エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい 作:こびとのまち
あたし、慧沙 蒼には二人の幼馴染がいる。
その幼馴染の名は
彼女たちは淫魔の血を引く双子姉妹で、どちらとも非常に庇護欲を掻き立てる容姿をしている。顔や背丈が瓜二つな一卵性の双子であることも相まって、黙って仲良く並んでいると精巧な人形かと錯覚してしまうほどの愛くるしさだ。
……ただ、双子の姉の側であるオオカミは、肝心の中身が残念極まりないんだよなぁ。長年幼馴染をやっているあたしは、そのことをよ〜く知っている。
具体的にどう残念なのかと問う奴がいたら、まさに今あたしの目の前で恍惚とした表情を浮かべながら
もっとも、オオカミが手にしているその写真を撮ったのはこのあたしだから、本当に他人へ見せるわけにはいかないんだけど。
「幼馴染は実姉の足元にも及ばない存在、それがこの世の常識でしょ? なのに、姉であるわたしよりも上手く侑咲を撮るだなんて……。悔しいけど、こればっかりは認めて褒めるしかないわね」
「そんなふざけた常識があってたまるかよ!」
存分に頬擦りして満足したらしいオオカミが、何とも失礼な感想を口にする。そうそう、こいつのこういうところも可愛くない要素のひとつだ。
だけどまあ、軽くツッコミを入れるだけでそれを流せる程度には今のあたしは機嫌が良い。何せ、お互いに用意した秘蔵写真のトレードが成立したばかりなのだから。
「……ま、それはそれとして、オオカミが撮った
手元の写真を指差しながら素直に感想を返してみれば、満更でもなさそうな顔のオオカミが嬉しそうに鼻を鳴らす。なんとも子どもっぽいリアクションだが、ビジュアル的には違和感ゼロだ。
「ふふん、そんなの当然よ! 夜中に妹の寝顔を撮ることができるのなんて
幼馴染のこういう得意げな態度を前にすると、つい
「一応教えておいてやるが、盗撮はたとえ家族が相手でも罪に問われることがあるらしいぞ?」
が、この一言は墓穴以外の何ものでもなかった。
「う〜んと……だったら、幼馴染の隠し撮りなんて尚更マズいと思うんだけど」
「ぐ、ぐぬぬぬ、正論すぎて何も言い返せないっ」
「えぇ……」
あたしたちは暫く顔を見合わせた末、スカートのポケットへと写真をそっと仕舞い込んだ。そして、まるで何事もなかったかのように会話を再開する。
「さて、怪しまれる前にウサギのところへ戻ろうか」
「そうね、わたしも同意見。だって、ほら……」
「えっ? ……あっ、やば」
本来はウサギがぼーっとしている隙に手早く済ませるつもりだったのだが、うっかり時間をかけすぎたらしい。ひとりぽつんと取り残されたウサギが、見るからに寂しげなオーラを周囲へ撒き散らしながらノートと睨めっこしている。
あたしたちは慌てて彼女のもとへと駆け戻った。
「偉いな、朝一からテスト勉強か。いや〜、おまえの姉ちゃんにも少しは見習ってもらいたいもんだね」
後ろめたさを誤魔化す為に、とりあえずオオカミのことを揶揄ってみるあたし。
「ふふっ、さすがはわたしの妹ね。前回のテストで赤点スレスレだった誰かさんとは大違いだわ」
「ぐふぅっ!? オオカミ、おまえェ……」
チクショー! またしてもクリティカルな反撃を喰らってしまった。あたしが涙目になってオオカミを睨んでいると、ウサギがゆっくりと顔を上げる。
「蒼とお姉ちゃん、やっぱり相当仲良しだよね」
「いやいや、だからそれは──」
反射的に否定の言葉を口にしようとするも、ウサギがそれを許さない。
「へぇ、まだ否定するんだ? ボクのこと放ったらかしにして二人でコソコソやっていたくせに」
……あれ? もしかして全部バレている!?
