エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい 作:こびとのまち
翌朝ボクが目を覚ますと、姉と蒼は既に起床して布団をきれいに畳み終えていた。早起きだねと声をかけると、揃って大きなあくびをこぼす二人。その目元には、微かに隈ができていた。
「ねぇ、もしかして昨晩あんまり寝てないの? まさかとは思うけど、夜通し二人で喋り続けていたわけじゃないよね?」
そう尋ねると、二人の動きが一瞬固まる。
「あ、あはは、そんなわけないじゃないか」
「ええ、さすがにそれはないわ。ただ、ほんの少し
「お、おいオオカミ、ちょっと黙れ! ……ウサギ、勘違いするなよ? こいつが言っている興奮ってのは、旅先で気分が高揚したって意味だからな?」
うん、べつにわざわざ説明してくれなくたって、そのくらい理解できるよ? というか、他にどういう意味があるってのさ? 変なの。
「まあいいや。とりあえず今日の予定について話そっか。せっかくだし温泉巡りでもしちゃう?」
話題を切り替えて、順当なプランを提案してみる。昨日一昨日の出来事があって若干気まずい状態とはいえ、ここまで来たんだから楽しまなきゃ勿体ないもんね。悩み事は一旦忘れてしまおう。
なんて思っていたのに……
「い、いや〜、温泉巡りはちょっと気分が乗らないかなぁ、なんて。ほら、昨日の夜に一回温泉入ったら、割と満足したっていうか……」
「そ、そうね! 温泉以外にも周りにいろいろあるみたいだから、わたしもそっちに興味があるわ!」
えぇ!? 温泉街に泊まりに来て温泉巡りしないなんてことある? いやまあ、正直ボクも裸になるのは抵抗あるから、二人がそれでいいなら従うけどさ。
ボクが首を傾げている間に、何やらコソコソと相談し始めた姉と蒼。べつに説得の方法とか考えなくても大丈夫だよ? ボク自身はそこまで温泉巡りしたかったわけでもないから。
ちなみに、ボクの発情期がうんたらかんたらって会話が聞こえた気もしたけど……ま、そんなわけないよね。さすがに温泉と関係なさすぎるし。
その後、二人が提案してきたプランを素直に受け入れて、宿の外へと繰り出したのだった。
♢
「温泉街といえばやっぱりソフトクリームよね!」
「そうそう、温泉で熱った身体に冷たいアイスが沁みるんだよなぁ。いや〜、うめぇうめぇ!」
「……ボクたちは温泉に浸かってないけどね?」
「「んぐふっ!?」」
至極当然なボクのツッコミ。その一言で咽せたおかしな二人にティッシュを差し出しつつ、ボクは手元のソフトクリームへ舌を伸ばした。
昨日着いたときには寂れた温泉街なんて印象を抱いたものだけど、さすがに休日の昼間ともなれば観光客もそこそこ集まるようだ。ボクたちが座っているベンチの前を、カップルや家族連れ、おじさんおばさんの集団などが楽しそうに横切っていく。
それを眺めながらソフトクリームをぺろぺろ舐めていると、二人がわざわざ立ち上がってまたコソコソと会話し始める。キミたち、ホントに仲良しだね。
「なぁ、どうしてアイス食ってるウサギを見ているだけで、イケナイ気分になってくるんだ!? べつに変な食い方しているわけでもないのに」
「おかしなこと言わないでって返したいけど、正直わたしも今まったく同じことを思っていたのよね。うちの妹、日に日に魔性度が上がっているような……。温泉巡りを阻止したのは間違いなく正解だったわ」
「だな、今のウサギを裸で他人に晒すのは危険すぎる。何が起こるか分かったもんじゃないぜ」
よく聞こえないけど、喋ってばかりいないでさっさと食べないと溶けちゃうよ? ほら、案の定、蒼のソフトクリームが溶けてじわじわ垂れてきた。
「ねぇ、蒼。ひとくち味見させて!」
ぺろり。ボクは適当に理由をつけて、溶けて垂れている側面を軽く舐め取る。このまま放っておくと蒼のスカートが汚れちゃうからね。
「……へ? ウ、ウサギ!?!?」
「あれ? もしかして嫌だった? ごめんね……?」
「いや、そんなことはないけど。寧ろその逆っていうか、なんていうか……」
