・ルビコンとその星系から脱出した後のちょっとした小話です。
→621的にも「レイヴンの火」「ルビコンの解放者」のどちらかを経た後です。
酒場はいい。
ここにゃ、いろんな奴の人生がすれ違う。
俺もそういう人生の一つで、だからなんとなく好きだ。
ルビコンとその星系を出て大分経った。
あの後すぐにお仲間と合流して、一緒に鉱山探査に誘ったルビコンの傭兵仲間どもを紹介したら、すぐ仕事が始まった。
ACを使った、大規模地中鉱山探査ってわけだ。
鉱山の中には何やら暴走したマシンがいっぱいで、まぁ傭兵としての腕が活躍したぜ。
とはいえ、だ。
今はもう既に鉱山探査の仕事でかなり稼ぎつつ、一区切り終えたところだ。
だからまぁ、疲れた体を癒すために、擬似的に長期休暇してるってわけだ。
お仲間に用意してもらった部屋付きACガレージを拠点に、今はこの惑星のいろんな景色を見聞きして楽しむ。
そういう放浪者に戻ったとも言う。
この間は水の都ってのがやたら綺麗だったのを覚えている。
天使様が出てきそうな煌びやかな聖堂が並びまくって、その前の広場には出店もたくさん並んでいた。
これだから旅ってのはいい。
まだ地球の温泉にたどり着けてないしな、もうしばらくは旅を終えられんよ。
ルビコンもルビコンで色々あったらしく、今あっちの星系じゃとんでもない火が広がっているとか。
その火が具体的にどういうものかは……まぁ、今度にしとくか。
ともあれ、今の俺はただACを持ってるだけの旅人でしかない。
ただ、今日はこの惑星のスラム街にある酒場に寄ったというだけだ。
「ん? あぁ、席なら空いているぜ。好きにしな」
テーブル席に座ってハンバーグやらフライポテトやらを肴に酒をかっ食らっていると、一人やってきた。
時間帯的に殆ど席が埋まっているのはわかっていたから、スペースを分けてやる。
「……旦那?」
そこで、ようやく気付いた。
そいつは、ルビコンで何回か一緒に仕事をした旦那だった。
「久しぶりじゃねぇか。あんたもルビコンから出て来たのか。……あの時はすまなかったな」
思わず声が弾む。
すぐ店員を呼んで、俺の金で旦那の分の酒を頼んだ。
再会の祝いだ。
「再会できた縁に、乾杯」
色々聞いてみたいことがあったが、やめておく。
今の旦那からは、大切な誰かと別れた後のような匂いがした。
いつかのサムに、よく似ている。
勿論レイヴンの名は出さない。
ルビコンの噂を聞く限り、その名はかなり有名になっちまってるからな。
それに、俺にとって旦那は旦那だ。
「なぁ、旦那。また俺達で組まないか? ……見た感じ、まだACに乗ってるんだろ? そういう匂いだ」
だから、これからの話をすることにした。
こうしてまた会えたんだ。
ルビコンの時みたいにやるってのも、悪くない。
加工ミールワームのスープをご馳走してやるっていう、一方的にした約束も果たせそうだしな。
彼・彼女がどちらのルートを選んだかは、皆さまの解釈に委ねます。
レイヴンの火ルートなら、知り合いが全員死んだ中で唯一生きていた仲間との再会に。
ルビコンの解放者ルートなら、解放戦線からドルマヤンみたいに持ち上げられ戦いも続けなければならない中での、ちょっとした一休みに。
621が、口で言うほど嫌いじゃなかった生まれ故郷を焼いていても、自分の大嫌いな解放戦線に与していても。
嗅覚でそれなりの事情があると察するので、どうしても嫌いになれないのです。