一般ルビコニアンデス傭兵の話   作:上代わちき

13 / 19
今回はアーキバス寄りに活動する独立傭兵の話。
あくまでアーキバス寄りなので、アーキバス要素はほぼなしです。
例によって時系列は通常ルート以後&回想となっております。

2024/01/03 誤字脱字一か所修正しました。報告ありがとうございます。


番外編「闇の船商人リヒター」

 

 

 

 綺麗な街だ。

 雪が塗れる冷たい空気と、夜特有の澄んだ景色も相まって、街中に飾られた光の粒子が美しい。

 それが、その惑星のとある都市を訪れた感想だ。

 

 鉱山探査の大仕事を終えて、イヴの暗殺を目論んだ奴らとも話をつけて、ジョンと色々世間話をしながら海を堪能した後。

 俺は、さらに気分を変えて雪の街を訪れることにした。

 

 

 

 ここは、以前訪れた水の都と同様に教会の文化が根強い場所だ。

 そういう宗教ってのはえてして胡散臭いものが絡むもんだが、こうして建物や景色を眺める分ならわりかしいいもんだ。

 

 どうやら何かの祭りの最中のようでな、でっかい木にイルミネーションを巻きつけて輝かせてる。

 単なる機械の光というにゃ、何かとカラフルな木組みとレンガの家々や白い雪を淡く照らしているもんだから実に見れたもんだ。

 

 同じ雪塗れのルビコンじゃ、ここまで大規模で楽しい景色は見れん。

 その辺の出店で買ったクッキーをかじっていると、ますますそう実感する。

 

 

 

「あら、あらあら。こんなところで会うだなんて奇遇ねぇ」

「む? お前、リヒターか。……ルビコンじゃ世話になったなぁ」

 

 かと思えば、不思議な奴と出会った。

 そいつは老人……というには、強化手術でいくらか若返った奴だ。

 

 

 

「ここには休暇で?」

「ああ。それがワンダラーだからな。……そういうお前は、まぁどうせアーキバスか密航がらみの話だろ?」

「さて、ね」

 

 

 独立傭兵リヒター。

 比較的アーキバス寄りとして仕事をする傭兵であり、同時に密航用の船をいくつも運用する闇の船商人。

 アーキバス寄りの傭兵なら、大抵の奴はこいつが築いたコミュニティに出入りしている。

 そんぐらいには、アーキバス寄りとして地位を固めている奴だ。

 

 俺も、ルビコンでの出稼ぎで色々と世話になったもんだ。

 

 

 

 

 

 

 はじめて会ったのは戦場。

 ルビコン以前の話で、敵同士として出会った。

 

 こっちはベイラム方として、奴はアーキバス方として。

 さっき言った通り、リヒターの奴はアーキバス寄りの傭兵として活動していたからな。

 

 

「貴方が、ワンダラーのマイナー。かなりのイレギュラーと聞いたけど、どれほどか楽しみね」

「またEN系のACか……鬱陶しい」

 

 奴のAC『イェーガー』もアーキバス製量産フレームで揃えて、ジェネレータも青い火を吹かす環流型で、レーザーライフルと垂直プラズマミサイルを使うというアーキバス色の強い代物だった。

 実際の戦闘じゃそいつらとハンドミサイルを組み合わせることで圧をかけてきて、疲弊したところを大型グレネードキャノンで刈り取ってくるというスタイルだったがな。

 

 

「ちぃ、ちょこまかと逃げ回りやがって……」

「ふふふ……貴方、近距離型でしょう? ならこういうのは嫌な筈」

 

 とにかく一歩引いてレーザーとミサイル二種を撃ってくるのが厄介でな。

 三種類の攻撃が時間差でやってきて、避けるのに苦労してもたもたしているとグレネードがやってきやがる。

 だからって下手にグレネードから逃げようと飛び上がれば、今度は真下の地面にグレネードを当てて広い爆風に巻き込んでくるもんだから小賢しい。

 

 

 

「じゃあこいつはどうだ!」

「さっきと速度が違う? まさか、近接攻撃推力で?! ……っ?!」

 

 結局あの時は、キカクブースターの近接攻撃推力とパルスブレードの火力でなんとかしたんだったか。

 あの時期はまだベイラム製のコアと脚部で装甲を誤魔化していたから、ENでやられる前にブレードで何とかするしかなかった。

 これだからレーザーやプラズマは嫌なんだ。

 

