3周年の喜びを静かに分かち合うダイビート基地、超昂戦士たちは日頃言えないありがとうを、仲間たちと贈り合う。
そんな中、閃忍イノリの手紙は…バディにではなく、アカリに贈られた。
イノリが記念日にしたためた、アカリへの感謝の気持ちとは?
第1部主役と第2部主役の心を繋ぐ物語をお届けします。


1 / 1
※現在(2023年11月)開催中のイベントストーリー「CROSSING BIRTHDAY」および、今夏イベント「ダイビート冒険記 真夏のクルーズSOS!」のネタバレを含みます。


超昂大戦 3周年記念SS 内緒のミニレター! 伝説は戦士から閃忍へ

ダイビート3周年を記念したイベントは、ファン感謝クルーズ船ツアーの様子(※)を配信するに留まり、対外的には静かな記念日となった。

(※詳細は、弊社超昂SS「ひと夏のメモリアル! 超昂戦士と行く豪華クルーズ船ツアー」をご参照ください。)

当日は神騎たちの生誕を祝う懇親会を内々に行い、参加した神騎のみならず、超昂戦士・閃忍・魔女、そして隊員たちが改めて心穏やかに3周年の佳き日を喜び合った。

 

……

 

(あっ…!)

(…っ!?)

 

ダイビート基地・談話室。

 

週末のひととき、ソファで寛ぐアカリは、封筒を開き、便箋に目を通していた。

だが、待機時間の息抜きに入ってきたライカに気づくと、わずかに顔色を変え、便箋を伏せ、視線を逸らす。

 

 にやり。(ゲス顔)

 

「あ、頭領に沙由香さん、お疲れ様っす。」

ライカはアカリの向こうに目線を送り、2人に挨拶を送る。

「えっ…ええっ!?」

大切な2人が後ろにいることに気づかなかったアカリは、ソファから跳ね起き、バネ仕掛けの人形のように慌てて振り返るが…。

 

「あ…あれっ…?」

そこにはトキサダも沙由香もいない。

 

「拝見しまーす。」

「えっ…あっ!!」

虚を突かれ、一瞬お留守になった手元の警戒心。

ライカのフェイクにしてやられ、アカリは手紙をあっという間に奪われた。

 

「クククッ…これがエスカ・ルビーの最重要機密文書…!」

「ちっ…違うよっ、違うけど…!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

アカリへ

 

いつもマンガ貸してくれて、ありがとう。

いつも組手で鍛えてくれて、ありがとう。

ダイビートのことも上弦衆のことも、学校の友達のことも、いつもいろいろ教えてくれて、ありがとう。

ダイビートと月想館のみんなと仲よくできるのは、半分は自分の卓越したコミュニケーション能力、もう半分はアカリのおかげです。

基地でも学園でも友達がいないライカには聞けないので、これからも対人関係でわからないことはアカリに聞きます。

 

ルビー、デビュー3周年おめでとう。

末筆ですが、感謝を込めて。

 

           閃忍 戦部イノリ

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「イノリいーーーっっ!!

 誰がぼっちじゃあーーーっっ!!」

「だ…だから見せたくなかったのに…ライカちゃんが勝手に見ちゃうんだもん…。」

「あの恩知らずーっ! ノロイっ!!」

憤懣やる方ないライカをなだめるすべもなく、途方に暮れるアカリだった。

「その…何か、ホントに…ゴメンね?」

 

……

 

「そう言えば皆さん、メッセージカードみたいなの、贈り合ってましたよね。」

「うん、私も沙由香さんやエスカチームのみんなに贈ったよ。忙しくてまだ全員に書ききれてないから…ライカちゃんのも、遅くなっててゴメンね。」

「いや、年賀状ですかっ!?」

3周年フェスまっただ中のダイビート基地では、超昂戦士たちが日頃伝えられない感謝を伝え合っていた。

※誕生祭当日のサプライズと、抜け駆け防止のため、トキサダには敢えて贈らない紳士協定も結ばれていた。

 

「嬉しいなあ。イノリちゃんって、すっごーく私のこと、大事に思ってくれるんだ。」

「そうなんですか?」

「うん…この前もね。」

 

……

 

「ハイっ、お土産。」

「あっ…! ありがとうございます!

