人の心を持ってしまった魔族   作:如月SQ

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魔族の子と目覚め

 フリーレンが、馬車の中で静かに寝息を立てていた。

 

 私は……多分アリウム。

 アリーと呼ばれていた事があるような気がする。

 こめかみには角が生えてるから、魔族らしい。

 今右腕はキラキラにされてて、少し重い。

 目の前には毛布に包まれた白い髪のエルフ、フリーレンが身動ぎ一つせずに目を閉じてる。

 眠りながら何かをしているらしい。

 よくわからないけれど、凄い事をしてるとデンケンは言っていた。

 

 少し前に遠くに見える丸い奴が壊れて、周りにいる人達が騒がしくなった。

 その理由は、私にもわかる。

 すごく怖い……一度キラキラの都市の中に入った時に会った魔族、マハト。

 彼が自由になって、こっちへ向かって来てる。

 それともう一つ……マハトと似てる、とても怖い何かを感じていた。

 そりゃあ騒がしくもなるし、逃げなきゃいけない。

 デンケンの指示の元に、私達は周りにいる人達と共に、その集落を後にする事になる。

 

 私は寝入るフリーレンを抱えて、馬車に乗り込む事になった。

 ガラガラと音をたてる馬車の中で、フリーレンが寒くないように身を寄せる。

 周りにいる人達は不安そうにしながらも、粛々と歩き続けていた。

 

「……先に行っていろ」

 

 不意に、デンケンが後ろを振り返って足を止めた。

 ……うん、マハトと何かがかなり近付いてきてるのを感じる。

 少し前にその二つは暫く動きを止めていたのだけど……今はもう動き出しているみたい。

 

「デンケン様……」

 

「あの峠を越えれば帝国の勢力圏だ。

 マハトといえど容易く手出しは出来ん」

 

 デンケンは、足止めに残るらしい。

 マハトがこの人達をどうするかはわからないけれど、多分ろくでもない事だろう。

 

 あの子は命の価値を知らないから。

 

「デンケン」

 

 だからきっと、足止めに残るデンケンの命も保証出来ない。

 

「アリウム、フリーレンを頼んだ」

 

 けれど彼はもう、覚悟を決めているようだった。

 最後にフリーレンをじっと見つめて、デンケンは来た道を引き返し始めた。

 

「頑張って……」

 

「どうか、ご武運を……」

 

 私と、デンケンと知り合いらしい老人の声が、彼の背中に投げ掛けられる。

 デンケンはそれに手を軽くあげて応え、その場を後にするのだった。

 私はその背中を見えなくなるまで、ずっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私には昔の記憶はない。

 ちゃんと覚えているのは、雪原で寒さに震えて倒れた事くらい。

 そんな私が雪原で倒れていた所をフリーレン達に拾われて、それなりの時間が経った。

 その間、頭にかかっていた靄はゆっくりと晴れて行ったような気がする。

 とはいえ別に昔の事を思い出した訳でもないけれど。

 

 私は、私を拾ってくれたフリーレン達が好きだ。

 

 フェルンは私がまだぼうっとしていた時に、よく世話を焼いてくれた。

 ご飯を食べさせてくれたし、優しかった。

 

 シュタルクは歩くのも覚束無い私を、よく肩車してくれたし、頭を撫でてくれた。

 よく笑いかけてくれて、優しかった。

 

 フリーレンは……なんだか、私とあまり関わらないようにしていたと思う。

 目線が合うとふいと反らされるし、話しかけられた事もほとんどない。

 けど、彼女は優しい子だとなんとなく感じる。

 魔族である私は、見つかり次第殺されてもおかしくなかったらしいのに、フリーレンはそれを止めた。

 そのおかげで私は今生きている。

 

 だから私は、私を拾ってくれた皆が好きだ。

 

 ただ、フリーレンが私を見る視線には悲しみ、のような物を感じる。

 フェルンとシュタルクがいなくなって、私がぼうっとしたフリーレンの世話をしている時、フリーレンは大体悲しげに私を見てくる。

 フェルンを思い出して寂しがってるのかな?と思ってたけど、それだけじゃない気もする。

 

