それぞれのパーツの出自をもとにシナリオを考えて色々当初予定から変更したり挫折したりした結果、こうなりました。
煌びやかな花畑が広がっている。
花畑は地平線まで続いて、ピンクやら黄色やら青色やらでカラフルに彩られてやがる。
ルビコンでは見られない、まさに「春」を思わせるいい景色だ。
みずみずしい香りや、虫や獣といった奴らの生命の力を感じるのも、悪くはないというものだ。
ここは「花の村」と呼ばれる観光地。
以前はアーキバスの心無い部隊に制圧されたこともあったらしいが、世論の非難やルビコンの一件による弱体化もあってアーキバス色は当の昔に消えている。
今となっては、かつての美しい景色が完全に戻っている復興の象徴ともされている。
アンチアーキバス勢にとっては、ここはある種の聖地のひとつってわけだ。
ここは昼ののどかな景色もいいが、夜の景色はもっといい。
近くの集落にある酒場兼宿での酒盛りもいいもんだったし、腹ごなしの散歩で見たイルミネーションで淡く照らされる夜の花畑の風景も見れたもんだったからな。
ここではある程度弁えているのか、明るすぎず花の色を活かす程度の淡さが丁度いい。
「それにしても。モール……つったっけ。あいつ、ここにいたんだな」
意外だったのは。
知り合い──というにはいくらか距離があったが──その一人であるAC乗り、モールがここにいたことだ。
ここの老けた住民と親しそうにしていた辺り、ここが奴の故郷ということなのだろう。
◆
モール。
RaDの星外担当セールス。
こいつもルビコンで会ったAC乗りの一人だ。
会ったといっても、ルビコンじゃ戦場で一回僚機しただけで声すら聞いたことないがな。
こいつはRaDの構成員で、中央氷原支店とやらで働いていた。
本来ならあんまり面識ができにくい手合いだな。
だがこうして顔と名前を覚えるぐらいはできたのは、ルビコンでRaDから依頼を受けたのがきっかけだ。
ちょうど惑星封鎖機構の奴らが企業・ルビコニアン関係なく攻撃をやりやがっている時期の話でな。
色々稼ぎまくっているうちに、RaDから緊急の依頼が来たんだ。
中央氷原に設置した支店が封鎖機構の部隊に攻撃されているから、助けてくれって具合でな。
報酬は前金からしてでかいもんで、最初は無条件でだまし討ちを警戒したもんだが。
旦那を取り込んでいて、かつそれ以前の仕事で頭目とシステム担当については話が分かる奴だったことを思い出して、最終的に受けてやることにしたのさ。
当時の嗅覚としてもだまし討ちの気配を感じ取らなかったってのもあるがな。
「こちら独立傭兵ワンダラーのマイナー! 作戦領域に現着した! 生きてる奴がいるなら応答しろ!」
「っ! こちらRaD中央氷原支店だ。話はボスから聞いている!」
「なら話は早い。状況を教えろ!」
急いで戦場に駆け付けた時は、まぁ酷い有り様だった。
正直どっちがRaDの機体なのかわからないもんで、ただ遠くの方で弾幕やらなにやらが降り注いでいるのだけがわかった。
「こちらの防衛部隊はほぼ全滅。ただ、星外担当のセールスだけがACに乗って迎撃してくれているが、いつまで持つかわからない!」
「ACだぁ? 友軍の戦闘部隊にACがいるとは聞いていないが」
「本来は『商談』用だったのを、そいつが無理やり出したんだ! だからはっきりいってここまで戦力になってくれたのも嬉しい誤算なんだ!」
「なるほど。まぁ仕事が楽になるなら悪くない」
弾幕の方へ向かってみると、RaDの奴が言う通りACが封鎖機構の部隊に対して弾幕を展開してやがった。
識別タグ曰くACの名前は『ウォームコール』。
やけに華奢な四脚型で、とにかく機動型って印象だ。
フレーム自体はまぁ間違いなくRaD製ではなく、多分シュナイダー辺りだろうな。
奴は敵部隊の頭上を陣取って、妙に特徴的なマシンガンやらガトリングやらぶっ放してたり、パルスと思わしきハンドミサイルをばらまいていたりしていた。
で、時折肩からレーザー砲を放って部隊に打撃を与えているスタイルだ。
武装全部が見たことない奴ばかりな辺り、おおよそ試作・新作パーツをまとめた機体って具合だろうな。