そんな不安がドッと押し寄せてきて、あたしとオオカミは息を呑む。まるで判決を言い渡される直前の被告人みたいな気分だ。
「侑咲、貴女まさか……」
「なんてね、冗談ジョーダン。さっき蒼も冗談で告白してきたでしょ? だから、これはその仕返しっ」
「ホ、ホントにただの冗談か……?」
「も〜、ちょっと放置されたくらいで、いちいち拗ねたりなんかしないよ! ボクだって、いつまでも子どもじゃないんだから」
な、なるほど。つまるところ、ウサギに一杯食わされただけってことね。彼女のしたり顔を見て、あたしはこっそり胸を撫で下ろす。
「ぷくく。二人とも顔真っ青になっちゃって、おっかし〜。まさかとは思うけど、本当に後ろめたいことしてたんじゃないよね?」
「あは、あははは……そんなわけないっての」
「侑咲ってば、何言ってんのよ。お姉ちゃんほど清廉潔白なサキュバスはそうそういないのに」
「そっかそっか。うん、それならいいんだ。えへへ」
オオカミの言葉に「おまえこそ何を言ってんだ?」とツッコみたくなるが、ここは我慢だ。
それにしても、ウサギの笑顔はホント可愛いなぁ。この笑顔を守るためだったら、あたしは
♢
さてさて、あたしのもうひとりの幼馴染であるウサギは、あの残念な姉と違い内面までもが愛らしい正真正銘の美少女だ。
ウサギと一緒に過ごしていると、なんだか無性に撫で回したくなることがある。あれは彼女が持つサキュバスとしての特性なのか、はたまた純粋に愛らしすぎる所為なのか。たぶん後者なんだろうなぁ。
兎にも角にもこの幼馴染は、同学年の皆からマスコット的な存在として認知され、隙あらば可愛がられているような魅力溢れる女の子なのである。
とはいえ、そんな薄っぺらい情報だけで勘違いしてほしくないことがある。それは、ウサギがただ可愛いだけのマスコットではないということ。
だって彼女は……普段はのほほんとしているのに、いざとなれば他人のために勇気を振り絞ることができる凄い奴なのだから。
実際、あたしは彼女に救われた人間だ。
あれはまだ無邪気な小学生だった頃の話。あたしは危うく誘拐されかけたことがある。
うちの母は女優業で生計を立てているのだが、どうやらあたしはそんな母の超熱烈な女性ファンに目をつけられてしまったらしい。
犯行の具体的な動機については、周りが口を噤んだので結局よく知らないままだ。今となっては、わざわざ知りたいとも思わないが。知らぬが仏という言葉もあるし。重要なのは、この誘拐が
事件が起きたのは、なんでもない平日の放課後。近所のだだっ広い公園でいつものように双子姉妹と遊んでいる最中のことだった。
その日は珍しくあたしたち以外の人影がなく、隠れんぼをしていた為にそれぞれ孤立してしまっていた。
そんな状況で後ろからいきなり羽交締めにされ、冷静に対処できる小学生なんて滅多といない。パニックで身体も頭も上手く動かず、口元にはタオルの束。完全に詰んだと思ったし、事実ほぼほぼ詰んでいた。幼いあたしの目元から大粒の涙が溢れ出す。
まさにそのときだった。耳をつんざくような警告音がけたたましく公園中に鳴り響く。
驚いて拘束を解いた犯人に突き飛ばされ、あたしは地面へと崩れ落ちながら音の鳴る方に顔を向けた。
目に飛び込んできたのは、どこか遠くで隠れているはずのウサギが防犯ブザーを
気になったのは、どうしてそんなに大量の防犯ブザーを持っているのかということ……ではなくて、どうしてウサギがあたしの危機にすぐさま気づき駆けつけることができたのかということ。
あたしは一切声を発せられなかったし、物陰で見通しも悪かったはず。まさか、今日この場で事件が起こることを予期していたわけでもないだろうに。
後から何度尋ねても、なんとなく嫌な予感がしたからとしか答えてくれなかったが、何はともあれ彼女に救われたことは間違いない。少々ギャグ漫画みたいな絵面であったことは否めないけどね。
そもそも普通の小学生なら、混乱のあまり身動きすら取れなくなるような場面だ。それなのに、冷静に判断してあたしを助けるべく動いてくれた勇気溢れる幼馴染。
これがあたしの初恋である。
ただ、今のところこの想いをウサギに明かすつもりはない。いや、さっきポロリと告白してしまったばかりだから説得力なんてないかもだけど、本当に。
だってあたしは、オオカミのこともよく知っているから。きっとあたしが本気でウサギに手を出せば、この三人の関係はあっけなく瓦解するだろう。
それは結果的にウサギを悲しませることになるし、あたし自身も望んじゃいない。ウサギのことは大好きだが、オオカミだって揶揄い甲斐のある大切な相棒なんだよね……あたしにとっては。
もしあたしが幼馴染の関係を捨ててでも動くことがあるとすれば、それはオオカミがウサギを本気で傷つけ泣かせたか、悪い虫がオオカミを打ち倒してウサギへ迫ってきたときくらいだろう。
願わくば、そんなことにはならなければいいなと心から思う。平穏な日々よ、いつまでも。
人はそれをフラグと呼ぶ。
● 慧沙 蒼
小日向姉妹の幼馴染、人間。飄々としていてどこか掴みどころがない。本来であれば歪んだ鬼畜系ヒロインと化す運命だったが、そのきっかけが潰えたことで
● 小日向 侑咲
蒼と出会った当初に思い出していた誘拐事件のことなど直前まですっかり忘れ、童心に帰って遊んでいた間抜けなTS転生者。きちんと覚えてさえいれば、もっと他にも賢い救い方があったはず。
● 小日向 逢華
ことあるごとに妹へ防犯グッズの類を買い与えていた過保護な姉。蒼とは幼馴染であると同時に、
● 誘拐犯の女
ブザーの音に驚いて逃亡。後日、無事に逮捕された。
お気に入り登録や感想、高評価などいただけると大変励みになります。