 ……フリーレンはきっと言葉が足りない。

 でもわかる、フリーレンはフェルンもシュタルクも心底大切に思ってる。

 フェルンもシュタルクもそう、みんな、お互い大切に思ってる。

 だけど何故かすれ違う。

 ……人は、難しい。

 

 早くフリーレンには起きて欲しい。

 フェルンとシュタルクにも戻ってきて欲しい。

 そして、皆仲直りして欲しい。

 デンケンにも無事に戻ってきて貰って……皆でご飯を食べたい。

 

 私の取って置きの香草焼きを、ご馳走しますから。

 

 ……どうか、皆無事で、食卓を囲めるといいな。

 それが、今の私の願い。

 

 私は冷たくなり始めたフリーレンの頬を手で温めながら、そう願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いた」

 

 そこに……まるで、地を這うような、地の底から響くような。

 ひどく冷たい声が、聞こえてきた。

 たった2文字の言葉なのに、強い負の感情を感じる。

 勢いよく振り返ってみればそこには、女性が一人、馬車に乗り込んで来てるところだった。

 集落では見た覚えのない、そんな女性。

 見た目はまるで普通の人だったけれど、目を見た瞬間に寒気を覚えた。

 爛々と輝く瞳からは、妖しい輝きを放っていて私を……いや、私の後ろにいるフリーレンを見つめているようだった。

 

「寝てる……ソリテールさんの言ってた通りだ……!

 今なら、今ならやれる。私でも、この手で先生の仇を……!」

 

チャキ

 

 馬車に乗り込んできた女性は、私なんて見えていないかのようだった。

 ボソボソと呟きながら、懐から何かを取り出して、一歩、此方へと歩み寄ってきた。

 その手には銀色に光る……ナイフが握られていた。

 

「……な、なに……?」

 

 怖い。口元は吊り上がっていて笑みを浮かべているのに、目がまったく笑っていない。

 それに、目と鼻の先に私がいるのに、何も見えてないみたいだ。

 

ギシリ

 

 また女性が一歩此方に近付いてきた。

 その目はフリーレンを捉えていて……手に持つナイフを、腰で構える。

 ギラリとナイフが光を反射し、私は息を飲んだ。

 怖い……なんで、突然こんな人が……。

 私はフリーレンに身を寄せて震える事しか出来なかった。

 

「遂に、遂にこの時がきた……長かった……!

 積年の恨みを……先生の仇を……!傲慢の報いを!

 フリーレン……フリーレン!死ねぇえええええええ!」

 

 そう叫んだ女性は馬車の床を蹴り、フリーレンへと飛び込んできた。

 馬車の外を歩いていた人が何人かその叫びに気付き顔を向けて……それでも彼女は止まる事はなかった。

 狂ったような笑顔に彩られた表情は……とても、恐ろしかった。

 ……でも、私、は。

 

 銀色のナイフの切っ先が、煌めいた。

 

ドスッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……解析がもう少しで終わる。

 本当に、後少し。

 微睡みから目覚めるように、少しずつ意識が覚醒していく。

 

 今の状況は朧気ながら把握出来る。

 私の全身は……私の周りも全て、『万物を黄金にする魔法(デイーアゴルゼ)』によって黄金に変えられている。

 ……足止めに残っていたデンケンは敗れたと思っていい。

 けれどそれが死んだのではなく、黄金に変えられたのなら……。

 まだ、希望はある、これで解析が終わり……『万物を黄金にする魔法(デイーアゴルゼ)』は呪いではなくなる。

 そうすればデンケンと共に戦い、マハトを打ち破る事も……不可能じゃない。

 

 思い返すのは、ヒンメル達と『不死なるベーゼ』の結界に閉じ込められた時の事……。

 あの時は私以外、誰も最後まで諦めていなかった。

 そんな皆の姿に私も思い直して、結果的に私達は七崩賢の一角を倒した……。

 

 不可能、そんなのはやってみなくちゃわからない。

 あの時のように……一つ一つ……勝ちの目を揃えていこう。

 

 『万物を黄金にする魔法(デイーアゴルゼ)』の解析が終わり、私の意識は覚醒する。

 まずは……一つだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 微睡みから目覚めた時、私の体は温もりに包まれていた。