弾幕だけ見るといい具合の戦運びに思えるが、少し被弾するだけで大きく動きを止めているのが気にかかった。
やはり、華奢な見た目通り正面切ってってのには向いてないな。
「そこのAC、友軍識別タグを送るぞ。俺が囮になるから、ひたすら弾幕に徹していろ!」
だから代わりに俺が目立つようにパルスブレードを展開して、敵部隊の気を引く。
もひとつおまけにアサルトアーマーで数機吹き飛ばしてやったから、向こうからすりゃ大分気に食わない筈だ。
そうして俺の方へ気を向けていると、頭上からあの弾幕とでかいレーザー砲が降り注いでくる。
そういう時の奇襲程怖いものはない。
俺がその場に参戦した後は、驚くほどあっさり片付いた。
『ウォームコール』はまさしく後衛に向いたACだった。
◆
そうしてRaDの中央氷原支店を護り切ることができた。
だが一つだけ問題があった。
それはAC『ウォームコール』だ。
あのACは、アーキバスからのバウンティボードに登録されていた。
所謂賞金首だ。
勿論、そのパイロットも賞金の対象だ。
何でも、パイロットはもともとアーキバスの『脱走兵』とのことで、さらにはアーキバス系列の試作パーツをふんだんに使った最新ACの窃盗犯でもあるらしい。
それがRaDのセールスとしていやがるのは、おそらくアーキバスから逃げた先がたまたまRaDだったからってことだろうな。
『商談』用って、とどのつまり盗品ACで利益を出すっていうろくでもない話だ。
つまり、RaDから依頼金をふんだくってさらにそのACを生け捕りにすればかなりの稼ぎになるって話だった。
あの時期はアーキバスにある程度媚を売っておきたい時期だったから、そういう意味じゃ渡りに船だったな。
「まったく、独立傭兵が来てくれたからよかったけど……もし一歩間違ったらお前も死んでいたんだぞ、モール!」
だったんだが。
『ウォームコール』とそのパイロットをアーキバスに引き渡すのは、やめておくことにした。
後にして思えば、緊急ミッションであることを差し引いても報酬がそこそこ高額だったのは。
きっとこれに対する口止め料も含まれていたからなんだろう。
ずいぶんとお優しいことだが、まぁ悪くはないかもしれん。
それと、特に深い意味はないが、RaDの奴らは下位ランカーとはいえAC四機以上と封鎖機構のSGを手玉に取る魔法使いであり、そこに喧嘩を売る気になれねぇってのも言っておく。
少なくとも、下手に情に流されたって言うよりは周りの奴らを納得させやすいもんだ。
そういうわけで、俺はそいつから手を引いたんだ。
緊急ミッションの報酬だけでも、いい手土産にはなった。
◆
あの後のことは、聞いていない。
ただイヴの倉庫で似たような機体を見たような気がして、似たような奴を見たような気もしたが。
結局そいつとは話すこともなく、気が付けばそいつは姿を消していた。
後で雑談がてらにイヴに聞いたら、似たような機体はRaDからの『商談』で貰い受けたもので、似たような奴はその運び屋役を兼ねたRaDの星外担当セールスだったとか。
そのまま出向という形でもあり、しばらくは倉庫で面倒を見ていたが、それなりに稼いだ後は故郷へ帰っていったとのことだった。
まさかこんな観光地で顔を見るとは思わなかったな。
「モール、ウォームコール、バウンティボード……流石に、取り消されているな。まぁあれだけ消耗してたら、アーキバスも『脱走兵』を追う余裕なんざねぇわな」
デバイスで調べても、もう奴のACの登録はない。
見事、奴はアーキバスから普通の人生を勝ち取って見せたわけだ。
「ま、今やアーキバスはルビコンから追い出されて斜陽だからなぁ。本当に運がいい奴だぜ」
不可思議なことにモールの奴との縁はうまいこと繋がらなかったが。
それでも、なんだか悪くない気分だった。
今回モールさんは無口系……というか喋らずに終わりました。
それはイヴたちほど強烈なキャラを作れなかったという失敗でもあり、一方で普通の人生を勝ち取った「とあるキャラ」のIF・オマージュの側面もあります。
後、やっぱり今回は今まで以上に機体が先に来ているエピソードなのもありますが……やっぱりシュナイダー・アーキバスとRaDと大豊を一緒くたにするのは中々難産ですな……
