裏庭のパライソ   作:タバ作戦

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プロローグ的な物です。


とある学生の失踪

「なあ、あの学校の近くの神社って神隠しが起こるらしいよ」

 

昼休みに、左隣の席の萩野くんはそんなことを言ってきた。

 

萩野くんが話題に出したあの神社とはおそらく学校の裏側にある神社のことだろう。昔は

 

地域一帯で熱心に祀られていたらしいが、この現代社会においてその信仰を持つものはほ

 

とんどおらず、ほぼ廃墟と化している。

 

「初耳だわ」

 

「みんな噂してるぜ。あの神社に入ったら最後カミサマに攫われて二度と帰れなくなるっ

て」

 

「そういえば最近学校来ない奴多いよな」

 

この学校、もとより余り治安のいい所では無いが確かにここ最近無断欠席をする者が多い。

 

「知ってるか?あの麗奈が神隠しにあったんだってよ」

 

そう話を持ち出すのは右隣の席の小野君だ。

 

「麗奈かあ、あいつは神隠しとか関係無しに学校こなさそうだが」

 

「萩野ってアイツと家近いんだろ?何か知らんの?」

 

「麗奈のことなんて知らないよ。それに近いっていうなら内田のほうが近いし」

 

と、言いながら萩野くんはこちらを見やる。何か麗奈について知ってるネタは無いのか、

 

と言外にそう言われた気がした。

 

「俺も特に知ってる事は無いぞ。アイツとはろくに話したことも無いし」

 

と、言いながらもほとんど学校に来ない癖にいつもテストの成績が良いのが癪にさわるク

 

ラスメイトについて考える。彼女と話したのはほんの数える程度だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあな雄介、また明日な」

校門の前で小野君たちと別れ、1人通学路を歩く。部活が終わった学生たちの帰宅ラッシュだと言うのに通学路には人は少ない。いつもなら萩野君と帰るのだが、滅多な事では部活を休まない萩野君がこの日は少し用事があるらしく、いつもより早く帰ってしまった。寂しい。

 ふと、昼休みに萩野君から言われた事を思い出す。学校の裏の神社に行くと神隠しに遭うと。その時は下らない話だと思っていたけどこの時間帯に思い出すとすごく気味が悪い。けれども同時に気になる。学校のすぐ裏手にあるからここから立ち寄るならそこまで時間はかからないはずだ。

 

 もはや参拝客など歩かぬような参道を1人歩く。ろくに手入れされていないであろう境内は草木に覆われ、かつては御神木があったであろう場所には、不法投棄されたガラクタが無様な骸を晒していた。

 神主が四年前に亡くなって以降管理するもののいなくなった神社は荒れ果て、近隣住民からは幽霊神社などと呼ばれているが、それだけじゃ無い。学校の裏にあるこの神社は昼間も薄暗く、境内に生える木々は身を隠すのに都合が良い。そんな環境だから、神社の周辺ではよく変質者が目撃されている。過去には学校の女子生徒に対してストーカー行為を働いていた男がこの神社で凶行に及んだ事件もあったそうだ。そういう意味でも生徒達にとってこの神社はいわく付きの場所であり、だからこそ、入ったら神隠しになどという噂が立つのだろう。

 一通り神社を見回り終わると、社の方に目が行く。気のせいでなければ何かが動いたような気がしたのだ。どうせ何かの動物だろうとは思うが確証は無い。恐る恐る近づくと不意に賽銭箱の影から猫が飛び出してきた。招かれざる客を尻目に一目散に逃げていく野良猫を見届けると、なんだか肩から力が抜けた。せっかくの人の寄り付かない場所を侵犯したかと思うとちょっと申し訳なく思うが、それでもやはり、拍子抜けした。

 

 

        キィィィーーー

 

不意に背後で扉が開く。振り返りもせず本能的に駆け出すが、「何か」に右足を掴まれて体勢を崩す。砂利道に転ぶ衝撃を脳が痛みだと処理する間も無く伸びてきた「何か」に社に引きずり込まれ悲鳴を上げることすらままならず視界が暗転した。

 

 

 ………この日行方不明者が1人増えた。




登場人物紹介
内田雄介
部活動と勉学に励む中学生。最近学校に来ない生徒が多い気がしていたけれど元から学校に来ないような奴が多かったので特に気にしていなかった模様。両親が他界しており父方の祖父母の家に世話になっている
部活は陸上部。


萩野浩介
雄介のクラスメイト。オカルト趣味に目覚めているが偶にその事で突拍子もない事を口走っては主人公達にイジられている
部活はテニス部。

小野悠人
同上。趣味は読書で昼休みに良く本を読んでいるが主人公達とつるんでいることも多い。
部活は野球部。

田中麗奈
雄介達の同級生。いわゆる不良。最近学校に来なくなった。
部活には入っていない。

雄介達の通う学校は近所にある市立の中学校で、1学年4クラス、雄介達は2年B組、麗奈はD組である。
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