 でも…休暇が台無しになっちゃったんですよね?」

「もう、バカンスのはずだったのに…当分、クルーズ船はこりごり、かなあ。」

「あはは…。」

 

夏の終わり、イノリと沙由香はトキサダと遅い夏休みを満喫しようとクルーズ船に乗ったのだが…巻き込まれ体質・トキサダの面目躍如か、シージャック(とハニー軍団)に巻き込まれた3人。

 

「…でも、イノリちゃんと仲よくなれたから、いいバカンスだったな。

アカリちゃん、ありがとう。」

「…はい?」

「船内で一緒に鎮圧作戦を開始したとき、イノリちゃんがね。初めてタッグを組んだのに、私のこと全面的に信頼してくれたんだ。

『ルビーもトキサダ頭領も、エスカレイヤーは凄い人だって言ってたから』って言うんだよ。」

「あっ…!」

 

ルビーが全幅の信頼を寄せるエスカレイヤーになら…と、イノリは背中を預けてくれた。

即席ペアにも関わらず、あの困難なミッションを成功させることができた原動力は…ルビーが仲を取り持った、二人の絆だった。

 

……

 

「ふう~ん、付き合い長~いバディの私にだって、信頼なんか寄せやしないのに…。

イノリのヤツ…!」

「ラ…ライカちゃんも私も、その場にいたわけじゃないから…!」

(ライカちゃんを連れ回して振り回すのも、イノリちゃんの信頼の形だと思うんだけどなあ…。)

ライカとイノリの関係性は、アカリなりに(いいなあ)と思っているのだが…言うとややこしいので黙っていた。

 

「だから、イノリちゃんがすっごーく信じてくれて、私も嬉しいんだけど…私、そんなにイノリちゃんに親切にしたこと、あったかなあ?」

プライベートでは部屋に遊びに来たり、せがんで来るので学校の出来事を…カンナやよっしー、同級生や先生の話をするくらい。

組手…スパーリングは、最近はムツカに挑戦する機会が多くなり、ルビーのところへ来る機会は減っていた。ムツカ戦で黒星を先行させると、ときどき特訓志願に来るくらい。

 

 

「…アカリさん、気づいてないんですか? 答えはこの手紙の中にあるじゃないですか。」

「…ほへ?」

 

 ちょん、ちょん。

 

ライカが指さす、短い手紙の中盤。

 

【ダイビートと月想館のみんなと仲よくできるのは、(中略)アカリのおかげです。】

 

「あいつ、ダイビートでも上弦衆でも、もちろん月想館でも監視対象じゃないですか。

ノロイの同族を疑われて、周りとぎくしゃくして…自分で『イヤだ』とか『どうしよう』とか言わないけど、結構ダメージかぶってるんですよ。」

「うん…。」

 

甦ったノロイの討伐戦と、閃忍たちからの逃走劇の果てに、イノリはダイビートに戻った。

幸い、トキサダの号令でイノリは、その命と居場所を保証された。

しかし、上弦衆の怨敵・ノロイの力を秘めるイノリへの拒絶反応は、にわかに払拭できるものでは無い。

イノリと上弦衆、ことに月想館の学友との関係性は、がらがらと瓦解した。

 

謹慎のように、軟禁のように基地に籠もるイノリ。

口には出さないが…ずっと途方に暮れていた。

 

「実際、イノリがそこから立ち直ったのって、ヒビっさんとかムツカ様、リルカとかも一枚噛みましたけど、アカリさんの体験談とか、結構効き目あったみたいですよ。」

「えっ…そうなの?」

 

かつてアカリも、日常を喪失した。

素顔の女子高生・園崎アカリの日常は、エスカ・ルビーの…ヒーローの肩書きに塗りつぶされ、自分の偶像が一人歩き。

一時、悲嘆に暮れたアカリだが、トキサダや沙由香に背中を押され、色眼鏡で見る人ともマンツーマンで接し、もう一度素顔の自分をさらけ出したアカリは、次第にもとの素顔を取り戻していった。

 

困ったときの助けを、次は困っている誰かに返したい。

そんなアカリだから、イノリを放っておけなかった。

 

