エログロ上等な百合ゲー世界に転生したTS淫魔さんは双子の姉を守り抜きたい 作:こびとのまち
侑咲として歳を重ねるうちに意識することも少なくなったが、ここは淫魔という
実際、校内を軽く見渡しただけでも、角や尻尾の生えた生徒が何人も視界に映り込むからね。総人口の半数が淫魔という事実に疑う余地はないだろう。
とは言っても、前世で見たり読んだりした創作に出てくるような淫魔の有り様とは随分と隔たりがある。
例えばそう、夢の中に入り込むとか、定期的に精気を吸わなければ死んでしまうといった如何にも人外らしい特性は持ち合わせていない辺りとか。
その特徴的な外見からサキュバスやインキュバスなどとも呼称されてはいるが、本質的には人間とさほど大きな差なんてないのだ。じゃなきゃ、そもそも共存なんて実現しなかっただろうしね。
「ふふっ、侑咲は本当に可愛いわね」
「お、お姉ちゃん、やっぱりボクは……」
…………。
前述の通り、人間とサキュバスの最たる違いは外見だ。少なくとも人間に細長い尻尾や小さな角は生えていないわけで、その二点だけでも人外であると見抜くことは容易である。
加えて、大半のサキュバスは人並み以上に容姿が整っているという特徴もある。
これは、共存相手である人間から好意を抱かれやすい姿に生まれることで、種が残る確率を少しでも高めようとする生物としての本能によるものだろう。と、そんな感じのことを、どこかの教授がテレビで話していたような気がする。
実際、サキュバスはある種のフェロモンを無自覚に放っているなんて説もあるくらいだからね。あくまでも仮説の範疇で、今のところ科学的な証拠が見つかっているわけではないらしいけど。
まあ、人間の中にだって他人を惹きつけやすいタイプはいるわけで。仮にサキュバスがフェロモンとやらを放っていたとしても、それらと大した違いはない。
「ほら、どうしたの? 早く早く」
「お姉ちゃんはなんでそんなに積極的なのさ!?」
……コホンッ!
と、ここまでは原作知識を抜きにしたこの世界での一般論のような話。転生者であるこのボクは、原作で主人公がヒロインたちから好意を寄せられていた一因がフェロモンにあることを知っている。
原作の設定によれば、ボクの姉はサキュバスの中でもズバ抜けて強力なフェロモンを持つ突然変異的な存在なんだとか。それでも尚、フェロモンの効果なんてものは背中押し程度でしかないのだが……なにぶん相手が悪かった。しかも、本人は自覚なき女誑しだからなぁ。条件が揃いすぎている。これじゃ、崖っぷちで踊っている最中に背中を押されるようなものだ。
ただ、この世界の姉が原作と同じ性質なのかは、正直ボクにはわからない。だって、フェロモンなんて目に見えるものじゃないし、姉を取り巻く環境も姉自身も原作とは随分とかけ離れているんだもの。まあ、それは大体ボクの所為なんだけど。原作と同じ末路へ辿らせるわけにはいかないからね。
「わたしはただ、可愛い妹と姉妹のスキンシップを図りたいだけ。どうして躊躇う必要があるのかしら」
「いや、でも、だって……」
ぬぅ……。
話を戻して、他に人間とサキュバスの違いを挙げるとすれば……あとは、俗に言う発情期というものが定期的にやって来ることくらいだろうか。
あぁ、発情期なんて言い方をすると変な方向へ想像を掻き立てられる人がいるかもしれないけれど、べつに理性を失ったりとかはしないよ。所詮は人間の生理と似たような現象だ。ただ、ほんの少し人間の場合よりも性欲が高まりやすいという傾向があるだけで。
逆にいえば、それ以外の時期なら性欲の強さですら多くの人間と変わりないし、年中欲情もしていない。
つまるところ、サキュバスだから性に貪欲なんてのは只の偏見なのだ。うん、たしかにそのはずなんだけどなぁ……。
「うぅうう、やっぱり
「ううん、全然違うけど? わたしも侑咲も、発情期は先々週に来たばかりじゃない。さすがにまだ次は来ないわよ」
だよね、知ってた!(ヤケクソ)
「だったらさ、べつにうちへ帰ってからでもいいじゃん! うぅう、こんなところ誰かに見られたら、絶対に変な誤解をされちゃうよぉ」
「へぇ、うちでならいいんだ……そっかそっか。でもね、お姉ちゃんは今してほしいの」
だからなんでぇ!?!?
「ほら、だって今日は小テストがふたつもあったじゃない? しかも、体育の授業はわたしの苦手なバレーボールだったし……。一日頑張ったお姉ちゃんは、すっかり心が擦り減っちゃったの」
「う、うん……」
「だから、可愛い妹とのスキンシップで回復させてほしいなぁって。ダメ?」
くっ、そんな穢れなき眼差しで見つめながらお願いされたら、ひとりだけいつまでも恥ずかしがって抵抗しているボクがおかしいみたいな気分になってくるじゃないか……!
いや、みたいというか、姉相手のキス如きで意識してしまうボクが実際おかしいんだろうけどね。常識的に考えて、姉は姉妹としての純粋なスキンシップを求めているだけなのだから。
気持ちの整理がてら今の状況を説明しておくと……日直の仕事を終えた直後、ボクは姉に手を引かれ放課後の空き教室へと連れ込まれたのだった。
そして、これは一体何事だろうかと首を傾げていたボクに姉は微笑んでこう言った。
「さあ、お姉ちゃんに今日の分のキスをして頂戴!」
……うん、改めて思い返してみても、なかなかに凄い台詞だなぁ。純真無垢な主人公である姉にしか許されない発言だと思う。
まあ、姉とヒロインの密会を防ぐ為に約束を交わしたあの日以降、寝起きとか就寝前にせがまれてキス自体は何度かしているんだけどさ。それは一応、家の中だからできることなわけで。いくら家族が相手でも、知り合いのたくさんいる校内でするのはさすがに憚られちゃうんだよね。
と、そんなことを脳内でぐだぐだ考えている間だって、姉は待ち遠しそうに視線を送り続けている。これはもう、今更ボクが何を言ったところで諦めてくれる感じの雰囲気じゃないや……。
「ほらほら、おいで」
「……う〜、仕方がないなぁ」
冷静に考えてみたら、わざわざ空き教室を覗きに来る物好きなんて普通はいないよね。つまり、今ここでなら誰かに目撃される心配はないわけだ。
だったら、いつも通りさらっと頬にキスしてしまえばいい。どうせ一瞬で終わることなんだから。
うん、楽勝。
せめてもの抵抗のつもりで目を瞑り、これはただのスキンシップなんだと自分自身に言い聞かせながら姉の頬へと顔を近づけていく。少しして、ぷにっと柔らかい膨らみに唇が行き当たった。
……ん? 膨らみ?
いつもと違う触感にどうしようもなく強烈な違和感を覚え、ボクは思わず瞼を開く。
「あっ、やっぱり気づいちゃった? でもでも、せっかくだからもうちょっとだけ──」
ばっちりと
やがて名残惜しそうに唇を離した姉は、悪戯がバレた瞬間の子どもみたいに舌をちろりと出した。ボクは呆然とそれを見つめる。
「姉妹なんだから
そう事も無げに言い放ちながら微笑む姉の顔は、まさにサキュバスそのものだった。