そんな中、閃忍イノリの手紙は…バディにではなく、アカリに贈られた。
イノリが記念日にしたためた、アカリへの感謝の気持ちとは?
第1部主役と第2部主役の心を繋ぐ物語をお届けします。
ダイビート3周年を記念したイベントは、ファン感謝クルーズ船ツアーの様子(※)を配信するに留まり、対外的には静かな記念日となった。
(※詳細は、弊社超昂SS「ひと夏のメモリアル! 超昂戦士と行く豪華クルーズ船ツアー」をご参照ください。)
当日は神騎たちの生誕を祝う懇親会を内々に行い、参加した神騎のみならず、超昂戦士・閃忍・魔女、そして隊員たちが改めて心穏やかに3周年の佳き日を喜び合った。
……
…
(あっ…!)
(…っ!?)
ダイビート基地・談話室。
週末のひととき、ソファで寛ぐアカリは、封筒を開き、便箋に目を通していた。
だが、待機時間の息抜きに入ってきたライカに気づくと、わずかに顔色を変え、便箋を伏せ、視線を逸らす。
にやり。(ゲス顔)
「あ、頭領に沙由香さん、お疲れ様っす。」
ライカはアカリの向こうに目線を送り、2人に挨拶を送る。
「えっ…ええっ!?」
大切な2人が後ろにいることに気づかなかったアカリは、ソファから跳ね起き、バネ仕掛けの人形のように慌てて振り返るが…。
「あ…あれっ…?」
そこにはトキサダも沙由香もいない。
「拝見しまーす。」
「えっ…あっ!!」
虚を突かれ、一瞬お留守になった手元の警戒心。
ライカのフェイクにしてやられ、アカリは手紙をあっという間に奪われた。
「クククッ…これがエスカ・ルビーの最重要機密文書…!」
「ちっ…違うよっ、違うけど…!」
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アカリへ
いつもマンガ貸してくれて、ありがとう。
いつも組手で鍛えてくれて、ありがとう。
ダイビートのことも上弦衆のことも、学校の友達のことも、いつもいろいろ教えてくれて、ありがとう。
ダイビートと月想館のみんなと仲よくできるのは、半分は自分の卓越したコミュニケーション能力、もう半分はアカリのおかげです。
基地でも学園でも友達がいないライカには聞けないので、これからも対人関係でわからないことはアカリに聞きます。
ルビー、デビュー3周年おめでとう。
末筆ですが、感謝を込めて。
閃忍 戦部イノリ
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「イノリいーーーっっ!!
誰がぼっちじゃあーーーっっ!!」
「だ…だから見せたくなかったのに…ライカちゃんが勝手に見ちゃうんだもん…。」
「あの恩知らずーっ! ノロイっ!!」
憤懣やる方ないライカをなだめるすべもなく、途方に暮れるアカリだった。
「その…何か、ホントに…ゴメンね?」
……
…
「そう言えば皆さん、メッセージカードみたいなの、贈り合ってましたよね。」
「うん、私も沙由香さんやエスカチームのみんなに贈ったよ。忙しくてまだ全員に書ききれてないから…ライカちゃんのも、遅くなっててゴメンね。」
「いや、年賀状ですかっ!?」
3周年フェスまっただ中のダイビート基地では、超昂戦士たちが日頃伝えられない感謝を伝え合っていた。
※誕生祭当日のサプライズと、抜け駆け防止のため、トキサダには敢えて贈らない紳士協定も結ばれていた。
「嬉しいなあ。イノリちゃんって、すっごーく私のこと、大事に思ってくれるんだ。」
「そうなんですか?」
「うん…この前もね。」
……
…
「ハイっ、お土産。」
「あっ…! ありがとうございます!