 

 

 

 

「久しぶりね、マイナー」

 

 だがそれでも奴は生きていてな。

 二回目も敵同士だった。

 

 

「しぶといな、お前」

「そっちこそ。この前の借り、返させてもらうわよ」

「どうだが。お互いそういう流れじゃねぇだろ」

 

 その時は互いに撤退が目的だからまともにはやりあわなかったな。

 

 

 

 

「ん、なんだあいつら。お前の差し金か?」

「いいえ、違うわ。……まさか嵌められた? やっぱり、目立ちすぎたのね」

 

 おまけに第三勢力が乱入してきた時は、なし崩し的に共闘までした。

 あの時は、暗殺を専門としたACどもに襲われたんだったか。

 

 

「背に腹だな……おい、一時休戦だ。友軍識別タグも送ってやる。三つ巴なんざごめんだ」

「忌々しいけど、仕方ないわね。こちらもタグを送るわ」

 

 だがまぁ、こっちもあいつもそれなりに場数を踏んでるんでな。

 俺が前衛で囮になりつつ、奴が後衛からレーザーやらミサイルやらで弾幕を張って。

 最後は奴のグレネードで相手が吹き飛んだところを、こっちのパルスブレードでとどめを刺して終わらせた。

 

 

 

「はぁ……マイナー。今回は見逃すわ。こうなった以上、今すぐにでも色々根回ししないといけないしね」

「あいよ。……必要なら金を持ってきな。俺はワンダラーなんでな、金さえ積むってんなら今までのことは水に流して助けてやってもいい」

「したたかね。考えておくわ」

 

 そうしているうちに不思議な縁ができていてな。

 

 以降は敵同士になっても殺し合いまではしない談合になり果てたし、何回か奴の僚機として助けてやったこともあった。

 そういや俺のAC『オデッセイ』に採用しているアーキバス製二脚パーツも、奴との縁でうまく入手できたもんだったな。

 

 

 

 

 

「あら、マイナーじゃない。貴方の方から連絡なんて珍しいわね、どうしたの?」

「リヒター。お前に頼みたいことがある」

 

 だからまぁ、その縁がルビコンで役に立つのは。

 運命的な何かというのはあれだが、まぁ皮肉の類や因果な何かは感じたな。

 

 

 

 

 

 

「はい。私の仕事はここまで。後は自分で頑張って頂戴」

「衛星砲の穴を涼しげに通り抜けて、かつオールマインドのシステムとも渡りをつけてくれたんだ。文句はねぇよ」

「言っておくけど、今の警戒レベルだからできるプランよ。封鎖機構の警戒レベルが上がると私のプランの具合が変わるから、頭に入れておいて」

 

 

 サムがベイラムに取っ捕まってリング・フレディに泣きつかれちまった後。

 俺はリヒターとの縁を頼ってルビコンに密航した。

 

 奴は『闇の船商人』として有名でな、密航の類なら奴に頼って損はない。

 奴は密航用の船を何隻か持っていて、俺はその一隻の内の座席を貰ったわけだ。

 

 

 

 

「それと、私もしばらくルビコンで稼ぐわ。アーキバス寄りに転身するときは連絡して頂戴。多少のいざこざなら片づけてあげる」

「ああ、必要になったら世話になる。ありがとな」

 

 

 おまけに奴自身もルビコンで色々稼ぐつもりのようでな。

 表向きはランク圏外の木っ端傭兵として、いつかみたいに悪目立ちしすぎないように立ち回っていやがったが、奴の本質は別の所にあった。

 奴は、ほぼアーキバス寄り限定とはいえ、ルビコンでも独立傭兵用のコミュニティを築いていて、それでそっちでも色々世話になったんだ。

 

 

 

 

「よぅリヒター。ベイラムに喧嘩売っちまった。匿ってくれ」

「確かにアーキバス寄りに転身するなら連絡してって言ったけど、ここまで派手にやるとは思わなかったわよ……まぁいいわ、その分こき使うから覚悟なさい」

「恩に着る」

 

 

 密航してしばらくの間は、サムの身柄についての情報収集も兼ねて、ベイラム寄りとして色々仕事をしたがよ。

 サムの居場所が割れて、解放戦線の雇われとしてベイラムに喧嘩を売ってサムを助けた後は、すぐ奴を頼ってアーキバス寄りの立場に転身させてもらったわけだ。

 