アカリは進んでイノリに寄り添った。

ゲームをしたりマンガを貸したり、勉強を教えたり食堂でケーキを食べたり。

その中で、閂学園の話を…アカリが友だちを作ったときのことも、もう一度友だちのやり直しを始めたときの話も。

時間の許す限り、いっぱい語り、少しイノリの話を聞いた。

 

そうしてイノリは、少しずつ上弦衆と月想館での居場所を取り戻しつつある。

(※実はムツカの仲立ちにも支えられているのだが、本人は断固として認めない。)

 

「あいつなりに、アカリさんに感じるリスペクトと、感謝の気持ちがあるんですよ。鈍いし、ボキャ貧だから、手紙にまとめないと伝えられないだけで。」

「そっか…そうなんだ…。」

 

自分自身でもわからない、イノリの正体。

その不安は、イノリ自身にさえも降りかかる。

だからこそ…ありのままを受け止めてくれるアカリの献身は、いつもイノリの心の底に熱く染み渡る。

 

3周年の、そんな感謝を素朴に詰め込んだ、1枚のとても短い手紙に、アカリもまた胸を熱くする。

 

「…イノリちゃんって、すっごーく、いい子だよね!」

 

 

 だだだだだだだっ……!!

「ライカーっ、ライカライカライカあーーっ!!」

「えっ…?! …ひいいっ!」

 

 ぐしゃっ(打突音)ごろごろごろごろごろっ。

 

「げふっ…!」

「今日も無事、ライカを確保した。課題《一日一ライカ》達成…と。」

「おんどりゃあああっ! それは月想館の授業日だけじゃーーっ!!」

※ライカは抜け忍の咎をすすぐため、事あるごとにセンニン科でターゲット役に強制指名されています。

 今週は放課後、日没まで逃げ切る役を命じられている、とのこと。

 

「そもそも、相方にミサイルキックで無力化かますの、やめんかーいっ!!」

「むう…じゃあ休日の自由課題にする。《ツーマンセル持久戦》。

この後、びしょうじょをタイマンで叩きのめす予定でしたが、急遽2対2にするのです。

アカリ、今から組み手、できる?」

「えっ? …いいけど…。」

 

 がしっ!

 

「よーし、いくぞライカー。今日も出撃で、突撃だー!」

(…えっ…?!)

 

 【3周年記念・タッグバトル60分1本勝負】

  閃忍ムツカ エスカ・ルビー組

        VS

    閃忍イノリ ライカ組

 

「ま…待てえええええいっ!! イノリいいいいっ!!

 ちょ…ちょっ、し…死ぬっ、あたしっ…」

 

《緊急ミッション》

 上弦衆の伝説の閃忍と、怨敵ノロイを打ち払った超昂戦士。

 彼女たち2人を相手取り、あらゆる手段で生き延びよ。

 

(何で!?

 あたしがっ!!

 イノリの巻き添えーーーっ!!?)

 

 閃忍ライカは、毎日が絶体絶命。

「死んじゃううーーーーっ!」

 

かつて、一人の少女がこの世界に降り立った。

エスカ・ルビーたちが繋いだ世界で、まだ見ぬ危機に立ち向かう運命を背負って。

見えない自分と見えない明日にも悲観せず、少女は仲間と共に今日を進む。

閃忍・戦部イノリが紡ぐ伝説は…もう少し先の、別の話。

 

 




筆者・環藍河です。
ファン感謝クルーズ船ツアーSSを連載中ですが、短編SSを急遽差し込むことに。本日(11月18日)休日を使って一気に書き上げました。

…動機ですか?
石鎚ぎんこ先生の3周年記念イラスト(イノリ&ルビーの2ショット)がハートわしづかみでしたもので。尊いっ…!!

メインシナリオでは2人の関係ってあまり主軸で描かれないですが、イノリが結構アカリと仲良いんだな~ってセリフがあったので、きっちり関係性を考えたら、こんなSSができあがりました。
超昂フェス開幕の15日(水)でも、サービス開始3周年の25日(土)でもない、ただの遅刻二次創作ですが…お楽しみいただければ幸いです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。