 朧気な記憶だけど、魔族の子に馬車に乗せられていた筈……。

 ぼやけた視界が少しずつ鮮明になっていき……頬に何かを生暖かい、濡れているような感覚を覚えた。

 涎でも垂らしてしまったのかな、それにしてもなんだか暖かいな……そう考えながらパチリと目を開くと……。

 

「ごほっ……フリーレン……大丈夫……?」

 

 口から血を垂らした魔族の子が、私に覆い被さって、いた。

 急速に意識が浮上した同時に、魔族の子の体に思わず手を回した。

 

ぬちゃ

 

「……!」

 

「いっ……!」

 

 背中に回した手に、ぬちゃりとした感触がして、魔族の子が小さく悲鳴を漏らした。

 慎重にその体を抱き止めながら手の平を見れば、私の手は真っ赤に染まっていた。

 頬のべたりとした感触も、魔族の子の吐血のようだった。

 背中に傷があるのに吐血……相当深い傷みたいだ。

 

 何が起きたのか、もうマハトが追い付いたのか、私はくたりと私に身を任せている魔族の子を慎重に抱えて、辺りを見回した。

 私や周囲が『万物を黄金にする魔法(デイーアゴルゼ)』を受けた事は感じていたが、この子に……何が?

 

 そう思って背中越しに視線を向ければ、馬車にもう一人乗っている人物がいた。

 人間の女……だが、見覚えのない女性だ。

 そんな女性は目を見開き……血濡れのナイフを、震える両手で握り締めていた。

 

「!」

 

 私は咄嗟にその女性に拘束魔法を放っていた。

 

「え……あっ!」

 

カランっ

 

 女性はそれに一切抗う事が出来ず、身動きは止まり、手に持っていたナイフが馬車の……黄金と化した馬車の床で音をたてた。

 明らかに魔族の子の怪我に関わってるこいつを、放っておく選択肢はなかった。

 

「……アンタがやったの?今どういう状況かわかってるの?」

 

 光の輪に拘束された女性を視認しつつ、周囲を見回せば、黄金と化した周りの人々の何人かは此方を見て、驚いたような顔をしている。

 ……となると、『万物を黄金にする魔法(デイーアゴルゼ)』がここを包み込む直前くらいに刺した、のか。

 

 女性は馬車の床でうつ伏せの状態で……私を睨み付けてきた。

 その目は、表情は、憎しみに彩られていた。

 ……酷く、覚えのある目だった。

 魔族に家族を奪われた人間がよくする目だ。

 

 私も、こんな目をしていたのだろうか。

 

「フリーレン……!」

 

 強い憎しみの篭った声だった。

 少し離れているのに、歯を噛み締めた音が聞こえるようだった。

 

「これを外せ!殺してやる!」

 

「……そう言われて外す奴はいないよ」

 

 けれど、人にここまで恨まれるような事は……。

 

「アリウム先生を殺した報いを、大人しく受けろ!」

 

「……!」

 

 頭をガンッと強く殴られた気分だった。

 

『絶対に、絶対に許さない!』

 

 あの日の事が、あの日リリィという赤ん坊を抱えた少女の目が、憎しみに濁った日の事が鮮明に甦る。

 私の腕の中の温もりが、あの日のように血を流す魔族の子(アリウム)が、自分は傷付きながらも何かを守る姿が。

 私の心をひどくざわつかせた。

 

 私を睨み付けているこの子は、間違いなくあの時の少女だ。

 既に忘れかけていた、存在すら忘れていた。

 けれど彼女は私への恨みを少しも忘れていなかった。

 

 ……当然だろう、母親同然だったアリウムを、私は彼女の目の前で殺したのだから。

 私が彼女でも忘れる事はない。

 

「アリウム先生を殺しておいて!フェルンちゃんも誑かして!

 更にはアリウム先生に似た魔族まで傍らに置いて!