 海越えの手段として奴の船を使わせてもらったのも、中央氷原でいろんな奴の僚機として稼いだのも、リヒターが築いたコミュニティに出入りさせてもらっていたからこそできた話だ。

 あの時期での付き合いで例外があるとすれば、ベイラム寄りでもアーキバス寄りでもない、猟犬なのにどこか自由気ままな旦那ぐらいのもんだ。

 

 

 

 ワンダラーとして宇宙を旅する際の精神的な拠点はイヴの倉庫だが、ルビコンで仕事をする際の精神的な拠点はリヒターの大型船がそうだった。

 

 

 

 

「おや、久々に見たな」

「ああ、これ? 傭兵達の要望にお応えして自販機ごと輸入したのよ。結構大量に備蓄してるのよ」

 

 今でも思い出せるぜ。

 なんせ奴の船にゃ、アイスの自販機があったんだ。

 

 

 

「こりゃ美味い。チョコ味なんざ、イヴの奴が喜びそうだな」

「やめてよ。焼死させられそうになったのを思い出して笑えない」

 

 

 雪に塗れたルビコンとアイスの相性はよくないようで、意外にも暖房との兼ね合いで割と美味いんだ。

 貴重な甘味でもあったしな。

 

 だからまぁ、よくあの船の甲板でアイスを食ったもんだ。

 傭兵仲間やリヒターの奴と一緒に、コーラルで焼けちまった空を見上げながらな。

 

 

 

 

 

 

「それにしても、貴方は楽しそうねぇ」

「そうかぁ? ……いや、そうだろうな。これが、俺の在り方だからな」

「そうね。……ルビコンから出ていくときの船に乗せた時。貴方、ちょっとだけ憑き物が取れたみたいだったもの」

 

 

 私とは違って。

 

 その言葉は、しかし声に出なかった。

 ただ、俺の嗅覚だけが奴の考えを読み取っていた。

 

 

 

 俺にとってルビコンは、良くも悪くも思うところがある故郷だ。

 だが奴にとっては、どうだったんだが。

 

 思えば、俺はこいつの過去や故郷のことを聞いたことがない。

 わざわざ聞いてやる義理もなかった。

 

 

 これを機に一つ聞いてやるのも、悪くはない。

 詮索は何かと嫌われやすいが、俺とこいつの腐れ縁ならある程度はごまかしようもある。

 

 

 

 

「なぁリヒター。お前、加工ミールワームって知ってっか?」

「加工ミールワーム? 確か温かいスープにすると美味しい高級品とは聞いたわね」

「奢ってやる。せっかくの再会なんだ、一杯ぐらい付き合え」

 

 

 が、やっぱりやめた。

 どうせなら、こいつの過去や故郷を、限られた情報だけであれやこれやと好き勝手に考察していくのも面白いかもしれないと思ってな。

 謎は謎のままにしておいた方が、楽しいこともあるというものだ。

 

 

 俺はこの後暖炉付きの宿部屋でゆっくりしたり、観光名所になっている古城を見て回ったり、ただっぴろい草原のACドライブしたりで楽しむ予定だ。

 そういうのは、実は行く前の計画を立てている時が案外楽しくてわくわくするもんだ。

 それと同じようなもんだ、ってことにした。

 

 

 




例によってリヒターのデータと機体のデータをまとめてあります。
いつものようにかなりの長文ですが、よろしければ合わせてお楽しみください。



リヒター
コーラル争奪戦による利益を求めてルビコン入りした独立傭兵。

アーキバス寄りの独立傭兵として知られるリヒターは、ランク圏外の傭兵を中心としたコミュニティを築き上げ、独立傭兵達の助けとなることで一定の利益を得る。
また方々に様々なコネがあり、ルビコンを出入りする密航船の運用もこなす闇の船商人。

