一般ルビコニアンデス傭兵の話   作:上代わちき

9 / 19
ALTルート 二話

 

 

 

 

 

 ストライダーの時からやけに嗅覚が『障る』。

 

 気に入らない野暮用も済ませて、キャンプや温泉で気分転換したってのに。

 なんならもう海越えを果たしてまた旦那との共同ミッションをこなしたってのに。

 

 

 どうにも旦那への嗅覚が消えやがらない。

 

 

 

 旦那自身からはそう悪いものは匂わない。

 だからこそ、より一層不気味だ。

 

 

 ハンドラーはやばいものこそ感じるが、俺なら避けられる類のものだ。

 この嗅覚の匂い方じゃありえない。

 

 解放戦線に与するってなら話は変わるだろうが、野暮用を済ませた今となってはもう無関係。

 奴らとの縁切りは済ませたから、もう関わり合いになる義理はない。

 

 

 ならRaDか?

 旦那が紐付きになってるだろうあそこ。

 いや、あいつらからの匂い方はハンドラーと同じ、避けようと思えば避けられるやばさの奴だ。

 以前はここにとんでもない何かを感じたこともあったが、蓋を開けば紐付きである旦那のやばさこそが本質だったってわけだな。

 少なくとも、旦那と初めて会った時ほどの魔法じみた何かは感じない。

 

 

 

 俺にはわかる。

 この匂い方は、どこに逃げても無駄な奴だ。

 逃げるんじゃなく、腹を決めて対処しないとやばい奴だ。

 そのやばい気配が、旦那の方から匂ってくる。

 旦那がルビコンへ密航してきた時には感じなかった『それ』が、武装採掘艦の護衛の時から酷く匂ってくるのだ。

 だってのに、何をすりゃいいのかよくわからん。

 

 

 ……正直、旦那を排除するってのはしたくない。

 だいぶまともな相手だから心情的にきついってのもなくはないが、それ以上に旦那が強すぎるのがまずい。

 あれは絶対敵に回しちゃだめな奴だ。

 

 

 

 この間、俺がせっかく助けてやった腐れ爺が死んだと聞いた。

 殺したのは、旦那だってことも。

 

 だからといって、旦那を殺すわきゃない。

 もうすでに俺と奴は無関係だし、話を聞く限り旦那側はほぼ正当防衛だしな。

 その程度で巨人に挑む理由になりゃしない。

 

 こればかりは嗅覚に従うわけにはいかない。

 それだけがワンダラーの生存術ってわけじゃないんだから。

 

 

 

 

 

 

「このメッセージが届いておるなら、私はもう死んでいる筈だ」

「……サム?」

 

 だからそれは、まさに冷や水だった。

 

 

 

「今さら頼める筋合いではないとはわかっている。だが、私がしくじった場合……そして奴が私の警句を聞いてなおも止まらぬ場合、恐らく頼めるのはお前だけだ」

 

 腐れ爺の顔が映像越しに見える。

 もう二度と見ることもないと思ってた顔が。

 

 もう、見たくても見れないと思っていた顔が。

 

 

 

 

「いや、違うな。……私はお前にこそ頼みたいのだ。ミドル」

 

 久々だった。

 奴から、こんな嗅覚を感じたのが。

 

 

 

 

 

「私は護りたい」

 

「彼奴らの住む、このルビコンを」

 

 

 

「そして」

 

「お前が旅する、この広い宇宙を」

 

 

 

 

 

 

「セリア……許してくれとは、もう言わない」

 

「私にも、まだ友がいるのだ……!」

 

 

 

 

 




次回、ラスボス戦です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。