 贖罪のつもりか!?ふざけるなぁああああああああ!!!」

 

 彼女の怒号が響き渡る。

 心が揺さぶれる。

 彼女の悲痛な声で、胸が痛む。

 

 彼女は、私に復讐に来たのだろう。

 解析に集中していた私を……刺し殺そうと。

 それを魔族の子は身を呈して守ってくれた。

 ……罪悪感ばかりが募る。

 

 息荒く、私を睨み付けてくる彼女に、私は視線を反らしながら告げる。

 

「……アンタには私を裁く権利がある。

 ただ、今は大人しく受け入れる事は出来ない。

 今、事態は切迫してるんだ。悪いけど、暫く大人しくしてて貰うよ」

 

 正直、最悪の気分だ。

 魔族の子の背中に止血処理だけして、私がくるまっていた毛布でくるんだ。

 薄目を開けて私を見てくる魔族の子は、穏やかに、慈しみの表情を浮かべていた。

 

「フリーレン……無事……良かった」

 

「……うん、ありがとう、助かったよ」

 

 そう言ってやれば、花が咲いたように笑うのだから、こっちとしては堪ったものじゃない。

 血まみれで、その顔で、そうやって笑われると、本当にあの日のようだった。

 

 ただ今は、罪悪感で動きを鈍らせている時間も惜しい。

 せめてデンケンだけでも見付けて完成した保護魔法で……。

 

「あら、失敗しちゃったのね」

 

 二人の視線に苦しんでいると、そんな涼やかな声が響いた。

 少し離れた所で、マハトと並んで立つ女……その女の声だった。

 マハトの記憶で見た、昔に親交があったらしい、大魔族……。

 表情は朗らかで、見た目は小柄、華奢で傍目には強そうには見えないけれど……。

 魔力隠蔽をしていないその二人は、互いに比べあっても遜色ない魔力量を有していた。

 

 最悪だ、なんていう状況だろうか。

 怪我した魔族の子を守りながら、私に殺意を抱く人間を守りながら、七崩賢クラスの大魔族二人と戦う……?

 ……無理だ、流石に……手に負えない。

 

「ソリテールさん!……ごめんなさい」

 

「いいえいいえ、謝らなくていいの。まだ終わった訳じゃないでしょう?何度失敗したっていいのよ。後は任せて」

 

 そんな女性とソリテールの親しげに見えるやり取りに、私は思わず目を見開いた。

 こいつ……魔族と……?

 いや、傷付いた魔族の子を大事に抱えてるような私に言えた事じゃないかもしれないけど……それでもそいつは特別にやばい。

 

「アンタ……もし私が死んだらあの魔族とは縁を切りなよ」

 

「は、ははは、命乞いのつもり?」

 

「違うよ。これも……アンタへの贖罪だ」

 

 腕の中の魔族の子をそっと寝かせて、馬車から飛び降りた。

 相対するは七崩賢、『黄金郷のマハト』と……大魔族ソリテール。

 人類が知らない、無名の大魔族……。

 

「ソリテールなんて名前の魔族は、人類には知られていない。そんな魔族が、こんな強大な魔力をした大魔族が知られていない理由は一つだけ……。

 遭遇した人類は皆殺しにされている」

 

「えっ……」

 

 背後で驚愕の雰囲気が伝わってくる。

 目の前に立つソリテールは、そんな私の言葉にも動じず、笑みを深めるだけだった。

 

「そんな事ないわ、私は争いを好まない。人目を避けてひっそりと暮らしていただけ。

 マハトの記憶を読んだならわかるでしょう?マハトは本気で人との共存を願っている……。

 そんなマハトと親交がある私も、共存を願っていても不思議じゃないでしょう?

 私はただ、その子の力に、友人の力になりたくてここにいるだけ……。

 人を殺した事すらないわ。貴女のそれはただの勘繰りよ」

 

 よく回る口だ、と思う。

 表情は一切変えず、声色は穏やかなままで、本当の事を言っているように聞こえる……いや、こいつは……()()()()()()中心に言葉を選んでいるのか。

 なんて性質(たち)が悪いんだ。

 

「そ、そうですよね……!」

 

 それでも背後の女性には効果覿面だったようで、安堵の息が聞こえてくる。

 ……記憶を見る限り、あのソリテールという魔族の危険性は高い。

 何よりこうして対面しててわかる……。

 

「そんなひどい死臭をさせてて良く言う……。

 マハト共々、どれだけの人を殺してきた?」

 