戦場においても油断できない存在であり、相手を翻弄し疲弊させたところを刈り取る、狩人のごとき戦法を好む。




AC // イェーガー
独立傭兵リヒターの中量二脚AC。二種のミサイルを中心とした機体であり、レーザーライフルと併用しながら相手を翻弄し、スタッガーしたところをグレネードキャノンで刈り取る。
フレームはアーキバス製量産パーツ「VPシリーズ」で統一、ジェネレータもアーキバス製の万能型な「VP-20C」を採用し、比較的平凡ながらも優秀な機体に仕上がっている。
ブースターはQBよりも射撃を妨げない移動速度を重視した「BST-G2/P06SPD」を、FCSはファーロン製のミサイルロック性能を重視したモデル「FCS-G2/P10SLT」を搭載。
詳しい武装構成は、右手レーザーライフル・左手連装型ハンドミサイル・右肩垂直プラズマミサイル・左肩大型グレネードキャノン。
殆どのパーツは比較的入手しやすいものだが、入手に一癖あるブースターと大型グレネードキャノンについては闇の船商人としてのコネで特別に入手したもの。
また、データ上はランク圏外であるものの同じくコネでOSチップを入手しており、拡張機能としてパルスアーマーを搭載して射撃戦時の防御性能を高めている。

中距離を維持しながらレーザーライフル・ハンドミサイル・垂直プラズマミサイルの弾幕を相手に叩き込む、ミサイルを中心とした機体。
三種の異なる軌道の攻撃で相手にじっくりとプレッシャーを与え、スタッガーや瀕死状態に追い込んだところを大グレで追撃して命を刈り取る。
また固まっている雑魚をまとめて爆破したり、近づいてくる敵への迎撃として地面にぶち当てて広い爆風に巻き込んでしまったりなど、何かとグレネードを重宝している。
言ってしまえばジョンと同じ中距離引き撃ち機だが、ジョンが比較的直線的で泥臭い印象なのに対し、リヒターは搦め手を好むスマート派。
そのためかジョンの機体はある程度フィールドを選ばないのに対し、リヒターは広いフィールドを飛び回ることが前提で、閉所戦闘に対応しきれない側面がある。
一応閉所戦闘が予想できる場合、垂直プラズマミサイルを水平式に換装したり、近距離戦では積極的にブーストキックを織り交ぜたりする程度は工夫する。
データ上はランク圏外ではあるものの、本質的な実力はランク圏内の特にCランク帯(ランク17~13)相応の強者となる。つまりマイナーと同様のランク詐欺枠。
ランク圏外であり続ける理由は、「傭兵コミュニティの長」「闇の船商人」としての顔が本業であり、独立傭兵として目立ちすぎないよう根回ししたため。



メタ解説
ベイラム寄りの木っ端傭兵であるジョンとは対照的な、アーキバス寄りの中堅傭兵をコンセプトにした機体。
アーキバス寄りであるためレーザー兵装の採用が大前提。
ただし原作ストーリーに関与しない都合上、表向きはランク圏外の木っ端傭兵になってしまうため、EN武器適正が高い最新型ジェネレータは買えず使えないと想定。
なのでスタッガー追撃によるダメージソース枠は大グレに任せて、EN兵装はそのためのスタッガー追い込み用として割り切った。
その結果出来上がったのが、なんとなくスッラやコールドコールに似た雰囲気の狩人スタイル。
実際彼らや同じ老人枠である『暴力の旅商人』マイナーや、『死の武器商人』イヴと同様、『闇の船商人』として裏社会に精通しているし。
なお「リヒター」の名の由来はドイツの画家『ルートヴィヒ・リヒター』にちなんだもので、これはヴェスパー部隊の面々の名前がアートや画家に由来することに習ったもの。

機体の比較対象として構成が近しいのはスッラのAC『エンタングル』。あちらもミサイル二種メインで相手を追い詰めつつ、爆発武器で仕留めるスタイル。
スッラのAC『エンタングル』はオールマインド製パーツを織り交ぜた構成であるのに対し、リヒターのAC『イェーガー』はアーキバス系列と中立企業のパーツで統一している。
また、スッラはリロード時間に優れたバズーカをばんばん撃ってくるが、リヒターは大型グレを追撃用と割り切って動きを止めないレザライとミサイル二種がメインとなるのが差異となるか。
だから重量の差も相まって機動力はリヒターの方が上だったりする。

個人的にはEN武器・肩の連装型以外のミサイル二種・グレネード……と今までのキャラに装備できなかった装備群を使うことができて中々満足。
これらを組み合わせた結果、中堅傭兵を思わせる渋くもスマートな仕上がりになったのもポイント高め。
グレネードで雑魚軍団や敵ACを吹き飛ばすのとてもたのしい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。