イベント的にマイナーさんを関わらせようがないので、いくつかの短編をまとめる形でお茶濁しです。
ベイラムの依頼が消えていた。
例えば、アーキバスが制圧した「壁」を奪うために傭兵を雇うかもなんて話があったが、俺には依頼が来なかった。
前の一件でベイラムに対して喧嘩を売った形になるから、当然だ。
やらないといけない仕事だったとはいえ、つくづく嫌な仕事をさせられたもんだ。
一方でRaDからの仕事は少しあった。
敵対するドーザー勢力の排除って具合だな。
何でも警備部隊が今ボロボロだから、外部に頼りたいのだとか。
RaDも大概ヤク漬けばかりだから解放戦線よりはマシ程度が殆どだが、頭目とシステム担当は話の分かる奴だったのが幸運だった。
まぁあそこの紐付きな旦那とハンドラー・ウォルターがわかる奴だから、当然と言えば当然だろう。
それなりに稼がせてもらった。
おかげで、またちょっとした贅沢ができるってもんだ。
「お、ついたついた。ようやっと景色を楽しめそうだ」
大型ヘリを止めて、その辺の雪原に徒歩で出る。
勿論空手じゃない。
鍋窯やら薪やらを担いで、だ。
「……火、か。こうしてみると、落ち着くもんだ」
バチバチ、バチバチ、と薪が爆ぜながら火が燃え上がる。
ゆらりゆらりと燃え上がる様はオーロラのようで、空に浮かぶ赤いオーロラの景色も相まっていい感じになった。
そう、今俺がやっているのはキャンプだ。
いつもはヘリ内の部屋で食っているからな、たまには環境を変えて気分転換したくなったのさ。
「さて、鍋をうまく乗せてと……水と調味料はしっかり入れて、後は加工ミールワームだな」
今日の飯は、ミールワーム入りスープだ。
本来ミールワームってのはまずいもんだが、それなりに奮発したこいつは流石に別物だ。
そんな代物を、俺が個人的に持ち込んだ調味料で仕上がったスープにぶち込む。
調味料がいいのか、すぐに香ばしい匂いが鍋から香るようになる。
「いいもんだ。本当に、いいもんだ」
炎の爆ぜる音を聞きながらの調理は、本当にいい。
そこで、味気ないホットの缶コーヒーを開ける。
ここじゃ何故かフィーカという名の方が通りがいいが、それを飲むといつもと違う味がしてうまく感じる。
なんかの化学反応で起きた赤いあのオーロラの景色が、そうさせるのか。
どこまでも静かで、でもカーテンのようにゆらめくオーロラがどこまでも夜空に続いていて、炎の音だけが俺の耳を癒す。
「……うまい」
そんな世界の中で食べるスープは、本当にうまいものだった。
◆
「……ところで、飯はどうしてるんだ旦那? ここじゃミールワームぐらいしか手に入らないが、だからこそ調味料の持ち込みは大事だぜ」
「それさえあれば、ステーキにしても鍋で煮込んでスープの具にしても悪いものにはならん」
「もし必要なら言ってくれ。いくつか分けてやる」
◆
傭兵仲間たちに取り次いで、ある程度集団で固まって海越えすることになった。
本当は旦那も誘おうかと思ったが、風の噂で今RaDの縄張りに身を寄せていると聞いたから、やめておいた。
何気に旦那のハンドラーも席を外しているようだしな。
そういうわけでいざ海越え……とはならん。単独ではなく集団で動く都合上それなりに計画を立てて、予定通りに動く必要があるんだ。
そのおかげで、少し海越えまで猶予がある。だから今のうちに奮発して、旅行に出かけることにした。
少し貯蓄を崩す形になるが、ここを逃したらまともに休めるチャンスがなくなるだろうからな。
必要経費だ。
「ほう、いい部屋だ」
今回俺が借りたのは、それなりにいい和室だ。
ちょうど今俺が拠点として使っているヘリ内の和室を、さらにグレードアップしたものだ。
畳の匂いの暖かさは段違いで、部屋の広さも段違い。
床の間って奴もあって、掛け軸の風情も悪くない。
何より、障子と広縁を挟んだ先で外の景色が見えるのがいい。
ここで見るなら、雪被りの山脈を見上げるってのもいいもんだ。
山の上にグリッドがあるのが玉に瑕だがな、こればかりはルビコンだから仕方ない。
「さて、久々のコーラル湯といこうか」
最大の特徴は、露天風呂って奴があるところ。
要は外にできたお風呂って具合で、さっきの山々の景色を見ながらのんびりお湯に浸かれるってわけだ。
何も考えずにぼーっとお湯の流れる音を聞き続けるってのも、最高の贅沢ってもんだ。
