「ふーむ」
「どうした?また悩んでいるのか?」
ロイスアンドロイス。俺の担当であるが、この娘はとても見ていて飽きない。「最強のウマ娘」として人々から愛されるために、日々自分をプロデュースしている。本人は気づいていないと思うが、皆から愛されるために、試行錯誤して、何度も何度も頑張れる姿が一番愛せるウマ娘である。
「あら、トレーナーさん。そうよ、今度は『素直なウマ娘』を目指しているのだけれど……少し難しいのよね」
「素直、ねえ……」
素直なウマ娘なんか演じなくても、ロイスアンドロイスは十分に魅力的だと思うんだけどな。
「ちょっとやってみるわ。『あの、トレーナーさん。今日もトレーニング頑張りましょうね!私準備してきます!』……どうかしら?」
「ふむ、確かにいいと思うよ。でも、何か足りない気がするんだよなあ……」
「トレーナーさんもやはりそう思う?どうしてかしら……?」
素直って、まあ文字通り読んだら「素」が「真っ直ぐ」なんだよな。じゃあ、それはもうロイスアンドロイス本人なのでは?でもそれじゃあ根本的な解決にならないしなあ……
「あ、そう言えば、どうして今回は『素直なウマ娘』になりたいの?」
「いい質問ね、それは昨日読んだ雑誌に、『素直な性格であれば、必ずわかってくれる人ができる』とあったのよ」
情報源が雑誌で大丈夫なのかと気になったが、今はそれどころではない
「なるほど……わかった。多分今の状態では『道具』がないから足りないのかもしれない」
「道具?」
「そう。というわけでいろいろ集めてこよう」
プロデュース1「バックで音楽を流してもらう。協力:サウンズオブアース」
「『トレーナーさん、今日はどのようなトレーニングをするんですか?』」
「今日は、スタミナトレーニングをやろうと思っているんだけど大丈夫?」
「『はい!スタミナトレーニングですね!』」
(♬ペール・ギュント「朝」)
「……うーんなんか違うな……」
「すこし劇みたいになってしまったわね。ありがとう、アース」
「フッ、なに。amicoの頼みとあらばいつでもシンフォニーを奏でるさ」
プロデュース2「シチュエーションを『学園モノのアニメ』としたとき」
「『あ、おはよう!トレーナーくん!今日もいい朝だね』」
「うん、そうだね。こういう日は運動とかよさそうだね」
「『そうだね。じゃあ今から一緒に走ろうよ!』」
「なんだろう、AIに作ってもらった?」
「そんなことするわけないじゃない」
(本当にAI使用していないです)
プロデュース3「トレーナーとの出会いをもう一回やり直したとき」
「やあ、君がロイスアンドロイスさん、だね?」
「『はい、そうですが、私に何か用でもあるんですか?』」
「実は、君をスカウトしたいと考えているんだけど……ダメかな?」
「『本当ですか?嬉しいです!ぜひとも契約させてください!』」
「よかったー」
「なんかこれも違うわね」
「そうだね〜」
プロデュース4「???」
「しかし、一体どうしたものかしら?」
うーん、これは彼女が本気で悩んでいるな?しょうがない、少し助け舟を出すか。
前職が「アレ」だったから、こういうのもたやすくできる。
「『ああ、少し思い出したことがあるんだけど、ロイス、今いいか?』」
自然な動きでロイスに近づく。
「え?ええ」
「『ほら、もっと近づいて。君の可愛い顔を見せてくれよ』」
「かわ!?……え、ええ」
「『君は元々素直で【可愛い】ウマ娘なんだから、そんなに気を負う必要は無いんだよ。今の君が一番魅力的だ』」
「ふぇ!?」
「『あ、そう言えば俺理事長に呼び出されてるんだった。じゃ、失礼するね』」
「ちょっ……待っ……」
バタン、と扉を閉める。
「ふう……」
あかん、これ体力凄い使う。
まあ、これで少しは状況が変わるかな?前職が役者っていうのがここに生かされるとは思わなかった。まあ、大根役者なりに演技できたんじゃないかな?
「…………」
自己プロデュースを繰り返してきたロイスアンドロイスだが、それでもこの赤面を隠すようにプロデュースすることは不可能だった。