そういうわけで、どちらかというとマイナーさんの周りの世界観をまた一つ考えたのが主軸というべきかも……
以下、例によってパイロット・機体のデータです。
いつものごとく長文ですが、お納めください。
モール
ドーザーの一派RaDの構成員にして、「商談」役を担うセールスマン
シュナイダーの試作ACを手土産にRaDに転がり込み、一派の中央氷原支店に配属される。
それはルビコン星系外にある「とある倉庫」への「商談」のための準備であり、そしてそれはモールの目的であるという。
AC乗りとしては並程度であり、強化手術を受けながら機体の大幅なパーツ変更に耐えきれないハンデを背負っている。
ウォームコール
RaDの「商談」用AC。戦闘用というよりは、機体に使われているフレームパーツや武装のデータが主軸の機体。
ウォームコールとは「(繋がりがあるなじみの客への)営業電話」を意味する。これはRaDと「とある倉庫」の関係性から名付けられた。独立傭兵コールドコールとは無関係。
本来はRaDから「とある倉庫」へのデータ共有を目的とした贈与品であり、パイロットであるモールはその運び屋役を担いながら運び先の「とある倉庫」にて暫く面倒を見てもらうこととなる。
同時に、RaD現頭目から「とある倉庫」の主へ送る惜別の餞別であるという。
フレームはシュナイダーの試作フレーム「レマーガイア」(もしくは「ランマーガイア」)で統一された四脚型。装甲を犠牲にして、空中ホバー移動速度に特化した機動型。
武装はRaDのヘビーマシンガン、シュナイダーのパルスハンドミサイル、大豊のガトリングキャノン、アーキバス先進開発局の可変式レーザーキャノン。
いずれも試作・新作パーツであり、AC開発の情勢を図る意図もあってあえて同時に搭載されている。
ブースターはシュナイダーの「ALULA/21E」、FCSはファーロンの中・近距離特化モデル「FCS-G2/P05」、ジェネレータはアーキバスの万能型な「VP-20C」。
戦闘を想定していないが、あえてこのまま使用するなら空中ホバー移動に徹しながらヘビーマシンガン・パルスハンドミサイル・ガトリングキャノンの弾幕を相手へ降り注ぐこととなる。
とにかく相手の頭上を陣取り、高い機動性で相手の攻撃を回避し続けながらも一方的なトップアタックで圧を与え続けることで有利をとっていく。
そして相手が隙を見せたなら、予めチャージした可変式レーザーキャノンで一気に仕留めることとなる。
空中特化故、うまく状況を作ることができれば一方的に相手へ弾幕を降り注げるのが強み。機動性の高さ故相手の攻撃を避けやすいのも嬉しいところ。
弱点はフレーム由来の脆さと、戦闘用に調整せず比較的高負荷武装を同時積みしているが故のEN回復能力が劣っていること。
もし相手が同じ高さに昇ってきた場合や、ウォームコール側がEN容量を切らして地上に落ちた場合などはそのまま一方的に倒されるリスクが大きいピーキーな機体。
もともとはシュナイダー由来の試作ACであり、武装もパルスハンドミサイルや可変式の最新レーザーキャノンをメインとするアーキバス系列の色が強い実験機だった。
当時のパイロットはアーキバスの実験体だったモールだが、ファクトリー脱出の際にも使用し、たまたまたどり着いたRaDと交渉して身の安全と引き換えにACを渡した経緯を持つ。
モールの目的はファクトリーに収容される前の故郷に帰ることであり、だからこそRaDは「笑える機体」の代金としてルビコンの外への道を用意した。
RaDの管理下に置かれた後は、RaD新作のヘビーマシンガンや、偶然にもジャンク市から入手した大豊の新作ガトリングキャノンを装備させての実証実験などに使われた。
あくまでモールのACではなくRaDが管理するACだが、惑星封鎖機構による攻撃で中央氷原支店が危険に晒された際はモールが搭乗して迎撃任務に当たった。
モールは強化手術を受けた身でありながらパーツ変更に耐えられないハンデを背負っており、この機体でしか実力を発揮できないが故の措置である。
(ちなみにモールは、比較的『人としての機能』を残すコンセプトの実験体のイメージ)