幼馴染が相手でも気軽に話せる内容じゃないでしょ。

 

 姉もボクと同じ考えなのか、正直に答えるつもりはないみたい。その証拠に、すぐさま彼女が話題の軌道修正を図り始める。

 

「ねぇ。そんなことより、もういい加減オオカミなんて可愛さの欠片もない呼び方は卒業しない? どう考えても女子高生にあるまじき渾名だからね?」

「いや、それは無理だろ。だっておまえ、(ケモノ)だし」

「何それ、一体どういう意味かしら!?」

「そのまんまの意味だぞ、この捕食者め!」

 

 ……ボクの姉が()食者?

 

 どっちかと言えば、姉は()食者サイドだと思うんだけど。ゲームの内容的にも、ヒロインたちにむしゃむしゃ喰われちゃう立場なわけだし。

 いや、原作知識持ちのボクが側にいる以上、そんな目には遭わせないんだけどさ。

 

 まあ、気心が知れた幼馴染の視点だと、多少は見え方も異なるのだろう。双子の妹であるボクですら、姉の全てを把握しているわけではないもんね。

 

 そんなことをぼんやりと考えているうちに、姉はボクを味方に取り込む作戦へ切り替えたらしい。

 

「侑咲だって、ウサギなんて安直な呼ばれ方して本当は嫌なんじゃないの? ほら、この際だから傍若無人な幼馴染にガツンと本音をぶつけちゃいましょ」

「う〜ん、たしかに最初の頃はちょっと恥ずかしかったけど……彼此十年近くその渾名で呼ばれ続けてきたからなぁ。もう今更って感じかも」

 

 それに、原作をプレイした前世の時点ですっかり聞き慣れていたし。と内心で付け加えておく。

 

「そうそう、今更だよな。ま、オオカミと違ってウサギって響きは普通に可愛いんだが」

「その言い方だと、暗にわたしの渾名が可愛くないって認めていることになるんじゃないかしら……?」

「暗にっていうか、実際可愛くはないと思うぞ」

「へぇ、なのに呼び方を変えるつもりはないと。ふふふふふ……なかなかいい度胸じゃないの」

 

 あちゃ〜、やたらと煽りまくる蒼の所為で、とうとう姉がキレてしまった。今、声のトーンが確実にひとつ下がったもん。

 

 でも、姉と蒼のやりとりは大体いつもこんな感じ。そんなわけで、今回も特に心配は要らない。

 寧ろ、普段は温厚で優しい姉が蒼にだけそんな態度を見せることに、実妹として若干嫉妬しちゃうくらいだ。もちろん、原作の侑咲みたいに病んだりするつもりはないけどさ。

 

「姉ちゃんと蒼ってホント仲良しだよね」

「「いやいやいや、どこが!?」」

 

 ほら、息ぴったり。

 

「可愛い妹の言うことを頭ごなしに否定したくはないんだけど……さっきのやりとりを見ていてその感想が出てくるのはおかしいと思うのよね」

「まったくだよ。勘弁してくれっての」

「そうかな、普通に仲良しに見えたけど」

 

 二人とも素直じゃないよなぁ。わざわざ否定なんかしなくてもいいのに。それじゃまるで「隠れて付き合っているカップルみたい」だよ。

 

「いや、カップルって、あのねぇ……」

「……もし誰かと付き合うんなら、あたしはウサギとがいい」

 

 ありゃ、どうやら無意識のうちに、心の声が口から漏れ出てしまっていたらしい。姉と蒼がそれぞれに反応を示す。

 

 というか、何気に今、告白されたも同然の台詞がボソッと聞こえてきたような──

 

「……んぇ!?」

 

 驚きのあまり、思わず発言の主を二度見する。と同時に、姉が何やら焦った様子で蒼へ詰め寄った。

 

「ちょっ、どさくさに紛れて何言ってんのよ! ()()()()侑咲は誰にも渡すつもりないから!」

「お姉ちゃんも何言ってんの!?」

「あは、あはは……ふたりとも落ち着けって。こんなの、ちょっとした冗談(ジョーク)に決まってんだろ?」

 

 ………………。

 

 な〜んだ、またいつもみたいに揶揄われただけか。さすがに一瞬ドキッとしちゃった。

 ま、冷静に考えてみたら、蒼がボクなんかと付き合いたいなんて本気で言うはずがないもんなぁ。

 

 だって彼女は、ボクがこの世界で初めて遭遇した()()()()()()()だからね。

 

 

 

 

 身長が低く顔つきも幼いボクと姉は、今だに周りから小さな子ども扱いを受けることが多い。なんだったら、まるで小動物と触れ合うときみたいな接し方をしてくる人もいるくらい。

 

 その一方で、美形に生まれやすい淫魔が半数を占めるこの世界でも目立つ程度には整った容姿を持つ美人の蒼は、実年齢よりも年上に見られがちなんだとか。この前も二年生の先輩から上級生と勘違いされて敬語で話しかけられていたしね。