「あぁぁ……コーラルが身に染みる……」
コーラルがしみ込んだお湯が、俺の体を暖める。
少しだけぴりっとするのが癖だ。
「ルビコンでこれだからな……いつか本場の温泉って奴を見てみたいもんだ」
このルビコンは、どうにも地球って星の日本って国の文化が根強いとされている。
代表的なのが、俺も世話になっているBAWS製パーツの名称だな。
このパーツの名称は、日本生まれの松尾芭蕉っていう俳諧師とその弟子に由来するんだとか。
もともとルビコニアンどもも最初は移住民だって話らしいし、元はそういう文化の出がルビコンに来たとかそういうもんなのかもしれない。
……って今タブレットで調べたら出た。
「楽しみだねぇ。……またルビコンから出る理由が増えちまった」
何にせよ、その日本ってとこが温泉っていう概念の出所らしい。
当面は、そこが旅の目的になることだろう。
◆
「新着メッセージ」
「よぉ旦那。俺だ、ワンダラーのマイナーだ」
「色々頑張っているようだな。活躍は聞いているぜ」
「そんなあんたに耳寄り情報。温泉って知っているか? ここの温泉はコーラル混じりでな、仕事に疲れた体に効くんだ」
「和室の宿部屋も風情がいいもんだし、食べ物も大分工夫している。その分割高だが、一回ぐらいは堪能しないとこんな星に来た甲斐がない」
「……さて、本題だ。旦那の仲間として、近況を共有しよう」
「今、企業達は中央氷原へ向かう準備を整えている。……気づく奴は気づいている。俺達独立傭兵も、海越えの準備を始めている」
「賭けてもいいぜ。ここからは、中央氷原が稼ぎの場になる」
「旦那、仕事に疲れたなら休むべきだが、その後はあんたも海越えをしておいた方がいい」
「こっちも野暮用を終えて久しいが、実際に手を貸せるようになるのはお互い向こうに着いてからと思ってくれ」
◆
一緒に海越えをした傭兵仲間の一人が死んだ。
仕事の途中で、ACにやられたらしい。
同情する奴はいなかった。
企業にとって目立つ奴は邪魔でしかない。
暗殺者を差し向けられるなど、傭兵ならよくあることで、それを返り討ちにできて一人前って節がある。
俺も、どこかからの刺客を返り討ちにしたことがある。
確か、コールドコールと言ったか。
とにかくレーザーショットガンが鬱陶しい奴だった。
これだからEN系の武器は嫌なんだ。
まぁ幸い、今の俺はアーキバス寄りの独立傭兵としてやらせてもらっている。
時折RaDの仕事もするが、少なくともアーキバスと敵対するベイラムの仕事はしないから、レーザーを撃ってくる奴らと直接敵対することがないのが救いさね。
アーキバス製の武器は、俺の機体にはよく効く。
敵対せずに済むなら、その方がいい。
アーキバスの機嫌をうかがっている限り、EN系を敵に回すなどもう考えなくていいだろう。
……そう思えたら、気が楽だったんだがね。
◆
「よぉ旦那。ワンダラーのマイナーだ」
「ベイラムの依頼で海越えを果たしたんだってな。ますますもって実績を積み重ねているわけだ。壁越えの件も相まって、いよいよ注目され始めるぜ」
「気をつけろよ、出る杭は打たれるのが世の理だ。やりすぎると、暗殺者を差し向けられる。俺の時は返り討ちにしてやったがね」
「それから、惑星封鎖機構がやけに静かなのも気になる。……思わぬ奇襲を食らわんよう、警戒しておいた方がいい」
途中途中で挟まるメッセージは、マイナーさんが621のことを気に行って割とことあるごとにメッセージを飛ばしているイメージ故です。
この世界線だと621=プレイヤーのルビコンでの生活の解像度が高くなる……といいなぁ。
それはそれとして、次回はチャプター3編およびマイナーさんのアセンブリ回です。
以下はおまけです。
アリーナ風にマイナーさんの情報をまとめてみました。
ランク 10/B
ワンダラーのマイナー
AC // オデッセイ
旅を続ける資金を稼ぐため、ルビコンへ密航してきた独立傭兵。
長い旅を経て得た嗅覚と実力で数多の冒険と戦場を渡り歩き、また多くの独立傭兵の僚機としても活躍する暴力の旅商人。
相手の気を散らして味方の負担を減らす戦法を多用する。が、それ以上に単独での生存能力に秀でている兵。
時には暗殺者に命を狙われたこともあったが、涼しげに返り討ちにして、そのランクを奪い取った。