でも…休暇が台無しになっちゃったんですよね?」
「もう、バカンスのはずだったのに…当分、クルーズ船はこりごり、かなあ。」
「あはは…。」
夏の終わり、イノリと沙由香はトキサダと遅い夏休みを満喫しようとクルーズ船に乗ったのだが…巻き込まれ体質・トキサダの面目躍如か、シージャック(とハニー軍団)に巻き込まれた3人。
「…でも、イノリちゃんと仲よくなれたから、いいバカンスだったな。
アカリちゃん、ありがとう。」
「…はい?」
「船内で一緒に鎮圧作戦を開始したとき、イノリちゃんがね。初めてタッグを組んだのに、私のこと全面的に信頼してくれたんだ。
『ルビーもトキサダ頭領も、エスカレイヤーは凄い人だって言ってたから』って言うんだよ。」
「あっ…!」
ルビーが全幅の信頼を寄せるエスカレイヤーになら…と、イノリは背中を預けてくれた。
即席ペアにも関わらず、あの困難なミッションを成功させることができた原動力は…ルビーが仲を取り持った、二人の絆だった。
……
…
「ふう~ん、付き合い長~いバディの私にだって、信頼なんか寄せやしないのに…。
イノリのヤツ…!」
「ラ…ライカちゃんも私も、その場にいたわけじゃないから…!」
(ライカちゃんを連れ回して振り回すのも、イノリちゃんの信頼の形だと思うんだけどなあ…。)
ライカとイノリの関係性は、アカリなりに(いいなあ)と思っているのだが…言うとややこしいので黙っていた。
「だから、イノリちゃんがすっごーく信じてくれて、私も嬉しいんだけど…私、そんなにイノリちゃんに親切にしたこと、あったかなあ?」
プライベートでは部屋に遊びに来たり、せがんで来るので学校の出来事を…カンナやよっしー、同級生や先生の話をするくらい。
組手…スパーリングは、最近はムツカに挑戦する機会が多くなり、ルビーのところへ来る機会は減っていた。ムツカ戦で黒星を先行させると、ときどき特訓志願に来るくらい。
「…アカリさん、気づいてないんですか? 答えはこの手紙の中にあるじゃないですか。」
「…ほへ?」
ちょん、ちょん。
ライカが指さす、短い手紙の中盤。
【ダイビートと月想館のみんなと仲よくできるのは、(中略)アカリのおかげです。】
「あいつ、ダイビートでも上弦衆でも、もちろん月想館でも監視対象じゃないですか。
ノロイの同族を疑われて、周りとぎくしゃくして…自分で『イヤだ』とか『どうしよう』とか言わないけど、結構ダメージかぶってるんですよ。」
「うん…。」
甦ったノロイの討伐戦と、閃忍たちからの逃走劇の果てに、イノリはダイビートに戻った。
幸い、トキサダの号令でイノリは、その命と居場所を保証された。
しかし、上弦衆の怨敵・ノロイの力を秘めるイノリへの拒絶反応は、にわかに払拭できるものでは無い。
イノリと上弦衆、ことに月想館の学友との関係性は、がらがらと瓦解した。
謹慎のように、軟禁のように基地に籠もるイノリ。
口には出さないが…ずっと途方に暮れていた。
「実際、イノリがそこから立ち直ったのって、ヒビっさんとかムツカ様、リルカとかも一枚噛みましたけど、アカリさんの体験談とか、結構効き目あったみたいですよ。」
「えっ…そうなの?」
かつてアカリも、日常を喪失した。
素顔の女子高生・園崎アカリの日常は、エスカ・ルビーの…ヒーローの肩書きに塗りつぶされ、自分の偶像が一人歩き。
一時、悲嘆に暮れたアカリだが、トキサダや沙由香に背中を押され、色眼鏡で見る人ともマンツーマンで接し、もう一度素顔の自分をさらけ出したアカリは、次第にもとの素顔を取り戻していった。
困ったときの助けを、次は困っている誰かに返したい。
そんなアカリだから、イノリを放っておけなかった。
アカリは進んでイノリに寄り添った。
ゲームをしたりマンガを貸したり、勉強を教えたり食堂でケーキを食べたり。
その中で、閂学園の話を…アカリが友だちを作ったときのことも、もう一度友だちのやり直しを始めたときの話も。
時間の許す限り、いっぱい語り、少しイノリの話を聞いた。
そうしてイノリは、少しずつ上弦衆と月想館での居場所を取り戻しつつある。
(※実はムツカの仲立ちにも支えられているのだが、本人は断固として認めない。)
「あいつなりに、アカリさんに感じるリスペクトと、感謝の気持ちがあるんですよ。鈍いし、ボキャ貧だから、手紙にまとめないと伝えられないだけで。」
「そっか…そうなんだ…。」
自分自身でもわからない、イノリの正体。
その不安は、イノリ自身にさえも降りかかる。
だからこそ…ありのままを受け止めてくれるアカリの献身は、いつもイノリの心の底に熱く染み渡る。
3周年の、そんな感謝を素朴に詰め込んだ、1枚のとても短い手紙に、アカリもまた胸を熱くする。
「…イノリちゃんって、すっごーく、いい子だよね!」
だだだだだだだっ……!!