 

 そんな一見対照的なタイプのボクたちだけど、相性という面では案外悪くなかったらしい。

 気がつけば、最初の出会いから今日に至るまでの十年近く良好な幼馴染の関係が続いてきた。

 

 本来の侑咲がシスコンを拗らせていた影響だと思うんだけど、原作では幼馴染という設定なのに三人一緒の日常シーンがほとんど存在しなかったので……これは割と大きな変化なんじゃないかと思っている。

 

 

 

 さてさて、原作に出てくる蒼は一見すると、無害で親しみやすい極々普通の幼馴染キャラだ。しかしそれは、あくまで彼女の表面的な顔に過ぎない。

 幼馴染百合を見る為に蒼の攻略を進めていくと、次第に()()()()()()()()()()()が見え隠れするようになるんだよね……。

 

 そんでもって、本格的に蒼のルートへ突入したその先では、主人公が蒼の奴隷も同然の存在に堕ちていくシナリオを見守ることしかできなくなる。

 

 畳み掛けるようにして仕掛けられる加虐行為によって消えないトラウマをいくつも植え付けられ、対等な関係だったはずの幼馴染相手に逆らえなくなっていく主人公の有様は……見るに耐えないものだった。

 蒼がにっこり微笑みながら、怯えて震える主人公の涙を舐め取っているラストシーンで、前世のボクはリアルに悲鳴をあげちゃったもんなぁ。

 

 ただ、蒼が加虐趣味に目覚めた(壊れて歪んでしまった)背景には、明確なきっかけとなる()()があった。

 これは蒼ルートの二周目でしれっと差し込まれる過去回想によって明らかになる。隠し要素にしては過酷すぎる内容で、シナリオを読み進めながら思いっきりドン引きしたんだけれど……。

 

 そして、その真相を原作知識で知っていたが故に、今世のボクは彼女を本気で嫌うことも、遠ざけることもできなかった。まあ、エログロ展開に繋がる芽そのものを完全に摘んで素直に良い関係を築けるのなら、当然それに越したことはないでしょ?

 

 話が長くなりそうだから、詳しくはまた別の機会に語るとして……結論、ボクが蒼を救ったことにより事件は未遂で終わり、彼女は壊れずに済んだ。

 

 だからこそ、こうして今もボクたちは仲の良い幼馴染として朝から笑い合えているのである。

 

 

 

 

「こんいつの間に撮……」

「ふふん、なアなりゃこの前のアレとト

 

 押し殺したような忍び声が、教室の喧騒を掻い潜って不意に耳奥へと流れ込んでくる。その声がなんとなく気になったボクは、ぼんやりと惚けていた意識を現実へ引き戻す。

 

「……何してんの、お姉ちゃんたち」

 

 声のした方に目を向けてみれば、姉と蒼が壁際で怪しげなやりとりを行っていた。

 

「お~い……」

 

 その背中をじっと見つめて小声で囁いてみるが、二人ともまったく気がついていない様子。

 ついさっきまで姦しく言い争っていたくせに、ちょっとでも目を離したらこれだ。やっぱり仲良しコンビで間違いない。

 

 この二人、たまにボクを除け者にして、こそこそと何かやっているんだよね。きっと隠し通せているつもりなんだろうけど、普通にバレているからね?

 

 とはいえ、思春期の真っ只中なら隠し事のひとつやふたつくらい誰にでもあるものだ。

 ボクは既にその時期を経験済みの転生者──言わば人生の先輩なわけで、敢えてそっとしておいてあげるくらいの優しさと余裕は持ち合わせている。

 

 二人で隠れて何をしているのか一切気にならないと言ったら嘘になるけど……原作みたいに姉が酷い仕打ちを受けているわけじゃないなら大丈夫。

 

 ボクは自身にそう言い聞かせ、鞄の中から教科書を取り出す。そして、二人が戻ってくるまでの間、小テストの出題範囲をただ黙々と復習するのであった。

 

 ……べ、べつに寂しくなんかないんだからねっ!

 





※ 割と寂しい。


以下、本編とは関係のないおまけ

蒼「そういえば、尻尾にカバーみたいなの被せている奴を最近よく見かけるんだよなぁ」
狼「カバー……あぁ、尾袋のことかしら」
蒼「そう、それだよそれ。あれさ、柄とか素材にバリエーションがあって、なかなかオシャレだよな。もしかしてサキュバスの間で流行ってんのか?」
狼「あ〜、たしかちょっと前にアイドルが愛用の尾袋を紹介している動画がバズっていたから、その影響もあるんじゃないかしら」
蒼「なるほどねぇ。ちなみに二人は持ってんの?」
兎「あれ、尻尾を動かしたときに擦れたりしてくすぐったいから苦手なんだよね……。お姉ちゃんはたまに家の中でつけているけど、ボクは無理」
蒼「へぇ、そういうもんなのか」
狼「…………ふふっ」


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