逆ってどういうこと? まあいいか、不快な気分にさせてしまったわけじゃないなら一安心。急に目を見開いたからびっくりしちゃったよ。
「ちょっ、蒼だけズルいわよ!? ほ、ほら侑咲、お姉ちゃんのも味見してみて? すっごく美味しいから!」
「おいおい、必死すぎるだろ、オオカミ……」
「貴女はちょっと黙ってなさい!」
旅先でもいつも通りのこの騒がしさ、やっぱり楽しいなぁ。昨日一昨日の出来事がまるで嘘のようだ。でも、嘘でも幻でもないんだよね。だからそう遠くないうちにきちんと答えを出さなきゃダメだってことは、一応ボクも分かっている。そう、分かってはいるんだけど……。むぅうう。
きゃいきゃい騒いでいる姉たちより一足先に食べ終えたボクは、近くに置いてあるゴミ箱まで歩いてコーンの包み紙を捨てる。と、そのときだった。ボクの両肩に誰かの手が触れる。
「ねぇねぇ、キミ。もしかして今ひとり?」
「きゃはは、うちらと一緒にイイコトしよーよ」
耳元で囁く声に驚いて振り向くと、そこにいたのは見知らぬ二人組のお姉さん。ボクはいつの間にか彼女たちに挟まれてしまっていた。
「あ、いや、えっとボクは……」
「や〜ん、ボクっ娘じゃん! ちょ〜可愛い〜!」
「ヤバ、なんか急にドキドキしてきた。うち、本気でこの子のこと欲しくなってきたかも」
なんだか目が怖いんだけど!? ボクは怯えて言葉に詰まってしまう。そんなボクに微笑みかけ、じわじわと擦り寄ってくるお姉さんたち。
うぅうう、誰か助けてぇ!
「貴女たち、わたしの妹を怯えさせるなんていい度胸じゃない。覚悟はできてるんでしょうね?」
そんな情けない妹の危機を察し、すぐに助けに来てくれたボクの姉。わあ、頼もしい。
「ん〜? いもうとぉ? ……ひいっ!?」
「ご、ごめんね? ひとりぼっちなのかなって」
姉の顔を目にした途端、何故か顔色が悪くなったお姉さんたちは、慌てた様子でどこかへ去っていった。ボクの姉があまりにも美少女すぎて、恐れ慄いちゃったのかな? うんうん、気持ちは分かるよ。
「うぅ、ごめんね、気づくのが遅くなって……」
「えっと、大丈夫だよ? お姉ちゃんありがとね」
そもそも全然遅くなかったし。落ち込んでいる姉を安心させる為に、ボクは慌てて笑みを作る。
パシャリ。
うん? シャッター音? 観光客がその辺の景色でも撮っているのだろうか? そんな風に思いながら、なんとなしに音のした方向へ顔を向ける。
するとそこには、明らかにボクに向けてカメラを構えている中学生くらいの少女の姿があった。おまけに激しい鼻息の音まで聞こえるような……。
「あら、お姉さまと目が合ってしまいましたわ!」
パシャパシャパシャ。
「待て待て待て! 何やってんだおまえ!?!?」
今度は蒼が出動し、連写し始めた少女の腕を掴む。そしてそのまま彼女を引き摺って、建物の裏に連れ去っていった。
「お姉ちゃん、温泉街って物騒なんだね……?」
「…………そうね、
姉は静かに頭を抱えながら、そう呟いた。
♢
気を取り直して、ボクたちが次に足を運んだのは、徒歩圏内にある小さな神社だった。姉から聞いた情報によると、恋愛成就に関する神様を祀っている神社なんだとか。恋愛かぁ、なんとなく気まずいね。
二人がやけにソワソワしながらおみくじを引いているので、ボクも一緒に引いてみる。おみくじなんてお正月の初詣以来だ。さてさて──
四つ折りにされたおみくじをそっと開いてみると、まず真っ先に大吉という大きな二文字が目に飛び込んできた。やったね、素直に嬉しいや。
続けて各項目の詳細も順に読んでいく。
学問、健康、失せ物など、さすが大吉なだけあってどれも前向きな内容ばかり。すっかり気分が良くなってニコニコしながら読み進めていたボクの視線は、ある項目でぴたりと止まる。
恋愛:逃げ切れない。諦めが肝心。
な、なんだそりゃ!? べつに逃げるつもりなんてないんだけどぉ!? というか、大吉なのに恋愛に関してだけあまりにも不穏な内容すぎるでしょ……!?
総合運からの落差によってボクが涙目になっていた一方で、姉と蒼は各々のおみくじを真剣な眼差しで見つめていた。