「ライカーっ、ライカライカライカあーーっ!!」
「えっ…?! …ひいいっ!」
ぐしゃっ(打突音)ごろごろごろごろごろっ。
「げふっ…!」
「今日も無事、ライカを確保した。課題《一日一ライカ》達成…と。」
「おんどりゃあああっ! それは月想館の授業日だけじゃーーっ!!」
※ライカは抜け忍の咎をすすぐため、事あるごとにセンニン科でターゲット役に強制指名されています。
今週は放課後、日没まで逃げ切る役を命じられている、とのこと。
「そもそも、相方にミサイルキックで無力化かますの、やめんかーいっ!!」
「むう…じゃあ休日の自由課題にする。《ツーマンセル持久戦》。
この後、びしょうじょをタイマンで叩きのめす予定でしたが、急遽2対2にするのです。
アカリ、今から組み手、できる?」
「えっ? …いいけど…。」
がしっ!
「よーし、いくぞライカー。今日も出撃で、突撃だー!」
(…えっ…?!)
【3周年記念・タッグバトル60分1本勝負】
閃忍ムツカ エスカ・ルビー組
VS
閃忍イノリ ライカ組
「ま…待てえええええいっ!! イノリいいいいっ!!
ちょ…ちょっ、し…死ぬっ、あたしっ…」
《緊急ミッション》
上弦衆の伝説の閃忍と、怨敵ノロイを打ち払った超昂戦士。
彼女たち2人を相手取り、あらゆる手段で生き延びよ。
(何で!?
あたしがっ!!
イノリの巻き添えーーーっ!!?)
閃忍ライカは、毎日が絶体絶命。
「死んじゃううーーーーっ!」
かつて、一人の少女がこの世界に降り立った。
エスカ・ルビーたちが繋いだ世界で、まだ見ぬ危機に立ち向かう運命を背負って。
見えない自分と見えない明日にも悲観せず、少女は仲間と共に今日を進む。
閃忍・戦部イノリが紡ぐ伝説は…もう少し先の、別の話。
筆者・環藍河です。
ファン感謝クルーズ船ツアーSSを連載中ですが、短編SSを急遽差し込むことに。本日(11月18日)休日を使って一気に書き上げました。
…動機ですか?
石鎚ぎんこ先生の3周年記念イラスト(イノリ&ルビーの2ショット)がハートわしづかみでしたもので。尊いっ…!!
メインシナリオでは2人の関係ってあまり主軸で描かれないですが、イノリが結構アカリと仲良いんだな~ってセリフがあったので、きっちり関係性を考えたら、こんなSSができあがりました。
超昂フェス開幕の15日(水)でも、サービス開始3周年の25日(土)でもない、ただの遅刻二次創作ですが…お楽しみいただければ幸いです。