 ソリテールは私の言葉に、更に笑みを深めた。

 否定しないその様子に、後ろから困惑が伝わってくるけれど、マハトが一歩踏み出したのを見て、私にはもうそれを気にする余裕はなくなった。

 

「本当に『万物を黄金にする魔法(デイーアゴルゼ)』を解除したのか……お前だけ黄金にし損ねた……という訳でもなさそうだ。

 ……この目で見ても未だに信じられんが、それならばフリーレン、お前を逃がす事は出来なくなった」

 

「……元からそんな気なんてないでしょ」

 

 マハトから戦意が迸る。

 その手に握る黄金の剣を、私へと向けて。

 私は静かに杖を構えた。

 

 『万物を黄金にする魔法(デイーアゴルゼ)』に対する防護魔法は完成している。これで私が黄金にされる事はないし、時間があればヴァイゼも元に戻す事が出来る。

 ……ここを生き残る事が出来れば、ね。

 

 私は所詮、これで漸くマハトと同じ戦いの舞台に上がれたに過ぎない。

 しかも相手は二人だ、まったく、寝起きの運動にしてはハード過ぎる。

 

「まぁまぁ、そう焦らなくていいじゃない?

 少しお話しましょうよ、マハトもフリーレンに聞きたい事があるんじゃないの?」

 

「それはフリーレンの手足を切り落としてからでもいいだろう。お前のように無駄な手傷を負う必要もない」

 

「……それもそうね」

 

 ふと見れば、ソリテールの左肩には出血の跡があった。

 そこそこ深い傷のようだけど……ここに来るまでに戦闘があった?

 誰と……。

 

 そこまで考えて、思い当たるのは一つだけ。

 

「……その傷、フェルンか」

 

「ええ、貴女の弟子?優秀だったわ。戦士の男の子との連携は素晴らしかった。マハトと二人だったのに、こんな傷受けちゃった」

 

 左肩の傷をいっそ愛おしそうに撫でるソリテール。

 そんな様子が、フェルンが大魔族に手傷を負わせた事が、誇らしかった。

 けれど同時に、こんな危険な魔族二人に、あの二人が挑んだという無謀過ぎる行為に眉をしかめた。

 後で改めて言い聞かせ……いや、戻ってこないのかもしれないけど。

 

「へぇ……フェルンとシュタルクもやるもんだね。

 そして二人は……どこかで黄金の像になってるって事かな」

 

 そうだとしても、生きてるならそれでも良い。

 女性はフェルンと面識があるようだったし、一応女性に協力していたのだし、殺してはいないだろう……。

 そう思っていたのだけど……。

 

「いいえ」

 

 ソリテールは目を細めて。

 

「二人とも殺しちゃった」

 

 そう言い放った。

 

「そんな……」

 

 背後から掠れた声が聞こえたような気がした。

 

 私も、どうにか平然を装っていたつもりだったけれど、少し反応してしまったかもしれない。

 ソリテールは楽しくて仕方ないとばかりに、その口元を吊り上げた。

 杖を構える手が震えてるような気がする、フェルンとの思い出が頭に過っていく。

 過去に浸る余裕なんてないというのに、私の体はひどい寒気に襲われて、反応が鈍い。

 

「そう……まぁいい。どちらにせよ、お前達二人を見逃せないのは私も同じだ」

 

 声は震えてないだろうか?

 顔は歪んでないだろうか?

 

 勝ちの目は見えない。

 けれどそれは諦める理由にはならない。

 

「ここでお前達は、人類の敵として処理する」

 

 私はそこでマハトとソリテールへと『地獄の業火を出す魔法(ヴオルザンベル)』を放つ。

 マハトは黄金で、ソリテールは防御魔法で防いでいるのが微かに見えた。

 その次の瞬間には、宙に浮いた無数の大剣と共に、マハトが黄金の剣を振りかぶっている……。

 

 私一人でも、この二人は、二匹は倒さなければならない。

 

 絶望的な戦いに、私は身を投じた。




誤字報告ありがとうございます。
修正しました。

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  • 〈戦士と魔族〉
  • 「平和だった町」
  • [一級魔法使い第二試験]
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